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オレイカルコス連合制圧戦
第91話 開戦 オレイカルコス連合制圧戦
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元奴隷たちに対する不死化の施術は順調に進んでいた。
施術が出来たのは最初はキーファーだけだったが、施す人数が人数なので魔術師を中心に他のダークエルフにも施術方法を教えて施せる人数を増やしていた。
そしてその年の初冬、およそ270名の元奴隷の不死化志願者全員への施術が終わった。
キーファーらダークエルフ達は施術を施された者たちにあるものを渡す。
「良いかお前ら。不死化の能力を発動させる際にはこの粒を飲め。ただし1度発動してしまうともう取り消すことはできん。間違って飲むんじゃないぞ。くれぐれも無くさないようにな」
そう言って一人一人に透明なガラスのような粒の入った袋を渡していく。
「キーファーさん、ありがとうございます」
「なに、礼を言われるような事など何一つしてない。閣下の言うことに従ったまでだからな」
それが当然。と言わんばかりの態度をとりつつ、その場にいる不死隊一人一人に袋を渡していった。
「閣下。不死化の施術は無事に終わったとのことです」
「分かった。年明けに出兵する。手配をしてくれ。頼んだぞ」
「ハッ!」
命にも及ぶ極めて危険な副作用が出るという不死化の施術……マコトは出来れば使いたくなかった。
だが使わざるを得なかった。前回の戦では敵守備隊の3分の1にしか元込め銃は配備されてなかったにもかかわらず、今までの戦争で最大級の死傷者が出た。
あれから半年が経った今では戦争相手への備えとして、奴隷商人ギルドからの有り余るほどの資金を注入されおそらく全部隊に配備されているだろう。
となると……頼らざるを得なかった。銃の進化は中世に毛が生えた程度の文明を吹き飛ばしてきた歴史がある。それを知っているからこそ、頼らざるを得なかった。
年が明け、寒い日々が続く後アケリア歴1242年1月16日。
マコト率いるハシバ国軍は2900の軍勢を率いてオレイカルコス連合首都へと向かう。敵軍は野戦する気はないようで、攻城戦へと移行する。
「閣下、軍の配備が完了しました。後は閣下の指示さえあればいつでも動けます!」
「分かった。王が命ず! 我が家臣たちよ! 恐れることなく戦え!」
マコトは神霊石の力を開放して恐怖を無くす。
「全軍前進! 城壁を落とせ!」
「スティーブの旦那! 敵軍、来ます!」
「マコトの奴、来るか」
スティーブは神霊石を取り出して、王の勅命を発動する。
「王が命ず! 我が家臣たちよ! 敵を恐れることなく戦え!」
神霊石が砕け、城壁を守る者たちに降り注ぐ。戦闘準備は整った。
城壁の上に設置されていた大砲……ドワーフが作っている兵器の中でも最新のもので実験機と言えるもの。を2門動かす。
「まずは破城槌を狙え……撃てぇ!」
轟音と共に砲金(雑に言えば青銅の一種)製の砲弾が勢いよく発射された。
と同時にはしごが掛かり、ハシバ国軍の兵たちが昇り始める。
「はしごを登ってる間は無防備だ! 昇ってくる兵を蹴散らせ! 撃てぇ!」
スティーブは指示を飛ばした。
ヒィイイウウウ……
何かが飛んでくるような音が聞こえる。その直後、バキィ! という音とともに木造の破城槌に砲弾が突き刺さる!
操作していたものの何名かが砲弾の下敷きになり動かなくなった。
「大砲か! とんでもないものをもってやがる……大丈夫だ! まだいける! 兵を補充して進め!」
工兵のリーダーが指揮を執り、傷つきながらも破城槌は進む。
大砲は前情報で存在自体は知っていた。そのため攻城兵器は予備を含めて多めに持ってきていた。
あらかじめ用意した大砲を食らったものとは別の破城槌が城に取り付き、攻城塔も2基大砲で壊されたが生き残りが東西に伸びる城壁の東側と西側計2か所に取りつき兵士を吐き出している。
そこへ、ついに彼らが動き出す。
「お前ら! 朝飯はたらふく食ったか!? 晩飯はあの世で死ぬほど食うぞぉ!」
「「「オォーッ!」」」
キーファーから渡された粒を飲み、彼らは戦場をかけだした。不死隊たちは東西に伸びる城壁の、正門から見て東側に取り付いた攻城塔へと向かう。
まずは不死隊のトロルが先陣を切り、攻城塔を駆け上がり敵陣へと斬り込んでいく。
トロルには元々高い身体再生能力が備わっているが、それに不死隊の能力が組み合わさると数十発の弾丸を食らってもなお駆ける勢いが衰えない。という凄まじい自己治癒能力を持つに至る。
お返しと言わんばかりに丸太のように巨大なこん棒をまるで小さくて細い棒きれを振り回すかのように軽々と使いこなし、ドワーフたちに叩きつける。
こうなると元々接近戦を考えてない軽装だったドワーフたちはひとたまりもない。銃剣のついた銃ごと相手を吹き飛ばしていく。
それに続く人間やオークなどの不死隊もドワーフの銃弾をものともしない。頭や胸に着弾しても死なずに戦い続ける!
「な、何だこいつら!?」
最前列にいる不死隊たちの驚異的な再生能力を前にドワーフが戸惑う。
「構うもんか! 押し返せ!」
ドワーフの指揮官は部下に発破をかけるがパワーバランスは徐々にハシバ国軍側へと傾いていった。
一方、西側の城壁。同じように攻城ハシゴと攻城塔が掛かり、兵士たちが攻め始める。
その中、白い髪に褐色の肌とアメジストパープルの瞳を持つ黒い長耳1人が攻城ハシゴを1段飛ばしで登り、強襲してくる。
「くたばりやがれ!」
周りのドワーフが彼めがけて一斉に銃弾を放つが、目に見えない壁に弾かれたように弾丸が届かない!
「クソッ! 魔法か!」
見た目とは裏腹に老いをこれっぽちも感じさせない動きをするアメジストパープルの瞳をしたダークエルフは
ミスリルの短剣を抜くと一振りでそばにいたドワーフ3名を斬り殺す。
「!? な、なんて奴だ!」
「あの黒い長耳を止めろ! 相手は一人だ! 行け! 行け!」
ドワーフたちは叫ぶ。
「皆の者! 進め! 閣下に勝利をささげるのだ!」
それに負けじとキーファーは仲間に向かって叫んだ。
【次回予告】
戦いは終わった。
彼らも終わった。
第92話 「不死隊 職務に殉じる」
施術が出来たのは最初はキーファーだけだったが、施す人数が人数なので魔術師を中心に他のダークエルフにも施術方法を教えて施せる人数を増やしていた。
そしてその年の初冬、およそ270名の元奴隷の不死化志願者全員への施術が終わった。
キーファーらダークエルフ達は施術を施された者たちにあるものを渡す。
「良いかお前ら。不死化の能力を発動させる際にはこの粒を飲め。ただし1度発動してしまうともう取り消すことはできん。間違って飲むんじゃないぞ。くれぐれも無くさないようにな」
そう言って一人一人に透明なガラスのような粒の入った袋を渡していく。
「キーファーさん、ありがとうございます」
「なに、礼を言われるような事など何一つしてない。閣下の言うことに従ったまでだからな」
それが当然。と言わんばかりの態度をとりつつ、その場にいる不死隊一人一人に袋を渡していった。
「閣下。不死化の施術は無事に終わったとのことです」
「分かった。年明けに出兵する。手配をしてくれ。頼んだぞ」
「ハッ!」
命にも及ぶ極めて危険な副作用が出るという不死化の施術……マコトは出来れば使いたくなかった。
だが使わざるを得なかった。前回の戦では敵守備隊の3分の1にしか元込め銃は配備されてなかったにもかかわらず、今までの戦争で最大級の死傷者が出た。
あれから半年が経った今では戦争相手への備えとして、奴隷商人ギルドからの有り余るほどの資金を注入されおそらく全部隊に配備されているだろう。
となると……頼らざるを得なかった。銃の進化は中世に毛が生えた程度の文明を吹き飛ばしてきた歴史がある。それを知っているからこそ、頼らざるを得なかった。
年が明け、寒い日々が続く後アケリア歴1242年1月16日。
マコト率いるハシバ国軍は2900の軍勢を率いてオレイカルコス連合首都へと向かう。敵軍は野戦する気はないようで、攻城戦へと移行する。
「閣下、軍の配備が完了しました。後は閣下の指示さえあればいつでも動けます!」
「分かった。王が命ず! 我が家臣たちよ! 恐れることなく戦え!」
マコトは神霊石の力を開放して恐怖を無くす。
「全軍前進! 城壁を落とせ!」
「スティーブの旦那! 敵軍、来ます!」
「マコトの奴、来るか」
スティーブは神霊石を取り出して、王の勅命を発動する。
「王が命ず! 我が家臣たちよ! 敵を恐れることなく戦え!」
神霊石が砕け、城壁を守る者たちに降り注ぐ。戦闘準備は整った。
城壁の上に設置されていた大砲……ドワーフが作っている兵器の中でも最新のもので実験機と言えるもの。を2門動かす。
「まずは破城槌を狙え……撃てぇ!」
轟音と共に砲金(雑に言えば青銅の一種)製の砲弾が勢いよく発射された。
と同時にはしごが掛かり、ハシバ国軍の兵たちが昇り始める。
「はしごを登ってる間は無防備だ! 昇ってくる兵を蹴散らせ! 撃てぇ!」
スティーブは指示を飛ばした。
ヒィイイウウウ……
何かが飛んでくるような音が聞こえる。その直後、バキィ! という音とともに木造の破城槌に砲弾が突き刺さる!
操作していたものの何名かが砲弾の下敷きになり動かなくなった。
「大砲か! とんでもないものをもってやがる……大丈夫だ! まだいける! 兵を補充して進め!」
工兵のリーダーが指揮を執り、傷つきながらも破城槌は進む。
大砲は前情報で存在自体は知っていた。そのため攻城兵器は予備を含めて多めに持ってきていた。
あらかじめ用意した大砲を食らったものとは別の破城槌が城に取り付き、攻城塔も2基大砲で壊されたが生き残りが東西に伸びる城壁の東側と西側計2か所に取りつき兵士を吐き出している。
そこへ、ついに彼らが動き出す。
「お前ら! 朝飯はたらふく食ったか!? 晩飯はあの世で死ぬほど食うぞぉ!」
「「「オォーッ!」」」
キーファーから渡された粒を飲み、彼らは戦場をかけだした。不死隊たちは東西に伸びる城壁の、正門から見て東側に取り付いた攻城塔へと向かう。
まずは不死隊のトロルが先陣を切り、攻城塔を駆け上がり敵陣へと斬り込んでいく。
トロルには元々高い身体再生能力が備わっているが、それに不死隊の能力が組み合わさると数十発の弾丸を食らってもなお駆ける勢いが衰えない。という凄まじい自己治癒能力を持つに至る。
お返しと言わんばかりに丸太のように巨大なこん棒をまるで小さくて細い棒きれを振り回すかのように軽々と使いこなし、ドワーフたちに叩きつける。
こうなると元々接近戦を考えてない軽装だったドワーフたちはひとたまりもない。銃剣のついた銃ごと相手を吹き飛ばしていく。
それに続く人間やオークなどの不死隊もドワーフの銃弾をものともしない。頭や胸に着弾しても死なずに戦い続ける!
「な、何だこいつら!?」
最前列にいる不死隊たちの驚異的な再生能力を前にドワーフが戸惑う。
「構うもんか! 押し返せ!」
ドワーフの指揮官は部下に発破をかけるがパワーバランスは徐々にハシバ国軍側へと傾いていった。
一方、西側の城壁。同じように攻城ハシゴと攻城塔が掛かり、兵士たちが攻め始める。
その中、白い髪に褐色の肌とアメジストパープルの瞳を持つ黒い長耳1人が攻城ハシゴを1段飛ばしで登り、強襲してくる。
「くたばりやがれ!」
周りのドワーフが彼めがけて一斉に銃弾を放つが、目に見えない壁に弾かれたように弾丸が届かない!
「クソッ! 魔法か!」
見た目とは裏腹に老いをこれっぽちも感じさせない動きをするアメジストパープルの瞳をしたダークエルフは
ミスリルの短剣を抜くと一振りでそばにいたドワーフ3名を斬り殺す。
「!? な、なんて奴だ!」
「あの黒い長耳を止めろ! 相手は一人だ! 行け! 行け!」
ドワーフたちは叫ぶ。
「皆の者! 進め! 閣下に勝利をささげるのだ!」
それに負けじとキーファーは仲間に向かって叫んだ。
【次回予告】
戦いは終わった。
彼らも終わった。
第92話 「不死隊 職務に殉じる」
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