93 / 127
オレイカルコス連合制圧戦
第93話 オレイカルコス連合戦 終結後
しおりを挟む
「銃の未来に、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
最近できたドワーフ向けの酒場でこれまたドワーフの武器職人達が打ち上げをやっていた。
「今度の閣下も悪くはねえな! 何せ「これからは銃の時代だ」と言い切ってくれるからな!」
「いやまったく! 俺たちの技術を高く買ってくれるところは評価できるわな! 黒い長耳の野郎が住んでるってのが玉に傷だがな!」
「オイオイ! 大砲も忘れちゃ困るぜ! 閣下は「大砲の時代は必ず来る」って断言してくれたんだぞ!」
「ああそうだそうだ! そういやそうだったな! んじゃあ乾杯しよう!」
「大砲の未来に、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
ハシバ国がオレイカルコス連合を制圧して1ヶ月。最初はドワーフたちは戸惑ってはいたものの、順化は進んでいった。
「えっと、清掃方法は……うん、こうだ。で、弾丸の装填は……こうか」
「そうそうそんな感じだ。クルス、お前は確かこの国の王子だっけか? 飲み込み早いじゃねえか、さすが王家の血筋ってやつだな」
クルスは軍による銃取り扱いに関する講習で使い方を学んでいた。
彼だけではない、ほかの一般兵や魔物たちも同じように銃の扱い方を学んでいた。
銃がハシバ国に伝わるとマコトは強引ではあるが銃への兵種転換を推し進めた。
既に銃剣の技術も浸透しているため、自力で接近戦がこなせるため銃兵のみという編成も理論上は可能であった。
ただ、銃の作成には多くの工程があるため値段が高いので既存の弓やクロスボウ、あるいはミノタウロス等の力自慢な種族のためにある程度は近接武器部隊も残している。
「閣下。弓兵の削減、ですか」
「ああ。お前たちにとっては不本意かもしれないがな」
「閣下のご命令とあればある程度不本意だとしても従いますが、あまり銃に熱を入れすぎないようにしてくださいね」
それまで花形だった魔法は銃にその座を明け渡し、防御魔法で軍を守るという裏方へと回されることになった。(これは万一技術漏えいした際の銃対策も兼ねている)
弓も同様でダークエルフ達の機嫌を損ねないようにダークエルフの弓兵隊は残しているが人間の弓兵の数はぐっと減った。
「総員、構え! 撃てぇ!」
リニューアルした射撃訓練場では「空から」銃声が聞こえ、銃弾が降ってくる。ハーピーが銃の射撃訓練をしていたのだ。
銃がもたらした恩恵の中で特に大きいのはハーピーによる空からの狙撃が可能になった点である。
マコト率いるハシバ国には空を飛べる魔物によって編成された「空軍」は地上戦では空からの攻撃で敵に致命傷を与えることは難しく、
もっぱら偵察に使われていた(それでも十分すぎる位活躍しているが)彼らに実用的な火力をもたらした。
さらに鎧も軽いレザーアーマーが復権を果たした。
武器と防具はどちらかが強くなればそれを目標にもう片方が強くなる。といういたちごっこを繰り返していた。
しかし銃の登場で武器の方が強くなりすぎて防具は敗北宣言をしてしまい、地球ではケブラー材などの防弾用素材が発明されるのを待つしかなかった。
銃に戦闘する際十分な射程距離が産まれ、さらに連射できるようになると重たいくせに簡単に弾丸が貫通する金属製の鎧なんて着ても無駄。というわけだ。
「ジェイク、ドワーフとダークエルフの様子はどうだ?」
「今のところは何も起こってねえぜ。ドワーフの居住区とダークエルフの居住区の距離をできるだけ離しているのが上手くいってるみたいだぜ。
何せあいつらときたら目と目が合うだけでケンカするからなぁ。俺としちゃあ見てて何でまた飽きもせずにケンカできるのか不思議でしゃあねえよ」
ドワーフの銃や大砲の職人を受け入れるのはいいことずくめに見えるが、ダークエルフの居住を許可しているハシバ国にとっては「犬猿の仲」と言えるエルフとドワーフをどうするかは悩みの種だ。
顔を合わせば衝突してばかりの両者の相互理解はあきらめて、接触する機会を減らしている。
お互いの居住区をできるだけ離し、日常生活において両者が歩く経路を統計や計算で割り出し、極力重ならないように配置しているのが功をなしているようだ。
それに加えて、ある企画も進めていた。
「武器防具の規格統一化、ですか。オレイカルコス連合から伝わった銃ではあるとは聞きましたがそれを他の武器や防具にも、ですか」
武器防具の共通規格化も進めていた。一見軍事力強化とは関係のない話かもしれない。だが軍事力の強化には欠かせない政策だ。
マコトが発案した共通規格の真の目的はクロスボウや銃の様な複雑な機構を持つ武器や、バリスタに攻城塔といった大型兵器の修理の迅速化であった。
今までは「作った人間にしか直せない」状態だったが、それを統一規格の下で製作すれば製作に直接関わった事のない人間が作った部品も使えるし、「修理専門の職人」を育成することだってできる。
また、それ以外の剣1本、槍1振りにしたって長さや材質が違えば扱う際の感覚も違ってくる。それを統一すれば修理もメンテナンスも簡単にできるし、育成コストもある程度は下がる。
「すげえな。時代が一気に中世から近世まで進んだぜ」
「チュウセイ? キンセイ? 何ですかそれ?」
「ああ、お前らは知らんよな。そうだなぁ、一気に何百年もの時間が経った、と言えば分かりやすいか? それくらいの劇的な進歩だよ」
ここまで来るのに色々あったが、今ならヴェルガノン帝国にも勝てるかもしれない。
マコトは手ごたえを感じていた。
【次回予告】
国土拡大がひと段落し、まとまった休暇を取ることにした。
第94話 「家族旅行」
「「「カンパーイ!」」」
最近できたドワーフ向けの酒場でこれまたドワーフの武器職人達が打ち上げをやっていた。
「今度の閣下も悪くはねえな! 何せ「これからは銃の時代だ」と言い切ってくれるからな!」
「いやまったく! 俺たちの技術を高く買ってくれるところは評価できるわな! 黒い長耳の野郎が住んでるってのが玉に傷だがな!」
「オイオイ! 大砲も忘れちゃ困るぜ! 閣下は「大砲の時代は必ず来る」って断言してくれたんだぞ!」
「ああそうだそうだ! そういやそうだったな! んじゃあ乾杯しよう!」
「大砲の未来に、乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
ハシバ国がオレイカルコス連合を制圧して1ヶ月。最初はドワーフたちは戸惑ってはいたものの、順化は進んでいった。
「えっと、清掃方法は……うん、こうだ。で、弾丸の装填は……こうか」
「そうそうそんな感じだ。クルス、お前は確かこの国の王子だっけか? 飲み込み早いじゃねえか、さすが王家の血筋ってやつだな」
クルスは軍による銃取り扱いに関する講習で使い方を学んでいた。
彼だけではない、ほかの一般兵や魔物たちも同じように銃の扱い方を学んでいた。
銃がハシバ国に伝わるとマコトは強引ではあるが銃への兵種転換を推し進めた。
既に銃剣の技術も浸透しているため、自力で接近戦がこなせるため銃兵のみという編成も理論上は可能であった。
ただ、銃の作成には多くの工程があるため値段が高いので既存の弓やクロスボウ、あるいはミノタウロス等の力自慢な種族のためにある程度は近接武器部隊も残している。
「閣下。弓兵の削減、ですか」
「ああ。お前たちにとっては不本意かもしれないがな」
「閣下のご命令とあればある程度不本意だとしても従いますが、あまり銃に熱を入れすぎないようにしてくださいね」
それまで花形だった魔法は銃にその座を明け渡し、防御魔法で軍を守るという裏方へと回されることになった。(これは万一技術漏えいした際の銃対策も兼ねている)
弓も同様でダークエルフ達の機嫌を損ねないようにダークエルフの弓兵隊は残しているが人間の弓兵の数はぐっと減った。
「総員、構え! 撃てぇ!」
リニューアルした射撃訓練場では「空から」銃声が聞こえ、銃弾が降ってくる。ハーピーが銃の射撃訓練をしていたのだ。
銃がもたらした恩恵の中で特に大きいのはハーピーによる空からの狙撃が可能になった点である。
マコト率いるハシバ国には空を飛べる魔物によって編成された「空軍」は地上戦では空からの攻撃で敵に致命傷を与えることは難しく、
もっぱら偵察に使われていた(それでも十分すぎる位活躍しているが)彼らに実用的な火力をもたらした。
さらに鎧も軽いレザーアーマーが復権を果たした。
武器と防具はどちらかが強くなればそれを目標にもう片方が強くなる。といういたちごっこを繰り返していた。
しかし銃の登場で武器の方が強くなりすぎて防具は敗北宣言をしてしまい、地球ではケブラー材などの防弾用素材が発明されるのを待つしかなかった。
銃に戦闘する際十分な射程距離が産まれ、さらに連射できるようになると重たいくせに簡単に弾丸が貫通する金属製の鎧なんて着ても無駄。というわけだ。
「ジェイク、ドワーフとダークエルフの様子はどうだ?」
「今のところは何も起こってねえぜ。ドワーフの居住区とダークエルフの居住区の距離をできるだけ離しているのが上手くいってるみたいだぜ。
何せあいつらときたら目と目が合うだけでケンカするからなぁ。俺としちゃあ見てて何でまた飽きもせずにケンカできるのか不思議でしゃあねえよ」
ドワーフの銃や大砲の職人を受け入れるのはいいことずくめに見えるが、ダークエルフの居住を許可しているハシバ国にとっては「犬猿の仲」と言えるエルフとドワーフをどうするかは悩みの種だ。
顔を合わせば衝突してばかりの両者の相互理解はあきらめて、接触する機会を減らしている。
お互いの居住区をできるだけ離し、日常生活において両者が歩く経路を統計や計算で割り出し、極力重ならないように配置しているのが功をなしているようだ。
それに加えて、ある企画も進めていた。
「武器防具の規格統一化、ですか。オレイカルコス連合から伝わった銃ではあるとは聞きましたがそれを他の武器や防具にも、ですか」
武器防具の共通規格化も進めていた。一見軍事力強化とは関係のない話かもしれない。だが軍事力の強化には欠かせない政策だ。
マコトが発案した共通規格の真の目的はクロスボウや銃の様な複雑な機構を持つ武器や、バリスタに攻城塔といった大型兵器の修理の迅速化であった。
今までは「作った人間にしか直せない」状態だったが、それを統一規格の下で製作すれば製作に直接関わった事のない人間が作った部品も使えるし、「修理専門の職人」を育成することだってできる。
また、それ以外の剣1本、槍1振りにしたって長さや材質が違えば扱う際の感覚も違ってくる。それを統一すれば修理もメンテナンスも簡単にできるし、育成コストもある程度は下がる。
「すげえな。時代が一気に中世から近世まで進んだぜ」
「チュウセイ? キンセイ? 何ですかそれ?」
「ああ、お前らは知らんよな。そうだなぁ、一気に何百年もの時間が経った、と言えば分かりやすいか? それくらいの劇的な進歩だよ」
ここまで来るのに色々あったが、今ならヴェルガノン帝国にも勝てるかもしれない。
マコトは手ごたえを感じていた。
【次回予告】
国土拡大がひと段落し、まとまった休暇を取ることにした。
第94話 「家族旅行」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる