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激闘 ヴェルガノン帝国
第120話 ヴェルガノン帝国への侵攻作戦
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春も終わりそろそろ暑くなる日々がやってくるであろう頃……
「シグリッドさん、苦労しましたが何とか注文の品が出来ました」
ダークエルフのエルフェンが最近この国にやってきたシグリッドに注文されていた品を納品する。その見た目は「墨のように黒いロウソク」であった。
それに、ロウソクを腰に付けるホルダーもセットでついていた。
「ありがとうございます。難しい要求だったと思いますが無事にできたようで感謝します」
シグリッドは金を払い受け取る。
「ところで、これはいったい何のために使うんですか? 戦いのためとは聞いていますが……」
「ええ。例えていえば、本気を出すときのために使うんですよ」
「本気、と?」
「ええまぁ。そんなとこです」
シグリッドが言葉を濁らせるのを見てこれ以上の詮索はヤボだろうと思い話を切り上げた。
彼はもちろんの事、ハシバ国も戦争の準備を進めていた。都市国家イルバーンに続々と兵士が集まる。その兵の数は僧兵13000にハシバ国兵7000。
計20000という大規模なものだ。彼らはここから歩いて4日ほどの位置にあるヴェルガノン帝国の帝都を陥落させるために集っていたのだ。
シグリッドが持ってきた地図によると道中には関所が3つあるらしい。そこを超えて帝都まで行く予定だ。
「閣下、偵察部隊の報告によりますと第1の関所は木製で、兵の数もまばらだそうです」
「何? どういうことだ? 木製だと?」
あまりにも貧弱な身の守りにマコトは戸惑う。ヴェルガノン帝国と言えどハシバ国の国力と軍事力は知っているはずだ。それ相手になぜ石ではなく木の守りなのか? 疑問だ。
とはいえ疑問に思いながらもとどまり続けるわけにはいかない。マコトはヴァジュラに乗り込み、軍を率いて都市国家イルバーンを発った。
「あれが関所か? ……確かに木製だな」
報告通りに急造なのか木製の壁でできた粗さの目立つ関所。
石製の建造物ですら大砲で壊せるマコトの軍勢にとっては、止まることなく楽々突破できる障害にならない障害である。
実際にヴァジュラやヴァジュラヘッドが使うような、いわゆる現代地球における砲弾型をした魔力による加速機能を持たない、球状の砲金(雑に言えば青銅の一種)製の砲弾を発射する量産型の大砲の砲撃数発であっさりと粉砕され、陥落した。
「……妙だな」
関所にいた不死者の数が異様なまでに少ない。木製の関所に、その規模に対して明らかに合っていない人員。これではハシバ国の侵攻を止めることなど到底無理で設置する意味がない程、と言える程度の規模の低さだった。
それどころかハシバ国の兵士が倒したものではない、完全に動かない死体まで散在している。シグリッドが気になって動かない死体を診てみる。
「これは……瘴気が「抽出」されていますな」
「? 抽出されている? どういうことだ?」
「閣下はご存じないのですね。お教えいたしましょう」
瘴気というのは不死者を動かすための動力源や血液とでもいえる物である。
実はあらゆる生物、特に人間は非常に多くの「瘴気の種」とでもいうべきものを持っていて、死後埋葬せずに放置するとそれが芽吹き瘴気が発生し不死者となると言われている。
その瘴気を埋葬する事で祓う、あるいは抽出して空になると死体はただの物体になり動き出すことは無いという。
「どうやら人為的に瘴気を抽出しているみたいです」
「瘴気の抽出ねぇ……そんなことやって何になるんだ?」
「さぁ……私にもわかりませんね」
「とにかく進もう。相手が弱くても油断するな、何をしでかすかわかったもんじゃないからな。慎重に進め」
マコトは指示をする。続く第2関門、第3関門も似たような設備と人員で、これまた苦も無く突破できる代物だった。
「何だ。ヴェルガノン帝国も大したことねえな」
「ああ。山越えは恐ろしかったけどそれだけだな。俺たちの敵じゃねえな。もうネタ切れなんじゃねえの?」
「お前たち、くれぐれも油断はするな。相手は生者の常識が通用しない相手だ。何を仕掛けてくるかわかったもんじゃない。気を抜くんじゃないぞ」
ハシバ国軍が都市国家イルバーンから進軍を始めて6日後。ついにヴェルガノン帝国帝都近辺にまでたどり着いた。
【次回予告】
ついにヴェルガノン帝国帝都へとたどり着いたハシバ国軍。決戦が始まる。
第121話 「帝都決戦 前編」
「シグリッドさん、苦労しましたが何とか注文の品が出来ました」
ダークエルフのエルフェンが最近この国にやってきたシグリッドに注文されていた品を納品する。その見た目は「墨のように黒いロウソク」であった。
それに、ロウソクを腰に付けるホルダーもセットでついていた。
「ありがとうございます。難しい要求だったと思いますが無事にできたようで感謝します」
シグリッドは金を払い受け取る。
「ところで、これはいったい何のために使うんですか? 戦いのためとは聞いていますが……」
「ええ。例えていえば、本気を出すときのために使うんですよ」
「本気、と?」
「ええまぁ。そんなとこです」
シグリッドが言葉を濁らせるのを見てこれ以上の詮索はヤボだろうと思い話を切り上げた。
彼はもちろんの事、ハシバ国も戦争の準備を進めていた。都市国家イルバーンに続々と兵士が集まる。その兵の数は僧兵13000にハシバ国兵7000。
計20000という大規模なものだ。彼らはここから歩いて4日ほどの位置にあるヴェルガノン帝国の帝都を陥落させるために集っていたのだ。
シグリッドが持ってきた地図によると道中には関所が3つあるらしい。そこを超えて帝都まで行く予定だ。
「閣下、偵察部隊の報告によりますと第1の関所は木製で、兵の数もまばらだそうです」
「何? どういうことだ? 木製だと?」
あまりにも貧弱な身の守りにマコトは戸惑う。ヴェルガノン帝国と言えどハシバ国の国力と軍事力は知っているはずだ。それ相手になぜ石ではなく木の守りなのか? 疑問だ。
とはいえ疑問に思いながらもとどまり続けるわけにはいかない。マコトはヴァジュラに乗り込み、軍を率いて都市国家イルバーンを発った。
「あれが関所か? ……確かに木製だな」
報告通りに急造なのか木製の壁でできた粗さの目立つ関所。
石製の建造物ですら大砲で壊せるマコトの軍勢にとっては、止まることなく楽々突破できる障害にならない障害である。
実際にヴァジュラやヴァジュラヘッドが使うような、いわゆる現代地球における砲弾型をした魔力による加速機能を持たない、球状の砲金(雑に言えば青銅の一種)製の砲弾を発射する量産型の大砲の砲撃数発であっさりと粉砕され、陥落した。
「……妙だな」
関所にいた不死者の数が異様なまでに少ない。木製の関所に、その規模に対して明らかに合っていない人員。これではハシバ国の侵攻を止めることなど到底無理で設置する意味がない程、と言える程度の規模の低さだった。
それどころかハシバ国の兵士が倒したものではない、完全に動かない死体まで散在している。シグリッドが気になって動かない死体を診てみる。
「これは……瘴気が「抽出」されていますな」
「? 抽出されている? どういうことだ?」
「閣下はご存じないのですね。お教えいたしましょう」
瘴気というのは不死者を動かすための動力源や血液とでもいえる物である。
実はあらゆる生物、特に人間は非常に多くの「瘴気の種」とでもいうべきものを持っていて、死後埋葬せずに放置するとそれが芽吹き瘴気が発生し不死者となると言われている。
その瘴気を埋葬する事で祓う、あるいは抽出して空になると死体はただの物体になり動き出すことは無いという。
「どうやら人為的に瘴気を抽出しているみたいです」
「瘴気の抽出ねぇ……そんなことやって何になるんだ?」
「さぁ……私にもわかりませんね」
「とにかく進もう。相手が弱くても油断するな、何をしでかすかわかったもんじゃないからな。慎重に進め」
マコトは指示をする。続く第2関門、第3関門も似たような設備と人員で、これまた苦も無く突破できる代物だった。
「何だ。ヴェルガノン帝国も大したことねえな」
「ああ。山越えは恐ろしかったけどそれだけだな。俺たちの敵じゃねえな。もうネタ切れなんじゃねえの?」
「お前たち、くれぐれも油断はするな。相手は生者の常識が通用しない相手だ。何を仕掛けてくるかわかったもんじゃない。気を抜くんじゃないぞ」
ハシバ国軍が都市国家イルバーンから進軍を始めて6日後。ついにヴェルガノン帝国帝都近辺にまでたどり着いた。
【次回予告】
ついにヴェルガノン帝国帝都へとたどり着いたハシバ国軍。決戦が始まる。
第121話 「帝都決戦 前編」
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