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第1章 目覚めたら半年後に来ていた。

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2022.06.07 福岡県

1人の少女が、ベッドに横たわったまま、YouTubeを見ていた。

私の毎日のルーティンは、櫻坂46の小林由依さんの動画を見ることだ。
「ゆいぽん可愛いなあ」と呟く。
そして、彼女の笑顔やパフォーマンス中の目を見るたびに、私はまた明日も頑張ろうと思えるのだ。

彼女のことを好きでいる時間は大切にしたいと思っている。
彼女は、私の憧れの存在だ。
可愛くて歌もダンスも上手くて、努力家で向上心がある。そんな彼女のようになりたいといつも思うし、櫻坂がより人気が出て欲しいとも思っている。

私がもし櫻坂に入れるなら、迷わずに入るだろう。それだけ小林由依さんのことが好きだ。
まあ、、、夢のまた夢のような話なのだけれど……。



でも、もしもの話をしたっていいじゃないか。だって、こんなにも好きなんだから。
「ファンレター送ってみようかな……」なんてことを考えてしまうこともある。
小林さんが私の文章を読んでくれる!
そうなったら、どんなに嬉しいだろうか? 本当に届くかは、分からないはないけどね……笑 いつかは握手会に行ってみたい!という気持ちもあるのだが、やっぱり怖い。
推しの前で緊張しない自信がないからだ。

そんなこと考えてたら眠くなってきちゃった。そろそろ寝よっと。
おやすみなさい。
ーーーーーー 







2022.11.10 山梨県南都留郡山中湖村


「美青!美青!お願い、目を覚まして!」女の人の声が聞こえる。誰かが耳元で、私の名前を呼びかける。
「美青!早く起きて!」女の人の声はまだ続いている。私はまだぼんやりとする頭で、うっすらと目を開けた。
「美青!よかった、やっと目を覚ましたわ!早く準備して!レッスン始まるよ!」
目の前には、びっくりするくらいの美女が、私を見ていた。
 えっと……誰?
この人?もしかして私のファンかな?でも、こんなに美人なファンがいるなんて聞いてないんだけど……。私はそんなこと訳の分からないことを考えながら、体を起こした。
あれ?なんか体が軽い気がするけど気のせいだよね?それにしても、ここどこだろう?見覚えのない部屋みたいだけど……。私がそう思ってキョロキョロしていると、「もう!まだ寝ぼけているの!?」と言ってきた。
その人は、私の手を掴んで、体を起こしてきた。
「ほら!早くしないと遅刻しちゃうよ!」
「あの……あなたは?」
「何言ってるのw美青!冗談はやめてよー。早く準備して」
ん?なんのこと?本当にわからないんですけど……。
「ほら、早く着替えないと、遅れちゃうよ!」
「いやだから、あなたは……」
「あぁもう!いいから早く支度してよ!」
「……はい」
なんだかよく分からないけど、言う通りにした方が良さそうだ。だって、彼女の目が怖いんだもん……。私は仕方なく、渡された服に袖を通した。……うん、やっぱりおかしい。どうして私がこんな服を着なくてはいけないのか……。
「よし!じゃあ行くよ!」
「ちょっと待ってください!どこに行くんすか!?」
「どこって……レッスン場だよ!昨日からBANの練習が始まったでしょ!」
……はい? 
今、なんて言いました?BAN?
それってもしかして櫻坂の楽曲のBANですか?ダンスとか歌とか結構難しいで有名な。
「ちょっ!ちょっと待って下さい!レッスン場に行く予定はないはずです!」
私は寝ぼけているのか、、、
「またまた~!何を言っているの?美青ったら~」
「美青、、なんで私の名前を? というか、あなたは本当に誰ですか!?」
「誰って……私の名前は、小島凪紗。メンバーじゃない。」
…………はい? どうしよう。頭が混乱してきた。
「ここ、私の部屋ですよ?勝手に入ってこないでくださいよ。」
「なによ~美青。またくだらないお芝居に付き合わないといけないのぉ~」
「、、、、、、」
てか本当にだれ?

私は寝ぼけているのか。それとも、これって夢なのかな? だとしたら随分リアルな夢だなぁ。自分の頬っぺたをつねってみたけど痛くなかった。ということはこれは現実ということらしい。
でも、そうなると余計に意味がわかんなくなる。一体どういうことなんだろう。

「ねぇ、美青。大丈夫?」
私が黙りこくっているのを心配してくれたのか、目の前にいる美女、小島さんが顔を覗き込んできた。近くで見るとさらに綺麗だった。

この訳の分からない状況に、質問したいことがたくさんありすぎて困っていた私は、とりあえず一番気になることを聞いてみることにした。
「あの……ここはどこでしょうか?」
「えっと、ここは合宿所だけど」
「なんの合宿ですか?」
「櫻坂の三期生の合宿よ?もう、、美青どうしたの?昨日と別人みたいだよ?」
……三期? 櫻坂に三期生はまだいないはずだけど……。てか、昨日櫻坂3期生のオーディションがあることが発表されたはずだよ?

「すみません、少しだけ確認させてください。」
私の中で一つあり得ない仮説が立った。
それを確認するために小島さんに核心をつく質問をしようと思う。

「何!?改まっちゃってwどうしたの?」
私は深呼吸をして心を落ち着かせた後、思い切って口を開いた。
「今日は何月何日ですか?」「えっと、11月10日だけど……」
11月10日……。
やっぱり間違いない。
タイムスリップしている!!!




私は約半年後に
起こるはずだった未来にタイムスリップしてしまったようだ。
「あの……レッスンの時間まであとどれくらいありますか?」
「あと30分ほどあるけど……」
「てか、なんで敬語なのよw」
「す、すいません」
「もうwまあいいわ。それより美青、何かあったの?」
「いえ、なんでもありません」
「本当?」
「はい。心配かけてごめんなさい」
「ならいいけど……。なんか今日の美青、いつもと違うっていうか、雰囲気が違う気がするんだけど気のせいかな?」
「気のせいです」
「そっか、気のせいか。良かったw」
「はい」
危なかった。気づかれるとこだった。
タイムスリップしてるとか言うと、ただ単に頭おかしい人だと思われるかもしれない。とりあえずは黙っておこう。



状況を整理しよう。
私は的野美青。 ←ここは合ってる。
日にちは約半年タイムスリップしてる。
場所はマップで調べたら、山梨県らしい。
小島さんが言うには、私は櫻坂3期生の合宿に来ているらしい。ここが最大の不明点
だな。

そもそも、どうして私がここに来ているのか、全く身に覚えがない。
でも、なんとなく分かる気がする。
私はタイムスリップする前から櫻坂のファンだった。

ここからはあくまで仮説だけど、私は櫻坂3期生のオーディションを受けたのだろう。そして、合格もしくは最終選考まで残り、今この場にいる。そう考えるのが一番自然だと思う。そして、隣にいる小島さんも、合宿の参加者ということ。

「ねぇ、美青?なんか考え込んでるみたいだけど、本当に大丈夫?」
「うん!大丈夫。」
「よかった~!じゃあ、行こう!」
「そうだね」
私は小島さんと一緒に部屋を出た。廊下に出ると、何人かのメンバーがいた。その人たちは私を見るなり、
「おはよう~美青~」と言ってきた。
私は挨拶を返そうとしたけど、声が出なかった。
だって、みんなのことを知らないんだもん。
でも、一応挨拶しとこ。「お、おはようございます……」
「どしたん?元気なさげじゃん」
「あ、いや、そんなことないよ」
「ふーん。昨日のレッスン大変だったもんね。疲れ取れてない感じ?」
「うん」
「そっかー。少し休んでみたら?」
「ありがとう。でも頑張る。」
私は会話をしながら考えた。
この人の名前ってなんだろう? 
……うん?ゼッケンに平仮名で名前書いてある。ラッキー🤞
「じゃ、レッスン頑張ろうね!」
「う、うん。がんばろ!」
「……あれ?美青?なんで私の名札見てるの?」
「あっ!いや、な、なんとなくだよ!」
「……怪しい」
「怪しくないって!」
「ほんとに?」
「ほ、本当だよ!ゆづきちゃん!」
「……!?」
「……!?」
「今、ゆづきちゃんって言ったよね? 」
「うん。ゆづきちゃんって呼んだよ?」
「昨日までゆったんって呼んでたじゃん!」
「い、いやそれは、間違えちゃったんだよ!」
「てか、なんで急に呼び方変えたの!?」
「い、いや、たまたまだよ!……」
「……やっぱりおかしい」
「おかしくないって!」
「……嘘ついてる顔だ」
「えっ!?」
「……図星だ」
「……っ」
まずい。どうしよう。なんとか誤魔化さなきゃ。
「冗談だよ🤭早く体育館行こ?」
「もうっ!からかわないでよ!」
「ごめんごめん」
「まあいいや。行こ?」
「うん」
危なかったぁ。なんとか乗り切った。



今日のレッスンは、まずBANのショートバージョンを頭から最後までの振りを3時間でやる。

講師の先生がお二人。
このお二方がそれぞれダンスを指導する。
レッスン開始時刻になり、みんなが着替えてきた。いよいよレッスンが始まる。緊張してきた。急にタイムスリップして体も心も全く準備できてないよ。
「はい、じゃあ始めます。よろしくお願いします。」

まあ、とりあえずチャレンジしてみるか。

もともと櫻坂が好きだった私はBANの振り付けを知っていたけど、改めてやってみると、やっぱり難しかった。しかも、3時間で覚えないといけない。
だから結構キツかった。でも、なんとかついていくことができた。
「はい、休憩入りましょう。」
「はい、では水分補給を忘れずにして下さい。」



やっぱりまだ、実感が湧かない。
私は本当に櫻坂3期生になったのだろうか。正直、半信半疑だった。
でも、これは現実なんだ。時間が経ったら実感が湧くかも。

レッスン後、私はシャワーを浴びて汗を流した後、部屋に戻ろうとした。すると、小島さんに声をかけられた。
「美青、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「うん。別に大丈夫だけど……」
「ここじゃ話しづらいから、場所を変えよ?」
「わかった。」
私は小島さんについていった。
着いた先は、誰もいない空き部屋だった。
「美青、単刀直入に聞くね?」
「な、なに?」
「今日の美青はなんか変だよね?」
「えっと、そうかな?いつも通りだと思うけど……」
「ううん。いつもの美青じゃない。絶対なにか隠してるでしょ?」
「そ、そんなことないよ」
「美青、私にはなんでも言っていいんだよ?私たち仲間でしょ?私は美青の力になりたいの」
「ありがとう……凪紗。でも心配しないで?ちょっと疲れてるだけだから。」
「そう……。ならいいけど。あんまり無理はしちゃダメだよ?」
「わかってる。心配かけてごめんね。」
「謝らないで。でも、なんかあったらいつでも相談してね?」
「うん。その時は頼らせて貰うね。」
「うん。じゃあ、そろそろ戻ろっか。」
「そうだね。」
私たちは空き部屋を出て、廊下に出た。そして、小島さんと一緒に自分の部屋に戻った。
私にとっては、初対面の凪紗ちゃん。(相手は違うけど)頼れる子だと思った。少し距離が縮まったかな。
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