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5.前の世界の話はあまりしたくないんだが
薄暗い光、未明、ついに目を覚ました。元の世界にあった孤児院の夢を見ていた気がする。この天蓋はこの邸宅にきて最初に目を覚ました時に見たものだ。あの時と同じく気だるく、血の巡りを感じない。
「……」
「昨日の今日で目を覚ましたか。とてつもない生命力だな」
「……ジャスパー……レピは……」
「起きて早速息子の心配とはな。息子には傷一つない。まだ寝ていろ。……!」
むくりと起き上がり、ベッドから脱出して床に転がり落ちた。ベッドと棚の隙間の壁に背を預けてまた眠り落ちてしまった。とにかくベッドには、良い思い出がない。
再び目を覚ますと転がり落ちたまま毛布を被せられていた。先ほど一度起きたときのことを思い出して反芻する。ジャスパーのあのように穏やかな表情は初めて見た。
「……あんな顔するんだな」
消え入るような声で呟いて数分、息遣いが自分と誰かの二人ぶん感じ取れた。
「いるんだろ」
そう言うと渋々といった顔で影の男が現れた。
「相変わらず……なぜ気配を感じ取れる。まあ良い、主を呼ぶ」
――――
――
―
「気分はどうだ」
「快調だ」
「嘘つけ」
ジャスパーは腕を組んで見下ろすように顎でこちらを指し示した。
「お前は毒で倒れた。自分でも理解していたのだろう」
「ああ。あの感覚は毒だった」
「毒に対する訓練でも受けたのか?」
「元いた世界の毒の分はな。ただ生まれつき強いわけじゃないから、この世界の毒には負けた」
最初は苦しい思いをした。身体を固定されて毒に苦しむ様を感情の無い目で見る大人たちを時々悪夢として見ることがある。
「ふん……。お前はラディアの毒に侵されていた」
「ラディアの毒?」
「ラディアの実が傷んだ際に生成される毒だ。何か覚えはあるか?」
それはもう毎回夕食に出ていたのだから心当たりしかない。
「傷んだ食べ物……あんたが帰ってきてからずっと、食べてたな」
「なんだと?」
「夕食の皿に毎回赤い実が盛りつけられていた」
「……傷んだ食べ物を、しかもラディアの実を、だと?」
「ああ。赤い実で合ってるなら」
「合っている。ラディアの実はメニューに出さないように徹底しているはずだが。それになぜ傷んでいると分かる」
「あんたとレピのメニューと俺のメニューは違っていたからな。見た目は似ていたが、よく見ると違ったんだ。それに傷んでる食べ物って……口にするとなんとなく分かるだろ」
「なら、なぜ申し出なかった」
「なぜって……そりゃ、食べられるんだったら、なんだって良いだろ」
実際食べてはいけないものだったらしいのだが。ジャスパーは信じられないと言う顔をして言葉を詰まらせて、数秒後に毒味もろとも……などと呟いている。
「お前……元の世界はどんな世界だったんだ」
「言う必要があるのか?」
「当然だ。今回の事件に関わると思え」
「……」
そう言われ渋々前の世界の話をはじめた。
自分が元いた世界は、戦争の絶えぬ世界であった。二同盟間の争いと、そこに聖地を取り返さんとする別の勢力、所謂新生十字軍のようなものが割って入ったという三つ巴の状態であり、文明が崩壊寸前になるまで追い詰められていた。負けを認めると国ひとつが解体されかねない、そんな結末が目に見えていたがため戦争は泥沼化しており、新生十字軍を協力して追いやるどころか上手く使役して敵国を滅ぼそうとし、より悪化の一途を辿っていた。何の罪もない大人が死に、未来を生きようとしていた子どもが死に、このまま戦争を続けて一体何が残るのか甚だ疑問だった。
自分はその世界では傭兵として生きていた。当然いつだって食べ物は枯渇していたのだから何だって口にしてきた。傷んでいるくらいならラッキー。必要なものは食べ物と水と、武器、それだけだ。
「身体中にある痣はその戦争でできたものなのか?」
服装が倒れる前の物から変わっていた。その時に身体を見たのだろう。
「当たらずといえども遠からず」
それ以上は語らなかった。いいや、語れなかった。
「……お前が元の世界での影響か、毒に耐性を持つことはわかった。慢心して傷んでいるものを口にし続けていたということも……我が邸宅に傷んだ物どころか食卓に出すことを禁止している物を食事として出す、愚か者が存在するということも……」
その最後の一言の声音が明らかにどす黒いものとなっており、随分様子がおかしい。まるで封じ込めていた獣を呼び起こしたかのようだ。彼は「事情も知らずにすまなかった」と言って立ち去った。
クロムから聞いた話だが、この邸宅の料理人とメイド、毒味係、執事長以外の執事がたったの3日で総入れ替えとなったそうだ。自分のためにやってくれたのか、ジャスパー自身のためにやったのか、レピの心傷の対価としてやったのか定かではないが、以前と比べ明らかに対応が改善されていた。クロムも俺のことを名前で呼ばず、奥様と呼ぶようになってしまったし、謝罪まで寄越してきた。その中最も安心できた点といえばレピに執着していた使用人も解雇されたという話だ。あの異様さばかりは侮れなかったため、倒れてよかったのかもしれない。
以前と打って変わって慌ただしく動く使用人たちを玄関でじっと見つめていると、カルセドが話しかけてきた。
「もう全快したのですか、オクサマ」
「カルセド、やめてくれ」
彼は俺が嫌がるとわかっていて奥様と呼んでいる節がある。
「そうは言ったって……」
「ジャスパーのあの行動は何を原理にしてるんだ」
「さぁ。ただ、奥様が今までの癇癪女とは違うってのは隊長も理解してるから、あんまりにも何も求めない奥様の代わりに隊長が動いたんじゃないんですか?」
「今までのってどんな人だったんだ?」
「そりゃ酷いもんですよ。奢侈の限りを尽くして気に入らないことがあれば物や使用人に当たり散らす。そんなんばっか。レピド様にまで手を上げていましたよ。それに比べりゃ奥様はむしろどうやって生きてるのか分からんくらいの清貧家ですよ」
「金がそんな人間を生むのか?金なんて国家が終わればただの紙切れになるのにな」
「……全く、どんな人生を送ってきたのか」
しばらく使用人たちを見ていると、レピがこちらに近寄ってきた。
「師匠!」
「レピ。体に異常はなかったか?」
「僕は大丈夫です!それより師匠のお身体の方が……」
「俺はこの通り回復している。明日には訓練を再開する」
「本当ですか!」
「ああ」
レピの頭を撫でてやると嬉しそうに微笑んで撫でられている。このように素直な子だというのに暴力を振るうとはいったい何が不満なのだろうか。レピはひとしきり撫でられて授業部屋へ向かった。訓練は午後からだそうだ。レピがこの場から離れたことを確認してカルセドは小声で問いかけてきた。
「奥様はレピド様のこと、邪魔だと思わないのですか?」
「思わない。それは前の奥様がそう言ったのか?」
「言ってませんけど、あの態度から思っていたでしょうね。前妻との子なんてそういうもんですよ」
「俺は別の世界から来たし、俺自身結婚したこともなければ子どもがいたことも無かったからその感覚はよく分からない」
「生存戦略なんですよ」
「生存戦略……?」
カルセドは話を続けた。
「この世界は爵位ってのがある。爵位は権力の象徴とも言えるから、それを継げなかったら生活は一変する。で、それは大概が世襲制なんです。自分の子が継げなかったら今まで育んできた社交界的立場、実家での立場、その全てが陥落するみたいなもんですよ。追い出されるんじゃないかって不安に思うんです」
「レピが陥落の原因になるのか?前妻との子だから」
カルセドは静かに頷いた。どうも格式や旧習を重んじる世界のようだ。それによって苦しんだ女性が多かったのではないだろうか。
「心配するな、その話を聞いたからと言って今更レピへの態度を変えたりしない」
「フッ、そう言いそうな気がしてましたよ」
「試すようなことをするな」
態度どころか、そもそもレピが大きくなったらこの邸宅を出ようと思っているというのに。時々国のために使徒の力とやらを使って、レピに手紙を書いて、自由気ままに過ごせば良いではないか。
未だ俺の力が何なのかはっきりとしていないが。
「……」
「昨日の今日で目を覚ましたか。とてつもない生命力だな」
「……ジャスパー……レピは……」
「起きて早速息子の心配とはな。息子には傷一つない。まだ寝ていろ。……!」
むくりと起き上がり、ベッドから脱出して床に転がり落ちた。ベッドと棚の隙間の壁に背を預けてまた眠り落ちてしまった。とにかくベッドには、良い思い出がない。
再び目を覚ますと転がり落ちたまま毛布を被せられていた。先ほど一度起きたときのことを思い出して反芻する。ジャスパーのあのように穏やかな表情は初めて見た。
「……あんな顔するんだな」
消え入るような声で呟いて数分、息遣いが自分と誰かの二人ぶん感じ取れた。
「いるんだろ」
そう言うと渋々といった顔で影の男が現れた。
「相変わらず……なぜ気配を感じ取れる。まあ良い、主を呼ぶ」
――――
――
―
「気分はどうだ」
「快調だ」
「嘘つけ」
ジャスパーは腕を組んで見下ろすように顎でこちらを指し示した。
「お前は毒で倒れた。自分でも理解していたのだろう」
「ああ。あの感覚は毒だった」
「毒に対する訓練でも受けたのか?」
「元いた世界の毒の分はな。ただ生まれつき強いわけじゃないから、この世界の毒には負けた」
最初は苦しい思いをした。身体を固定されて毒に苦しむ様を感情の無い目で見る大人たちを時々悪夢として見ることがある。
「ふん……。お前はラディアの毒に侵されていた」
「ラディアの毒?」
「ラディアの実が傷んだ際に生成される毒だ。何か覚えはあるか?」
それはもう毎回夕食に出ていたのだから心当たりしかない。
「傷んだ食べ物……あんたが帰ってきてからずっと、食べてたな」
「なんだと?」
「夕食の皿に毎回赤い実が盛りつけられていた」
「……傷んだ食べ物を、しかもラディアの実を、だと?」
「ああ。赤い実で合ってるなら」
「合っている。ラディアの実はメニューに出さないように徹底しているはずだが。それになぜ傷んでいると分かる」
「あんたとレピのメニューと俺のメニューは違っていたからな。見た目は似ていたが、よく見ると違ったんだ。それに傷んでる食べ物って……口にするとなんとなく分かるだろ」
「なら、なぜ申し出なかった」
「なぜって……そりゃ、食べられるんだったら、なんだって良いだろ」
実際食べてはいけないものだったらしいのだが。ジャスパーは信じられないと言う顔をして言葉を詰まらせて、数秒後に毒味もろとも……などと呟いている。
「お前……元の世界はどんな世界だったんだ」
「言う必要があるのか?」
「当然だ。今回の事件に関わると思え」
「……」
そう言われ渋々前の世界の話をはじめた。
自分が元いた世界は、戦争の絶えぬ世界であった。二同盟間の争いと、そこに聖地を取り返さんとする別の勢力、所謂新生十字軍のようなものが割って入ったという三つ巴の状態であり、文明が崩壊寸前になるまで追い詰められていた。負けを認めると国ひとつが解体されかねない、そんな結末が目に見えていたがため戦争は泥沼化しており、新生十字軍を協力して追いやるどころか上手く使役して敵国を滅ぼそうとし、より悪化の一途を辿っていた。何の罪もない大人が死に、未来を生きようとしていた子どもが死に、このまま戦争を続けて一体何が残るのか甚だ疑問だった。
自分はその世界では傭兵として生きていた。当然いつだって食べ物は枯渇していたのだから何だって口にしてきた。傷んでいるくらいならラッキー。必要なものは食べ物と水と、武器、それだけだ。
「身体中にある痣はその戦争でできたものなのか?」
服装が倒れる前の物から変わっていた。その時に身体を見たのだろう。
「当たらずといえども遠からず」
それ以上は語らなかった。いいや、語れなかった。
「……お前が元の世界での影響か、毒に耐性を持つことはわかった。慢心して傷んでいるものを口にし続けていたということも……我が邸宅に傷んだ物どころか食卓に出すことを禁止している物を食事として出す、愚か者が存在するということも……」
その最後の一言の声音が明らかにどす黒いものとなっており、随分様子がおかしい。まるで封じ込めていた獣を呼び起こしたかのようだ。彼は「事情も知らずにすまなかった」と言って立ち去った。
クロムから聞いた話だが、この邸宅の料理人とメイド、毒味係、執事長以外の執事がたったの3日で総入れ替えとなったそうだ。自分のためにやってくれたのか、ジャスパー自身のためにやったのか、レピの心傷の対価としてやったのか定かではないが、以前と比べ明らかに対応が改善されていた。クロムも俺のことを名前で呼ばず、奥様と呼ぶようになってしまったし、謝罪まで寄越してきた。その中最も安心できた点といえばレピに執着していた使用人も解雇されたという話だ。あの異様さばかりは侮れなかったため、倒れてよかったのかもしれない。
以前と打って変わって慌ただしく動く使用人たちを玄関でじっと見つめていると、カルセドが話しかけてきた。
「もう全快したのですか、オクサマ」
「カルセド、やめてくれ」
彼は俺が嫌がるとわかっていて奥様と呼んでいる節がある。
「そうは言ったって……」
「ジャスパーのあの行動は何を原理にしてるんだ」
「さぁ。ただ、奥様が今までの癇癪女とは違うってのは隊長も理解してるから、あんまりにも何も求めない奥様の代わりに隊長が動いたんじゃないんですか?」
「今までのってどんな人だったんだ?」
「そりゃ酷いもんですよ。奢侈の限りを尽くして気に入らないことがあれば物や使用人に当たり散らす。そんなんばっか。レピド様にまで手を上げていましたよ。それに比べりゃ奥様はむしろどうやって生きてるのか分からんくらいの清貧家ですよ」
「金がそんな人間を生むのか?金なんて国家が終わればただの紙切れになるのにな」
「……全く、どんな人生を送ってきたのか」
しばらく使用人たちを見ていると、レピがこちらに近寄ってきた。
「師匠!」
「レピ。体に異常はなかったか?」
「僕は大丈夫です!それより師匠のお身体の方が……」
「俺はこの通り回復している。明日には訓練を再開する」
「本当ですか!」
「ああ」
レピの頭を撫でてやると嬉しそうに微笑んで撫でられている。このように素直な子だというのに暴力を振るうとはいったい何が不満なのだろうか。レピはひとしきり撫でられて授業部屋へ向かった。訓練は午後からだそうだ。レピがこの場から離れたことを確認してカルセドは小声で問いかけてきた。
「奥様はレピド様のこと、邪魔だと思わないのですか?」
「思わない。それは前の奥様がそう言ったのか?」
「言ってませんけど、あの態度から思っていたでしょうね。前妻との子なんてそういうもんですよ」
「俺は別の世界から来たし、俺自身結婚したこともなければ子どもがいたことも無かったからその感覚はよく分からない」
「生存戦略なんですよ」
「生存戦略……?」
カルセドは話を続けた。
「この世界は爵位ってのがある。爵位は権力の象徴とも言えるから、それを継げなかったら生活は一変する。で、それは大概が世襲制なんです。自分の子が継げなかったら今まで育んできた社交界的立場、実家での立場、その全てが陥落するみたいなもんですよ。追い出されるんじゃないかって不安に思うんです」
「レピが陥落の原因になるのか?前妻との子だから」
カルセドは静かに頷いた。どうも格式や旧習を重んじる世界のようだ。それによって苦しんだ女性が多かったのではないだろうか。
「心配するな、その話を聞いたからと言って今更レピへの態度を変えたりしない」
「フッ、そう言いそうな気がしてましたよ」
「試すようなことをするな」
態度どころか、そもそもレピが大きくなったらこの邸宅を出ようと思っているというのに。時々国のために使徒の力とやらを使って、レピに手紙を書いて、自由気ままに過ごせば良いではないか。
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