伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ

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第一章

護衛実習②

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 「魔物だー!」

 俺たちはすぐさま武器を握って、停車した馬車から飛び降りた。

 外を走っていた3人とユーリの視線を辿ると、森を背に、俺たちのいる街道に向かって斜めに走ってくる魔物の一団がいた。


 ゴブリンとオークが数匹ずつ。

 商人にとっては脅威だろうけど、俺たちにとってはただの足の生えたお金兼息抜きの相手だ。 

 アルフレッドが笑みを浮かべる。
 
 「丁度いいな、移動ばっかで疲れてたんだ」

 来てくれてありがとう!
 
 

 向かってくる集団に矢と魔法が続けざまに飛んでいって数を減らしていく。

 そこに俺たち前衛組が突撃すれば、決着はあっという間だった。
 
  
 「いやー、いい気晴らしになったぁ」

 3人パーティーのうち、剣を持って一緒に突撃した1人が晴々とした表情でそう言った。

 「ずっと走らされてたもんな」
  
 俺が笑いながら頷くと

 「ああ、ほんと。なんだよ「おや、全員乗れませんねぇ...」って!100パーわざとだろ!」
 
 「ほんとにそれ!こんなこともよくあります?ねえよ!ってね......あ」

 まずい...
 
 そう、俺は不本意ながらグレゴリーにみっちり教え込まれたのだ。

 教官の愚痴を言えば最期、大抵背後に本人が瞬間移動してきて楽しいお話(肉体的)をするハメになるということを......!

 冷や汗を流しながら恐る恐る振り返ると、ユーリはなにやら依頼主と話をしていた。

 危なかった......

 「ふっ」

 ホッとしながら振り返ると笑われた。
 
 
 「俺はエルリック。名前は?」

 「イルベだ、よろしく!お前のことは知ってるよ、あそこの弓使いと一緒によくゴリラに晒し首にされてるだろ?」

 イルベもあの授業一緒に受けてたのか...よし、次はこいつも巻き添えにしよう!!

 次の授業が楽しみだ。

 「ん?なんか嫌な予感するんだけど」

 「ソウカナ?」

 絶対気のせいだよ!
 
 このイルベの予感は直後、違う意味で的中することになるのだが......


 「おーい、魔石取るの手伝ってくれー」

 「「あ、忘れてた」」

 



 「ゴアァァァァ!!」

 魔石の回収が終わり馬車に乗り込もうとしたところで、凄まじい咆哮が轟いた。

 見れば、今まさに巨大な熊が森の木を殴り倒しながら姿を現した。

 「フレンジーベアですね。さっきの一団はアレから逃げてきたのでしょう」

 教官のユーリが平坦な声で言う。
  
 その熊は凶悪な顔をさらに獰猛に歪めると、俺たち目掛けて猛烈なスピードで駆け出した。
 
 瞬く間に距離を詰めてくる。

 「び、Bランクじゃないか、それも上位の...!?」

 「むむ無理ですよあんなの!!」

 「の仕事は依頼主を護衛することですよ?早く武器を構えなさい!」

 「なっ...そんな......」

 手伝う気は無いというユーリの言葉に、イルベたちの顔からサーッと血の気が引いていく。

 魔物との距離はどんどん縮まり、もう3、40メートルだ。


 俺はアルフレッドと目配せし、互いに頷いてから、

 「フランツ、行くぞ。エマも援護よろしく!」
 
 そう言って走り出す。
 
 「え!?あぁもう、わかったよ」

 「気をつけてください!」

 
 熊の魔物と戦うのは初めてで、普通に───というほどでもないけれど、ちょっと怖い。

 だだそれよりも、なんというか。

 めっちゃワクワクする......!

 頬が緩むのを自覚しながら疾走し、フレンジーベアとの距離をどんどん詰めていく。

 

 奴が攻撃に移ろうとしたその時、アルフレッドの矢が俺の体を通り越して巨熊の顔に飛んでいった。

 巨熊はそれをわずわらしそうに前足であっさりと弾いたが、俺はその一瞬の隙に斬りかかった。

 ミスリルの鋭利な刃はいとも容易くフレンジーベアの前足を切断し、野太い悲鳴があがる。

 「ゴアアアア!」

 残った前足を叩きつけてくるが無理な体勢で威力が乗っていないため簡単に受け止めることができ、フランツの槍が完全に隙だらけとなった肩を抉った。

 「ナイス、フランツ!」

 怒り狂ったフレンジーベアは再び咆哮すると後ろの二本足で立ち上がったが、そこでエマのストーンバレットが顔面に命中してよろめいた。

 大きく踏み込んでから跳躍し、首を斬り飛ばす。


 『レベルが上がりました』

 よし!


 「おつかれ様、相変わらずすごいなエルは」

 「ありがとう、けど一人だったら絶対こうはいかないよ」



 アルフレッドとエマが駆け寄ってくる。

 「楽勝だったな」

 「あっという間でしたね!」

 「うん、二人とも助かったよ」



 素材を回収してから馬車に戻ると、イルベは興奮気味に「すげー!」と言ってきて、依頼主の商人はめちゃくちゃ嬉しそうに感謝してきた。


 なんでもフレンジーベアと遭遇して生きて帰っただけでも、商人の間では武勇伝になるくらい厄介な魔物だったらしい。

 Bランク上位であるフレンジーベアを倒せるほどの護衛を雇うのは難しいし、かといって逃げるのも足が速くて絶望的なんだとか。

 そういう魔物は"マストダイ"なんて言われて恐れられているらしい。


 そ、そんな呼び名聞いたら急に怖くなってきた......!











 
 






 
 
 

 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
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