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第二章
救助隊
しおりを挟む一人の騎士がエルリックのいる野営地に駆け込んだ、その数時間前。
森に派遣された30名の騎士を束ねる隊長・ゼルスは、判断に迷っていた。
その理由は。
─── ダンジョンに入った冒険者たちが戻って来ない。
彼らの任務は、ダンジョンの入り口近くに作った野営地を魔物から守ることであった。
冒険者たちはそこを拠点として、崩落トラップによって下層に落とされた"疾風の狩人"らの捜索を行うという体制だった。
彼らは早朝からダンジョンに入り、夕方頃には戻って来る。
けれど、今日は日が暮れる頃になっても帰ってこなかったのだ。
待つべきか、あるいは捜索隊を送るべきか......。
内部で何かしらのトラブルがあり帰還できないのだとすれば、待っていることは何の解決にもならない。
かといって、ダンジョンでの活動は騎士の得意とするところではなく、それにおいては冒険者の方が遥かに優秀である。
だからこそ、彼らのサポートを任務としていたのだ。
そんな冒険者たちが打破できぬほどのナニカがあるのだとすれば、騎士を送り込むことは被害を拡大させることに繋がりかねなかった。
それこそ、件の崩落トラップなどに巻き込まれでもしたら最悪だ。
悩んだ末、結局ゼルスは10名の捜索隊を捻出して送り出すことにした。
しかしそうして手薄になった野営地に魔物の群が来襲したのであった─── 。
(ここを放棄して撤退すればダンジョン内の者たちの退路が絶たれることになる)
瞬時にそう判断したゼルスは、
「死守しろ!何としても守り抜くんだ!」
と部下たちに命じるのと同時に、足の速い一人の騎士を森の外へと走らせた。
森の外の野営地までは徒歩で4時間の距離である。
(走ったとして、往復で2時間はかかるだろう。俺たちだけで捌ききれる数ならいいのだが...)
実際は、その騎士はわずか30分程度で森を走り抜けた。魔物が蔓延る真っ暗な森の中を、である。仲間たちを救いたいという一心だった。
~~~~~~~~~~~~~~
ポーションによって回復した騎士の先導のもと、俺たちは森の奥を目指して走った。
拠点には最初限の戦力を残し、30名もの戦力で向かう。
しかもその全員がギルドから直接、依頼を持ちかけられるほどに優秀な冒険者だ。
それを思うと心強かったし、ちょっぴり、自分がその中にいることが誇らしかった。
道中の木々には、何やら薄く発光する印が付けられていた。
道理で迷わずに進めるわけだ。
(蛍光ペンみたいなものか?そういう道具は見たことなかったな)
とはいえ注意して見なければ気付けない程度のものなので、走りながらでも見落とさないことに感心する。
時々木の根に足を取られて転びそうになりながら、ぼぼ全力疾走のペースで走り続ける。
やがて息が上がってきた頃。
───......!
人の叫び声が聞こえた。
皆が気合いを入れるのがわかった。
自然と全身に力が入り、一団の足が速くなる。
焚き火の明かり。
それに淡く照らされるのは、人と、それに襲いかかる魔物の姿。
先頭の騎士が叫び、一団のリーダーが声を上げる。
「増援です!加勢します!!」
「突撃する!火魔法は使うなよ!」
「「おう!」」
俺たちの声が何重にも重なり、胸の奥から高揚感が湧き上がってくる。
こちらに気が付いた彼らの顔が明るくなり、向こうの士気も上がったのが伝わってきた。
剣を抜き放ち加速する。数人を抜き去る。
「あんま突っ走んじゃねぇーぞ!」
背中にビューラーの声を受け、ニヤリと笑う。
─── 無理そうだそれは
「うおおおお!」
俺は雄叫びを上げ、魔物の群れへと身を踊らせた。
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