魔法仕掛けのルーナ

好永アカネ

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フリード編

フリード・シアン3

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 それはそうと……
「ルーナ?」
 もう一度、声を大きくして呼びかけてみたが、聞こえてくるのは雨音だけだった。
 ルーナは呼べば必ず返事をするか、そばまでやって来る。そのどちらの気配も無いということは、僕の声が届く範囲にいないか、その場を離れられない事情があるのだろう。
 やれやれ、またどこかで立ち往生しているのかな?
 僕は廊下へ出て、もといた部屋のドアを閉じる。そこで周囲を見回してみたが、人影はなし。
 キッチンを使っているのかも。と思ったが、いない。リビングにも、寝室にもいない。
 そうだ、洗濯物はどうなっている?
 いつも置いている場所を見に行ったら、ちゃんと籠の中に入っていた。以前、雨が降ったら晴れるまで溜めておいていいと僕が言ったからだろう。今日は思考のループにはまらずに済んだようだ。
 家中見て回ったが、ルーナはいなかった。玄関に雨具が残っていたので、街に出かけたとは考えにくい。となると——
「研究所に行っているのかな?」
 研究所、と呼ぶと立派だが大したことはない。ただの小屋だ。家のすぐ隣に立ててあり、屋根付きの廊下を通って行き来することができる。家でも街でもなければ、そこにいるとしか考えられない。
 行ってみよう、と体の向きを変えた途端、目眩がした。僕はふらついて壁に寄りかかった。
 どうも最近こういうことが多い。ひどい時は転倒してしまう。歳のせいだろうか……。
 僕は一旦眼鏡を外して、目頭をもんだ。ゆっくりと深呼吸をする。ぼうっとしている間はじっとしているに限る。

 短い廊下を抜けて研究所のドアを開くと、土と草の青臭い匂いが溢れ出した。僕が集めた、このあたりで採れる野草や薬草の匂いだ。
 ルーナはすぐに見つかった。
 彼女はドアに背を向けて、いくつかあるうちの一つの作業台の前に立っていた。何やら手を動かしている。
 家でやれないような仕事を頼んだ覚えはないのだが? はて……
 僕は——無意味だが——こっそりと足音を忍ばせて彼女に近付いた。真横で立ち止まってみたが、彼女はこちらを見ようともしない。
 彼女の傍らには、探していた僕のハンカチが山と積まれていた。やはり彼女が持ち出していたのだ。作業台の上には他にも、僕が摘んできて、必要な部分だけちぎって捨てた草花の一部や、収穫物をまとめておくのに使う紐などが置かれている。
 肝心の彼女が何をしているかというと、一枚ずつ山から取り上げたハンカチに少量の草花の破片を包み、ハンカチが広がらないように紐で結ぶ。さらに、丸く膨らんだ部分にペンで二つの丸い点と一本の線を書き入れる、という作業を黙々と繰り返しているのだった。
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