前略、神です。

好永アカネ

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おまけ:みんなの女神ばあちゃん

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 俺は佐々木タカシ、40歳だ。「たかちん」というペンネームで同人活動を始めてかれこれ20年ほどになる。
 今年も無事にコミケにサークル参加することができた。
 隣のスペースでは「つぶあん」さんが設置準備をしている。長年活動しているとジャンルが変わることが多々あるが、つぶあんさんとは不思議とその度に一緒になる。毎年挨拶する程度であまり多くの言葉を交わしたことはないけれど、俺は彼のことを戦友のように感じていた。

 一般参加者の入場時間になった。周囲が慌ただしくなる。
 毎年閑古鳥を鳴かせている俺とつぶあんさんは涼しい顔をして、まぁ楽しもうやと無言で微笑みあった。
 しばらく人の波を眺めていたら。彼女がやって来た。
「また会ったねたかちん。元気そうだね」
「こんにちはおばあちゃん」
「おやまた隣なのかい、つぶあんちゃん」
「こんにちは」
 話しかけてきたのは80歳くらいに見えるシワシワの老婆だ。足腰が弱っている様子はなく、年寄り臭くも若作りにも見えない自然な身なりをしている。
 彼女は俺が同人活動を始めて間もない頃から俺のことを気にかけてくれている(どうやらつぶあんさんも同様の付き合いのようだ)出会った頃から見た目がほとんど変わっていないが、一体本当は何歳なんだろう?
「はい、差し入れだよ。今年も頑張りな」
 彼女は凍らせたペットボトルを俺とつぶあんさんに差し出した。俺はオレンジジュース、つぶあんさんはグレープジュースだ。若い頃好きだったものを今でも覚えていてくれている。
「おばあちゃんいつもありがとう。これ、僕の故郷のお菓子。よかったら食べて」
「おや悪いねぇ。帰ったらいただくよ」
 あ、ずるいぞつぶあんさん。俺も何か用意しておけばよかった。どうして今まで思いつかなかったんだろう。
 俺は焦ってカバンに手を突っ込み、最初に手に触れたものを取り出した。それはゲームセンターでゲットしたまま入れっぱなしにしていたリスのキャラクターのぬいぐるみだった。
「おばあちゃん!こんなのしかないけど、よかったら…」
「可愛いお人形だね。うちのジジイが喜びそうだ。ありがとう」
 よかった。受け取ってくれた。俺はホッとして顔が緩むのを感じた。

 彼女は俺とつぶあんさんの新刊を購入して去っていった。
 彼女の背中を目で追っていると、彼女はゆっくりと会場内を歩きながら何度も立ち止まり、たくさんの人に話しかけていた。
 つぶあんさんがポツリとつぶやいた。
「来年も会えるといいですね」
「…そうですね。きっと会えますよ」
 来年は俺もお菓子を持ってこよう。だからおばあちゃん、元気でね。
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