175 / 195
#175 夢日記の著作権に
しおりを挟む
僕は、夢日記を十年以上書き続けている。
最初はただの記録だったが、あるとき出版社がそれを目に留め、「無意識からの文学」として出版された。売れた。バカみたいに。
以来、毎晩が勝負だ。
どんな夢を見てもいい。バカバカしいほど突飛でも、深刻すぎるほど重苦しくてもいい。とにかく“売れる夢”を見なくてはならない。
夢の中でシナリオを書き、演出し、時には出演もする。夢の中の自分は、もう脚本家兼プロデューサー兼主演俳優だ。
しかし最近、どうもおかしい。
自分が夢の中で書いたストーリーが、翌朝、夢日記に書こうとすると、思い出せない。断片すらも。
代わりに、見覚えのない夢が、記憶にくっきりと残っている。
ストーリーも設定も、どこか“自分っぽくない”。悪くない、むしろ秀逸だ。だから書き留める。書いてるうちに、「自分よりうまいじゃないか」とすら思う。出版すれば、これがまた売れる。文壇も絶賛だ。
ある晩、夢の中で誰かに会った。顔はぼやけていたが、声ははっきりしていた。
「君、勝手に使ってるよね? 私の夢。」
「え? これは僕の夢日記で……」
「いや、君が寝たあと、私は君の夢に忍び込んで、こっそり上映してただけ。勝手に記録して売るの、著作権侵害だから。」
目が覚めると、枕元に一枚の紙があった。
《使用料請求書:夢使用権 10夜分=¥280,000(税抜)》
慌てて編集者に電話した。
「おかしいんだ、僕の夢じゃないかもしれないって……」
編集者は笑った。
「問題ないよ。夢の著作権? そんなの、証明できる人いないから。」
安心したような、不安になったような。
その夜、僕はまた眠りについた。
誰の夢かは分からないけど、次回作のプロットは完璧に仕上がっていた。
それは、その夢が他人の夢であると証明する内容だったという……。
最初はただの記録だったが、あるとき出版社がそれを目に留め、「無意識からの文学」として出版された。売れた。バカみたいに。
以来、毎晩が勝負だ。
どんな夢を見てもいい。バカバカしいほど突飛でも、深刻すぎるほど重苦しくてもいい。とにかく“売れる夢”を見なくてはならない。
夢の中でシナリオを書き、演出し、時には出演もする。夢の中の自分は、もう脚本家兼プロデューサー兼主演俳優だ。
しかし最近、どうもおかしい。
自分が夢の中で書いたストーリーが、翌朝、夢日記に書こうとすると、思い出せない。断片すらも。
代わりに、見覚えのない夢が、記憶にくっきりと残っている。
ストーリーも設定も、どこか“自分っぽくない”。悪くない、むしろ秀逸だ。だから書き留める。書いてるうちに、「自分よりうまいじゃないか」とすら思う。出版すれば、これがまた売れる。文壇も絶賛だ。
ある晩、夢の中で誰かに会った。顔はぼやけていたが、声ははっきりしていた。
「君、勝手に使ってるよね? 私の夢。」
「え? これは僕の夢日記で……」
「いや、君が寝たあと、私は君の夢に忍び込んで、こっそり上映してただけ。勝手に記録して売るの、著作権侵害だから。」
目が覚めると、枕元に一枚の紙があった。
《使用料請求書:夢使用権 10夜分=¥280,000(税抜)》
慌てて編集者に電話した。
「おかしいんだ、僕の夢じゃないかもしれないって……」
編集者は笑った。
「問題ないよ。夢の著作権? そんなの、証明できる人いないから。」
安心したような、不安になったような。
その夜、僕はまた眠りについた。
誰の夢かは分からないけど、次回作のプロットは完璧に仕上がっていた。
それは、その夢が他人の夢であると証明する内容だったという……。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる