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先輩、ここにサインしてください!
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「宅配便でーす」
「嘘つけ」
私はインターフォン越しに先輩に愛を囁く。カメラ付きだからか、それとも声が私のものだったからか。一瞬にしてバレてしまう。
ここはやっぱり黒猫のコスプレでもしてにゃーとでも鳴けば良かったのだろうか。それで本題。
「チョコと私、どっちが良いですか?」
「どっちもいらん」
スピーカーから聞こえてくる大好きな声。いつもならこれだけで大満足なのだけれど、今日はそういうわけにもいかない。だってバレンタインデーだから。
というかどちらかを受け取って貰うまで帰れない。
「受け取り拒否をする場合には、こちらの書類にサインをお願いします!」
私はカバンの中から一枚の紙を取り出し、カメラの向こうにいるであろう先輩に見せつける。
「ちょっと待って、それにサインと実印捺したら一生ここに住み着くでしょ」
そう。彼女に見せたのは正真正銘婚姻届である。妻になる人の名前と実印以外は、証人二人のサインも含めて全て書いてあるやつ。
「ちぇー。バレちゃいましたかそうですか。ならこっちで勝手に捺しちゃいますよ?」
最終手段こと実印のレプリカを胸ポケットから取り出す。本当はこんな手段には頼りたくなかったけれど、先輩が応じてくれないなら仕方がない。
「なんでお前が私の実印持ってるんだよ……あと、書くとしても新郎新婦が逆でしょうが」
先輩がぽろりと本音をこぼしてしまう。やっぱり私のことは好きということで。
「おーっ、好きってこと自体は認めてくれるんですね! やったー。というわけで結婚しましょう」
つまり相思相愛ということで。先輩と一生添い遂げる覚悟ならばもう決まっている。
「結婚なんて認めてない……けど。とりあえず現段階で婚姻届にサインされるのは嫌だから、チョコだけは受け取ってあげる。ポストに入れといて」
「むぅ。先輩は宅急便のことわかって無さすぎなんです。別に宅急便じゃなくてレター●ックプラスでも良いんですけど」
もっともらしい理由をいくつか並べて、先輩のご尊顔を拝むための理論を組んでいく。いや、論理的でもなんでもない屁理屈なのだけれど。
「はぁ……直接受け取れと」
「その通りですっ! ものわかりの良い先輩で助かります!」
インターフォンからの声が途切れ、部屋の中から慌ただしい音が聞こえてくる。もしかして先輩、下着一枚だったのだろうか。
金曜日の昼間から大胆だなと思いつつ、私は前髪をいじる。
「……お待たせ」
五分くらい経ったあと、玄関が外側に開く。ニットのセーターにデニム地のズボン。そこに立っているのは普段着の先輩。
「先輩、もしかして欲求不満なんですか? なんだかエロい香りがします」
「エロい香りってなんのこと?」
「さて、なんのことでしょうね? はい。ハッピーバレンタインですよ、先輩。受け取った証にここにサインをお願いします」
私はハート型の箱に入ったチョコと黒のボールペンを先輩に渡す。
「……これ、さっきの婚姻届よね?」
「あっ、バレちゃいましたか」
「嘘つけ」
私はインターフォン越しに先輩に愛を囁く。カメラ付きだからか、それとも声が私のものだったからか。一瞬にしてバレてしまう。
ここはやっぱり黒猫のコスプレでもしてにゃーとでも鳴けば良かったのだろうか。それで本題。
「チョコと私、どっちが良いですか?」
「どっちもいらん」
スピーカーから聞こえてくる大好きな声。いつもならこれだけで大満足なのだけれど、今日はそういうわけにもいかない。だってバレンタインデーだから。
というかどちらかを受け取って貰うまで帰れない。
「受け取り拒否をする場合には、こちらの書類にサインをお願いします!」
私はカバンの中から一枚の紙を取り出し、カメラの向こうにいるであろう先輩に見せつける。
「ちょっと待って、それにサインと実印捺したら一生ここに住み着くでしょ」
そう。彼女に見せたのは正真正銘婚姻届である。妻になる人の名前と実印以外は、証人二人のサインも含めて全て書いてあるやつ。
「ちぇー。バレちゃいましたかそうですか。ならこっちで勝手に捺しちゃいますよ?」
最終手段こと実印のレプリカを胸ポケットから取り出す。本当はこんな手段には頼りたくなかったけれど、先輩が応じてくれないなら仕方がない。
「なんでお前が私の実印持ってるんだよ……あと、書くとしても新郎新婦が逆でしょうが」
先輩がぽろりと本音をこぼしてしまう。やっぱり私のことは好きということで。
「おーっ、好きってこと自体は認めてくれるんですね! やったー。というわけで結婚しましょう」
つまり相思相愛ということで。先輩と一生添い遂げる覚悟ならばもう決まっている。
「結婚なんて認めてない……けど。とりあえず現段階で婚姻届にサインされるのは嫌だから、チョコだけは受け取ってあげる。ポストに入れといて」
「むぅ。先輩は宅急便のことわかって無さすぎなんです。別に宅急便じゃなくてレター●ックプラスでも良いんですけど」
もっともらしい理由をいくつか並べて、先輩のご尊顔を拝むための理論を組んでいく。いや、論理的でもなんでもない屁理屈なのだけれど。
「はぁ……直接受け取れと」
「その通りですっ! ものわかりの良い先輩で助かります!」
インターフォンからの声が途切れ、部屋の中から慌ただしい音が聞こえてくる。もしかして先輩、下着一枚だったのだろうか。
金曜日の昼間から大胆だなと思いつつ、私は前髪をいじる。
「……お待たせ」
五分くらい経ったあと、玄関が外側に開く。ニットのセーターにデニム地のズボン。そこに立っているのは普段着の先輩。
「先輩、もしかして欲求不満なんですか? なんだかエロい香りがします」
「エロい香りってなんのこと?」
「さて、なんのことでしょうね? はい。ハッピーバレンタインですよ、先輩。受け取った証にここにサインをお願いします」
私はハート型の箱に入ったチョコと黒のボールペンを先輩に渡す。
「……これ、さっきの婚姻届よね?」
「あっ、バレちゃいましたか」
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