地球少年ハマオ

祥一

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 はあ、それにしても学校ってなんで毎日いかなあかんねやろ。勉強やったらうちでむりやり、いっぱいさせられてるっちゅうねん。
 さいわいやったのは、べつにあれから、ものかくされたり、給食にツバはきかけられたり、どつかれたりみたいないじめにはあってへんことや。
 だれもはなしかけてこうへん。ぼくなんか空気みたいなもんやね。ん?それがいじめなんやろか。まあ、しゃべられんでええからずっとこのままが、らくでええわ。
 と思っててんけど、エル姉ちゃんがむちゃくちゃゆうてきよってん。友だちをつくれ、やて。
 アホか、できるかいな、とぼくは例によって首をぶんぶんよこにふってんけど、ほっぺたを両手でぎゅっとはさまれて、ぶんぶんを阻止された。
「ラガタ語がじょうずになるには、人といっぱいはなすことが一番よ。それにあんた、この星になじむつもり、ないんじゃない?そういうのって、むかつくんですけど」
 きれいな人っちゅうのは、キレるとおそろしいもんや。
「ね、だから、友だち、つくるの。かんたんじゃない、あんたわるい子じゃないんだから、おねがいします!友だちになってください!って頭さげて右手をさし出せば、むこうで、ごめんなさい、って勝手にいってくれるから。それをいろんなところでくりかえすの」
 ええ、なにそれ、めっちゃむずかしそう。ぼく、ことわられたら、ふつうにきずつくんやけど。
「うまくいったら、うちにつれてくるのよ。わたしがまともなやつかどうか、判定してあげる」
 なんちゅうかこの人、弟ができたんがうれしゅうて、はしゃいでんねやろう。これやから一人っ子は。ぼくかてやけど。
 うーん、そんなわけでぼくは教室のすみで、よさそうなんがおらんか、うかがってたんや。
 とりあえず、となりの席のヌタはやめとこう。鼻たれ小僧やし。いや、それはええねんけど、こいつ用があるとき以外ずっと無視してきよんねん。もうすでに、チャンスやったのにそれを見のがしたっちゅうことで、こっちからおことわりや。
 あとなあ、初日に学校を案内してくれた学級委員のコソン。こいつやったら、例のおねがいします!ちゅうて頭さげるやつやったったら、よろこんで!とかいいそうな気ぃするけど、あんま好きやないねんよな。優等生ぶってんのが鼻につくとゆうか、ぼくとはまったくべつの種類の人間っちゅう感じがする。はなしもあわんやろ。
 てゆうかぼく、男子ってにがてやねん。地球でもなんかいつも仲間はずれにされてたし、けんかになったら勝てそうにないし、頭の中で勝手に「こいつには負けん」っちゅうて競争し出すようなとこが気にくわん。
 ほんなら女子はどうや。とおい記憶をさぐってみると、地球でぼくのただ一人の友だちやったお絹ちゃんがおったやないか。あの子はすばらしかった。やさしくてかわいらしくて、自分のおかしをわけてくれたこと、ぼくはずっとおぼえてるねん。五歳のときにどっかへひっこしてから、一度もおうてへんけどな。
 ただそれがあるから、ぼくは男子よりも女子のほうがなれてる、とゆえるんとちゃうやろか。ぼくってほら、鏡で見るとわりかしええ顔してるみたいな気が、ちょっとだけするとゆうか。親戚のあの人らかて、ぼくのことかわいいって、初対面のときゆうてくれたような記憶がある。だからそのかわいさを前面に出して、女の子をひっかけるっちゅう作戦でどやろか。
 獲物は、うーん、そうゆう目で見ると、このクラスってわりときれいな子がちらほらおるような。顔は青くてもそろそろ見なれてきたし。
 一番ええのはあの人気者で美人、明るくて勉強とスポーツが得意なカノンちゃんやけど、あの子はクラスの男子全員がねらってる気がするからむりやな。てかぼくなんか論外やろ。
 むしろかわいくない子のほうが、気がるに声かけられるかも。そやな、人気ない子のほうがええわ。いつも一人でおるようなんやないと、そもそもはなしかけるチャンスないもん。
 となると、うーん、あの子かなあ。
 名前はトミ。いつもクラスのはじっこで、本読んでるメガネの子。ずっとおかしな、アニメとかゲームのわるものがのってるような、地球では見たことないのりものにすわってる。あれ移動するとき、空中にういてるように見えるねんけど。
 そうゆう意味ではめちゃくちゃ目立ってんのに、だれもあの子にはなしかけへん。空気みたいな存在とゆうところは、ぼくといっしょで、共感が持てるっちゅうか。
 それにおとなしそうやから、おねがいします!ってやっても、少なくともなぐりかかってはこうへんやろうし、わる口は心の中でとどめてくれるんとちゃうか。いや、わからんけど。
 ああ、どうかな。一人もチャレンジせえへんかったら、エル姉ちゃんにしばかれるかもしらんしな。でもなんちゅうて声かけたらええんやろ。
 そんなふうにかんがえながら、ぼくはトミの後ろをついてまわるようになった。気づいたら女子トイレの前にいて、はじかいたこともあってん。
 昼休み、クラスのみんながグラウンドで、ヘッジボールとかゆう凶悪なたまあそびをたのしんでいるころ。
 トミははしっこの木のかげで、いつもどおり読書にいそしんでたんや。ぼくはほら、そのちょっと後ろのほう、棒が地面にいっぱいつきささってる謎の遊具のかげで、彼女のことをうかがってた。
 いつまでもこんなんしてられへんのはわかってる。この星って地球よりだいぶ暑くるしいし、追いかけてるときはよくても、彼女がじっとし出すと、することがなくてひまやねん。
 頭の中でラガタ語の復習でもやるか。てゆうか、最初になんて声かけるか、きめとかんとあかんねやった。アニメとかやと、「やあ、すてきな髪形だね」みたいな感じでさわやかにほほえむんが定番とちゃうか。ぼくにできるかなあ。
 そんなふうに空想の世界にいっちゃっていると、風景がちょっとかわった。ぼくはトミの後ろすがたを見つめていたつもりが、いつのまにか顔がこっちをむいてるような。ほんでにらまれているような。なんやこれ。
 あっ、にげなあかんときや。ぼくははしり出そうとかまえたところ、すごいスピードで例ののりものが、ぼくのゆくてをはばんだ。
「なにやってるの?」トミはそうゆった。けっこうかわいい声してんねんな。
「あっ、あっ、あっ、あのー、えっとー……」
「なんでずっとわたしのこと、追いかけてくるのかしら」
「えっと、あの、髪形が……いや、本が、あのー」
「本?」すっごい不審そうな目つきで見つめてくる。
「本が読みたかったらさ、自分でどこかから持ってくればいいでしょ。もう二度とついてこないで。つぎは警察よぶから」
 そういいすてて、トミはさっていった。友だち作戦は失敗や。
ぼんやり後ろすがたをながめていると、Uターンでひきかえしてきた。
「はあ、しょうがないわね。図書室っていうものがあるのよ。あんた転校生だから知らないんでしょ。案内してあげるわ。今回だけよ」
 なんか知らんうちにかんちがいしてくれたらしい。まあ、おこられへんねやったらなんでもええわ。
 図書室なんか、初日に学級委員のコソンにつれられて、場所くらいわかってんねん。でもそのことをトミは知らんから。とにかくピンチをだっしたことをよろこぼうやないか。
 グラウンドから校舎の四階のすみまでは、けっこうかかる。こんな文明の発展した星で、エレベーターもないんはどないなってんねん。トミはそのおかしなのりもので、ウインウインって音を鳴らしながら、すっすと階段をのぼってゆく。
 あっ。ぼくは気づいた。トミはあるかれへんねや。
「おそいわよ。はやくついてきなさい。休み時間おわっちゃうじゃない」
「ご、ご、ごめんなさい」ラガタ語、ぼくもこれくらいはゆえるようになってん。
 あー、しんど。階段のぼり競争をおえると、トミは図書室をゆびさしてた。
「じゃあね、もう二度とわたしにちかづかないで」そうゆってどっかへいこうとする。
 ぼくは、がっとそのおかしなのりものに手をかけた。そしたら目をつりあげてさけびだす。
「なにすんのよ!さわんないで!まだなにか用なの?」
 ぼくはぱっと手をはなし、ぶんぶん首をたてにふる。もう今しかない。手をさしだして、友だちになってください!って、ゆわな。
「あ、あ、あの、お、お……」
「はあー」とトミは大きくため息をついた。「本なら勝手にかりてくればいいじゃない。まさか、中まで案内しろと?」
「おねがいします!」ぼくは勇気をふりしぼって手をさし出した。
「わかったわよ」
 えっ、ええの?と一瞬よろこびで目をむいたところ。
「ほら、入るわよ」とトミは図書室のドアをあけた。
 ん?なんか、はなし通じてへんな。しゃあないから、ぼくはまたついていった。
 さすがに図書室とゆうだけあって、本がいっぱいならんでる。学校にこんなとこあったんやな。何人か生徒がおるけど、みんなひとこともしゃべらんと、じっと本読むか、本えらぶかしてる。たいていやかましい小学生のようすとしては、ほとんど異常に思えた。
「それで、なにが読みたいのよ」トミは聞こえんくらい小さな声でたずねる。ぼくはその口もとに耳をちかづけた。すごくドキドキしながら。ほんで彼女の耳もとでなんかゆわな。
「き、きみは、な、なに読んでた……」
「あー、わたしはこれ。H・G・ウェルズの『タイムマシン』よ」
 トミの声といっしょにもれる息がぼくの耳にかかる。すてきな気分や。ってゆうかタイムマシン?だからそんなへんなもんにのってんねやろか。
「ぼくも、それ、読みたいです」
「だめよ、わたしまだ途中なんだから。それにあんた、読めるの?SFだったら、もっと初心者むけのにしたほうがいいんじゃないかしら」
 トミはSFのたなの前までつれてってくれた。
「ど、どれが、おもしろい?」
「あんたねー」
 だってぼく、本ってあんま読んだことないねんもん。マンガは好きやけど。
「うーん、おすすめはね、これかな。小松左京の『宇宙人のしゅくだい』」
 そうゆうて一冊の本をぬき出してくれた。講談社青い鳥文庫。
「これにする?じゃあ、あっちのカウンターで司書さんにわたしてきな。ええ、もう、しょうがないわね。いっしょにいってあげる」
 なんだかんだゆうて、やさしいやん。そうこうしてるあいだに、昼休みはのこりわずかに。おんなじ教室にもどってゆくねやから、おんなじ廊下をならんでゆく。
「あのう……ありがとう」気づいたらぼくは、ちょっとはおちついてラガタ語をしゃべれるようになっていた。
「ふん、いいのよ。でも二度とはなしかけないで」
「ぼくと、友だちになってください」
 しばらくの沈黙。それからなんか爆発する音が。
「ばっ、ばっ、ばかじゃないの?だれがあんたなんかと!」
 そしてへんなのりもののスピードをあげ、ぼくをおきざりに。と思ったら、前でだれかとぶつかって、事故をおこしていた。
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