1 / 32
異世界実況、始めます
しおりを挟む
俺の名前は春野ヒカリ。
大学院を修了して今年就職したばかりの24歳独身彼女無し。
童顔で若く見られるのはいいんだけど、大学生どころか高校生に間違えられることもあるのはどうにかならないかと思っている普通の会社員。
名前だけだと男なのか女なのかわからないとよく言われる。
うん、大丈夫だ。
きちんと昔のことも思い出せるし、意識もしっかりしている。
仕事の帰りにトラックに轢かれそうになっていた子犬を助けようとして、なんとか子犬は助けることができたけど自分はそのまま轢かれて……。
ああ、もうダメだと思ったけど、どうやら助かったみたいだ。
悪運だけは自信があるんだ俺は。
『春野ヒカリさん。あなたは残念ながらお亡くなりになりました』
ですよね、分かってましたよ。
目を開けたら事故現場でも病院でもなく、ドーム状の空間の天井から床まで透明で、宇宙空間みたいなところで目の前にいかにも女神様ですって格好の女性がいるんだから。
むしろこれで死んでないって言われたらそっちのほうが驚きですよ俺としては。
『すんなりと受け入れていただけて助かります。私は数多の世界を管理する存在、メルトリーゼと申します。ヒカリさんのいた世界では、女神といったところですね』
心を読まれた? それとも顔にわかりやすく出ていたのか?
『その両方です。さて、それではさっそくですがあなたにここに来て頂いた理由をお話ししましょう』
女神メルトリーゼ――様の話によると、彼女は地球のある宇宙を含めたいくつもの世界を管理する、本物の神様らしい。しかもかなり高位の。
そして、俺たちの持つ魂はすべての世界で一定量となっていて、ある世界で亡くなった魂は死後にメルトリーゼ様の部下の部下の部下の部下の……だいぶ下のほうの神の元に召され、そこであらたな祝福を与えられ別の世界に生まれ変わり、そしていずれまた死を迎えると別の異世界へ転生する。
その際記憶は失われるらしいのだが、魂の奥に刻まれた経験は失われない。まあ、スポーツ選手が記憶喪失になっても身体は覚えているというやつに近いそうだ。
とにかく、その経験を異世界に持ち込むことによって異世界ごとに差はあるものの少しずつ発展していっていたらしい。
「でも、最近の地球の発展スピードが速すぎて、他の世界との差がだいぶ開いてしまったと?」
『はい。それに最近のライトノベルやアニメは必ずしもハッピーエンドばかりでなく、それどころかひどい目に合う作品も多くなっていますよね? それ以外にもブラック企業や格差社会で人生に絶望している方も多くて……。それで生まれ変わりを拒否する方も増えてしまい、差は大きくなる一方なのです』
昭和のころからハッピーエンドで無い話も結構あったと思うけど……デビ○マンとか……でも、確かに増えているような気はするな。
ちなみに生まれ変わり拒否を選択した場合は魂そのものが消滅し、どこの世界にも転生することはなくなってしまうらしい。
ということは、このままだと全世界での魂の絶対量がどんどん減っていき衰退し、いずれは消滅してしまうかもしれないということか?それはさすがにマズイ気がするな。
『そこで何かしら対策を立てる必要が出てきまして、その第一弾として地球の皆さんに異世界の良さをアピールしていこうということになりました。具体的にいうと、マイチューバーとして活躍していて異世界のテンプレにも詳しく、さらにトラックに轢かれた方という条件に当てはまったのがヒカリさんということですね』
「話は分かりました。でも、もし断った場合はどうなるんですか?」
『その場合は普通に転生していただくか、もしくは残念ですが魂の消滅か……。私はまた条件を満たした方がお亡くなりになるのを待つことになります』
「ちょっと待ってもらえますか? 今、普通に転生と言いましたよね? ということはメルトリーゼ様のお手伝いをすれば普通じゃない転生になるということですか?」
『ヒカリさんには、火・水・土・風・光・闇魔法の適正と魔力無限のチート能力を持っていわゆる中世ヨーロッパのような世界観の剣と魔法の世界に転生していただくつもりです。そしてヒカリさんの生活や活躍の様子をマイチューブで配信し、チャンネル登録者が増えれば増えるほどさらにチート能力をお渡しして、俺TUEEEを満喫していただければと。ああ、もちろんプライバシーには配慮いたしますし、マイチュ-ブの規約に引っかかってしまうようなあんなことやこんなことも配信はしませんのでご安心いただければと』
「魔法の使い方は?」
『ヒカリさんがイメージがそのまま魔力で形作られますので、試していただければすぐに分かると思いますよ』
「なるほど」
話を聞いた感じ、悪くない気はするな。
少なくとも新しい世界に転生するという前提なら受けたほうがいいと思う。
デメリットは顔バレしてしまうことだけど、どうせもう地球では死んでいるのだから気にする必要もないだろう。
……よし、決めた。
「分かりました。その話、受けますよ」
『ありがとうござますヒカリさん』
俺の返事に満足したのか、メルトリーゼ様の顔が優しく微笑む。
プラチナシルバーの長い髪に薄青色のドレスで微笑むその姿は、まさに女神そのものだ。
『快く引き受けていただいたお礼として、あちらの世界の言語は理解できるようにしておきますね』
そういえば俺が読んだラノベは大抵は言葉には困らない設定が多かったけど、中には言葉がわからないまま送り込まれて四苦八苦するものもあった。
メルトリーゼの目的が異世界の良さをアピールすることである以上、ある程度の利便は図ってくれるみたいだな。
『それと、相棒の美少女パートナー枠として私もご一緒させていただきますね。これからは親しみを込めてメルルと呼んでくださいね。もちろん旅の仲間になるのですから言葉遣いも気を使ったものは不要ですよ』
「は?」
『それでは、さっそく行きましょうか。異世界エランディールへ』
「いや、ちょっと……え?」
真っ白な光に包まれ足元が無くなったような感覚がしばらく続いた後、気が付くときちんと整備された街道沿いに立っていた。
メルトリー……いや、メルルと共に。
「さあ、行きましょうヒカリさん」
こうして、俺の新しい世界エランディールでの人生の幕は切って落とされた。
☆彡
異世界実況ヒカリチャンネル
チャンネル登録0人
大学院を修了して今年就職したばかりの24歳独身彼女無し。
童顔で若く見られるのはいいんだけど、大学生どころか高校生に間違えられることもあるのはどうにかならないかと思っている普通の会社員。
名前だけだと男なのか女なのかわからないとよく言われる。
うん、大丈夫だ。
きちんと昔のことも思い出せるし、意識もしっかりしている。
仕事の帰りにトラックに轢かれそうになっていた子犬を助けようとして、なんとか子犬は助けることができたけど自分はそのまま轢かれて……。
ああ、もうダメだと思ったけど、どうやら助かったみたいだ。
悪運だけは自信があるんだ俺は。
『春野ヒカリさん。あなたは残念ながらお亡くなりになりました』
ですよね、分かってましたよ。
目を開けたら事故現場でも病院でもなく、ドーム状の空間の天井から床まで透明で、宇宙空間みたいなところで目の前にいかにも女神様ですって格好の女性がいるんだから。
むしろこれで死んでないって言われたらそっちのほうが驚きですよ俺としては。
『すんなりと受け入れていただけて助かります。私は数多の世界を管理する存在、メルトリーゼと申します。ヒカリさんのいた世界では、女神といったところですね』
心を読まれた? それとも顔にわかりやすく出ていたのか?
『その両方です。さて、それではさっそくですがあなたにここに来て頂いた理由をお話ししましょう』
女神メルトリーゼ――様の話によると、彼女は地球のある宇宙を含めたいくつもの世界を管理する、本物の神様らしい。しかもかなり高位の。
そして、俺たちの持つ魂はすべての世界で一定量となっていて、ある世界で亡くなった魂は死後にメルトリーゼ様の部下の部下の部下の部下の……だいぶ下のほうの神の元に召され、そこであらたな祝福を与えられ別の世界に生まれ変わり、そしていずれまた死を迎えると別の異世界へ転生する。
その際記憶は失われるらしいのだが、魂の奥に刻まれた経験は失われない。まあ、スポーツ選手が記憶喪失になっても身体は覚えているというやつに近いそうだ。
とにかく、その経験を異世界に持ち込むことによって異世界ごとに差はあるものの少しずつ発展していっていたらしい。
「でも、最近の地球の発展スピードが速すぎて、他の世界との差がだいぶ開いてしまったと?」
『はい。それに最近のライトノベルやアニメは必ずしもハッピーエンドばかりでなく、それどころかひどい目に合う作品も多くなっていますよね? それ以外にもブラック企業や格差社会で人生に絶望している方も多くて……。それで生まれ変わりを拒否する方も増えてしまい、差は大きくなる一方なのです』
昭和のころからハッピーエンドで無い話も結構あったと思うけど……デビ○マンとか……でも、確かに増えているような気はするな。
ちなみに生まれ変わり拒否を選択した場合は魂そのものが消滅し、どこの世界にも転生することはなくなってしまうらしい。
ということは、このままだと全世界での魂の絶対量がどんどん減っていき衰退し、いずれは消滅してしまうかもしれないということか?それはさすがにマズイ気がするな。
『そこで何かしら対策を立てる必要が出てきまして、その第一弾として地球の皆さんに異世界の良さをアピールしていこうということになりました。具体的にいうと、マイチューバーとして活躍していて異世界のテンプレにも詳しく、さらにトラックに轢かれた方という条件に当てはまったのがヒカリさんということですね』
「話は分かりました。でも、もし断った場合はどうなるんですか?」
『その場合は普通に転生していただくか、もしくは残念ですが魂の消滅か……。私はまた条件を満たした方がお亡くなりになるのを待つことになります』
「ちょっと待ってもらえますか? 今、普通に転生と言いましたよね? ということはメルトリーゼ様のお手伝いをすれば普通じゃない転生になるということですか?」
『ヒカリさんには、火・水・土・風・光・闇魔法の適正と魔力無限のチート能力を持っていわゆる中世ヨーロッパのような世界観の剣と魔法の世界に転生していただくつもりです。そしてヒカリさんの生活や活躍の様子をマイチューブで配信し、チャンネル登録者が増えれば増えるほどさらにチート能力をお渡しして、俺TUEEEを満喫していただければと。ああ、もちろんプライバシーには配慮いたしますし、マイチュ-ブの規約に引っかかってしまうようなあんなことやこんなことも配信はしませんのでご安心いただければと』
「魔法の使い方は?」
『ヒカリさんがイメージがそのまま魔力で形作られますので、試していただければすぐに分かると思いますよ』
「なるほど」
話を聞いた感じ、悪くない気はするな。
少なくとも新しい世界に転生するという前提なら受けたほうがいいと思う。
デメリットは顔バレしてしまうことだけど、どうせもう地球では死んでいるのだから気にする必要もないだろう。
……よし、決めた。
「分かりました。その話、受けますよ」
『ありがとうござますヒカリさん』
俺の返事に満足したのか、メルトリーゼ様の顔が優しく微笑む。
プラチナシルバーの長い髪に薄青色のドレスで微笑むその姿は、まさに女神そのものだ。
『快く引き受けていただいたお礼として、あちらの世界の言語は理解できるようにしておきますね』
そういえば俺が読んだラノベは大抵は言葉には困らない設定が多かったけど、中には言葉がわからないまま送り込まれて四苦八苦するものもあった。
メルトリーゼの目的が異世界の良さをアピールすることである以上、ある程度の利便は図ってくれるみたいだな。
『それと、相棒の美少女パートナー枠として私もご一緒させていただきますね。これからは親しみを込めてメルルと呼んでくださいね。もちろん旅の仲間になるのですから言葉遣いも気を使ったものは不要ですよ』
「は?」
『それでは、さっそく行きましょうか。異世界エランディールへ』
「いや、ちょっと……え?」
真っ白な光に包まれ足元が無くなったような感覚がしばらく続いた後、気が付くときちんと整備された街道沿いに立っていた。
メルトリー……いや、メルルと共に。
「さあ、行きましょうヒカリさん」
こうして、俺の新しい世界エランディールでの人生の幕は切って落とされた。
☆彡
異世界実況ヒカリチャンネル
チャンネル登録0人
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる