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キャスカの居場所
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盗賊団死の牙についてギルドマスターが教えてくれたところによると、最近チャッチャカレ西側の海に繋がる街道を拠点として商隊や旅人を襲って略奪行為を働いている小規模盗賊団そうだ。
人数こそ少ないものの戦い慣れているメンバーがいるらしく、なかなか強いらしい。
その影響で塩や魚介類の流通が滞りはじめて、街の物価にも影響が出始めているとのこと。
「でも、それだけ話が広まっているなら商隊に冒険者の護衛くらいついてるんじゃないか? それなのにやられっぱなしっていうのはどうなんだ?」
盗賊団の話が広まる前ならいざ知らず、広まった後なら慎重を期する商人なら護衛を雇うはずだよな。
基本的に、指名でないかぎり護衛クエストにあたるのはCかDランクの中堅冒険者だ。オレたちはまだEランクだから護衛の仕事が回ってくることはない。
「襲われているのは、ほとんどがブルックが護衛を受けた商隊なんだ」
「どういうことだ?」
「オレたちは、奴が盗賊団に情報を流しているものと睨んでいる。だが証拠がなくて手出しができていないのが現状だ」
「なるほど」
そのブルックというやつが盗賊団と繋がっていたと仮定しよう。するとどうなるか?
盗賊団には商隊の旅程や護衛の規模、運んでいる荷の情報が筒抜けになる。
結果、奴らからすればリスクを最小限に抑えて仕事ができるというわけだ。
「ブルックは昨日も今日もギルドに姿を見せていない。もし奴がキャスカを誘拐したのだとしたら、ヒカリのことも狙ってくるかもしれん。気を付けたほうがいい」
「そうだな、分かった」
利己的な思いが遂げられそうにないと思ったストーカーがキャスカをさらったのだとしたら。
当然次に狙われるのはオレだろうな。そしてオレの親しい人物。
「メルルとミリゼットも狙われるかもしれないから充分に気を付けてくれ。オレのせいで巻き込んで悪いな」
「ヒカリさんは悪くありませんよ。気にしないでください」
「メルルの言う通りだ。それよりも早くキャスカ殿を助けに行く必要がありそうだな」
盗賊団と組んだストーカーにキャスカが何をされるか……考えただけで虫唾が走るぜ。
「ブルックの家……ということはないだろうな。ギルドマスター、盗賊団の拠点は分かるか?」
「残念ながら、西の街道の周辺にあるのだろうということくらいしか分からん。くそっ、拠点さえわかればオレ様が直接潰してやるんだが」
「ギルドマスターが出張っちゃだめだろ。あんたはここでどっしり構えててくれ。オレたちが行ってくる」
「それはありがたいが……いいのか? ブルックはあんな性格だがまがりなりにもBランク、それもAに近い実力だぞ。それに盗賊連中だっているだろう」
Bランクか。でもそれならこっちだってミリゼットがBランクだ。
ミリゼットを見ると、彼女も自信たっぷりに頷いてくれた。その時
「邪魔するぞ。ヒカリに届け物だぜ」
「タック?」
タックが、かついでいたソレを床に放り投げる。
放り投げられたソレは、縛り上げられた状態のままうめき声をあげてオレとタックを睨みつける。
「こいつはな、お前の新居に火をつけようとしていたんだ。引っ越し祝いに酒でも持って行ってやろうと思ったら怪しい男がいたんでな。見張っていたら案の定だったってことだ」
「それは……助かった。ありがとうタック」
「礼には及ばないさ。当たり前のことだ。それよりギルドマスター、こいつのツラに見覚えはないかい?」
「ふむ? ……な、お前は……!」
驚いたギルドマスターによるとどうやらこの放火犯、以前このギルドで働いていた職員だそうだ。
ある日突然仕事に出てこなくなったが、キャスカに言い寄って振られた瞬間を大勢に見られていたため職場にいずらくなったんだろうということで、就業態度が不真面目だったこともあり皆あまり気にしていなかったそうだ。
「どういうことだ。なぜおまえがヒカリの家に火をつける必要がある? ヒカリがギルドに顔を出し始めたのはお前がいなくなってずっと経ってからだ。面識があるとは思えんが」
すごみのある顔でギルドマスターが詰め寄るが、男は目をそらし何も話さない。
「……ふむ。そういう態度ならアレをする必要がありそうだ。おい、アレの準備を頼む」
「ま、待った! アレだけはやめてくれ!」
ギルドマスターが受付嬢にアレとやらを準備するように言ったとたん男の態度が変わった。
オレには分からないが、この男も元ギルド職員だったからにはアレが何か知っているんだろうな。
「そ、その男が! その男がオレたちのキャスカを毒牙にかけてると聞いて懲らしめてやろうと思ったんだ! だからオレは悪くない!」
「誰かにヒカリのことを聞いたんだな? 誰に聞いたんだ」
「ブルック団長だ。 昨夜ブルック団長がキャスカを連れてきたんだ。その時に聞いた」
「お前は直接キャスカに合ったんだな? 場所は?」
「そ、それだけは言えん!」
「アレをするとしてもか?」
「たとえアレをされたとしてもだ!」
しばらく男を睨みつけていたギルドマスターだが、ふうっとため息をついてこちらに向き直る。
「ヒカリ。すまないが吐かせるのに時間がかかりそうだ。しばらく時間を潰して「待ってください、その必要はありません」」
ギルドマスターの言葉を遮ってメルルが続ける。
「わたしに任せてください。わたしなら彼が今までに見た映像や声を確認することができます。なので、すいませんが少しわたしとヒカリさん、ミリゼットさんだけにしていただけませんか? ほんの数分ですみますので」
そういってオレにウインクするメルル。なるほど、メルルならそれが出来るのか。
「ギルドマスター、オレからもお願いします」
「……大丈夫なんだろうな?」
「はい。まかせてください」
「わかった。 表にいるから何か分かったら声をかけてくれ」
ギルドマスターやタックたちが出て行ったのを確認すると、メルルが男の頭上にウインドを表示させ映像を再生させていく。
男にも見えていないのか、オレたちを小馬鹿にしたような不敵な表情のままだ。
数分後、ギルドマスターに告げた。
「この男が盗賊団の一員であることとブルックがその団長であることが分かった。キャスカはとりあえず無事だ。こいつらはキャスカを団員全員の花嫁にするつもりらしいから、今のところ乱暴はされていない。キャスカの居場所……こいつらの根城は、西の砦の跡地だ!」
人数こそ少ないものの戦い慣れているメンバーがいるらしく、なかなか強いらしい。
その影響で塩や魚介類の流通が滞りはじめて、街の物価にも影響が出始めているとのこと。
「でも、それだけ話が広まっているなら商隊に冒険者の護衛くらいついてるんじゃないか? それなのにやられっぱなしっていうのはどうなんだ?」
盗賊団の話が広まる前ならいざ知らず、広まった後なら慎重を期する商人なら護衛を雇うはずだよな。
基本的に、指名でないかぎり護衛クエストにあたるのはCかDランクの中堅冒険者だ。オレたちはまだEランクだから護衛の仕事が回ってくることはない。
「襲われているのは、ほとんどがブルックが護衛を受けた商隊なんだ」
「どういうことだ?」
「オレたちは、奴が盗賊団に情報を流しているものと睨んでいる。だが証拠がなくて手出しができていないのが現状だ」
「なるほど」
そのブルックというやつが盗賊団と繋がっていたと仮定しよう。するとどうなるか?
盗賊団には商隊の旅程や護衛の規模、運んでいる荷の情報が筒抜けになる。
結果、奴らからすればリスクを最小限に抑えて仕事ができるというわけだ。
「ブルックは昨日も今日もギルドに姿を見せていない。もし奴がキャスカを誘拐したのだとしたら、ヒカリのことも狙ってくるかもしれん。気を付けたほうがいい」
「そうだな、分かった」
利己的な思いが遂げられそうにないと思ったストーカーがキャスカをさらったのだとしたら。
当然次に狙われるのはオレだろうな。そしてオレの親しい人物。
「メルルとミリゼットも狙われるかもしれないから充分に気を付けてくれ。オレのせいで巻き込んで悪いな」
「ヒカリさんは悪くありませんよ。気にしないでください」
「メルルの言う通りだ。それよりも早くキャスカ殿を助けに行く必要がありそうだな」
盗賊団と組んだストーカーにキャスカが何をされるか……考えただけで虫唾が走るぜ。
「ブルックの家……ということはないだろうな。ギルドマスター、盗賊団の拠点は分かるか?」
「残念ながら、西の街道の周辺にあるのだろうということくらいしか分からん。くそっ、拠点さえわかればオレ様が直接潰してやるんだが」
「ギルドマスターが出張っちゃだめだろ。あんたはここでどっしり構えててくれ。オレたちが行ってくる」
「それはありがたいが……いいのか? ブルックはあんな性格だがまがりなりにもBランク、それもAに近い実力だぞ。それに盗賊連中だっているだろう」
Bランクか。でもそれならこっちだってミリゼットがBランクだ。
ミリゼットを見ると、彼女も自信たっぷりに頷いてくれた。その時
「邪魔するぞ。ヒカリに届け物だぜ」
「タック?」
タックが、かついでいたソレを床に放り投げる。
放り投げられたソレは、縛り上げられた状態のままうめき声をあげてオレとタックを睨みつける。
「こいつはな、お前の新居に火をつけようとしていたんだ。引っ越し祝いに酒でも持って行ってやろうと思ったら怪しい男がいたんでな。見張っていたら案の定だったってことだ」
「それは……助かった。ありがとうタック」
「礼には及ばないさ。当たり前のことだ。それよりギルドマスター、こいつのツラに見覚えはないかい?」
「ふむ? ……な、お前は……!」
驚いたギルドマスターによるとどうやらこの放火犯、以前このギルドで働いていた職員だそうだ。
ある日突然仕事に出てこなくなったが、キャスカに言い寄って振られた瞬間を大勢に見られていたため職場にいずらくなったんだろうということで、就業態度が不真面目だったこともあり皆あまり気にしていなかったそうだ。
「どういうことだ。なぜおまえがヒカリの家に火をつける必要がある? ヒカリがギルドに顔を出し始めたのはお前がいなくなってずっと経ってからだ。面識があるとは思えんが」
すごみのある顔でギルドマスターが詰め寄るが、男は目をそらし何も話さない。
「……ふむ。そういう態度ならアレをする必要がありそうだ。おい、アレの準備を頼む」
「ま、待った! アレだけはやめてくれ!」
ギルドマスターが受付嬢にアレとやらを準備するように言ったとたん男の態度が変わった。
オレには分からないが、この男も元ギルド職員だったからにはアレが何か知っているんだろうな。
「そ、その男が! その男がオレたちのキャスカを毒牙にかけてると聞いて懲らしめてやろうと思ったんだ! だからオレは悪くない!」
「誰かにヒカリのことを聞いたんだな? 誰に聞いたんだ」
「ブルック団長だ。 昨夜ブルック団長がキャスカを連れてきたんだ。その時に聞いた」
「お前は直接キャスカに合ったんだな? 場所は?」
「そ、それだけは言えん!」
「アレをするとしてもか?」
「たとえアレをされたとしてもだ!」
しばらく男を睨みつけていたギルドマスターだが、ふうっとため息をついてこちらに向き直る。
「ヒカリ。すまないが吐かせるのに時間がかかりそうだ。しばらく時間を潰して「待ってください、その必要はありません」」
ギルドマスターの言葉を遮ってメルルが続ける。
「わたしに任せてください。わたしなら彼が今までに見た映像や声を確認することができます。なので、すいませんが少しわたしとヒカリさん、ミリゼットさんだけにしていただけませんか? ほんの数分ですみますので」
そういってオレにウインクするメルル。なるほど、メルルならそれが出来るのか。
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「……大丈夫なんだろうな?」
「はい。まかせてください」
「わかった。 表にいるから何か分かったら声をかけてくれ」
ギルドマスターやタックたちが出て行ったのを確認すると、メルルが男の頭上にウインドを表示させ映像を再生させていく。
男にも見えていないのか、オレたちを小馬鹿にしたような不敵な表情のままだ。
数分後、ギルドマスターに告げた。
「この男が盗賊団の一員であることとブルックがその団長であることが分かった。キャスカはとりあえず無事だ。こいつらはキャスカを団員全員の花嫁にするつもりらしいから、今のところ乱暴はされていない。キャスカの居場所……こいつらの根城は、西の砦の跡地だ!」
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