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SS NO.4 山手線散策道中銀鉄路
Shinagawa Station
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百合子が綾子と久々に登校した日から数え、五つの日が経過した。
場所は、レインボーブリッジの西の始点・芝浦、高級住宅地や大使館街で名高く、一歩入ると古き良き昭和の町並みの残る高輪・麻布・白金地区の属する東京都港区。
時計の針は、七と八を示していた。
りんご飴の色の太陽が東京湾の向かいの緩やかな稜線をえがく上総の山々を背景にして顔を出し、一日の始まりを告げて空の真上に向かおうとする頃だ。
その区内の南部、西側にはホテル、海側にオフィスビル街が立ち並び、せわしなく色とりどりの電車やバスが発着する駅があった。
駅の名は、品川。
桜木町駅(元の初代横浜駅)とともに日本の鉄道で初めてできた駅であり、世界の乗降客数でも九位にランクインするほど人の乗り降りの多い場所でもある。
その品川駅の休日出勤のサラリーマンやレジャーに向かう人々などの行き交う中央口付近、銀色のスタイリッシュな時計台の前に百合子の姿があった。
彼女は、長くてつやのある美しい黒髪を茜色の紐で束ねたポニーテール、そして白色のワイシャツ・濃い水色のスカート、白色のポーチの出で立ちで佇んでおり、手には地図社の東京区内のガイドブックが握られていた。
どうやら、百合子は品川駅で綾子と待ち合わせをしているようだ。
「今日は、楽しみだ。久々にあこちゃんとお出かけできるから、ワクワクしてたまらないわ。」
百合子は、手に握っているガイドブックを広げ、綾子と東京の町を歩く情景を頭に思い描きつつつぶやいていた。
その顔には、たまらなく楽しいという感情に満ちあふれているようだ。
そうしているなり、百合子から見て左手、北東側にある改札より人混みに紛れるかのように綾子が姿を表した。
綾子は、百合子と色違い、薄いうぐいす色のワイシャツに濃いグリーンカラーのスカートを纏い、いつも通り前髪を 桔梗の髪紐でまとめ、側らに男の子を連れていた。
その男の子は、年齢は見た目からして一〇才の小学生であり、ほっそりとしたバナナに少々肉を盛ったかのようなしっかりとした身体つきをしていた。
また、灰色ベースのチェック柄のシャツと膝下ぐらいまである短めのパンツの出で立ち、短めにカットされた髪型であり、顔の雰囲気はどことなく綾子に似ていた。
肩から紐で下げられ、携帯電話を幾分大きくし、メタリックな銀色に染められたコンパクトカメラがトレードマークみたいに目立っていた。
綾子は、男の子とともにしばし顔を左右に向けて見回し、時計台の下に百合子の姿を見つけ、余裕のあるしっかりとした足取りで近寄ってきた。
「百合子ちゃん、おはよう。」
綾子は、百合子の方に自らの顔を向け、喜びの満ちる表情で挨拶をした。
「あこちゃん、おはよう。」
百合子もまた、明るい顔を浮かべて綾子に言葉を返した。
そのときの百合子の明るい表情は、いまにも湯呑みから溢れそうな水のようにも例えられそうだ。
「あこちゃん。傍らに男の子がいるけど、どうしたの?」
百合子は、男の子が気になり、首を三〇度ほど左に傾けて両腕を胸のあたりで組ませつつ、頭のなかにもくもくと疑問符を沸き立たせて綾子に尋ねかけた。
「百合子ちゃん。彼はね、私の従弟なの。」
綾子は、男の子を自らの前にたて、やさしくも真剣な顔つきで百合子に説明をした。
「へぇ。この子は、あこちゃんの従弟なんだ。」
百合子は、組んでいた腕をおろしつつ綾子に言葉を返した。
彼女は、このとき、頭の上にピカッと電球を光らせ、納得した様子で顔をうんうんとうなずかせていた。
そして、
「はじめまして。中田翔太と申します。品川区の大井に住んでいます。いつも、あや姉がお世話になっています。」
男の子こと綾子の従弟という翔太は、ほぼ重力方向に向けていた腰を深々と折った後、身振りを交えて自己紹介をした。
彼の声や表情は、どこかしら明快で前向きな印象があり、不自由のないゆとりのある生活を送っている男の子らしいものだった。
「翔太くん、初めまして。私は、広瀬百合子と申します。千葉県の館山に住んでいます。どうかよろしくお願いします。」
百合子は、腰から上の身体を少し重力方向に下げ、柔和な顔つきで翔太に自己紹介をした。
彼女は、まるで演技の上手い子役を思わせる明るい表情とまどろっこしいほど丁寧な語り口で彼に言葉を掛けていた。
「百合子ちゃん。そろそろ時間だし、電車に乗ろうよ。」
綾子は、腕に掛けていた時計を確認し、百合子の目を見つめて言葉を掛けた。
その際、彼女は特に慌てた様子を見せずに落ち着き、いつもの通リ、地上を明るく照らす太陽を思わせる表情でいた。
「翔太くん、初めまして。私は、広瀬百合子と申します。千葉県の館山に住んでいます。どうかよろしくお願いします。」
百合子は、腰から上の身体を少し重力方向に下げ、柔和な顔つきで翔太に自己紹介をした。
彼女は、まるで演技の上手い子役を思わせる明るい表情とまどろっこしいほど丁寧な語り口で彼に言葉を掛けていた。
「百合子ちゃん。そろそろ時間だし、電車に乗ろうよ。」
綾子は、腕に掛けていた時計を確認しつつ、促すようにして百合子に言葉をかけた。
綾子は、その際、特に慌てた様子を見せず、落ち着き、クールダウンしたかのような表情でいた。
「あこちゃん、そうだね。電車に乗ろう。」
百合子もまた、にこにことして明るい表情で綾子に答えた。
そのとき、彼女の表情には、焦りがなく、心にゆとりがあるのを目に見えて確かめることが出来た。
そして、綾子は、自らの右手を百合子の左側の手に伸ばして手をつなぎ、左側に翔太を従えて中央口の改札口に向かった。
背後からその三人を見ると、まるで実の姉妹弟と錯覚してしまいそうだ。
場所は、レインボーブリッジの西の始点・芝浦、高級住宅地や大使館街で名高く、一歩入ると古き良き昭和の町並みの残る高輪・麻布・白金地区の属する東京都港区。
時計の針は、七と八を示していた。
りんご飴の色の太陽が東京湾の向かいの緩やかな稜線をえがく上総の山々を背景にして顔を出し、一日の始まりを告げて空の真上に向かおうとする頃だ。
その区内の南部、西側にはホテル、海側にオフィスビル街が立ち並び、せわしなく色とりどりの電車やバスが発着する駅があった。
駅の名は、品川。
桜木町駅(元の初代横浜駅)とともに日本の鉄道で初めてできた駅であり、世界の乗降客数でも九位にランクインするほど人の乗り降りの多い場所でもある。
その品川駅の休日出勤のサラリーマンやレジャーに向かう人々などの行き交う中央口付近、銀色のスタイリッシュな時計台の前に百合子の姿があった。
彼女は、長くてつやのある美しい黒髪を茜色の紐で束ねたポニーテール、そして白色のワイシャツ・濃い水色のスカート、白色のポーチの出で立ちで佇んでおり、手には地図社の東京区内のガイドブックが握られていた。
どうやら、百合子は品川駅で綾子と待ち合わせをしているようだ。
「今日は、楽しみだ。久々にあこちゃんとお出かけできるから、ワクワクしてたまらないわ。」
百合子は、手に握っているガイドブックを広げ、綾子と東京の町を歩く情景を頭に思い描きつつつぶやいていた。
その顔には、たまらなく楽しいという感情に満ちあふれているようだ。
そうしているなり、百合子から見て左手、北東側にある改札より人混みに紛れるかのように綾子が姿を表した。
綾子は、百合子と色違い、薄いうぐいす色のワイシャツに濃いグリーンカラーのスカートを纏い、いつも通り前髪を 桔梗の髪紐でまとめ、側らに男の子を連れていた。
その男の子は、年齢は見た目からして一〇才の小学生であり、ほっそりとしたバナナに少々肉を盛ったかのようなしっかりとした身体つきをしていた。
また、灰色ベースのチェック柄のシャツと膝下ぐらいまである短めのパンツの出で立ち、短めにカットされた髪型であり、顔の雰囲気はどことなく綾子に似ていた。
肩から紐で下げられ、携帯電話を幾分大きくし、メタリックな銀色に染められたコンパクトカメラがトレードマークみたいに目立っていた。
綾子は、男の子とともにしばし顔を左右に向けて見回し、時計台の下に百合子の姿を見つけ、余裕のあるしっかりとした足取りで近寄ってきた。
「百合子ちゃん、おはよう。」
綾子は、百合子の方に自らの顔を向け、喜びの満ちる表情で挨拶をした。
「あこちゃん、おはよう。」
百合子もまた、明るい顔を浮かべて綾子に言葉を返した。
そのときの百合子の明るい表情は、いまにも湯呑みから溢れそうな水のようにも例えられそうだ。
「あこちゃん。傍らに男の子がいるけど、どうしたの?」
百合子は、男の子が気になり、首を三〇度ほど左に傾けて両腕を胸のあたりで組ませつつ、頭のなかにもくもくと疑問符を沸き立たせて綾子に尋ねかけた。
「百合子ちゃん。彼はね、私の従弟なの。」
綾子は、男の子を自らの前にたて、やさしくも真剣な顔つきで百合子に説明をした。
「へぇ。この子は、あこちゃんの従弟なんだ。」
百合子は、組んでいた腕をおろしつつ綾子に言葉を返した。
彼女は、このとき、頭の上にピカッと電球を光らせ、納得した様子で顔をうんうんとうなずかせていた。
そして、
「はじめまして。中田翔太と申します。品川区の大井に住んでいます。いつも、あや姉がお世話になっています。」
男の子こと綾子の従弟という翔太は、ほぼ重力方向に向けていた腰を深々と折った後、身振りを交えて自己紹介をした。
彼の声や表情は、どこかしら明快で前向きな印象があり、不自由のないゆとりのある生活を送っている男の子らしいものだった。
「翔太くん、初めまして。私は、広瀬百合子と申します。千葉県の館山に住んでいます。どうかよろしくお願いします。」
百合子は、腰から上の身体を少し重力方向に下げ、柔和な顔つきで翔太に自己紹介をした。
彼女は、まるで演技の上手い子役を思わせる明るい表情とまどろっこしいほど丁寧な語り口で彼に言葉を掛けていた。
「百合子ちゃん。そろそろ時間だし、電車に乗ろうよ。」
綾子は、腕に掛けていた時計を確認し、百合子の目を見つめて言葉を掛けた。
その際、彼女は特に慌てた様子を見せずに落ち着き、いつもの通リ、地上を明るく照らす太陽を思わせる表情でいた。
「翔太くん、初めまして。私は、広瀬百合子と申します。千葉県の館山に住んでいます。どうかよろしくお願いします。」
百合子は、腰から上の身体を少し重力方向に下げ、柔和な顔つきで翔太に自己紹介をした。
彼女は、まるで演技の上手い子役を思わせる明るい表情とまどろっこしいほど丁寧な語り口で彼に言葉を掛けていた。
「百合子ちゃん。そろそろ時間だし、電車に乗ろうよ。」
綾子は、腕に掛けていた時計を確認しつつ、促すようにして百合子に言葉をかけた。
綾子は、その際、特に慌てた様子を見せず、落ち着き、クールダウンしたかのような表情でいた。
「あこちゃん、そうだね。電車に乗ろう。」
百合子もまた、にこにことして明るい表情で綾子に答えた。
そのとき、彼女の表情には、焦りがなく、心にゆとりがあるのを目に見えて確かめることが出来た。
そして、綾子は、自らの右手を百合子の左側の手に伸ばして手をつなぎ、左側に翔太を従えて中央口の改札口に向かった。
背後からその三人を見ると、まるで実の姉妹弟と錯覚してしまいそうだ。
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