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SS No.2 旅立ちし乙女
漆黒の鳥籠とその光景
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その先には、周辺各国の戦争や異世界から拉致してきた人々、前のすばる王朝崩壊に際して捕縛された関係者などが閉じ込められている牢獄があった。
地下に牢獄があるため、常に闇に覆われていて、それは、まさに黄泉の世界を連想させる空間である。
牢獄は、「漆黒の鳥籠」とよばれ、ヨモツ国に仕えるハイド、そして王族のシコメ姫・下僕のナミたちから忌み嫌われていた。
シコメは、夢に出てきた母親に教えてもらった手がかりをもとに、この場所に行き着いた。
牢獄の入口には、二人の衛兵とみられるハイドが立ち、鋭利で刺されると痛そうな長槍を持って不審者が入らないよう睨みをきかせていた。
シコメ姫は、猫のような足取りでそろそろっとハイドの衛兵に近寄った。
すると、
「おや、シコメ姫様でいらっしゃいますね。夜長にどうされましたでしょうか?」
二人のうち、頭のよさそうなハイドがシコメ姫の姿を見つけるなり、武器をおろし、首を横にかしげて尋ねかけてきた。
「うちなぁ、父ちゃんに頼まれて牢屋の人たちに食べもんを分け与えにきたんよ。」
シコメ姫は、声をかけられて心臓の音が異様に亢進する状況下、たどたどしい口調でハイドに理由を説明した。
「シコメ姫様。そういう理由なら、たどたどしくならず、はっきりとおっしゃってくださいね。」
頭のよさそうなハイドは、苦いながらにこにことした表情を顔に浮かべ、シコメ姫に言葉を返した。
彼は、丁重で心のこもった対応を姫君である彼女にし、塞いでいた牢獄の入口を開放した。
「あんさん、やさしいんやね。おおきに。」
シコメ姫は、嬉しさあふれる笑みを顔の表面に描き、彼に感謝の気持ちをまじえた言葉を掛けて牢獄の中に入っていた。
これは、地球でいう公会堂や重要な会議の行われる場所において顔だけですんなり通れてしまう顔パスと同じ状況だった。
第一関門の入口を抜けたシコメ姫は、引き続き手のみかん色に輝く松明の光を頼りにして、黄泉の国を思わせる暗黒の地下牢獄を進んだ。
シコメの入った地下牢獄には、二つの区画がある。
入口よりの比較的地上に近い方が、拉致されてきた人間が収監されている区画。
それよりも遠い奥手の方が、滅ぼされたすばる王朝の関係者の収監されている区画であった。
シコメ姫は、閉じ込められている母親が王朝の関係者であることを思い出し、つま先で慎重に探るかのごとく奥手の方向を目指して足を進ませた。
その途中、
「助けてくれ、ここから出してくれ!!」
シコメ姫の姿を見た拉致されてきた人々は、手や足が拘束された状況下、木枠で作られた壁に近寄り、大声とともに助けを求めてきた。
それは、さながら身体を前進させるいものむしのように見えた。
このため、
「うち。あんたたちのこと、いつか助けたるから辛抱してくれや。」
シコメ姫は、気の毒で見ていられないのか、袋にある一〇個の塩にぎりを四つほど残し、それ以外は細かくわけ、寄ってきた人々に分け与えて言葉を掛けた。
「えげつない。うち、この光景見て、父ちゃんたちのこと、心の奥底から嫌いになったわな。」
人々に飯を分け与えている彼女は、思わずミタマ・ゲアシオらの顔を浮かべ、腹の中で怒りと失望の交じった気持ちをぐつぐつと煮え立たせていた。
シコメ姫は、一通り飯を分け与えた後、再び奥の方を目指して歩みを進めた。
そう、大切でかけがえのない自分の母親を助けるために。
地下に牢獄があるため、常に闇に覆われていて、それは、まさに黄泉の世界を連想させる空間である。
牢獄は、「漆黒の鳥籠」とよばれ、ヨモツ国に仕えるハイド、そして王族のシコメ姫・下僕のナミたちから忌み嫌われていた。
シコメは、夢に出てきた母親に教えてもらった手がかりをもとに、この場所に行き着いた。
牢獄の入口には、二人の衛兵とみられるハイドが立ち、鋭利で刺されると痛そうな長槍を持って不審者が入らないよう睨みをきかせていた。
シコメ姫は、猫のような足取りでそろそろっとハイドの衛兵に近寄った。
すると、
「おや、シコメ姫様でいらっしゃいますね。夜長にどうされましたでしょうか?」
二人のうち、頭のよさそうなハイドがシコメ姫の姿を見つけるなり、武器をおろし、首を横にかしげて尋ねかけてきた。
「うちなぁ、父ちゃんに頼まれて牢屋の人たちに食べもんを分け与えにきたんよ。」
シコメ姫は、声をかけられて心臓の音が異様に亢進する状況下、たどたどしい口調でハイドに理由を説明した。
「シコメ姫様。そういう理由なら、たどたどしくならず、はっきりとおっしゃってくださいね。」
頭のよさそうなハイドは、苦いながらにこにことした表情を顔に浮かべ、シコメ姫に言葉を返した。
彼は、丁重で心のこもった対応を姫君である彼女にし、塞いでいた牢獄の入口を開放した。
「あんさん、やさしいんやね。おおきに。」
シコメ姫は、嬉しさあふれる笑みを顔の表面に描き、彼に感謝の気持ちをまじえた言葉を掛けて牢獄の中に入っていた。
これは、地球でいう公会堂や重要な会議の行われる場所において顔だけですんなり通れてしまう顔パスと同じ状況だった。
第一関門の入口を抜けたシコメ姫は、引き続き手のみかん色に輝く松明の光を頼りにして、黄泉の国を思わせる暗黒の地下牢獄を進んだ。
シコメの入った地下牢獄には、二つの区画がある。
入口よりの比較的地上に近い方が、拉致されてきた人間が収監されている区画。
それよりも遠い奥手の方が、滅ぼされたすばる王朝の関係者の収監されている区画であった。
シコメ姫は、閉じ込められている母親が王朝の関係者であることを思い出し、つま先で慎重に探るかのごとく奥手の方向を目指して足を進ませた。
その途中、
「助けてくれ、ここから出してくれ!!」
シコメ姫の姿を見た拉致されてきた人々は、手や足が拘束された状況下、木枠で作られた壁に近寄り、大声とともに助けを求めてきた。
それは、さながら身体を前進させるいものむしのように見えた。
このため、
「うち。あんたたちのこと、いつか助けたるから辛抱してくれや。」
シコメ姫は、気の毒で見ていられないのか、袋にある一〇個の塩にぎりを四つほど残し、それ以外は細かくわけ、寄ってきた人々に分け与えて言葉を掛けた。
「えげつない。うち、この光景見て、父ちゃんたちのこと、心の奥底から嫌いになったわな。」
人々に飯を分け与えている彼女は、思わずミタマ・ゲアシオらの顔を浮かべ、腹の中で怒りと失望の交じった気持ちをぐつぐつと煮え立たせていた。
シコメ姫は、一通り飯を分け与えた後、再び奥の方を目指して歩みを進めた。
そう、大切でかけがえのない自分の母親を助けるために。
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