sandwich

水市 宇和香

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screw you!!

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 撮影終了後。
 楽屋で帰り支度をしていたら、控えめに扉がノックされた。
「……はい」
「失礼します……」
 顔を出したのは、ついさっきまで一緒に仕事をしていた竹松さん。どことなく緊張している、気がする。僕は立ち上がって、「今日はありがとうございました」と礼をした。
「こちらこそ、ありがとうございました。本当に3moonの大ファンなので、ゲストで来ていただけて嬉しかったです。……あの、YUSHIさんって、まだいらっしゃらないんですね」
 おずおずといった様子で彼女は室内を見渡した。あ、そっか。竹松さんはきっと、優士のファンなんだ。
「優士と皐月はその、さっきスタッフさんたちに呼ばれて行っちゃったんです」
 呼びに来たのが女性の方ばかりだったから、仕事の用事ではないんだと思う。だけどそれは言わないでおいた。竹松さんはうなずく。
「そうですか」
 その様子が本当に残念そうだったから。
「あ、あの……良かったら、たぶんそろそろ帰って来ると思うんで、ここで待ってますか?」
 僕はそう申し出ていたのだった。

「UOHさんってまだ高校生なんですよね。YUSHIさんたちとは高校の先輩後輩だったって、前に雑誌で読みました」
「三年生です」
「わたしの一個下ですね。わたし、YUSHIさんたちと同い年なんです」
 竹松さんはとても話しやすい気さくな人だった。たくさん話題を振ってくれるから、用件以外のことでも会話が続く。人見知りの僕にしてはかなり珍しいことだ。それだけ話上手ってことなんだろう。
 しばらくすると、さっきよりずいぶん乱暴にドアノブが音を立てた。
「あーあいつらマジうぜー!」
 舌打ちしながら入って来たのは皐月だ。僕たちの姿を見て、目をすがめる。
「おまえら、何いつの間にいちゃついてんだ」
「違うよ皐月! 竹松さんは優士に用があって待ってるだけなんだから!」
「……あっそ」
 適当な返事ながら、さっきよりは瞳が和らいだ。そのまま僕の横のパイプ椅子にドカリと座る。
「お邪魔してます」
「YUSHIなら階段のあたりでスタッフに囲まれてるから、こんなとこいないで混じってきたら?」
「ちょっ、皐月!」
 皐月の言動に斟酌がないのはいつものことだけど、それだけじゃなくて今日はなんだか刺々しい。機嫌がマシになったと思ったのは勘違いだったようだ。そのわりに僕にもたれかかってきてベタベタし始めるし。いったいどうしたんだろう。
 とにもかくにも皐月の虫の居所が悪いのを察して、竹松さんが立ち上がった。
「すみません、長居しちゃって……」
「あっ……」
「はいはい、今日はアリガトーゴザイマシター」
 無理に引き止めても気まずいだけだろう。竹松さんを止められない。ひらひらと手を振る彼の機嫌を直せない自分が恨めしい。
 と、そのとき、扉が開いた。優士が帰って来たのだ。すごいタイミングだ!
 突然目の前に優士がやって来て、竹松さんはしどろもどろになっている。わ、フォローしないと! できるかな?! 僕がそう焦っているのを知ってか知らずか、
「竹松さん、おまえのファンなんだってよー」
 皐月がフォローとも呼べない台詞を発した。竹松さんは何度もうなずく。僕はそんな彼女から目が離せない。一緒になってうなずきながら、優士と彼女を、固唾を飲んで見守った。
(竹松さんがうまく話せますように!)
「……そうなんですか、ありがとうございます」
 人当たりがいいはずの優士の声が、若干固かったのは気のせいだと思いたかった。
 ――の、だけど。
「これで満足?」
 竹松さんが帰ったあと、優士は開口一番そう言った。
「シローは僕に竹松さんと話して欲しかったんでしょう?」
 笑ってるけど笑ってない。仕事では一時間以上しゃべってたのに、プライベートでは十分話すのも嫌なのかな。皐月も様子が変だったし。でも、竹松さん、悪い人じゃないと思うんだけどな。
 優士は僕の隣に腰掛けて、そのサラサラな栗色の髪をかきあげた。苛ついているときによく出る癖だ。
「竹松さんとはずいぶん打ち解けたみたいだね、シロー人見知りなのに」
「え」
 皐月と同じような台詞。なんて返そうか言葉に詰まっていれば、ため息。これは本格的にいらいらしている。
(なんで?)
 机に肘を突いて僕を睨む皐月と、眉をしかめながら僕を見つめる優士とを交互に見やる。
「……皐月にはうまいこと途中で逃げられたから、僕一人でスタッフさんたちの相手してて大変だったのに。そんな僕を労わってくれるどころか、竹松さんと仲良くしてるなんて、シローってばひどいんだね」
「グラドルなんてヤることしか考えてねーよきっと。人見知りのおまえなんか簡単に丸め込まれるぞ」
 ――そっか。優士はスタッフさんたちに捕まって機嫌が悪かったのか。自分が逃げ出したことはすっかり聞き流して、偏見かつ下品なことを言う皐月もきっとそれだ。
 二人とも、女の人に騒がれるの嫌いだもんね。やっと謎が解けた僕は、「おつかれ」と苦笑した。
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