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第8章
(1)大嶽丸
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夕星が見え、逼る暮色が漂う田舎道を足取り軽く部活を終えた生徒たちが笑顔で帰路に就く。静けさが増してゆく正門前に突如として暗雲が垂れ込めた途端、強烈な禍々しい妖気を放ちながら巨大な鬼と子分たちが姿を現した。
暫しの間、物陰から辺りを睥睨する鬼たちの前に鼻歌を歌いながら雨音が歩いて来た。
「色ッペェ~、超美人ですぜぇ!」
「牝狐っぽい奴だ、俺の好みじゃねぇ」
子分たちは勿体ないと惜しむのであるが、雨音に関心を示さない大磐にも似た巨大な鬼。其れに対して、雨音は鬼たちが潜む正門前に着いても空間の異変に気づいていない。
其処へ洗練された雰囲気を漂わせながら、粋な着こなしで洒落たブランドスーツを身に纏った田村が校内から外出するために近づいて来た。雨音に軽く声をかけ校外へ買出しに行こうとする田村もまた鈍さ故に鬼たちの異様な妖気を体感することが出来ていない。
雨音が校内へ歩みを進めると物陰から禍々しい妖気と共に双眸が赤く光る。強大な魔獣が刺すような目付きで獲物に狙いを定めると、餌食となる対象者へ魔の手が忍び寄る。
大鬼のシルエットが田村の背後に現れた次の瞬間、田村と一体化する巨大な鬼。虎視眈々と憑依する標的を貪っていた妖怪の名は、大嶽丸である。
大嶽丸に肉体を乗っ取られた田村の双眸は赤く光り、口は左右に大きく裂け表情が急変した。
其の頃・・・
学校の方角から放たれる禍々しい妖気を誰よりも早く市内の歩道で体感した結子は携帯電話から朋友の名を選んでコールした。
結子がスマートフォンに耳をつけようとした時、結子に新たな未来の記憶が飛び込んで来た。朋友に猛スピードで迫るトラックの映像が脳裏に過る・・・
自室のテーブル上に置いてある朋友の携帯画面に「結子ちゃん」の文字が浮かび上がると同時にバイブレーションが起こり、ジリジリと低い音を立てた。着信に気づいた朋友は冷静に液晶画面に指を当てた。
「もしもし、結子」
「朋友、鬼は学校の方よ!」
「あぁ、そう見たいだな」
「私が行って様子を見て来るから、朋友は待機して!」
「何言ってんだよ、俺も今から向かうよ!」
「朋友は怪我しているでしょ、大丈夫だから・・・それから、トラックには注意してよ! また連絡するね!」
学校へ向かいながら朋友と通話していた結子は電話を切り、足早に歩みを進めた。
通話の切れた携帯画面を見つめる朋友は、自分の怪我を心配して気遣いしてくれる結子の優しさに感謝するものの、鬼たちの強烈な妖気を体感しながら結子の身を案じ、居ても経っても居られない。
朋友は負傷した脚を庇いながらも独りでに御神剣、勾玉ブレスレット、御鏡の珠に手を伸ばしていた。
薄暗い校内
松島と電話で話していた町井を見つけた田村(大嶽丸)は、町井の言葉に興味を抱き、ひとり佇む町井に近づいた。校内での携帯電話の使用は緊急時を除いて原則禁止だと指導する田村に対して、町井は背後から不意に現れた田村の姿に驚きながら申し訳なさそうに頭を下げて謝った。
町井を見つめる田村は、町井が電話の相手に対して「今から八◯宮へ行く」と告げていたことを町井に平易な言葉で問うたうえで、ちょうど自分も近くに用事があるから同行してあげようと提案した。
町井は田村に対して申し訳ないのでひとりで大丈夫だと丁寧に断るものの、また校則を守らないかどうか監視もしないといけないからと言い放つ田村に言い返す言葉が見つからず、その場に立ち尽くす。
自身の体の強張りに気づいた町井は、田村に対して何となく恐怖を感じ怯えながら、どうすることも出来ずに田村からの提案を受け入れ、付き添われながら学校を後にした。
結子が駆け足で学校の正門前まで急行して来た時には、大嶽丸は既に立ち去った後であった。まだ汚穢の少ない田舎町とは言え、清らかな結子にとってみれば汚れた空間であることには違いなく、急ぎ足で移動することは肉体への負担も相当なものである。
人体が汚されるが故に思考も混沌とする中において、それでも集中力を切らすことなく大嶽丸の気を体感する結子は足◯の街中へ移動する大鬼の後を懸命に追った。
学校へ向かっていた朋友も大嶽丸が移動していることを体感から理解して、大嶽丸の穢れた強烈な妖気が向かう場所へ先回りするように移動した。
田村に付き添われた町井が下◯国一社八◯宮前に辿り着いたときには辺りは暗がりになっていた。鳥居前で田村に頭を下げてお礼を言い、その場で別れようとする町井に対して、「お友達は境内のようだから一緒に行こうか」と言い寄る田村の形相が一変した。
次の瞬間、田村は透かさず町井の腕を掴み無理やり境内へ連れ込んだ。
「声を出すな!」
田村に恫喝された町井は恐怖に慄き震え出し、小さく頷いて田村の言う通りにするしか出来ない。
境内の参道を拝殿へ向かってゆっくりと歩みを進めながら、仲間を呼ばないと殺すと脅された町井は抵抗しようにも力が入らず、田村に言われるがまま涙声で松島の名を叫んだ。
町井の声を聞いた松島は町井が神社に到着したことに気づき、町井の名を呼びながら声のする方へ近づいた。
そんな松島の目に飛び込んで来たのは、鬼のような形相をした田村に激しく腕を掴まれている町井の姿である。
驚きを隠せない松島の顔は、豹変した田村の表情と怯えた町井の姿を見ると立ち所に当惑の色に変わり出した。異常な事態であることだけは把握できた松島は、何とかして町井を救おうと勇気を振り絞って田村に語りかけた。
「田村先生、何やってるんですか? 町井さんの腕を離してください!」
「田村先生? 馬鹿か、お前? 俺が誰だか分からんらしいなぁ・・・そうか、お前、此の子のこと好きか? そうだろう?」
「好きで何が悪い、その手を離せ!」
鼻先で嗤う大嶽丸は、子分に餌を弄らせる鬼謀を案出する。
「そうか、なら面白いことしてやろう、お前ら、此奴に入れ!」
「えっ、何するの?やめて!」
大嶽丸の指示に答えるように咆哮する俗悪を極めた子分たち。その内の一匹が薄気味悪く笑いながら町井の背後に回り込む。
舌なめずりをしながら、獲物を貪ろうとする醜悪奸邪な鬼は嫌がり抵抗する町井に憑依した。すると・・・町井の双眸が赤く光り、表情が急変する。
鬼に憑依され豹変した町井の表情と雰囲気に恐怖する松島は、唾を飲むように町井の名を小さな声で呟いた。
田村の狂悖の性は激しさを増し、落ちていた太い木の枝を町井に渡して、彼奴を殺れと語調を強めて命令する。
「のぞみちゃん、大丈夫? 俺だよ、松島だよ!」
人体を乗っ取られている町井は錯乱しながら奇声を上げ、松島へ睨みを利かせ武器を片手に戦闘態勢に入った。
何とか制止させようと必死に声をかける松島だが、太い木の枝で殴られ堪らずその場から吹っ飛んだ。
町井に殴打された松島の頭部からは血が流れている。其奴の言うこと聞いちゃダメだと町井に語り掛け訴えるも虚しく、一方的に町井に憑依した大嶽丸の子分からの攻撃を受け殴打され続ける松島は、町井を想う優しい気持ちから一切反撃をしない。
薄れてゆく意識の中、松島の耳に聞き覚えのある声が聞こえて来た・・・
「まっつん!」
痛い脚を庇いながらも松島の下へ朋友が駆け寄って来たのである。
「朋友・・・」
「まっつん、大丈夫か? しっかりしろ!」
「のぞみちゃんが、のぞみちゃんが・・・」
「心配するな、俺が何とかする!」
田村に意識を向けた朋友には田村に憑依している大嶽丸の姿がはっきりと見えている。
『大嶽丸』
身の丈は十数メートルの巨大な鬼。一本の黒い角が頭の中央から突き出ている。角の周囲の頭頂部には毛がなく、側頭や後頭から黒い頭髪が伸びている。
ゴリラを思わせるような体型に黒い色をした髭と胸毛。腹の中央部分や下半身までが黒色の体毛で繋がり覆われている。
両手の甲の部分にも黒い体毛がある。肉体は浅黒いグレー色をしており、血走った大きな目、大きく開いた口からは多数の牙のような歯が窺える。
周囲を取り囲む子分の鬼たちにも意識を向けながら、田村ではなく大嶽丸を見上げて睨みを利かせる朋友は、捕縛されている町井を救い出す妙案はないものかと策を練りながら大嶽丸に対峙した。
大嶽丸の巨漢からヒントを得た朋友は妙案を思い付き、大嶽丸の一撃を交わすと即座に御神剣の気を纏った布地を大嶽丸の目前に投げつけた。
大嶽丸が布地に気を取られた一瞬の隙に素早い身のこなしで町井に憑依した鬼を一刀両断する。
大嶽丸と子分たちの気を引きつけ町井から遠ざかり交戦する朋友。苦痛に堪える松島は力を振り絞り町井に近づいて倒れ込んでいる町井の体を抱き支えた。
「朋友! 松島くん!」
丁度其の時、暗がりの中からふたりの名を呼び駆け寄って来た結子は町井を救い出した松島の体を支え、意識を失っている町井に目をやり安否を確認した。
一縷の望みを託すような眼差しで結子の表情を見つめた松島は、結子に町井のことを頼むと言い残すと我慢の限界を超えて気を失った。
気絶した松島の名を呼びながら、それと同時に境内全体に意識を向け鬼たちの位置を捉える結子は、松島と町井に手を当て清らかな気を人体へ送り治癒しながら大鬼へも意識を向けた。
結子の双眸が蒼く煌めく・・・結子が清らかな気を全身から強烈に放つと神社境内の気が見る見るうちに祓い清められてゆく。
境内にある「門◯稲荷神社」の前で鬼たちと対峙している朋友に結子が大鬼の名は大嶽丸であることを伝えたときには、清らかな御神気が大嶽丸の周囲にまで迫ろうとしていた。
「くそっ! 一先ず退散だ!」
赤く光らせた双眸で結子に睨みを利かせながら立ち去る大嶽丸を追いかけようとする朋友に対して、結子は仲間の手当てが先だと呼び止めた。朋友は結子の声に従い、ふたりの身を案じて負傷した松島と町井の下へ駆け寄った。
暫しの間、物陰から辺りを睥睨する鬼たちの前に鼻歌を歌いながら雨音が歩いて来た。
「色ッペェ~、超美人ですぜぇ!」
「牝狐っぽい奴だ、俺の好みじゃねぇ」
子分たちは勿体ないと惜しむのであるが、雨音に関心を示さない大磐にも似た巨大な鬼。其れに対して、雨音は鬼たちが潜む正門前に着いても空間の異変に気づいていない。
其処へ洗練された雰囲気を漂わせながら、粋な着こなしで洒落たブランドスーツを身に纏った田村が校内から外出するために近づいて来た。雨音に軽く声をかけ校外へ買出しに行こうとする田村もまた鈍さ故に鬼たちの異様な妖気を体感することが出来ていない。
雨音が校内へ歩みを進めると物陰から禍々しい妖気と共に双眸が赤く光る。強大な魔獣が刺すような目付きで獲物に狙いを定めると、餌食となる対象者へ魔の手が忍び寄る。
大鬼のシルエットが田村の背後に現れた次の瞬間、田村と一体化する巨大な鬼。虎視眈々と憑依する標的を貪っていた妖怪の名は、大嶽丸である。
大嶽丸に肉体を乗っ取られた田村の双眸は赤く光り、口は左右に大きく裂け表情が急変した。
其の頃・・・
学校の方角から放たれる禍々しい妖気を誰よりも早く市内の歩道で体感した結子は携帯電話から朋友の名を選んでコールした。
結子がスマートフォンに耳をつけようとした時、結子に新たな未来の記憶が飛び込んで来た。朋友に猛スピードで迫るトラックの映像が脳裏に過る・・・
自室のテーブル上に置いてある朋友の携帯画面に「結子ちゃん」の文字が浮かび上がると同時にバイブレーションが起こり、ジリジリと低い音を立てた。着信に気づいた朋友は冷静に液晶画面に指を当てた。
「もしもし、結子」
「朋友、鬼は学校の方よ!」
「あぁ、そう見たいだな」
「私が行って様子を見て来るから、朋友は待機して!」
「何言ってんだよ、俺も今から向かうよ!」
「朋友は怪我しているでしょ、大丈夫だから・・・それから、トラックには注意してよ! また連絡するね!」
学校へ向かいながら朋友と通話していた結子は電話を切り、足早に歩みを進めた。
通話の切れた携帯画面を見つめる朋友は、自分の怪我を心配して気遣いしてくれる結子の優しさに感謝するものの、鬼たちの強烈な妖気を体感しながら結子の身を案じ、居ても経っても居られない。
朋友は負傷した脚を庇いながらも独りでに御神剣、勾玉ブレスレット、御鏡の珠に手を伸ばしていた。
薄暗い校内
松島と電話で話していた町井を見つけた田村(大嶽丸)は、町井の言葉に興味を抱き、ひとり佇む町井に近づいた。校内での携帯電話の使用は緊急時を除いて原則禁止だと指導する田村に対して、町井は背後から不意に現れた田村の姿に驚きながら申し訳なさそうに頭を下げて謝った。
町井を見つめる田村は、町井が電話の相手に対して「今から八◯宮へ行く」と告げていたことを町井に平易な言葉で問うたうえで、ちょうど自分も近くに用事があるから同行してあげようと提案した。
町井は田村に対して申し訳ないのでひとりで大丈夫だと丁寧に断るものの、また校則を守らないかどうか監視もしないといけないからと言い放つ田村に言い返す言葉が見つからず、その場に立ち尽くす。
自身の体の強張りに気づいた町井は、田村に対して何となく恐怖を感じ怯えながら、どうすることも出来ずに田村からの提案を受け入れ、付き添われながら学校を後にした。
結子が駆け足で学校の正門前まで急行して来た時には、大嶽丸は既に立ち去った後であった。まだ汚穢の少ない田舎町とは言え、清らかな結子にとってみれば汚れた空間であることには違いなく、急ぎ足で移動することは肉体への負担も相当なものである。
人体が汚されるが故に思考も混沌とする中において、それでも集中力を切らすことなく大嶽丸の気を体感する結子は足◯の街中へ移動する大鬼の後を懸命に追った。
学校へ向かっていた朋友も大嶽丸が移動していることを体感から理解して、大嶽丸の穢れた強烈な妖気が向かう場所へ先回りするように移動した。
田村に付き添われた町井が下◯国一社八◯宮前に辿り着いたときには辺りは暗がりになっていた。鳥居前で田村に頭を下げてお礼を言い、その場で別れようとする町井に対して、「お友達は境内のようだから一緒に行こうか」と言い寄る田村の形相が一変した。
次の瞬間、田村は透かさず町井の腕を掴み無理やり境内へ連れ込んだ。
「声を出すな!」
田村に恫喝された町井は恐怖に慄き震え出し、小さく頷いて田村の言う通りにするしか出来ない。
境内の参道を拝殿へ向かってゆっくりと歩みを進めながら、仲間を呼ばないと殺すと脅された町井は抵抗しようにも力が入らず、田村に言われるがまま涙声で松島の名を叫んだ。
町井の声を聞いた松島は町井が神社に到着したことに気づき、町井の名を呼びながら声のする方へ近づいた。
そんな松島の目に飛び込んで来たのは、鬼のような形相をした田村に激しく腕を掴まれている町井の姿である。
驚きを隠せない松島の顔は、豹変した田村の表情と怯えた町井の姿を見ると立ち所に当惑の色に変わり出した。異常な事態であることだけは把握できた松島は、何とかして町井を救おうと勇気を振り絞って田村に語りかけた。
「田村先生、何やってるんですか? 町井さんの腕を離してください!」
「田村先生? 馬鹿か、お前? 俺が誰だか分からんらしいなぁ・・・そうか、お前、此の子のこと好きか? そうだろう?」
「好きで何が悪い、その手を離せ!」
鼻先で嗤う大嶽丸は、子分に餌を弄らせる鬼謀を案出する。
「そうか、なら面白いことしてやろう、お前ら、此奴に入れ!」
「えっ、何するの?やめて!」
大嶽丸の指示に答えるように咆哮する俗悪を極めた子分たち。その内の一匹が薄気味悪く笑いながら町井の背後に回り込む。
舌なめずりをしながら、獲物を貪ろうとする醜悪奸邪な鬼は嫌がり抵抗する町井に憑依した。すると・・・町井の双眸が赤く光り、表情が急変する。
鬼に憑依され豹変した町井の表情と雰囲気に恐怖する松島は、唾を飲むように町井の名を小さな声で呟いた。
田村の狂悖の性は激しさを増し、落ちていた太い木の枝を町井に渡して、彼奴を殺れと語調を強めて命令する。
「のぞみちゃん、大丈夫? 俺だよ、松島だよ!」
人体を乗っ取られている町井は錯乱しながら奇声を上げ、松島へ睨みを利かせ武器を片手に戦闘態勢に入った。
何とか制止させようと必死に声をかける松島だが、太い木の枝で殴られ堪らずその場から吹っ飛んだ。
町井に殴打された松島の頭部からは血が流れている。其奴の言うこと聞いちゃダメだと町井に語り掛け訴えるも虚しく、一方的に町井に憑依した大嶽丸の子分からの攻撃を受け殴打され続ける松島は、町井を想う優しい気持ちから一切反撃をしない。
薄れてゆく意識の中、松島の耳に聞き覚えのある声が聞こえて来た・・・
「まっつん!」
痛い脚を庇いながらも松島の下へ朋友が駆け寄って来たのである。
「朋友・・・」
「まっつん、大丈夫か? しっかりしろ!」
「のぞみちゃんが、のぞみちゃんが・・・」
「心配するな、俺が何とかする!」
田村に意識を向けた朋友には田村に憑依している大嶽丸の姿がはっきりと見えている。
『大嶽丸』
身の丈は十数メートルの巨大な鬼。一本の黒い角が頭の中央から突き出ている。角の周囲の頭頂部には毛がなく、側頭や後頭から黒い頭髪が伸びている。
ゴリラを思わせるような体型に黒い色をした髭と胸毛。腹の中央部分や下半身までが黒色の体毛で繋がり覆われている。
両手の甲の部分にも黒い体毛がある。肉体は浅黒いグレー色をしており、血走った大きな目、大きく開いた口からは多数の牙のような歯が窺える。
周囲を取り囲む子分の鬼たちにも意識を向けながら、田村ではなく大嶽丸を見上げて睨みを利かせる朋友は、捕縛されている町井を救い出す妙案はないものかと策を練りながら大嶽丸に対峙した。
大嶽丸の巨漢からヒントを得た朋友は妙案を思い付き、大嶽丸の一撃を交わすと即座に御神剣の気を纏った布地を大嶽丸の目前に投げつけた。
大嶽丸が布地に気を取られた一瞬の隙に素早い身のこなしで町井に憑依した鬼を一刀両断する。
大嶽丸と子分たちの気を引きつけ町井から遠ざかり交戦する朋友。苦痛に堪える松島は力を振り絞り町井に近づいて倒れ込んでいる町井の体を抱き支えた。
「朋友! 松島くん!」
丁度其の時、暗がりの中からふたりの名を呼び駆け寄って来た結子は町井を救い出した松島の体を支え、意識を失っている町井に目をやり安否を確認した。
一縷の望みを託すような眼差しで結子の表情を見つめた松島は、結子に町井のことを頼むと言い残すと我慢の限界を超えて気を失った。
気絶した松島の名を呼びながら、それと同時に境内全体に意識を向け鬼たちの位置を捉える結子は、松島と町井に手を当て清らかな気を人体へ送り治癒しながら大鬼へも意識を向けた。
結子の双眸が蒼く煌めく・・・結子が清らかな気を全身から強烈に放つと神社境内の気が見る見るうちに祓い清められてゆく。
境内にある「門◯稲荷神社」の前で鬼たちと対峙している朋友に結子が大鬼の名は大嶽丸であることを伝えたときには、清らかな御神気が大嶽丸の周囲にまで迫ろうとしていた。
「くそっ! 一先ず退散だ!」
赤く光らせた双眸で結子に睨みを利かせながら立ち去る大嶽丸を追いかけようとする朋友に対して、結子は仲間の手当てが先だと呼び止めた。朋友は結子の声に従い、ふたりの身を案じて負傷した松島と町井の下へ駆け寄った。
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