童話革命

吉田田中

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灼熱のマッチ売り

雪の街

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身を包んでいた白い光が晴れ、辺りの風景が目に映り始める。


辺りは雪が降り積もった街の中。
行き交う人々は皆寒そうに白い息を吐き、頬を赤くしていた。


「ここは…」

「無事にマッチ売りの世界に来れたみたいね」


ひょこりとパームの頭から顔を出すファリルス。


ここが“マッチ売りの少女”の世界。
確かマッチ売りの少女の話は…
幼い頃に読んだ絵本の内容を思い出す。

大晦日の夜、少女はマッチを売り歩く。
マッチを売らなければ父親から暴力を振るわれる。しかし街の人々は少女には見向きもせずマッチは売れず、少女は中々家に帰ることは出来なかった。
寒空の中、少女は売り物のマッチに火を付け暖まろうとすると火の中に幻覚を見る。
暖かい暖炉やご馳走、しかしその幻覚は炎と共に消えてしまう。
もう一度火をつけるとそこには今は亡き祖母の姿が。少女は持っているマッチ全てに火を付け祖母に包まれながら天へと返った。

その様な内容だった気がする。


「アリス。まずはこの物語の主人公である少女を見つけるわよ」


ファリルスが此方を見ながら呟く

「物語の主人公…きっとこの世界ならマッチを売っている子よね?」

こんな寒空の中マッチを売り歩くだなんて考えるだけで過酷だ
しかし少女はそれを強いられているのだ


「しかし、ここは歪んでしまった世界だ。簡単に少女が見つかるとは思えないな」

インシェルも考え込みながら辺りを見回す

そうだここは本当の“マッチ売りの少女”の世界では無いんだ
普通に探して果たして見つかるのだろうか


「そもそも物語の歪みって具体的にはどんな事が起こっているの?」

「それは分からない。物語や歪みの進行具合によっても違うはずだ。物によっては物語の根本すら変わってしまっている可能性すらある」

物語の歪み…
そもそも何故そんな事が起きてしまっているんだろう
物語の主人公達は皆元の話では幸せになれたはずなのに。


いや…この世界の少女はそうではなかったのかもしれない


「辺りの人に話を聞いてみよう」

行き交う人々に話を聞いて回る事にした
この世界の現状が分からないうちは無闇に探し歩く事は得策では無い


「あ…ウサギが話しかけてきたらびっくりするよね…インシェ…る」




「そうですか。もし少女を見かけたら教えてください」


振り返ると当たり前のように人と話すインシェルの姿があった。

「え…驚かないの?」

「どうやらここの人間達には私を含めて皆人間に見えており、環境に適した姿に見えているようだね」


環境に適した姿…
随分都合のいい話だ
しかしこれで話を聞き回るのは楽になった


それから手分けし話を聞き回った
まさか自分がこんな赤の他人に話しかけ回る事になるとは思っても見なかった
初めのうちは緊張でまともに声も出なかったが、情報があまり手に入らない為腹を据えて声をかける事ができた


しかし聞けども聞けども中々情報は集まらない

そんなにこの辺りでは動いていないのだろうか


「「アリス~‼︎」」


後ろからパームとペームの声が聞こえ振り返る


「女の子の話、聞けたよ~」
「たよ~」

ニコニコと嬉しそうな表情をする2人
その2人とは裏腹に焦った表情でパームの頭から飛び出てくるファリルス

「アリス‼︎これは急いだ方がよさそうよ…」






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