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異世界で転生したら王だったので改革することした。
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俺の名前は北原陸人、二十歳。某大学に通っていた。通ったいたと過去形なのは、俺は死んだからだ。真面目で正義感はある方だと思う。その性格が仇となった。目の前で車に轢かれそうになった女の子を俺はとっさに飛び出して助けた。女の子は助かったが、俺は死んだ。
病院の霊安室で、母は泣き、弟は拳を握りしめ、妹は呆然としていた。
ごめんな、母さん、親孝行出来なくて。海人、彩香母さんを頼むな。
葬式も済み、四十九日も過ぎようとする頃、俺は吸い込まれる様に天を目指していた。遠くに見えるのは天の門の様だ。様々な人(?)が列を成して並んでる。この人俺と同じ世界の人と思われるのもいたが、死んでしまえばどの世界でも関係ないか。
天の門が近づいて来ると同時に何かもめている様な気配が。
近づくに連れ声がはっきり聞こえてくる。
一人の若い男が門を通過しようとするのを、門番が止めている。
「ですから貴方はまだ死んではいないのです」
「いや、俺は死んだ。だから早く通せ」
「無理です。死んだという証明書を提示して下さい」
証明書? 俺はいつのまにか手にしている紙を見つめた。何も書かれていない白い紙だが、揉めている男の横では紙を提示していた。門番が手にすると何やら文字の様なものが浮かんで来た。それを確認して奥の何本かなある道を指した。
「元の世界の場所へお返しします」
門番が杖で軽く地を叩く。
「い、嫌だからな!」
若い男は慌てて飛びのくと俺の方は逃げて来た。そしてハタと目と目が合う。
(へっ?)
よく似た俺と同い年位の男。男は俺に近づいて来ると持っていた証明書を奪い取った。
(えっ?)
と、思った時には男は門番を振り切り奥の道を勝手に進んで行き見えなくなった。
追って行った門番が戻ってきた。取り逃がしたのか、それ以上は入っていけないのか。その視線は今度は俺に注がれた。
(えー、俺どうなるの?)
「こうなっては仕方ありません。証明書を持っていない方は通せませんので、現生へお戻り頂きます」
そう言うと、トンと俺の足元を叩いた。ポッカリと穴が開く、俺は落ちて行く。
(俺、身体焼かれてるよな。どうなるの?)
ハッとして俺は目を覚ました。
(俺・・・生きてる?)
目を凝らし手を確認する。骨じゃない。ちゃんとした手だ。
「お気がつかれましたか」
声がした方を向くと、白髪の初老の男が俺を真上から見下ろしている。白い服を着ているから医者なのかな?
「陛下、大丈夫ですか?」
反対側から美丈夫な男が声を掛けてきた。しかも甲冑着てるし!
(誰? 陛下ってナニ?)
「あ、あの、此処は・・・」
俺の顔を心配気に見ていた二人が顔を見合わせた。
「陛下の寝室です」
(俺の寝室)
広い。窓が沢山ある。シャンデリアが下がってる。
「ええー!」
いきなり起き上がった俺を二人が押し留める。
「陛下、いけません。まだ怪我が完治してないのですから」
(怪我・・・俺は怪我してのか)
でもこの二人・・・誰?
「あの・・・すいません、お二人の名前は?」
「医師のフランチェックです。こちらは身辺警護を担当しているアンドルーです」
「はあ・・・」
反応の薄い俺にアンドルーが医師の袖を引っ張っる。
「陛下は大丈夫なのか」
「多分、頭を打っているので一時的な記憶障害では無いかと」
(俺、頭打ったのか)
頭に手をやれば包帯されていた。
「それでは私は草の調合してまいります」
医師は頭を下げて部屋を出て行った。
これからどうしようかと窓の外を見つめていると、ドア付近が騒がしくなった。
「陛下が、お気がつかれたのですか」
「ならば看護は私が!」
「何言ってるの。それは私よ」
「いいえ、私が!」
ワラワラと女性達が部屋の中になだれ込んで来た。
(な、何!!)
その女性軍団の前に両手を広げてアンドルーが制する。
「陛下は今目覚めたばかりです。お静かに願います」
その言葉に一団は立ち止まった。
「随分と騒がしいですね」
女性達の後ろから凛とした声が響いた。その声を聞きつけると女性達は綺麗に二手に分かれた。
(モーゼか)
違った。ひときわゴージャスな女性だ。女性は当然とばかりにツカツカと俺の側まで歩み寄ってきた。
「大事無いようで何よりです」
「あ、ありがとうございます」
その返答に女性は眉を寄せた。アンドルーが女性に近寄り耳打ちする。
「頭を打ったせいか、記憶に障害が出ているようです」
「記憶に障害?」
女性は俺をきつい目で俺を見据えると、
「私が誰だか分かりますか」と、聞いてきた。
「えーと、誰でしょう」
頭を掻いて答える俺にアンドルーが囁いた。
「皇太后のコーデリア様です」
皇太后・・・って、確か亡くなった王とかの妃の事だよな・・・って俺の母親!
こんな綺麗な人が俺の、あり得ない。
「お兄様、ご気分は如何ですか」
ポカーンとしている俺に皇太后の後ろからヒョコッと可愛い少女が笑顔で挨拶してきた。
(か、可愛い。もろおれ好み)
余りに惚けて見つめていたのか、皇太后がズイと一歩前に出て怖い顔で言う。
「娘のフィオナです」
(なんだ妹か、ガックシ)
「全く妹までに・・・無事なら何よりです。今日はこの辺で失礼します。フィオナ行きますよ」
クルリと踵を返して後ろを振り返る事なく去って行く。その後ろを笑顔で小さく手を振りながら付いていく。その姿が可愛い。
皇太后達が部屋から出ていくと、控えていた女性達が今度は押し寄せて来た。
「記憶障害って本当ですか?」
「陛下、私の名前分かりますか?」
「マイヤです」「ローズです」
今度は口々に名前を連呼する。一度に言われても困るよ。
「陛下はまだ安静が必要です。看護は然るべき人物かやりますのでお妃様達はお引き取りください」
アンドルーの声が響いた。女性達はシブシブ部屋から引き上げて行く。
助かったけど変な言ってたよな。
「ねえねえ、今の女性達って・・・」
「陛下のお妃様達ですか?」
(!!!)
「あのー、全部俺の・・・」
「お妃様です」
「! 二十人位いたよね」
「以上ですね」
(どんだけ絶倫だったんだよ、逃げたオレ!)
病院の霊安室で、母は泣き、弟は拳を握りしめ、妹は呆然としていた。
ごめんな、母さん、親孝行出来なくて。海人、彩香母さんを頼むな。
葬式も済み、四十九日も過ぎようとする頃、俺は吸い込まれる様に天を目指していた。遠くに見えるのは天の門の様だ。様々な人(?)が列を成して並んでる。この人俺と同じ世界の人と思われるのもいたが、死んでしまえばどの世界でも関係ないか。
天の門が近づいて来ると同時に何かもめている様な気配が。
近づくに連れ声がはっきり聞こえてくる。
一人の若い男が門を通過しようとするのを、門番が止めている。
「ですから貴方はまだ死んではいないのです」
「いや、俺は死んだ。だから早く通せ」
「無理です。死んだという証明書を提示して下さい」
証明書? 俺はいつのまにか手にしている紙を見つめた。何も書かれていない白い紙だが、揉めている男の横では紙を提示していた。門番が手にすると何やら文字の様なものが浮かんで来た。それを確認して奥の何本かなある道を指した。
「元の世界の場所へお返しします」
門番が杖で軽く地を叩く。
「い、嫌だからな!」
若い男は慌てて飛びのくと俺の方は逃げて来た。そしてハタと目と目が合う。
(へっ?)
よく似た俺と同い年位の男。男は俺に近づいて来ると持っていた証明書を奪い取った。
(えっ?)
と、思った時には男は門番を振り切り奥の道を勝手に進んで行き見えなくなった。
追って行った門番が戻ってきた。取り逃がしたのか、それ以上は入っていけないのか。その視線は今度は俺に注がれた。
(えー、俺どうなるの?)
「こうなっては仕方ありません。証明書を持っていない方は通せませんので、現生へお戻り頂きます」
そう言うと、トンと俺の足元を叩いた。ポッカリと穴が開く、俺は落ちて行く。
(俺、身体焼かれてるよな。どうなるの?)
ハッとして俺は目を覚ました。
(俺・・・生きてる?)
目を凝らし手を確認する。骨じゃない。ちゃんとした手だ。
「お気がつかれましたか」
声がした方を向くと、白髪の初老の男が俺を真上から見下ろしている。白い服を着ているから医者なのかな?
「陛下、大丈夫ですか?」
反対側から美丈夫な男が声を掛けてきた。しかも甲冑着てるし!
(誰? 陛下ってナニ?)
「あ、あの、此処は・・・」
俺の顔を心配気に見ていた二人が顔を見合わせた。
「陛下の寝室です」
(俺の寝室)
広い。窓が沢山ある。シャンデリアが下がってる。
「ええー!」
いきなり起き上がった俺を二人が押し留める。
「陛下、いけません。まだ怪我が完治してないのですから」
(怪我・・・俺は怪我してのか)
でもこの二人・・・誰?
「あの・・・すいません、お二人の名前は?」
「医師のフランチェックです。こちらは身辺警護を担当しているアンドルーです」
「はあ・・・」
反応の薄い俺にアンドルーが医師の袖を引っ張っる。
「陛下は大丈夫なのか」
「多分、頭を打っているので一時的な記憶障害では無いかと」
(俺、頭打ったのか)
頭に手をやれば包帯されていた。
「それでは私は草の調合してまいります」
医師は頭を下げて部屋を出て行った。
これからどうしようかと窓の外を見つめていると、ドア付近が騒がしくなった。
「陛下が、お気がつかれたのですか」
「ならば看護は私が!」
「何言ってるの。それは私よ」
「いいえ、私が!」
ワラワラと女性達が部屋の中になだれ込んで来た。
(な、何!!)
その女性軍団の前に両手を広げてアンドルーが制する。
「陛下は今目覚めたばかりです。お静かに願います」
その言葉に一団は立ち止まった。
「随分と騒がしいですね」
女性達の後ろから凛とした声が響いた。その声を聞きつけると女性達は綺麗に二手に分かれた。
(モーゼか)
違った。ひときわゴージャスな女性だ。女性は当然とばかりにツカツカと俺の側まで歩み寄ってきた。
「大事無いようで何よりです」
「あ、ありがとうございます」
その返答に女性は眉を寄せた。アンドルーが女性に近寄り耳打ちする。
「頭を打ったせいか、記憶に障害が出ているようです」
「記憶に障害?」
女性は俺をきつい目で俺を見据えると、
「私が誰だか分かりますか」と、聞いてきた。
「えーと、誰でしょう」
頭を掻いて答える俺にアンドルーが囁いた。
「皇太后のコーデリア様です」
皇太后・・・って、確か亡くなった王とかの妃の事だよな・・・って俺の母親!
こんな綺麗な人が俺の、あり得ない。
「お兄様、ご気分は如何ですか」
ポカーンとしている俺に皇太后の後ろからヒョコッと可愛い少女が笑顔で挨拶してきた。
(か、可愛い。もろおれ好み)
余りに惚けて見つめていたのか、皇太后がズイと一歩前に出て怖い顔で言う。
「娘のフィオナです」
(なんだ妹か、ガックシ)
「全く妹までに・・・無事なら何よりです。今日はこの辺で失礼します。フィオナ行きますよ」
クルリと踵を返して後ろを振り返る事なく去って行く。その後ろを笑顔で小さく手を振りながら付いていく。その姿が可愛い。
皇太后達が部屋から出ていくと、控えていた女性達が今度は押し寄せて来た。
「記憶障害って本当ですか?」
「陛下、私の名前分かりますか?」
「マイヤです」「ローズです」
今度は口々に名前を連呼する。一度に言われても困るよ。
「陛下はまだ安静が必要です。看護は然るべき人物かやりますのでお妃様達はお引き取りください」
アンドルーの声が響いた。女性達はシブシブ部屋から引き上げて行く。
助かったけど変な言ってたよな。
「ねえねえ、今の女性達って・・・」
「陛下のお妃様達ですか?」
(!!!)
「あのー、全部俺の・・・」
「お妃様です」
「! 二十人位いたよね」
「以上ですね」
(どんだけ絶倫だったんだよ、逃げたオレ!)
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ごめんなさい
作者様の作品を見たら
同じ題名が沢山あります
内容は全て違うみたいですが、
話は関連があるみたいですね
なぜ?この書き方か?
読む順番も?しか
もし、関連あるなら
一つの作品では、駄目ですか?
一つの作品にしたいのですがどうやって繋がるのか分からない(T_T)良かったら教えて下さい。