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第一章 風の谷“ミスティア”
第二話
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森の中を歩きながら、彩斗は携帯食料の確認をしていた。やはりどんな食べ物があるのか気になる。流石に自分が食べるんだしな。
あったのは薫製のような何の肉かわからない干し肉と瑞々しい果実、そしてこれまた何かわからない干し魚だった。
取り敢えず小腹が空いたので、干し肉を食べてみた。うん、普通に肉だ。ちょっと食感が独特だけど。
魚も味自体は変わらなかった。ただ形が……なんだこれ。
「意外にイケるけど何の肉なんだ? これ……」
得体がしれないが美味しいのはいいことだ。これなら食べられる。満足げに頷き、何かあった時用の分は残して、残りの果実を見た。
赤色い梨のような形の果実を手に取る。甘い香りが食欲をそそる。
惹かれるようにかじりついた果実からは、しゃくっとした瑞々しい食感と口中に広がる桃のような甘い味がした。
「美味い!」
しゃくしゃくしゃくと、あっと言う間に食べ終わってしまった彩斗は、この世界の果物が大好きになっていた。
そうなると、必然的に周りの森に生えている果実の味も気になってくる。彩斗は、果物が昔から大好きで、毎日欠かさず何らかの果物を食べていたからだ。
「あれ? なんだこれ」
虹色に光る丸い果実。一本の草から生えている。今まで精霊達に必死で止められていたため食べれなかったがこれなら。
気になってそれを取って食べてみた。後の自分ならこういうだろう。「そんな怪しそうなもの食べるな!」と。その瞬間、よくわからない空間に意識が飛んだ。真っ白で何もない空間。
そこで、声が問い掛けてきた。
『汝、力を望むか?』
どこか澄んだ心に響く声に、聞かれた内容を考える。
彩斗は特別な力など欲しいと思ったことはなかった。大切な人たちを守れなかったから、今更力なんていらない、と。
だから、本当は凄く精霊達が憎かった。勝手に力を押し付けて何も言わせてくれない。
そのせいで気味悪がられて友達なんていなかった彩斗の気持ちが彼等・・にわかるのだろうか。でも、そんな彼等だけなのだ。
本当の意味で彩斗を必要としてくれたのは。
だから、彩斗の答えは決まっている。
「力? 俺はただ大切なものを守りたかっただけだだけだ。だから、力なんていらないし、必要ない。……寧ろ有り余ってるくらいだ」
きっぱりといらないと答えた彩斗に、謎の声の主は暫く黙っていた。
『……そうか。汝は力など望まぬか。ならば、その果実をそなたにやろう』
「えっ!? くれんのか。っていうか食べちゃったぞ」
『好きにしろ。あとそれが生えていた草は万能薬になる。力の代わりに持って行け』
「サンキュ!」
それきり声は沈黙し、なにも言わなかったから気付かなかった。この果実を食べてよかったのかを。そして、周りの精霊たちまで動きを止めていたことに。
「うーん……、やっぱ不気味な色。でも害は無さそうだしな。美味いしこのまま食っちゃえ」
精霊たちが止める間もなくかぶりついた彩斗に、ふわふわと心配気に精霊が彩斗を囲む。もぐもぐと食べていた彩斗だったが、すべて食べ終わった瞬間胸に熱いものがこみ上げてきて膝を付いた。
胸が苦しかったのは一瞬。後に残ったのは、彩斗の中に込み上げる得体の知れない力。
「何だったんだろ?」
身体に異常がないことを確認して果実が生えていた草の葉と茎を集めて“ダーク・ルーム”に仕舞う。
それからまた歩き出した。そこで、彩斗は精霊に声を掛ける。
「なぁ、お前らどっちに人がいるかわかる?」
すると、精霊たちは皆が同じ方向を指差した。
それに彩斗は肩を落とす。
「初めからこうすりゃ良かった」
今更だと彩斗は精霊達について行った。
暫く歩くと森の中から林道に抜けた。これは街道だろうか。
やっとここまで来たと体の力を抜いた瞬間、馬の蹄ひづめの音と嘶いななく声、そして人が争っている音が聞こえてきた。
あったのは薫製のような何の肉かわからない干し肉と瑞々しい果実、そしてこれまた何かわからない干し魚だった。
取り敢えず小腹が空いたので、干し肉を食べてみた。うん、普通に肉だ。ちょっと食感が独特だけど。
魚も味自体は変わらなかった。ただ形が……なんだこれ。
「意外にイケるけど何の肉なんだ? これ……」
得体がしれないが美味しいのはいいことだ。これなら食べられる。満足げに頷き、何かあった時用の分は残して、残りの果実を見た。
赤色い梨のような形の果実を手に取る。甘い香りが食欲をそそる。
惹かれるようにかじりついた果実からは、しゃくっとした瑞々しい食感と口中に広がる桃のような甘い味がした。
「美味い!」
しゃくしゃくしゃくと、あっと言う間に食べ終わってしまった彩斗は、この世界の果物が大好きになっていた。
そうなると、必然的に周りの森に生えている果実の味も気になってくる。彩斗は、果物が昔から大好きで、毎日欠かさず何らかの果物を食べていたからだ。
「あれ? なんだこれ」
虹色に光る丸い果実。一本の草から生えている。今まで精霊達に必死で止められていたため食べれなかったがこれなら。
気になってそれを取って食べてみた。後の自分ならこういうだろう。「そんな怪しそうなもの食べるな!」と。その瞬間、よくわからない空間に意識が飛んだ。真っ白で何もない空間。
そこで、声が問い掛けてきた。
『汝、力を望むか?』
どこか澄んだ心に響く声に、聞かれた内容を考える。
彩斗は特別な力など欲しいと思ったことはなかった。大切な人たちを守れなかったから、今更力なんていらない、と。
だから、本当は凄く精霊達が憎かった。勝手に力を押し付けて何も言わせてくれない。
そのせいで気味悪がられて友達なんていなかった彩斗の気持ちが彼等・・にわかるのだろうか。でも、そんな彼等だけなのだ。
本当の意味で彩斗を必要としてくれたのは。
だから、彩斗の答えは決まっている。
「力? 俺はただ大切なものを守りたかっただけだだけだ。だから、力なんていらないし、必要ない。……寧ろ有り余ってるくらいだ」
きっぱりといらないと答えた彩斗に、謎の声の主は暫く黙っていた。
『……そうか。汝は力など望まぬか。ならば、その果実をそなたにやろう』
「えっ!? くれんのか。っていうか食べちゃったぞ」
『好きにしろ。あとそれが生えていた草は万能薬になる。力の代わりに持って行け』
「サンキュ!」
それきり声は沈黙し、なにも言わなかったから気付かなかった。この果実を食べてよかったのかを。そして、周りの精霊たちまで動きを止めていたことに。
「うーん……、やっぱ不気味な色。でも害は無さそうだしな。美味いしこのまま食っちゃえ」
精霊たちが止める間もなくかぶりついた彩斗に、ふわふわと心配気に精霊が彩斗を囲む。もぐもぐと食べていた彩斗だったが、すべて食べ終わった瞬間胸に熱いものがこみ上げてきて膝を付いた。
胸が苦しかったのは一瞬。後に残ったのは、彩斗の中に込み上げる得体の知れない力。
「何だったんだろ?」
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それからまた歩き出した。そこで、彩斗は精霊に声を掛ける。
「なぁ、お前らどっちに人がいるかわかる?」
すると、精霊たちは皆が同じ方向を指差した。
それに彩斗は肩を落とす。
「初めからこうすりゃ良かった」
今更だと彩斗は精霊達について行った。
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