きのまま錬金!1から錬金術士めざします!

ワイムムワイ

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追われる者/重罪人/助けたい

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 トラジが花まみれにされてから、数日が過ぎたある日の事だ。

 ゴンッゴンッゴンッ!

 ある男が玄関にてノックをしていた。
 だが、足音も無く何の声もしない。
 何の反応もなく人の気配はなかった。

「ふむ。誰もいない、か・・・・・・」

 歳は50を過ぎたと思われ、白髪で短い髪の男。ちなみにこの白髪は生れつきである。
 あと、体を鍛えていたのだろう。ややガッシリとした体つきの紳士風の男は、ある玄関の前で立ち尽くした。

「・・・・・・仕方ない。時間を置いて出直すとしよう」

 トラジとミィナが組合で仕事をしていた朝の出来事である。




 トラジとミィナが朝の仕事終えた組合にて。

「ふぬぬ~!」
「ミィナさん!魔力をもっと小さい玉にするのよ!」
「りょ、了解です~!」

 ミィナは両手に魔力を集めてそれを小さい玉にしようと試みていた。
 だが、魔力を集めボールを作るまではすんなりだったが、それを小さく圧縮することが出来ないでいた。

「よく分からんががんばれ!」
「・・・・・・ダメね。玉どころか手でスライムを握るかのごとく、グニャグニャね」
「ナイミちゃんは~、基礎を頑張っててください!」
「そうねと言いたい所だけど、ミィナさんもういいわ。まだ鑑定の訓練をするには早かったみたいだから、また今度にしましょう」
「わ、分かりました~・・・・・・」

 仕事終わりに黒猫に呼ばれたミィナとトラジ。それと暇だからと強引に組合の仕事にまでついて来たナイミ。
 黒猫がミィナ達を呼んだ理由は、魔力のコントロールがどれくらい出来るかテストをするためだった。
 そのテスト次第では鑑定の訓練をしていくという話なのだが、黒猫の評価ではまだ鑑定は早いとの事だった。

「なぁ、黒猫。実際の所、ミィナの鑑定の訓練は間に合いそうか?」
「そうねぇ。私が考えていたより成長は早いし、この調子なら鑑定の試験には十分に間に合うと思うわ。でも、油断はしないで頂戴ね?他の使い魔になった子達は既に鑑定の訓練を少しずつ開始してるらしいし、出遅れているのは確かだから」
「が、がんばります~・・・・・・」
「試験で不甲斐ない結果を残さない様に頑張るのよ。ミィナ」
「ナイミちゃんに~、言われたくありません!」

 黒猫はナイミに目を向けた。
 普通ならありえない2人目の使い魔。
 ミィナとは双子だという話は納得していたが、黒猫にとってナイミは未だに謎の多い相手であった。

「ご主人様にも一応話をしておいたのだけど・・・・・・。『実技の試験なんかじゃ、他の受験者達に合わせる形でやるだろうからミィナが頑張るしかないさね』との事よ」
「なるほど・・・・・・。ま、確かにそうだよな、使い魔が2人もなんて普通ありえないんだもんな」
「その使い魔が2人になった話も伏せておきなさいね。前に話があったと思うけど、表向きだけでも主人はミィナさんで使い魔がトラジ。他の使い魔はいない事にするのよ?」
「やっぱ、そうなるよなぁ」
「ですね~」
「私は不服です!」
「ナイミさん。不用意な事はしないようにね?」
「そうですよ~。結局トラジさんが困ることになるので」
「ぐぬぬ・・・・・・」
「頼むから我慢してくれ」

 そして、組合から家に帰る時の事だった。

「大人しくしろ!!」
「いやっ!離して!!」

 家に帰る途中で遭遇したのは、下っ端の兵士のような甲冑を纏った男がミィナと同じくらいの女の子を地面に押さえつけるように捕まえていた現場だった。
 いきなりの非日常的な光景に言葉を失い立ち止まるミィナ達。
 だが、言葉を失い立ち止まったのは何も非日常的な光景に遭遇しただけではなかった。

「あ、あれは・・・・・・」

 押さえ付けられた女の子とミィナの目が合ってしまう。
 女の子は唇を噛んでつい口から出そうになった言葉を噛み殺し、別の言葉を叫んだ。

「アーガストやりなさい!!」

 女の子がそう叫んで現れたのは猫だった。
 それも、ミィナ達の見たことのある猫・・・・・・。

「主を放せ!!」

 アーガストと呼ばれた猫は女の子を地面に押さえ付けていた兵士の腕に思いっきり噛み付きついでに爪も立てた。

「痛っ!!」

 兵士は反射的に噛まれた腕を振り回し噛み付いた猫を振り払おうとする。
 女の子はその兵士の隙を狙って素早く立ち上がり、ミィナ達の方へ走ってきた。
 トラジは助けを求めての事だと考えたが違っていた・・・・・・。

「し、しーちゃ――」
「誰だか知らないけどそこをどいて!!」

 ミィナが女の子・・・・・・、しーちゃんに向かって声をかけようとしたが、当のしーちゃんによって遮られた。

「えっ・・・・・・」

 ミィナは訳が分からなかった。
 一番親しい友人のはずのしーちゃんがまるで会った事もない他人のような反応をしたからだった。
 ただ、その顔は辛そうにも見えた。

「ミィナ道を開けてやるんだ・・・・・・」

 トラジはしーちゃんの言動の意図を理解し小声でミィナに指示をした。

「おい!娘があっちに逃げた!応援を呼んできてくれ!!」

 兵士らしき男の応援を呼ぶ声を聞いてしーちゃんは意を決したように、ミィナとナイミを押し退けるように強引に間を通り抜けて行った。

「しーちゃん・・・・・・」
「トラジ、ミィナ様。主が申し訳ない・・・・・・」

 アーガストことあっくんがしーちゃんの行動について謝罪をした。
 他に何か説明をする事もなくただただ、あっくんは下を向き申し訳なさそうにしていた。

「謝罪も説明もしなくていい。主人を追いかけるんだろ?早く行ってあげてくれ」
「感謝!」

 あっくんはそう言うとしーちゃんの後を追いかけて行くが、友人に知らない他人扱いされたミィナはとても不安気だった。

「い、一体何が・・・・・・」
「トラジ様は何か理解してそうですが、分かるのですか?」
「しーちゃんの行動の意図だけはなんとなくな。最初は助けを求められるのかとも思ったんだがな」

 そう話してる間にも状況がどんどん変化していく、応援と思われる兵士がやってきてしーちゃんの向かった方へ走っていく。

「ナイミ!兵士の一人を捕まえて何があったか聞いてみてくれ!」
「了解しました」

 ナイミは素早く兵士達の最後尾を走っていた兵士に、容赦なく足を引っ掛けて転倒させその上に跨り文字通り捕まえた。

  ちょっ!!!!捕まえるってそういうことじゃねぇ!!

「いきなり何をするんだ!」
「ちょっと聞きたい事があるだけよ。さっきの女の子を追い回していたようだけど、何があったの?」
「あの女の子はな、国家転覆の罪を問われている重罪人で俺達は国王の命で捕まえに来ただけだ!答えたんだからさっさと放せ!早く行かないと俺が怒られるんだよ!」
「ナイミもういい。そいつを放してやってくれ」

 ナイミが兵士を解放すると兵士は急いで走って行った。

「国家転覆ってほんとに何が起こってんだよ・・・・・・」

  だが、これでしーちゃんの言動がミィナの為だった事だけはハッキリした。
  つっても、それ以外は謎でサッパリだがな・・・・・・。

「こっ、こここっ・・・・・・」

 ミィナはパニックを起こしかけていた。

「国家転覆罪ね。落ち着きなさいミィナ」
「で、で、でもし、しーちゃんがっ!!」
「ミィナ静かに。しーちゃんと言うのも今は禁句のつもりでいた方がいいかもしれない。でないと、しーちゃんが逆に悲しむぞ?」
「トラジ様。どういう事ですか?」
「俺やミィナを巻き込まない為に、あえて見た事もない他人の振りを兵士の前でしたんだよ。まさか、国家転覆罪に問われてるなんて予想外過ぎたが・・・・・・」

  いや、俺の事まで考えてはないか・・・・・・。

 トラジの脳裏で殺意が沸いたとか言って睨まれた時の光景が思い出される。

「わ、私はど、どうすれば・・・・・・」
「馬鹿ね」

 ナイミは呆れるようにミィナに言った。

「出来ることはないわよ。前の犯罪者集団が襲ってきたわけじゃないのよ?しかも国家転覆罪。下手をすれば、私達まで処刑されかねないわね」
「で、でも!しーちゃんは何か悪い事をする子じゃないんです!!きっと何か訳が――」
「ミィナ!しーちゃんは禁句って言われたばかりでしょ!!」
「で、でも――」
「わかった」
「トラジ様!」

 この時ばかりは、ナイミがそれだけは無いと言わんばかりの目でトラジを見る。

  ナイミの言いたい事は分かる。
  助け出せる確率は限りなく低いだろう事も理解できる。
  今まで錬金術士を目指して頑張って来たものを、全部どぶに捨てる事になるかもしれない。

 トラジは顔を上げてミィナの顔を見た。
 もう涙目であった。

  俺はこの子の為に頑張ってやってきたんだよなぁ。
  錬金術士だって正直ミィナの為に目指してるようなもんだった。
  今は少し錬金術士ってのも面白く感じ始めてるけども・・・・・・。
  それに、国家の転覆の容疑ってなら助けになれるのは俺達だけかもしれない。

 トラジの目の前のミィナと脳裏にウリリの顔が浮かぶ。

  助けられるとは限らない。
  けど、見捨てれるか?
  短い間でも一緒に寝泊まりして、祭りにだって一緒に行った仲だぞ?

 トラジは覚悟を決めた。

  都合のいいあるかどうか分からない助けを当てにしてさ。
  あいつらを見捨てられるかよっ!!

「俺は猫だからな!人間のルールなんぞしらん!ミィナが助けたいって言うなら、やるだけやってみるさ」
「助けたいです~!!」
「ただ、覚悟は必要だぞ?錬金術士にはもうなれないかもだぞ?」
「ご、トラジさんさえ居れば大丈夫です~!」

  つっても、ミィナが錬金術から生まれた件だけは闇に葬らないとだけどな。
  どっかの兄弟みたいに家ごと丸焼きにでもするかな?
  懐かしい。

「ミィナ!トラジ様を危険にさらすかもしれないのよ!ほんとに分かっているの!?」
「そ、それは・・・・・・」
「それに関しては大丈夫だろう。なんせ俺は猫だからな。関係ない猫がそんな事を自発的にするとか誰も思わないし、罪にも問わないだろ。その時に罪に問われるのは、むしろミィナ達だろうから覚悟がいるがな」

  いや、ほんとは分からないけどな。
  つーか、むしろミィナ達が危なそうなら全責任を俺が負う覚悟だけどな。
  なんたって俺の方が主人だし命令もあるからな。

「それはそうかもしれませんが・・・・・・」
「ナイミは嫌か?事が事だし強制はできないが」
「強制どころか、命令だってほとんどしないじゃないですか。・・・・・・分かりました。お手伝います」
「ナイミちゃん~・・・・・・」
「トラジ様。勝算はあるんですよね?」
「わからん。だが、この手の問題でやる事は一つだ」
「そ、それは~?」
「国外へ逃げる、だ」

 トラジとミィナはこうして危険を承知でしーちゃんを助ける事を決めたのだった。
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