148 / 184
王都街道編 8・9日目
2-9-6 奴隷たちの事情?要らない娘たち?
しおりを挟む
ハティが帰ってくる前に色々考えないといけない事がある。
とりあえず一番厄介なのが、ハティが連れ帰る男性冒険者たちだ。彼らが逃げ出さなければ、ひょっとしたら先に殺された2名以外は死ななくても済んだのかもしれないのだ。つまり生き残った女性冒険者たちと、逃げた男性冒険者たちがもめるのが目に見えているので面倒なのだ。
今回の護衛依頼で冒険者は2PT雇われたのだが、2PTの中で強い2名が真っ先に殺されたのを見て、1PTがまるまる逃げ出したのだ。仕方なく残った方のパーティーメンバー5名で守りにあたったのだが、多勢に無勢……俺たちが到着するまでに更に2名殺されて、残留したパーティーの男は全て殺されてしまったのだ。
女性冒険者が殺されずに生きているのは、生け捕りにして散々強姦した後、闇の奴隷商に売るためだ。
ある意味助かったのは商品価値がある若さ故なのだが、逆に年配のベテラン女性冒険者だったら、そもそもこの護衛依頼の危うさを警戒して参加していなかったと考えれば、何とも皮肉な話だ。
俺が女性冒険者たちの気持ちを無視して、逃げ出した奴らを助けるのには一応理由はある……決してフィリアや未来にお願いされたからだけではない。俺は彼女たちほど優しくない……。
ナビーに確認しつつ、奴らの言い訳の想定をいろいろ思案しておく。
次に問題なのは奴隷たちだ。助けたからには売るにしろ解放するにしろ、最後まで面倒をみる必要がある。
『……マスター、そのことでお話があります』
『どうした? なにか問題でもあるのか?』
『……はい。彼女たちを調べたのですが2名仲間にするには問題のある娘がいます』
『問題? 具体的にどんな問題があるんだ?』
『……1人は人族のマスターから見て左の娘ですが……彼女は農家の娘なのですが、それを聞いて何かお気づきになりませんか?』
『う~~ん……農家の娘にしては日焼けしてないとか?』
『……ふふふ、正解です! 流石です! 一発正解です!』
『で? 病気かなにかで農作業ができないほど病弱な娘とかなのか?』
『……彼女は何度両親に仕事をしろといわれても一切手伝おうとしなかったのです。自分が綺麗だと幼少時より自覚していて、いずれどこかのお金持ちに見初められて嫁ぐから、日焼けなんかしたら価値が下がってしまうと言って、これまでなにもしていません』
『ニートかよ! この世界にもパラサイトって居るんだな……』
『……家族も彼女の美しさは認めていたので、せめて家の中の手伝いだけでもすれば良かったのですが、洗濯や炊事は手が荒れる……調理は火傷や怪我をしたらどうするの、とか言ってそれも手伝わない……とうとう彼女抜きの家族会議で、全員一致で奴隷として売ることに決まりました。その日のうちに商都の奴隷商人に家にくるよう手配し、到着後直ぐに彼女の食事に一服盛られて、寝てる間に終身奴隷として契約されてしまったのです』
『本人の同意なしでもいいのか?』
『……寝てる間に契約書に拇印を押されていますが、親の同意書が添えてあるので合法です』
『まぁ、自業自得か……この世界じゃ遊ばせておくほど裕福な家ってあまりないのだろ?』
『……貴族ならともかく、農家ではまずないでしょうね。日本のように農家の地主とかはなく、地主とは領主である貴族のことですからね』
『終身奴隷ってことは、完全に捨てられたって事だよな?』
『……ですね。終身奴隷は何でも有りなので、若くて綺麗な娘は性奴隷として売られる事が殆んどです。それを解っていてそういう契約をしたってことは、家族全員そうとう腹に据えかねるものがあったのでしょう』
『でも、その家族たちはなんだかんだ言っても、やっぱり良心の呵責に今は苦しんでいるのだろ?』
『……いえ。予想以上に高額で穀潰しのバカ娘が売れたと、家族で喜んでいます』
『彼女、余程酷かったんだな……そういわれてみれば、なんか嫌な感じの目つきでこっち見てるな……』
『……マスターをどんな奴か観察しているのですよ。チョロそうなら誘惑して奴隷解放してもらう気のようですね。悪臭がするほど酷い性格の者ではないのですが、なにせこれまで何もやってこなかった家族に捨てられるほどの穀潰しのバカ娘……一切役に立たないでしょう。ああ、できることが1つありました。マスターのオナペットにはできるかもです』
オナペットって……性処理は彼女以上に可愛い嫁が一杯いるので間に合ってます。
『よし! あの娘は可愛いけど、俺もいらんわ! で、もう1人の問題児は?』
『……マスターから見て、右側にいる猫族の娘です。彼女は犯罪奴隷として売りに出される予定の娘ですが、手癖が悪く嘘吐きなのです。【奴隷紋】で縛ることはできますが、元の性格の悪さは【奴隷紋】ではどうにもできません……マスターなら臭ってみればすぐに理解できるはずです』
性格が悪いと個人香が悪臭になるんだったな。
『犯罪奴隷ってことは何かやったんだよな?』
『……彼女は貴族家に契約奴隷として奉公に出ていたのですが、その貴族家から家財を時々盗んで売っていたのです』
『そういう犯罪行為は【奴隷紋】で縛ってたのじゃないのか?』
『……嘘が上手く、貴族の主人から信用されていたようで、縛りを殆んどかけられずに自由にされていたようです。容姿が可愛いので、少し甘えただけで、コロッと騙されたようですね。売り払った物が高額なため、その補てんのため彼女も終身奴隷です』
『盗んだ品を売った現金はどこにいったんだ?』
『……家族に仕送り……とかなら可愛気があったのですが、服やアクセサリーを買って所持していたようです。それを全部売って貴族家に返済し、足らない分の3倍額が彼女の返済金になります。約9千万ジェニーです』
ジェニーはこの国の通貨単位だったな……多少物価は違うが、1ジェニー約1円で換算していいそうだ。
『なるほどな……この娘も要らないな。それにしても皆、可愛いよな。桜ほどではないけど、あの白い白狼族の娘とか、穂香や沙織ちゃんレベルで可愛いよな。この世界って結構可愛い娘が多いのか?』
『……彼女たちは、年に1回年始に王都で開催される、この国最大規模のオークション大会に出品予定の娘たちです。年始のこのオークションは、厳選されたレアな商品しか出品できない規則があるようで、国内外から貴族や商人がお宝や美人な高級奴隷を求めて沢山集まってくるようです』
『だから、これほど粒揃いなんだ……彼女たちは年始用に厳選された特別品なんだな、納得だ』
彼女たち2人に、このまま期待を持たせたままにしておくのはあまりよろしくない。
「ちょっと奴隷の娘たち、こっちにきてもらえるか」
俺の呼びかけで奴隷たちが俺の前に集合する。
「俺の名前はリョウマだ。今から君たちの主人になるわけだが、先に【奴隷紋】の縛りを幾つかかけておく」
1、身の危険を感じない限り、許可なく逃げ出すな
2、犯罪行為をするな
3、自傷行為をするな
もう1つあるのだが、今はあえて組み込まないでおく。
「以上たった3つだ。それと灰狼族のあなたから順番に名前と年齢を言って自己紹介をしてくれるかな。おっと、先に君と君はこっちにきてくれ……じゃあ、順番に自己紹介よろしく」
・アレクセイ 26歳 灰狼族 レア種 元冒険者で貴族に騙され犯罪奴隷に落ちる
・セシル 17歳 人族 商家の娘だったが、家族全員借金奴隷として奴隷落ち
・ミーニャ 16歳 黒豹族 レアな猫種 母親の高額な治療費の為に奴隷落ち
・アルヴィナ 16歳 白狼族 超レア種 盗賊に襲われ、奴隷商に売られる
・リリー 15歳 犬族 村で保護されていた捨て子だったが、大不作でこの秋に売られてしまう
・ベル 15歳 犬族 農家の娘 リリーと同村で仲良し 同じく不作で、家の為に身売りする
・ルフィーナ 18歳 兎人族 超レアな種族で、森でキノコ狩り中に奴隷狩りに遭う
『やっぱ、奴隷になった理由がいろいろ重いな……』
『……身売りさせられるような奴隷は、大抵個人が抗えないような大きな理由があります』
『……マスター、人狼族は偶然かもしれませんがロシア語名が多いようですね。アレクセイは護るという意味です。アルヴィナは白とか純粋なという意味があります』
『へ~、彼女にぴったりだな! 凄く良い名前だ!』
『……アレクセイも、彼にピッタリな良い名前だと思うのですが……』
「あの! 私の名前は―――」
「あ、君たちの名前は言わなくていい。明日商都に行ったら、君たち2人は奴隷商に売りに出す」
「「どうして私たちだけ売られるのですか!?」」
「俺が言わなくても、自分たちが一番分かってるでしょ?」
「「分かりません!」」
『……マスター、他の娘たちが結局自分たちも直ぐ売られるんだと不安になったようです。ちゃんと説明してあげてください』
確かに……いきなり売るとか言っちゃったから、他の娘たちまで俺を蔑んだ目で見てるな……。
「そこの人族の君は、農家の娘なのに17年間仕事もせず、親に寄生して家族に見捨てられて売られたんだろ? 農家の娘のくせに一切日焼けもなく色白なのはおかしいだろ? 同じく農家出のリリーとベルはこんがり小麦色な肌をしてるだろ。手も鍬で耕すからマメだらけ……働き者の良い手をしてる。何もしない極道者のお前は要らないんだよ。何もしてこなかったから、一切家事もできない役立たずだろ?」
「なんで、あなたがその事を知っているのですか!? さっき会ったばっかりなのに!」
「それと猫族の君は、嘘吐きで手癖も性格も悪すぎる……そういう娘も当然うちには要らない」
「違うのです! 前の主人の誤解なのです!」
「ほら……またそうやって嘘を平気で吐く……奴隷たちに4つ目の縛りだ! 主人とその仲間に今後一切嘘を吐くな!」
ここでさっき組み込まなかった縛りを取り入れる。
「………………」
「どうした? もう言い訳しないのか? 嘘を吐いたらどうなるか見たいから言ってみろよ」
「くっ………………」
うわ~可愛かった顔が、めっちゃ睨んでおっかない顔してる。これが本来の彼女の性格がにじみ出た顔なんだな……ナビーに感謝だ。
「それとミーニャ。君の病気のお母さんな、神殿の診療所に行ったんだけど、結局治ってないんだよ。君には『ミーニャのおかげで治った、ありがとう』って言ってるだろ? あれ、君を想った優しい嘘なんだ。身売りまでして作ってくれたお金を半分無駄にしちゃったので、君の両親はその事を言い出せずに、お母さんは今も病気で苦しんでいる」
「嘘! だってお母さんは治って元気になったって……うそ……」
「心配しなくていい。俺はこの世界でもおそらく一番優れた治療魔法が使える。商都に行ったら君のお母さんは、俺が治してあげるから、心配しなくていいよ」
「……本当?……もし、お母さんが治ってなかったら、ご主人様が治してくれるの?」
「ああ、どんな不治の病でも治してあげるから心配しなくていい。それと、不安そうななので他の娘たちに言っておく。この問題児の2人以外は娼館などに売ったりしないから安心してくれ。アレクセイは後で腕を治してやるので、夜までは我慢してくれ」
「ナッ! お前部位欠損も治せるほどの術者なのか!? ウゲッ―――
はい、女性冒険者にアレクセイは速攻で殴り倒されました。
「私、次は殴るって言ったよね? 主人に対してお前とか! 口のきき方にはもっと注意しな! ところであなた、その若さで上級回復魔法だけでなく、部位欠損も治せるの? 君、本当にうちに入ってくれない?」
神殿の診療所では、重度の病気は順番待ちで、緊急に診てもらう為には寄付という名の高額請求をされるのだ。重度の病気を治すには高位の神父に診てもらう必要があり、そうなると人数も限られて必然的に数千万単位のお金が必要になる。利用できるのは高額なお金が払える貴族や商人だけになってしまう。
ミーニャは自分を犠牲にしてでも母親に生きてほしいと思い、家族に内緒で終身奴隷に身を落としたのだが、用意したお金では治せるほどの高位の神父に診察してもらえなかったのだ。
ちなみに神父の序列はこんな感じだ。
教皇>枢機卿>大司教>司教>司祭となるのだが、今回ミーニャの家族が全財産をつぎ込んで回復依頼をしたのは、これから行く商都の神殿に巡回してきていた大司教にあたる人物だったのだが、結局彼では治せなかったようだ。
だが、成功しなかったとしても半分のお金は寄付として徴収されてしまうので、結局3千万ほど無駄金になってしまったのだ。
無駄金と言ってしまったが、神殿はそのお金で孤児院を賄っているので、お金自体は有効に使われている……あくまでミーニャの家族が病気も治らず、ミーニャはそのまま奴隷落ちして大損をしてしまったということだ。
神父について言っておくが、神殿の神父は神の神託で選ばれ任命されるため、悪人は1人も居ない……なので、高額なお金を払って治らなくても、神父を詐欺呼ばわりする者はいない。むしろ、治らなかったのは神のご意志だとして、生をあきらめる者が殆んどだ。
俺の【アクアフロー】と【細胞治療】を使えば治せない病気は殆んどないだろうから、家族思いのミーニャの為に、商都に着いたら少し時間をつくり、母親を治してやろうと思う。
俺に売ると宣言された奴隷2人が涙を浮かべて何か言いたそうにしているが、ハティが帰ってきたので奴隷たちの話を聞くのはここまでだ。
既に女性冒険者3名が彼らを見て強い殺気を放っている……さて、あいつらをどう処分するかね。
とりあえず一番厄介なのが、ハティが連れ帰る男性冒険者たちだ。彼らが逃げ出さなければ、ひょっとしたら先に殺された2名以外は死ななくても済んだのかもしれないのだ。つまり生き残った女性冒険者たちと、逃げた男性冒険者たちがもめるのが目に見えているので面倒なのだ。
今回の護衛依頼で冒険者は2PT雇われたのだが、2PTの中で強い2名が真っ先に殺されたのを見て、1PTがまるまる逃げ出したのだ。仕方なく残った方のパーティーメンバー5名で守りにあたったのだが、多勢に無勢……俺たちが到着するまでに更に2名殺されて、残留したパーティーの男は全て殺されてしまったのだ。
女性冒険者が殺されずに生きているのは、生け捕りにして散々強姦した後、闇の奴隷商に売るためだ。
ある意味助かったのは商品価値がある若さ故なのだが、逆に年配のベテラン女性冒険者だったら、そもそもこの護衛依頼の危うさを警戒して参加していなかったと考えれば、何とも皮肉な話だ。
俺が女性冒険者たちの気持ちを無視して、逃げ出した奴らを助けるのには一応理由はある……決してフィリアや未来にお願いされたからだけではない。俺は彼女たちほど優しくない……。
ナビーに確認しつつ、奴らの言い訳の想定をいろいろ思案しておく。
次に問題なのは奴隷たちだ。助けたからには売るにしろ解放するにしろ、最後まで面倒をみる必要がある。
『……マスター、そのことでお話があります』
『どうした? なにか問題でもあるのか?』
『……はい。彼女たちを調べたのですが2名仲間にするには問題のある娘がいます』
『問題? 具体的にどんな問題があるんだ?』
『……1人は人族のマスターから見て左の娘ですが……彼女は農家の娘なのですが、それを聞いて何かお気づきになりませんか?』
『う~~ん……農家の娘にしては日焼けしてないとか?』
『……ふふふ、正解です! 流石です! 一発正解です!』
『で? 病気かなにかで農作業ができないほど病弱な娘とかなのか?』
『……彼女は何度両親に仕事をしろといわれても一切手伝おうとしなかったのです。自分が綺麗だと幼少時より自覚していて、いずれどこかのお金持ちに見初められて嫁ぐから、日焼けなんかしたら価値が下がってしまうと言って、これまでなにもしていません』
『ニートかよ! この世界にもパラサイトって居るんだな……』
『……家族も彼女の美しさは認めていたので、せめて家の中の手伝いだけでもすれば良かったのですが、洗濯や炊事は手が荒れる……調理は火傷や怪我をしたらどうするの、とか言ってそれも手伝わない……とうとう彼女抜きの家族会議で、全員一致で奴隷として売ることに決まりました。その日のうちに商都の奴隷商人に家にくるよう手配し、到着後直ぐに彼女の食事に一服盛られて、寝てる間に終身奴隷として契約されてしまったのです』
『本人の同意なしでもいいのか?』
『……寝てる間に契約書に拇印を押されていますが、親の同意書が添えてあるので合法です』
『まぁ、自業自得か……この世界じゃ遊ばせておくほど裕福な家ってあまりないのだろ?』
『……貴族ならともかく、農家ではまずないでしょうね。日本のように農家の地主とかはなく、地主とは領主である貴族のことですからね』
『終身奴隷ってことは、完全に捨てられたって事だよな?』
『……ですね。終身奴隷は何でも有りなので、若くて綺麗な娘は性奴隷として売られる事が殆んどです。それを解っていてそういう契約をしたってことは、家族全員そうとう腹に据えかねるものがあったのでしょう』
『でも、その家族たちはなんだかんだ言っても、やっぱり良心の呵責に今は苦しんでいるのだろ?』
『……いえ。予想以上に高額で穀潰しのバカ娘が売れたと、家族で喜んでいます』
『彼女、余程酷かったんだな……そういわれてみれば、なんか嫌な感じの目つきでこっち見てるな……』
『……マスターをどんな奴か観察しているのですよ。チョロそうなら誘惑して奴隷解放してもらう気のようですね。悪臭がするほど酷い性格の者ではないのですが、なにせこれまで何もやってこなかった家族に捨てられるほどの穀潰しのバカ娘……一切役に立たないでしょう。ああ、できることが1つありました。マスターのオナペットにはできるかもです』
オナペットって……性処理は彼女以上に可愛い嫁が一杯いるので間に合ってます。
『よし! あの娘は可愛いけど、俺もいらんわ! で、もう1人の問題児は?』
『……マスターから見て、右側にいる猫族の娘です。彼女は犯罪奴隷として売りに出される予定の娘ですが、手癖が悪く嘘吐きなのです。【奴隷紋】で縛ることはできますが、元の性格の悪さは【奴隷紋】ではどうにもできません……マスターなら臭ってみればすぐに理解できるはずです』
性格が悪いと個人香が悪臭になるんだったな。
『犯罪奴隷ってことは何かやったんだよな?』
『……彼女は貴族家に契約奴隷として奉公に出ていたのですが、その貴族家から家財を時々盗んで売っていたのです』
『そういう犯罪行為は【奴隷紋】で縛ってたのじゃないのか?』
『……嘘が上手く、貴族の主人から信用されていたようで、縛りを殆んどかけられずに自由にされていたようです。容姿が可愛いので、少し甘えただけで、コロッと騙されたようですね。売り払った物が高額なため、その補てんのため彼女も終身奴隷です』
『盗んだ品を売った現金はどこにいったんだ?』
『……家族に仕送り……とかなら可愛気があったのですが、服やアクセサリーを買って所持していたようです。それを全部売って貴族家に返済し、足らない分の3倍額が彼女の返済金になります。約9千万ジェニーです』
ジェニーはこの国の通貨単位だったな……多少物価は違うが、1ジェニー約1円で換算していいそうだ。
『なるほどな……この娘も要らないな。それにしても皆、可愛いよな。桜ほどではないけど、あの白い白狼族の娘とか、穂香や沙織ちゃんレベルで可愛いよな。この世界って結構可愛い娘が多いのか?』
『……彼女たちは、年に1回年始に王都で開催される、この国最大規模のオークション大会に出品予定の娘たちです。年始のこのオークションは、厳選されたレアな商品しか出品できない規則があるようで、国内外から貴族や商人がお宝や美人な高級奴隷を求めて沢山集まってくるようです』
『だから、これほど粒揃いなんだ……彼女たちは年始用に厳選された特別品なんだな、納得だ』
彼女たち2人に、このまま期待を持たせたままにしておくのはあまりよろしくない。
「ちょっと奴隷の娘たち、こっちにきてもらえるか」
俺の呼びかけで奴隷たちが俺の前に集合する。
「俺の名前はリョウマだ。今から君たちの主人になるわけだが、先に【奴隷紋】の縛りを幾つかかけておく」
1、身の危険を感じない限り、許可なく逃げ出すな
2、犯罪行為をするな
3、自傷行為をするな
もう1つあるのだが、今はあえて組み込まないでおく。
「以上たった3つだ。それと灰狼族のあなたから順番に名前と年齢を言って自己紹介をしてくれるかな。おっと、先に君と君はこっちにきてくれ……じゃあ、順番に自己紹介よろしく」
・アレクセイ 26歳 灰狼族 レア種 元冒険者で貴族に騙され犯罪奴隷に落ちる
・セシル 17歳 人族 商家の娘だったが、家族全員借金奴隷として奴隷落ち
・ミーニャ 16歳 黒豹族 レアな猫種 母親の高額な治療費の為に奴隷落ち
・アルヴィナ 16歳 白狼族 超レア種 盗賊に襲われ、奴隷商に売られる
・リリー 15歳 犬族 村で保護されていた捨て子だったが、大不作でこの秋に売られてしまう
・ベル 15歳 犬族 農家の娘 リリーと同村で仲良し 同じく不作で、家の為に身売りする
・ルフィーナ 18歳 兎人族 超レアな種族で、森でキノコ狩り中に奴隷狩りに遭う
『やっぱ、奴隷になった理由がいろいろ重いな……』
『……身売りさせられるような奴隷は、大抵個人が抗えないような大きな理由があります』
『……マスター、人狼族は偶然かもしれませんがロシア語名が多いようですね。アレクセイは護るという意味です。アルヴィナは白とか純粋なという意味があります』
『へ~、彼女にぴったりだな! 凄く良い名前だ!』
『……アレクセイも、彼にピッタリな良い名前だと思うのですが……』
「あの! 私の名前は―――」
「あ、君たちの名前は言わなくていい。明日商都に行ったら、君たち2人は奴隷商に売りに出す」
「「どうして私たちだけ売られるのですか!?」」
「俺が言わなくても、自分たちが一番分かってるでしょ?」
「「分かりません!」」
『……マスター、他の娘たちが結局自分たちも直ぐ売られるんだと不安になったようです。ちゃんと説明してあげてください』
確かに……いきなり売るとか言っちゃったから、他の娘たちまで俺を蔑んだ目で見てるな……。
「そこの人族の君は、農家の娘なのに17年間仕事もせず、親に寄生して家族に見捨てられて売られたんだろ? 農家の娘のくせに一切日焼けもなく色白なのはおかしいだろ? 同じく農家出のリリーとベルはこんがり小麦色な肌をしてるだろ。手も鍬で耕すからマメだらけ……働き者の良い手をしてる。何もしない極道者のお前は要らないんだよ。何もしてこなかったから、一切家事もできない役立たずだろ?」
「なんで、あなたがその事を知っているのですか!? さっき会ったばっかりなのに!」
「それと猫族の君は、嘘吐きで手癖も性格も悪すぎる……そういう娘も当然うちには要らない」
「違うのです! 前の主人の誤解なのです!」
「ほら……またそうやって嘘を平気で吐く……奴隷たちに4つ目の縛りだ! 主人とその仲間に今後一切嘘を吐くな!」
ここでさっき組み込まなかった縛りを取り入れる。
「………………」
「どうした? もう言い訳しないのか? 嘘を吐いたらどうなるか見たいから言ってみろよ」
「くっ………………」
うわ~可愛かった顔が、めっちゃ睨んでおっかない顔してる。これが本来の彼女の性格がにじみ出た顔なんだな……ナビーに感謝だ。
「それとミーニャ。君の病気のお母さんな、神殿の診療所に行ったんだけど、結局治ってないんだよ。君には『ミーニャのおかげで治った、ありがとう』って言ってるだろ? あれ、君を想った優しい嘘なんだ。身売りまでして作ってくれたお金を半分無駄にしちゃったので、君の両親はその事を言い出せずに、お母さんは今も病気で苦しんでいる」
「嘘! だってお母さんは治って元気になったって……うそ……」
「心配しなくていい。俺はこの世界でもおそらく一番優れた治療魔法が使える。商都に行ったら君のお母さんは、俺が治してあげるから、心配しなくていいよ」
「……本当?……もし、お母さんが治ってなかったら、ご主人様が治してくれるの?」
「ああ、どんな不治の病でも治してあげるから心配しなくていい。それと、不安そうななので他の娘たちに言っておく。この問題児の2人以外は娼館などに売ったりしないから安心してくれ。アレクセイは後で腕を治してやるので、夜までは我慢してくれ」
「ナッ! お前部位欠損も治せるほどの術者なのか!? ウゲッ―――
はい、女性冒険者にアレクセイは速攻で殴り倒されました。
「私、次は殴るって言ったよね? 主人に対してお前とか! 口のきき方にはもっと注意しな! ところであなた、その若さで上級回復魔法だけでなく、部位欠損も治せるの? 君、本当にうちに入ってくれない?」
神殿の診療所では、重度の病気は順番待ちで、緊急に診てもらう為には寄付という名の高額請求をされるのだ。重度の病気を治すには高位の神父に診てもらう必要があり、そうなると人数も限られて必然的に数千万単位のお金が必要になる。利用できるのは高額なお金が払える貴族や商人だけになってしまう。
ミーニャは自分を犠牲にしてでも母親に生きてほしいと思い、家族に内緒で終身奴隷に身を落としたのだが、用意したお金では治せるほどの高位の神父に診察してもらえなかったのだ。
ちなみに神父の序列はこんな感じだ。
教皇>枢機卿>大司教>司教>司祭となるのだが、今回ミーニャの家族が全財産をつぎ込んで回復依頼をしたのは、これから行く商都の神殿に巡回してきていた大司教にあたる人物だったのだが、結局彼では治せなかったようだ。
だが、成功しなかったとしても半分のお金は寄付として徴収されてしまうので、結局3千万ほど無駄金になってしまったのだ。
無駄金と言ってしまったが、神殿はそのお金で孤児院を賄っているので、お金自体は有効に使われている……あくまでミーニャの家族が病気も治らず、ミーニャはそのまま奴隷落ちして大損をしてしまったということだ。
神父について言っておくが、神殿の神父は神の神託で選ばれ任命されるため、悪人は1人も居ない……なので、高額なお金を払って治らなくても、神父を詐欺呼ばわりする者はいない。むしろ、治らなかったのは神のご意志だとして、生をあきらめる者が殆んどだ。
俺の【アクアフロー】と【細胞治療】を使えば治せない病気は殆んどないだろうから、家族思いのミーニャの為に、商都に着いたら少し時間をつくり、母親を治してやろうと思う。
俺に売ると宣言された奴隷2人が涙を浮かべて何か言いたそうにしているが、ハティが帰ってきたので奴隷たちの話を聞くのはここまでだ。
既に女性冒険者3名が彼らを見て強い殺気を放っている……さて、あいつらをどう処分するかね。
40
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる