女神様から同情された結果こうなった

回復師

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商都フォレスト編

3-2 菜奈の救済?【細胞治療】の真価?

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 夕食時、あまり食の進まないミーニャを見ていたら可哀想になり、すぐにお母さんを診てやる気になった。
 自分の身を犠牲にしてでも母を助けようとした、家族想いの良い娘なのだ。

「ミーニャの家はここから近いのか?」
「いえ、私の家は平民街ですので、15分ほど歩きます。ごめんなさい」

「そういう気遣いは要らないよ。いきなり俺が訪問しても大丈夫か?」
「メールでこれから行くとは伝えましたが……私は、また怒られるかもしれません……」

 よくよく話を聞くと、どうもミーニャは家族に黙って自分の身を売ってお金を用意したみたいなのだ。単身奴隷商に赴き、自分の身で借りられるだけの最高額を借してくれと言ったら、終身契約での性行為等何でも可能な借金奴隷だったそうだ。

 彼女は自分の一生を6千万ジェニーという額で売り渡したのだ。凄い覚悟がいったと思う……お金を持ち帰ったミーニャを当然両親は猛烈に怒った……母親は死んだ方がましだと憤り、お金を返してきて契約を解除してこいと言ったが、一度契約を結べば、例えその日であろうが返済には倍額のお金が要る。クーリングオフなんかない厳しい世界だ。とても払える額じゃないので、両親は仕方なくお金を受け取り、ミーニャと別れたそうだ。


 実家に向かうミーニャの足がだんだん速くなってくる。気が急いてる証拠だが、周りの人にぶつかっても事なので注意する。

「ミーニャ、慌てて誰かにぶつかると厄介だから、普通に歩け」
「あ! ご主人様ごめんなさい……いつの間にか、速くなっていました……奥方様も申し訳ありません」

「ん、気持ちは解る……問題ない」
「ええ、大丈夫だよ。でも、兄様の言うとおり、誰かにぶつかって怪我とかさせちゃったら大変だから、ゆっくり歩こうね」


 貴族街を抜けて一般区に入り、メイン通りを歩いていたら見知った顔を発見した。

「おや、バグナーさん。こんな時間にお出かけですか?」
「リョウマ様! 先日は勇者様御一行とつゆ知らず、大変申し訳ありませんでした! 何卒ご容赦くださいませ!」

 あらら……そこまでへりくだらなくても良いのに……様呼ばわりになっちゃってるよ……。

「バグナーさん、これまで通り普通にしてください。で、どこかに行かれるのですか?」
「はい。先ほど商人ギルドと冒険者ギルドに赴き、事の仔細を報告し、契約を解除いたしてきました。その後、先に宿を確保してきて、これからこの娘たちを奴隷商に売り込んでくる予定です」

 なるほど……例の2人か……。

「勇者様! どうか私をお救い下さいませ! 心を入れ替えて、あなた様に精一杯尽くしますので、娼館に売るのだけはお許しください!」

 穀潰し娘が、ボロボロ泣きながら俺の足に縋り付いて懇願してきた。

「止めぬか!」

 【奴隷紋】の権利をバグナーさんに渡しているので、ピタッと彼女の動きは止まる。まだボロボロ泣いているので、【奴隷紋】で行動は抑止されるが、感情まで制限はされないみたいだ。

「ねぇ、兄様……この人は別に犯罪者じゃないのですよね? ただ何もしなかっただけですよね?」
「うん? まぁそうだな。だが、その何もしないってのがこの世界ではダメなんだよ。働かざる者食うべからずだ。家に余裕のない世帯では、働けなくなったお年寄りは、神殿で安楽死してもらって口減らしをしているくらいなんだぞ。それなのに、健康体の農家の娘が働きもしないで、飯食って寝てただけとか、ふざけるなって話だ。彼女は自業自得だよ」

「でも、菜奈ずっとこの人の事が気になってたの……やっぱ一生性奴隷とかは可哀想かな。ねぇ兄様、この娘私に下さい」

「はぁ? なんでお前が問題児を引き取るんだよ。その娘は本当に何もやってこなかったんだぞ。掃除や洗濯は勿論、食器すら一度も洗ったことないんだぞ」

「えっ? マジですか?」
「マジマジ。ネトゲ廃人のパラサイトニートも真っ青な穀潰しだぞ」

 流石に菜奈もこれには驚いたようだ……日本のニートでももう少しマシだろう。

「この娘、何歳なのですか?」
「17歳になったばかりだったかな」

「兄様、少しだけ様子を見てあげませんか? 半年……いや1カ月でいいです。本当に役に立たないバカ娘なら、売ってしまえばいいのではないですか? バカでないのなら、これから教えればいいだけです」 

「ん、菜奈のいうとおり。売るのはいつでも可能」

 再度穀潰し娘を見てみたが、うんうんと激しく頷いて懇願している……一度受けた『止めろ』の命令はまだ有効なんだな。

「君の匂いを嗅がせてもらう……少しでも悪臭がしたら、却下だ」

 彼女に近付いて匂いを嗅いだが、悪臭は全くしなかった……盗人猫の方は近づくまでもなく、嫌な下水溝のような臭いが漂ってきている。

「ん、どちらかというと良い匂い?」
「そうですね……微香ですが、ジャスミン系の匂いがします。兄様、少しだけでも様子を見てあげませんか?」

「菜奈がそこまでいうなら、引き取るか……でも、奴隷のそそうは主人の責任になるので、俺が引き取る事にする。他人のせいで菜奈が責任を被るのは嫌だしね」

「ありがとうございます! 奥様方もお口添えありがとうございます! 一生懸命お仕事も覚えますので、ご指導してくださいませ」

「バグナーさん……という事になりました。彼女の手間賃が入らなくなりますが、替わりの手間賃が入る仕事をお任せしますので、ご容赦ください」

「いえいえ、お気になさらずに……替わりのお仕事というのは何でございましょう?」
「今、サーベルタイガーを持っているのですが、それをオークションにかけてもらいたいのです」

「サーベルタイガー!? 今持っているのですか? 是非今すぐ見たいです!」
「ちょっとここで出すのはは不味いでしょ……大騒ぎになります」

「確かに……サーベルタイガーなら、ギルドのアイテムボックスに預けて、年始のオークションに出すのが良いと思います。軍で狩るほどの魔獣ですので、高額で売れると思います」

「このサーベルタイガー、ちまたで『街道の耳無しタイガー』といわれているらしいのですが……」
「まさか、ヤツを退治したのですか! なら、億はいくでしょう! 是非わたくしめにお任せくだされ! 必ずや高額で捌いて見せます!」

 現物は明日見せることにし、【奴隷紋】の譲渡をおこない彼女を引き取る。自分だけ売られる事になった盗人猫はめっちゃ睨んでたけど知ったこっちゃない。

「ご主人様、本当にありがとうございます!」
「菜奈に感謝するんだな……後、折角のチャンスを無駄にしない事だ。ダメだと思ったら容赦なく売り払うからな」

「はい! 今後は心を入れ替えて、一生懸命働きます。奥様、ありがとうございました」

「君の名を聞いておこうか」
「エリスといいます。よろしくお願いします」

 可愛い名前だった。

「リョウマ様、その【奴隷紋】はあくまで仮のモノなので、早めに奴隷商に行って正式に更新しておいた方が宜しいですよ」

 仮なので、盗賊や冒険者、貴族なんかに目を付けられる可能性があるそうだ。なにせ、口頭で権利を移動できるのだから、脅して権利を奪おうとする輩が結構いるようだ。


 バグナーさんと別れて、ミーニャの家にあらためて向かう。

「ご主人様、ここが私の実家です」

 大きくはないが、ちゃんとした一軒家だった……俺は勝手に貧困街のあばら家をイメージしていた。

 ミーニャの家族は両親と、兄が1人と弟が1人の5人家族だった。稼ぎは両親と兄が冒険者として稼いでいたようで、それなりに稼げていたようだ。数年前より母の体調が悪くなり、父親と兄の2人で稼ぎに出るようになったが、最近は薬代や診察代で出費がかさみ、赤字分を貯蓄のほうから削って生活していたそうだ。

 ミーニャの先導で家の中に入ると、鬼の形相で父親と兄らしき者から殺気を向けられた。どうも娘を性奴隷として買った貴族のボンボンと思われたようだ。

「お父さん止めて! ご主人様は態々お母さんの治療をする為にここまで足を運んで下さったのよ!」 
「「ご主人様……」」

 娘の『ご主人様』発言に、更に殺気が強くなった……既にお手付きになったと勘違いしたんだな……。

「ミーニャ、それより君のお母さんを診せてくれ……ここまで死臭が充満して臭っている……あまり長くないかもしれない。獣人のお前なら、臭いである程度分かっているだろ?」

「はい……少し離れた数日の間に、更に悪くなっているみたいです……こちらです……お母さんを助けてください……」

 ミーニャは、既にボロボロ泣いている……匂いでもう助からない事が分かったのだろう……それほど強い死臭がしている。


 寝室に入ると、ヒューヒューと喉で息をしているガリガリに痩せこけた女性がベッドに横たわっていた。
 後ろで菜奈と雅の息をのむのが聞こえてくる。

「お母さん……ぐすん……ウェ~ン!」
「ミーニャ、大丈夫だ。お前が身を捨ててまで繋いだ俺との縁だ、無駄にはしない! 俺に任せておけ!」

「兄様素敵です!」
「ん! 龍馬カッコいい!」

「菜奈、雅、厄介そうだ、手伝ってくれ」

「はい」
「ん!」

「ミーニャ、3人でお母さんの服を脱がせてくれ。【クリーン】【ハウスクリーン】【エアーコンディショナー】【ウィンド】」

 母親に浄化魔法を掛け、部屋をきれいにし、母親に寒くないようにエアコン魔法を掛けたのちに部屋の換気を行った。

 妻を裸にすると知った旦那がとうとう怒りだしたが、【魔糸】で縛って【音波遮断】で声を封じ、部屋の中央で見える位置に【フロート】の魔法で浮かせておいた。部屋から追い出さなかったのは、俺がエッチな行為をしていない事をあえて見せるためだ。

「【ボディースキャン】これは酷いな……よくこれで生きていられるものだ」

 ナビーの予想通り、癌だった……しかも現代医学でも治療不可能な末期のものだ。

「兄様……菜奈の診断だとあと2日ほどとなっていますが……これ、治せるのですか?」
「ん……正直無理だと思う……ミーニャごめん」

「菜奈も雅も駄目だな……治せる? 無理だと思う? 何言ってるんだ? 治すんだよ! 俺に不可能はない! 魔法はイメージが一番大事なんだ。ダメと思った時点でダメになる。無理と思った時点でそういうイメージが定着して治らなくなる。俺には治せない病気はない! 治せない怪我もない! そこで見ていろ! 【アクアフロー】【細胞治療】」

『という訳で……ナビー先生よろしくお願いします!』
『……あれほどカッコ良かったのに! 全部台無しですね! でも、マスターの言うとおり、イメージが大事なのです。治る事しか考えてないマスターに不可能はないですね』

 癌転移もしていたが、1時間ほどかけて全て完治させた。魔素の停滞も酷かったので、それも可能な限り散らしておいた。見るからに顔色が良くなり、あれほど酷かった死臭も今は全くしなくなった。

「ミーニャ、完治だ。もう大丈夫だぞ」

 ここで意識が混濁していた母親が目を覚ます。

「あれ? ミーニャ? 私、夢でも見ていたのかしら……ミーニャが奴隷になって売られちゃう夢を見ていたのよ……」

「ミーニャ、もう大丈夫なので、服を着せてあげて」

 ここで、お父さんを解放してあげる。兄の方は騒ぐこともなく終始事の成り行きを見守っていた……殺気は抑えていたが、何かあったら即殺してやるって気配だったけどね。

 家族で抱き合っている姿は微笑ましいものだ。菜奈はその光景を見て自分の両親の事を思いだしたのか、もらい泣きしている。帰ったら、今日はたっぷり甘やかせてあげよう。

 ***************************************************************
 お読みくださりありがとうございます。

 『騙され異世界』の方から入った方は、『また癌治療ネタかよ!』と思ったかもですが、この作品で言えば初だしですので、クレームなきようお願いします。

 例の穀潰しな彼女ですが、龍馬君的には放置でしたが、作者的にちょっと迷って、菜奈をダシに使って救いました。
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