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学園ロワイヤル編 3日目
1-3-4 桜無双?意趣返し?
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開始の合図と同時に桜が仕掛けた。
一瞬で間合いを詰め、「エイッ」という可愛い掛け声とともに高井の鳩尾に桜の正拳突きが炸裂した!
良しいいぞ!
桜はこれまでの言いつけどおりに回復役の高井から仕留めたのだ。高井は桜に殴られ3mほど吹っ飛ばされた後、地面を3回転がってやっと止まった。
完全に気絶しているようだ。
あー、最初は良かったのに次が遅い! 桜の奴、何ぼけーっと倒れた奴を見てんだよ!
『……桜は予想以上に彼が吹っ飛んで転がったので、少しやり過ぎたかと心配になったようです』
『成程……人なんか初めて殴ったんだろうしね。いくら敵でも、あれほど吹っ飛んだら相手の体の心配はしちゃうか……』
すぐに動かなかった桜は、2年の奴から胸の辺りに雷魔法を食らってしまった。
あれは初級の【サンダースピア】だな。
だがバスケ部の奴らは全員種族レベル7しかない。スキルを持っていても初級魔法のレベル10までしか習得できない。桜には俺の魔法防御の【シェル】レベル10が掛かってるのだ、ダメージは全くないだろう。おそらくドアノブを振れた時の静電気がビリッときた程度のものだっただろう。
だが桜は服に焦げ後がついてしまったのを見て怒り狂っているみたいだ。
『これお気に入りの作業着だったのに! こっちの世界じゃもう買えないのよ! 許さない!』だそうだ……。
瞬間移動か? と思える速度で魔法使いに駆けより、またしても腹パン一撃だ。さっきと違いかなり力がこもっていた……あれヤバくないか?
そして魔法使いのすぐ横に居た、剣を構えている3年の奴にローキックを入れたのだが……バキッと嫌な音がした。3年の先輩の足は変な方向に曲がっていて、その場にぶっ倒れ、足を抱えて痛みでのたうちまわっている。
最後に1人残ったバスケ部キャプテンは、剣を握ったまま唖然とした顔でそれを見ていた。
バスケ部のキャプテンは桜と目が合った瞬間に剣を放り捨て、おそらく『参った』と言おうとしたのだろうが、剣を捨て口を開いた瞬間桜に飛び膝蹴りを鳩尾に食らって吹っ飛んだ!
おいおい! 桜の奴やり過ぎだって! 今の絶対ヤバい!
桜さん……死に至る攻撃は反則負けですよ?
「試合それまで! 美弥ちゃん! 未来! 魔法使いの奴、急いで見てやってくれ! 放っとくとヤバい! 急いで!」
俺は慌てて血反吐を吐いてるバスケ部キャプテンに中級回復魔法の【アクアラヒール】を掛けた。
やばかった! 内臓破裂で死ぬとこだった……。
「桜! 手加減しろって言っただろ! こいつ、内臓破裂していたぞ!」
「うっ、ごめんなさい。でも手加減はしたわよ!」
「それは分かっている。本気なら魔法使いの奴を殴った時、手が腹を貫通しているだろうからね。でも最後の飛び膝蹴りは参ったって言わせないために慌ててやっただろ? それでつい威力を殺さないままだったよな?」
「あはは、龍馬君にはやっぱバレてるね。だってそいつだけは仕返ししときたかったんだもん。散々威張り散らして、悪態ついて……『参った』の一言で許せるはずないじゃない」
「ハァ~……それで気は済んだのか?」
「ええ! 超スッキリしたわ! 龍馬君、チャンスをくれてありがとう♪」
はぁ……なんて素敵な笑顔なんでしょう……怒る気も失せた。
でも釘だけは刺しておく。
桜の耳元で、桜だけに聞こえるようにそっと囁く。
「死に至る攻撃をしたから、ルール違反で桜の反則負けだよ?」
「エッ!? 嘘でしょ!」
「本当なら桜は約束を守って体育館行きだけど、揉み消してやるから知らん顔しとけ……」
「うん……ごめん……なんとかしてね? 私、向こうなんか行きたくないからね……」
桜に釘を刺すためにこっそりやり取りしたが……向こうは死にかけたとか気付いていないし、多分大丈夫だと思う。
「美弥ちゃん先生そっちは大丈夫だった?」
「ええ、泡吹いてたけど命に別状はないみたい」
「ふぅ、じゃあ、一応勝者の勝ち名乗りをしとこうか。勝者、桜!」
「「「キャー! 桜先輩かっこいい!」」」
「ん、まだまだダメ。でも勝ちは勝ち」
料理部の後輩から黄色い声が飛びまくっている。どうやら桜は城崎先輩呼びから桜先輩に昇格したようだ。
「桜おめでとう。これでうざいやつらも大人しくなるわね」
「茜ありがとう。そうね、他からももう勧誘してこなくなればいいけどね」
ちなみに1年の高井と足を折られた3年の奴はいまだ放置中だ。
3年の先輩はのたうちまわって回復してくれ~とか言っているが誰も相手をしていない。
「未来ちゃん、五月蠅いからそいつも回復してあげて」
あれ? 聞こえているのにプイッてしたぞ。
メッチャ可愛いのだけど、未来ちゃんそいつの事どんだけ嫌いなの?
「未来ちゃんも来てたんだね?」
「あっ! 勝手に手伝いに来ちゃってごめんなさい! 仲の良かったクラスメイトの遺体が上から見えたので、供養してあげたくて手伝いに来てしまいました」
「未来ちゃんが死体とか嫌じゃなきゃ、別にいいんだよ」
仕方ない、嫌だけどあいつは俺が回復してやるか。
「先輩、嫌だけど俺が回復してやるよ。でもこのまま足が変な方向に曲がったままだと、骨が変にくっついちゃうから自分で真っ直ぐにしてくれるか?」
「自分でできる訳ないだろ!」
「そうか? 俺はできるぞ? 自分でできないなら俺がやるけど我慢しろよ」
俺は曲がってる足を真っすぐにして軽く引っ張った。
「アギャー!!」
あらら、一叫びして気絶してしまった……まぁ、そのほうがうるさくなくていい。ある程度真っ直ぐにしておけば魔法補正が働き、勝手に元に戻ろうと良いような位置になってくれる。中級回復魔法を1回だけ掛けてあげて終了だ。仲間なら念の為にもう1回掛けてやるのだが、俺もこいつらには御免だ。
「3年の奴は気絶しちゃったから、バスケ部キャプテンのあんたに言っておく。桜はうちのメンバーの中では大して強くないが、それでもあんたらより断然強い。守ってもらう必要もないから今後一切俺たちに係わるな」
「分かってるよ、そういう約束だったからな。だがお前もせこい奴だな、自分が弱いから強い桜ちゃんにやらせたんだろ?」
俺はさっと手をあげ、【無詠唱】で4発中級魔法レベル10の【ウィンダラカッター】を放った。
同時に4カ所で物が壊れる。街灯2個に、中庭にある噴水の中央にあるマーライオンのレプリカの首、この学園の設立者である人の石像らしきものの首の4つだ。
「今、壊れた4つがお前たちの首と仮定するなら、1秒で片が付くという事だ。なんで俺が桜より弱いと思ったのか分からないけど、あまり舐めた事を言うなら、次は俺がそれなりに相手をしてやるがどうする?」
「いや、悪かった……とてもじゃないが敵いそうにない」
「解ってくれたならいいが、くれぐれも俺たちに係わらないでくれ。後、城崎さんだ。勝手に桜の許可なく馴れ馴れしく名前で呼ぶな!」
「兄様やっぱり素敵です♪ またジンジンきちゃいました!」
「「「龍馬先輩かっこいいです!」」」
「ん! 龍馬はキザだけどかっこいい!」
3階から美少女たちにキャーキャーと言われて悪い気はしないが、これだけは言っておこう。
「お前たち、俺が散々口を酸っぱくして言ったよな! 貞操の危険があるから、メールや会話で拠点の場所やメンバー構成がバレないようにしろって何度も何度も言ってあるよな? ひとの気も知らないでお前たちはそこから雁首揃えてキャーキャー言ってなにしてるのかな?」
あっ! という顔をしてそそくさと教室に帰ろうとしているがもう遅い。
「今更帰ってももう遅いよ! 全部ここにいる人たちにバレてしまっている! 手空きの者で死体を触れる者は降りてきて弔うのを手伝ってくれ! 美加ちゃんと沙織ちゃんもおいで、茶道部の亡くなった部長も皆と一緒に弔ってやろう。トラウマになりそうな娘は来なくていいからね! 絶対無理はするなよ!」
「いや~、白石君の所は中々強いじゃないか! どうだねうちの所にギャー!―――」
下卑た薄笑いをしながら俺に話し掛けてきた奴の目にナイフを突き刺し眼球を抉り取った。このナイフは俺が地球で最後に買った、あの7万円のハンティングナイフだ。
「龍馬君! いきなり何しているのですか!」
「兄様! 急にどうしたのですか!」
「龍馬君!?」
美弥ちゃん、菜奈、桜が慌てて俺を止めに入った。
未来ちゃんと茜と綾ちゃんは、俺の狂った行動に口を押えて驚いたように戸惑っている。
「桜、大丈夫だ放してくれ。別に殺す気はない。だが眼球はくり抜いたので部位欠損になるはずだ。ヒールじゃ治らないだろう」
美弥ちゃんと未来が慌ててヒールを掛けたが、左目は空洞になって眼球は存在していない。
ざまーみろだ!
「龍馬君、どうしてこんな事をしたのですか?」
美弥ちゃん先生メッチャ怒ってる……本気で怒ると、この人結構怖いんだな……。
「後で聞かせてやるけど、俺はそいつのせいで1カ月虐待を受け続けたんだよ。俺は何度もそいつのところに行って現状を報告したが、そいつの行った事は3分の職員会議だけだ。その3分の職員会議の内容は録音してあるから後で聞かせてあげるよ。会議の内容はただの通達『首になりたくなければ白石君たちの事は見て見ぬブリをしなさい』と言うだけのものだった。それを言ったのが教頭のそいつだよ。どうせ見ないのなら片目ぐらい無くて平気だろ? それに種族レベル40以上になれば、部位欠損も回復できるスキルもあるからな。それまでは片目で自分の言った事を考えて反省するんだな!」
「あれは私の命令じゃないんだ! 校長にそう言えと言われたんだ!」
「そんな事は俺も知ってるよ! その時の校長との会話も盗聴して録音してあったからな! だから何だよ! そのせいで俺は自殺まで考えたんだからな! 生徒を守るべき立場の人間が見捨てておいて、まだ言い訳するのか? 校長が生きてたら両目をくり抜いて舌を切ってやるとこだが、どうやら外に出てオークにやられて死んだんだろ? どうせ生きてても校長もこう言うだろうぜ、『理事長にそう言えって言われたんだ!』ってね!」
教頭はぐうの音も出ないようだ。
部位欠損を治すスキルは本当にあるのだ。
種族レベルを40まで上げないといけないので、当分は片目のままだろうが、それくらいの不自由はしてもらわないと気が治まらない。
「白石、俺も同罪だな。すまないと思っているが、俺にも守りたい家庭があったんだ。理事に逆らったやつはことごとく酷い目に遭っている。家も買ったばかりで簡単に学園を辞める訳にもいかなかったんだよ。他の先生たちも皆そうだ。大きな権力にそうそう逆らえるものじゃない」
「江口先生も相談を無視したけど、みたところ今頑張ってるようだしな。悪いと思っているのだったら、体育館の女子たちを守ってやれよ。こっちの世界では人口拡大の為に、神様が性欲3倍にしているらしいんだ。女子も排卵前後には性欲3倍になって良い匂いを振り撒くらしいので、それも注意がいる。それを嗅いだ男はさらに性欲が高まるそうだ。盛りの付いた犬猫状態らしい。お互いに注意しないと大変な事になる」
「回覧メールで確認して皆には一応伝えてある。うちの方でも既に何人かの女子にその傾向が出ているようだ」
「俺に少しでも悪いと思っているなら、江口先生が彼女たちを守ってあげてよ。俺を守らなかった代わりに彼女たちを命がけで守ってみせてよ。ちゃんと町まで守り切って送れたら、俺の事は忘れてあげるよ。途中で見捨てたり先生自身が彼女たちを襲ったらチョッキン刑だからね」
「分かった。約束しよう……今更理事もクソも無いからな」
教頭は残った片方の目で俺を睨んでいる。
「別に恨んでもらってもいいよ。俺もあんたの事は嫌いだし、許す気もない。それくらいの覚悟でその眼を刺したんだ。殺したいほどじゃないから殺さないけど、向かってくるなら殺すからそのつもりで挑むんだね」
教頭は顔を真っ赤にして教員棟に帰っていった。
各拠点からの増員で、その後2時間ほどで全部片付け終えた。
ゴブリンやオークの死骸から、一応魔石だけは抜き取るように指示をだし、各拠点で抜き取った魔石は均等に分けることにした。
火入れの際にはほとんどの者が出てきて、合掌して死者の冥福を祈っていた。
そこに佐竹たちの姿は当然のようになかった。
一部の女子は見たくないと、拠点内で泣いているようだ。その気持ちは皆も解るので、誰も無理に連れ出そうとはしない。
すべての処理を終え拠点に戻ったのだが、俺の教頭への仕打ちを見ていた一部の女子が、ちょっと俺を恐れているようだ。
俺は言い訳をするべくノートパソコンを【インベントリ】から取り出すのだった。
一瞬で間合いを詰め、「エイッ」という可愛い掛け声とともに高井の鳩尾に桜の正拳突きが炸裂した!
良しいいぞ!
桜はこれまでの言いつけどおりに回復役の高井から仕留めたのだ。高井は桜に殴られ3mほど吹っ飛ばされた後、地面を3回転がってやっと止まった。
完全に気絶しているようだ。
あー、最初は良かったのに次が遅い! 桜の奴、何ぼけーっと倒れた奴を見てんだよ!
『……桜は予想以上に彼が吹っ飛んで転がったので、少しやり過ぎたかと心配になったようです』
『成程……人なんか初めて殴ったんだろうしね。いくら敵でも、あれほど吹っ飛んだら相手の体の心配はしちゃうか……』
すぐに動かなかった桜は、2年の奴から胸の辺りに雷魔法を食らってしまった。
あれは初級の【サンダースピア】だな。
だがバスケ部の奴らは全員種族レベル7しかない。スキルを持っていても初級魔法のレベル10までしか習得できない。桜には俺の魔法防御の【シェル】レベル10が掛かってるのだ、ダメージは全くないだろう。おそらくドアノブを振れた時の静電気がビリッときた程度のものだっただろう。
だが桜は服に焦げ後がついてしまったのを見て怒り狂っているみたいだ。
『これお気に入りの作業着だったのに! こっちの世界じゃもう買えないのよ! 許さない!』だそうだ……。
瞬間移動か? と思える速度で魔法使いに駆けより、またしても腹パン一撃だ。さっきと違いかなり力がこもっていた……あれヤバくないか?
そして魔法使いのすぐ横に居た、剣を構えている3年の奴にローキックを入れたのだが……バキッと嫌な音がした。3年の先輩の足は変な方向に曲がっていて、その場にぶっ倒れ、足を抱えて痛みでのたうちまわっている。
最後に1人残ったバスケ部キャプテンは、剣を握ったまま唖然とした顔でそれを見ていた。
バスケ部のキャプテンは桜と目が合った瞬間に剣を放り捨て、おそらく『参った』と言おうとしたのだろうが、剣を捨て口を開いた瞬間桜に飛び膝蹴りを鳩尾に食らって吹っ飛んだ!
おいおい! 桜の奴やり過ぎだって! 今の絶対ヤバい!
桜さん……死に至る攻撃は反則負けですよ?
「試合それまで! 美弥ちゃん! 未来! 魔法使いの奴、急いで見てやってくれ! 放っとくとヤバい! 急いで!」
俺は慌てて血反吐を吐いてるバスケ部キャプテンに中級回復魔法の【アクアラヒール】を掛けた。
やばかった! 内臓破裂で死ぬとこだった……。
「桜! 手加減しろって言っただろ! こいつ、内臓破裂していたぞ!」
「うっ、ごめんなさい。でも手加減はしたわよ!」
「それは分かっている。本気なら魔法使いの奴を殴った時、手が腹を貫通しているだろうからね。でも最後の飛び膝蹴りは参ったって言わせないために慌ててやっただろ? それでつい威力を殺さないままだったよな?」
「あはは、龍馬君にはやっぱバレてるね。だってそいつだけは仕返ししときたかったんだもん。散々威張り散らして、悪態ついて……『参った』の一言で許せるはずないじゃない」
「ハァ~……それで気は済んだのか?」
「ええ! 超スッキリしたわ! 龍馬君、チャンスをくれてありがとう♪」
はぁ……なんて素敵な笑顔なんでしょう……怒る気も失せた。
でも釘だけは刺しておく。
桜の耳元で、桜だけに聞こえるようにそっと囁く。
「死に至る攻撃をしたから、ルール違反で桜の反則負けだよ?」
「エッ!? 嘘でしょ!」
「本当なら桜は約束を守って体育館行きだけど、揉み消してやるから知らん顔しとけ……」
「うん……ごめん……なんとかしてね? 私、向こうなんか行きたくないからね……」
桜に釘を刺すためにこっそりやり取りしたが……向こうは死にかけたとか気付いていないし、多分大丈夫だと思う。
「美弥ちゃん先生そっちは大丈夫だった?」
「ええ、泡吹いてたけど命に別状はないみたい」
「ふぅ、じゃあ、一応勝者の勝ち名乗りをしとこうか。勝者、桜!」
「「「キャー! 桜先輩かっこいい!」」」
「ん、まだまだダメ。でも勝ちは勝ち」
料理部の後輩から黄色い声が飛びまくっている。どうやら桜は城崎先輩呼びから桜先輩に昇格したようだ。
「桜おめでとう。これでうざいやつらも大人しくなるわね」
「茜ありがとう。そうね、他からももう勧誘してこなくなればいいけどね」
ちなみに1年の高井と足を折られた3年の奴はいまだ放置中だ。
3年の先輩はのたうちまわって回復してくれ~とか言っているが誰も相手をしていない。
「未来ちゃん、五月蠅いからそいつも回復してあげて」
あれ? 聞こえているのにプイッてしたぞ。
メッチャ可愛いのだけど、未来ちゃんそいつの事どんだけ嫌いなの?
「未来ちゃんも来てたんだね?」
「あっ! 勝手に手伝いに来ちゃってごめんなさい! 仲の良かったクラスメイトの遺体が上から見えたので、供養してあげたくて手伝いに来てしまいました」
「未来ちゃんが死体とか嫌じゃなきゃ、別にいいんだよ」
仕方ない、嫌だけどあいつは俺が回復してやるか。
「先輩、嫌だけど俺が回復してやるよ。でもこのまま足が変な方向に曲がったままだと、骨が変にくっついちゃうから自分で真っ直ぐにしてくれるか?」
「自分でできる訳ないだろ!」
「そうか? 俺はできるぞ? 自分でできないなら俺がやるけど我慢しろよ」
俺は曲がってる足を真っすぐにして軽く引っ張った。
「アギャー!!」
あらら、一叫びして気絶してしまった……まぁ、そのほうがうるさくなくていい。ある程度真っ直ぐにしておけば魔法補正が働き、勝手に元に戻ろうと良いような位置になってくれる。中級回復魔法を1回だけ掛けてあげて終了だ。仲間なら念の為にもう1回掛けてやるのだが、俺もこいつらには御免だ。
「3年の奴は気絶しちゃったから、バスケ部キャプテンのあんたに言っておく。桜はうちのメンバーの中では大して強くないが、それでもあんたらより断然強い。守ってもらう必要もないから今後一切俺たちに係わるな」
「分かってるよ、そういう約束だったからな。だがお前もせこい奴だな、自分が弱いから強い桜ちゃんにやらせたんだろ?」
俺はさっと手をあげ、【無詠唱】で4発中級魔法レベル10の【ウィンダラカッター】を放った。
同時に4カ所で物が壊れる。街灯2個に、中庭にある噴水の中央にあるマーライオンのレプリカの首、この学園の設立者である人の石像らしきものの首の4つだ。
「今、壊れた4つがお前たちの首と仮定するなら、1秒で片が付くという事だ。なんで俺が桜より弱いと思ったのか分からないけど、あまり舐めた事を言うなら、次は俺がそれなりに相手をしてやるがどうする?」
「いや、悪かった……とてもじゃないが敵いそうにない」
「解ってくれたならいいが、くれぐれも俺たちに係わらないでくれ。後、城崎さんだ。勝手に桜の許可なく馴れ馴れしく名前で呼ぶな!」
「兄様やっぱり素敵です♪ またジンジンきちゃいました!」
「「「龍馬先輩かっこいいです!」」」
「ん! 龍馬はキザだけどかっこいい!」
3階から美少女たちにキャーキャーと言われて悪い気はしないが、これだけは言っておこう。
「お前たち、俺が散々口を酸っぱくして言ったよな! 貞操の危険があるから、メールや会話で拠点の場所やメンバー構成がバレないようにしろって何度も何度も言ってあるよな? ひとの気も知らないでお前たちはそこから雁首揃えてキャーキャー言ってなにしてるのかな?」
あっ! という顔をしてそそくさと教室に帰ろうとしているがもう遅い。
「今更帰ってももう遅いよ! 全部ここにいる人たちにバレてしまっている! 手空きの者で死体を触れる者は降りてきて弔うのを手伝ってくれ! 美加ちゃんと沙織ちゃんもおいで、茶道部の亡くなった部長も皆と一緒に弔ってやろう。トラウマになりそうな娘は来なくていいからね! 絶対無理はするなよ!」
「いや~、白石君の所は中々強いじゃないか! どうだねうちの所にギャー!―――」
下卑た薄笑いをしながら俺に話し掛けてきた奴の目にナイフを突き刺し眼球を抉り取った。このナイフは俺が地球で最後に買った、あの7万円のハンティングナイフだ。
「龍馬君! いきなり何しているのですか!」
「兄様! 急にどうしたのですか!」
「龍馬君!?」
美弥ちゃん、菜奈、桜が慌てて俺を止めに入った。
未来ちゃんと茜と綾ちゃんは、俺の狂った行動に口を押えて驚いたように戸惑っている。
「桜、大丈夫だ放してくれ。別に殺す気はない。だが眼球はくり抜いたので部位欠損になるはずだ。ヒールじゃ治らないだろう」
美弥ちゃんと未来が慌ててヒールを掛けたが、左目は空洞になって眼球は存在していない。
ざまーみろだ!
「龍馬君、どうしてこんな事をしたのですか?」
美弥ちゃん先生メッチャ怒ってる……本気で怒ると、この人結構怖いんだな……。
「後で聞かせてやるけど、俺はそいつのせいで1カ月虐待を受け続けたんだよ。俺は何度もそいつのところに行って現状を報告したが、そいつの行った事は3分の職員会議だけだ。その3分の職員会議の内容は録音してあるから後で聞かせてあげるよ。会議の内容はただの通達『首になりたくなければ白石君たちの事は見て見ぬブリをしなさい』と言うだけのものだった。それを言ったのが教頭のそいつだよ。どうせ見ないのなら片目ぐらい無くて平気だろ? それに種族レベル40以上になれば、部位欠損も回復できるスキルもあるからな。それまでは片目で自分の言った事を考えて反省するんだな!」
「あれは私の命令じゃないんだ! 校長にそう言えと言われたんだ!」
「そんな事は俺も知ってるよ! その時の校長との会話も盗聴して録音してあったからな! だから何だよ! そのせいで俺は自殺まで考えたんだからな! 生徒を守るべき立場の人間が見捨てておいて、まだ言い訳するのか? 校長が生きてたら両目をくり抜いて舌を切ってやるとこだが、どうやら外に出てオークにやられて死んだんだろ? どうせ生きてても校長もこう言うだろうぜ、『理事長にそう言えって言われたんだ!』ってね!」
教頭はぐうの音も出ないようだ。
部位欠損を治すスキルは本当にあるのだ。
種族レベルを40まで上げないといけないので、当分は片目のままだろうが、それくらいの不自由はしてもらわないと気が治まらない。
「白石、俺も同罪だな。すまないと思っているが、俺にも守りたい家庭があったんだ。理事に逆らったやつはことごとく酷い目に遭っている。家も買ったばかりで簡単に学園を辞める訳にもいかなかったんだよ。他の先生たちも皆そうだ。大きな権力にそうそう逆らえるものじゃない」
「江口先生も相談を無視したけど、みたところ今頑張ってるようだしな。悪いと思っているのだったら、体育館の女子たちを守ってやれよ。こっちの世界では人口拡大の為に、神様が性欲3倍にしているらしいんだ。女子も排卵前後には性欲3倍になって良い匂いを振り撒くらしいので、それも注意がいる。それを嗅いだ男はさらに性欲が高まるそうだ。盛りの付いた犬猫状態らしい。お互いに注意しないと大変な事になる」
「回覧メールで確認して皆には一応伝えてある。うちの方でも既に何人かの女子にその傾向が出ているようだ」
「俺に少しでも悪いと思っているなら、江口先生が彼女たちを守ってあげてよ。俺を守らなかった代わりに彼女たちを命がけで守ってみせてよ。ちゃんと町まで守り切って送れたら、俺の事は忘れてあげるよ。途中で見捨てたり先生自身が彼女たちを襲ったらチョッキン刑だからね」
「分かった。約束しよう……今更理事もクソも無いからな」
教頭は残った片方の目で俺を睨んでいる。
「別に恨んでもらってもいいよ。俺もあんたの事は嫌いだし、許す気もない。それくらいの覚悟でその眼を刺したんだ。殺したいほどじゃないから殺さないけど、向かってくるなら殺すからそのつもりで挑むんだね」
教頭は顔を真っ赤にして教員棟に帰っていった。
各拠点からの増員で、その後2時間ほどで全部片付け終えた。
ゴブリンやオークの死骸から、一応魔石だけは抜き取るように指示をだし、各拠点で抜き取った魔石は均等に分けることにした。
火入れの際にはほとんどの者が出てきて、合掌して死者の冥福を祈っていた。
そこに佐竹たちの姿は当然のようになかった。
一部の女子は見たくないと、拠点内で泣いているようだ。その気持ちは皆も解るので、誰も無理に連れ出そうとはしない。
すべての処理を終え拠点に戻ったのだが、俺の教頭への仕打ちを見ていた一部の女子が、ちょっと俺を恐れているようだ。
俺は言い訳をするべくノートパソコンを【インベントリ】から取り出すのだった。
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