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この世の地獄
35.破産(オメガ視点)
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※前話で、蒼空がなぜこの世の地獄だと表現したのか、なぜ21話で、母の事については辛すぎてまだ考えられなかったのか、なぜすぐ自死を選択肢に入れてしまうのかについての種明かしです。
蒼空は何もされませんが、特に37話と38話で、男オメガの母が酷い目に遭います。
父と母の話は物語の進行上結構大事なので、37話の冒頭に要約を載せています。
読まなくても、ピュアピュア?な主人公達の物語の進行には特に影響は無いですが、今後段階的に主人公達の物語に少しずつ挟まってくる蒼空の父と母の物語を読むと、どうして蒼空が地下オメガになったのかが解るので、エグいのイケるよって方は少しお付き合い下さい。
-----------------------------------
<蒼空視点>
僕は、この世の地獄から、抜け出せたのだろうか。それともまだ地獄の中に居るのだろうか。
或いは、全てはまだこれからで、地獄の入口に立っているところだろうか。
父の事業が失敗した時、僕はまだ大学三年生だったから、なんとなく皆が持っている様な薄い法律知識で、最悪父が自己破産して、僕が相続権を放棄して、母が父と書類上だけでも離婚すれば大丈夫だと思っていた。
この家では暮らせなくなっても、どっかボロアパートを探して移ればいいし、もしかしたら大学にも通えなくなるかもしれないけど、僕はオメガの中でも勉強を頑張ってきた方だから、オメガ支援の奨学金制度を頼ってもいい。家族みんなでアルバイト極貧生活でもいいよね。
僕もあと2年も経てば社会人になれるし、そしたら二人を養ってあげられる。
なんて考えていた。
そんな僕は、本当に子供だった。
現実は、そんなに甘くはなかった。
大きな銀行からの借入金や大企業への買掛金は、
『自己破産で債権者に残余資産を分配しても足りなかった分の借金は全部チャラね!
貸倒引当金、どうせ積み立ててるんでしょ?どうせ使いきれずに毎期振替えてるだけでしょ?
仕訳二つでそれ取り崩して填補して、はい終わりね!』
で済むかもしれない。
でも、取引先はそんな風に余裕がある相手ばかりじゃない。
表の世界は確かに自己破産したら終わりかもしれないが、非公式な債権回収を裏社会に依頼する人が一人でも、一社でもあれば、自己破産なんて意味をなさない。
そんな簡単な事を、僕は知らなかったんだ。
めぼしい資産が全て、表の世界の自己破産の債権者分配待ちで取り押さえられている時に、裏社会の借金取りが何を持っていくと思う?
最初は父が海外などに隠していた隠し財産だった。
でも、柏木商事は大きな会社だったから、取引先も莫大な数がいて、裏社会に依頼するのも一社や二社じゃなかった。
色んな借金取りが数回家に来たら、当然隠していた資産も底を尽きる。
それで、次は?
臓器、売春、強制労働。
残された選択肢は自分達の身体を売ることだけだった。
離婚して我関せずなんかで、逃げ切れるものではない。
だって相手は犯罪組織だもの。
法律上の他人であることなんて、裏社会でなんの役に立つのさ。
結果、僕たち家族は夜逃げを敢行するしかなかったんだ。
それが罠だと知ってても、知らなくても、そのままで居れば結局捕まってしまう。
ならば、せめて足搔く。
それしか方法が無かった。
約半月前、父と母と僕は、家族で海外逃亡しようと空港に向かっていた。
正直僕は、父が海外逃亡すると言い始めた時から、逃げ切れるとはあまり思っていなかった。
空港という出入り口が限られる海外に逃げるよりも、最悪徒歩で山に入ってしまって次の駅まで歩けば足取りが掴みにくくなる、日本国内の方が足がつかないんじゃないかと思っていた。
第一、海外なんて航空券を買う時点で本名の登録が必要だし。
と思っていたら、偽造パスポートを父の友人が家族三人分用意してくれた。
父が破産しても、偽造パスポートなんて違法な事をしてまで、まだ助けてくれる友人が居る事に驚いたが、今考えればそれも裏社会の人が手を回していたんだと思う。
逆に言えば、裏社会の人でなければ偽造パスポートなんて作れないし、偽造パスポートを作る為に顔写真なんてものを出せば、一発で父が海外逃亡しようとしている事がバレる。
そんな簡単な事にも気が付かないくらい、僕たち家族は追い詰められていた。
蒼空は何もされませんが、特に37話と38話で、男オメガの母が酷い目に遭います。
父と母の話は物語の進行上結構大事なので、37話の冒頭に要約を載せています。
読まなくても、ピュアピュア?な主人公達の物語の進行には特に影響は無いですが、今後段階的に主人公達の物語に少しずつ挟まってくる蒼空の父と母の物語を読むと、どうして蒼空が地下オメガになったのかが解るので、エグいのイケるよって方は少しお付き合い下さい。
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<蒼空視点>
僕は、この世の地獄から、抜け出せたのだろうか。それともまだ地獄の中に居るのだろうか。
或いは、全てはまだこれからで、地獄の入口に立っているところだろうか。
父の事業が失敗した時、僕はまだ大学三年生だったから、なんとなく皆が持っている様な薄い法律知識で、最悪父が自己破産して、僕が相続権を放棄して、母が父と書類上だけでも離婚すれば大丈夫だと思っていた。
この家では暮らせなくなっても、どっかボロアパートを探して移ればいいし、もしかしたら大学にも通えなくなるかもしれないけど、僕はオメガの中でも勉強を頑張ってきた方だから、オメガ支援の奨学金制度を頼ってもいい。家族みんなでアルバイト極貧生活でもいいよね。
僕もあと2年も経てば社会人になれるし、そしたら二人を養ってあげられる。
なんて考えていた。
そんな僕は、本当に子供だった。
現実は、そんなに甘くはなかった。
大きな銀行からの借入金や大企業への買掛金は、
『自己破産で債権者に残余資産を分配しても足りなかった分の借金は全部チャラね!
貸倒引当金、どうせ積み立ててるんでしょ?どうせ使いきれずに毎期振替えてるだけでしょ?
仕訳二つでそれ取り崩して填補して、はい終わりね!』
で済むかもしれない。
でも、取引先はそんな風に余裕がある相手ばかりじゃない。
表の世界は確かに自己破産したら終わりかもしれないが、非公式な債権回収を裏社会に依頼する人が一人でも、一社でもあれば、自己破産なんて意味をなさない。
そんな簡単な事を、僕は知らなかったんだ。
めぼしい資産が全て、表の世界の自己破産の債権者分配待ちで取り押さえられている時に、裏社会の借金取りが何を持っていくと思う?
最初は父が海外などに隠していた隠し財産だった。
でも、柏木商事は大きな会社だったから、取引先も莫大な数がいて、裏社会に依頼するのも一社や二社じゃなかった。
色んな借金取りが数回家に来たら、当然隠していた資産も底を尽きる。
それで、次は?
臓器、売春、強制労働。
残された選択肢は自分達の身体を売ることだけだった。
離婚して我関せずなんかで、逃げ切れるものではない。
だって相手は犯罪組織だもの。
法律上の他人であることなんて、裏社会でなんの役に立つのさ。
結果、僕たち家族は夜逃げを敢行するしかなかったんだ。
それが罠だと知ってても、知らなくても、そのままで居れば結局捕まってしまう。
ならば、せめて足搔く。
それしか方法が無かった。
約半月前、父と母と僕は、家族で海外逃亡しようと空港に向かっていた。
正直僕は、父が海外逃亡すると言い始めた時から、逃げ切れるとはあまり思っていなかった。
空港という出入り口が限られる海外に逃げるよりも、最悪徒歩で山に入ってしまって次の駅まで歩けば足取りが掴みにくくなる、日本国内の方が足がつかないんじゃないかと思っていた。
第一、海外なんて航空券を買う時点で本名の登録が必要だし。
と思っていたら、偽造パスポートを父の友人が家族三人分用意してくれた。
父が破産しても、偽造パスポートなんて違法な事をしてまで、まだ助けてくれる友人が居る事に驚いたが、今考えればそれも裏社会の人が手を回していたんだと思う。
逆に言えば、裏社会の人でなければ偽造パスポートなんて作れないし、偽造パスポートを作る為に顔写真なんてものを出せば、一発で父が海外逃亡しようとしている事がバレる。
そんな簡単な事にも気が付かないくらい、僕たち家族は追い詰められていた。
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