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蒼空の日々
164.宅配便のお兄さん(オメガ視点)
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「終わった~~!!じゃあ、行こっか!」
僕たちは並んで駅の反対側まで歩き出した。
その中華屋はちょっと寂れた所にあって程よいぼろさだった。しょうゆやラー油等を載せる小さなお盆やメニュー、壁。何処もかしこも所々に油がこびりついて落ちない感じ。
きっとこういう老舗っぽくて程よく汚れている所が長く庶民に愛されている証拠なんだろうな。きっと凄く美味しいんだろうなと僕の食欲を誘った。
僕は実はこういうところに入るのは初めてだったりする。
実家が裕福な頃にはもちろんこんな町の中華屋には入らなかったし、家が没落してからは外食なんて出来なかった。
考えてみると両極端だね。もっと普通の人生が良かったよ。
僕はキョロキョロと物珍しく見てしまった。店の中は、よく恋愛ドラマで出てくる感じだ。
何か進展があるごとに仲間内で集まって作戦会議とかしちゃうところだ!
と、僕はテンションが上がって、多分目がハートになっているんじゃないかな。
どれを食べようかな。全部一通り食べてみたいな♪
僕は初めて見る街の中華屋のメニューにくぎ付けで、正面から向けられている熱い視線には気が付かなかった。
結局僕は一番オーソドックスな中華麺と餃子のセットにしてみた。お店の看板商品を食べれば、まず外れは無いと久我くんに教えてもらったからだ。
食後。
「美味しかった~~♪」
中華屋を出て、残冬の少し肌寒い道を駅前目指して歩いていく。前より若干日は長いけれども、20時を回るとすっかり暗くなっている。
軽くビールを飲んで、ちょっとほろ酔いの僕たちは、きっと知らず知らずのうちにいつもより警戒心が緩んでしまっていたんだと思う。
もし動いている車が急に横付けされて止まったら、きっとすぐに警戒を取り戻せただろう。でも僕たちはお互いの顔を見ながら話をしていたから、止まっている車に対する警戒がすっかり薄くなってしまっていた。
路肩に一台のバンが停めてあった。後ろの荷台を開けて、荷物の積み下ろしをしている宅配便のお兄さんがいる。
最近は配送業社の多様化で、大手の制服を着ていない中小の宅配業社も増えたんだったよね。なんて思いながら側を通り過ぎようとした。
そのお兄さんが、台車に積んでいた荷物の上に更に荷物を載せようとして、バランスを崩して台車の上の荷物を全部倒してしまった所に僕たちはちょうど通りかかった。
一応車道側を歩いてくれていた久我くんが、足元に転がってきた段ボールを善意で拾おうとしてかがみこんだ。途端、お兄さんは倒れた複数の荷物には目もくれずに、真っすぐに僕の方に向かってきて僕を担ぎあげ、そのまま僕を押し込む様にしてお兄さんごと荷台に乗り込んだ。
荷台の中でも、お兄さんは体重を掛けて踏ん張りながら僕を抑え込むものだから、僕は身じろぎ一つすら出来なかった。しかも、なんと荷台にはもう一人乗っていて、僕が載せられた直後から、僕の口を押さえつけて来る。
荷台のドアが閉まるのすら待たずに車は発進した。
何もおかしな所が無い荷物だったから、完全に油断していた。
攫うなら後ろから車が来るものだとばかり思っていた。そうか。荷台を開けている車こそ危ないんだ。
扉は最初から空いているし、車から人が降りて来るというワンアクションが要らないから、素早く攫えるんだ。
僕はもしかしてこのままどこか山奥に連れて行かれて口封じに殺されてしまうのだろうか。
僕は必死に抵抗した。例え走っている車から落ちる事になろうとも、なんとか車から下りなければ、殺されてしまう。
でも、男二人がかりで押さえつけられ、梱包用のテープで縛られてしまえば、非力な僕にはもう何も出来なかった。
怖い怖い怖い。正吾さん!助けて!
久我くん!お願いだから危ない事はしないで、すぐに助けを呼んで!
僕たちは並んで駅の反対側まで歩き出した。
その中華屋はちょっと寂れた所にあって程よいぼろさだった。しょうゆやラー油等を載せる小さなお盆やメニュー、壁。何処もかしこも所々に油がこびりついて落ちない感じ。
きっとこういう老舗っぽくて程よく汚れている所が長く庶民に愛されている証拠なんだろうな。きっと凄く美味しいんだろうなと僕の食欲を誘った。
僕は実はこういうところに入るのは初めてだったりする。
実家が裕福な頃にはもちろんこんな町の中華屋には入らなかったし、家が没落してからは外食なんて出来なかった。
考えてみると両極端だね。もっと普通の人生が良かったよ。
僕はキョロキョロと物珍しく見てしまった。店の中は、よく恋愛ドラマで出てくる感じだ。
何か進展があるごとに仲間内で集まって作戦会議とかしちゃうところだ!
と、僕はテンションが上がって、多分目がハートになっているんじゃないかな。
どれを食べようかな。全部一通り食べてみたいな♪
僕は初めて見る街の中華屋のメニューにくぎ付けで、正面から向けられている熱い視線には気が付かなかった。
結局僕は一番オーソドックスな中華麺と餃子のセットにしてみた。お店の看板商品を食べれば、まず外れは無いと久我くんに教えてもらったからだ。
食後。
「美味しかった~~♪」
中華屋を出て、残冬の少し肌寒い道を駅前目指して歩いていく。前より若干日は長いけれども、20時を回るとすっかり暗くなっている。
軽くビールを飲んで、ちょっとほろ酔いの僕たちは、きっと知らず知らずのうちにいつもより警戒心が緩んでしまっていたんだと思う。
もし動いている車が急に横付けされて止まったら、きっとすぐに警戒を取り戻せただろう。でも僕たちはお互いの顔を見ながら話をしていたから、止まっている車に対する警戒がすっかり薄くなってしまっていた。
路肩に一台のバンが停めてあった。後ろの荷台を開けて、荷物の積み下ろしをしている宅配便のお兄さんがいる。
最近は配送業社の多様化で、大手の制服を着ていない中小の宅配業社も増えたんだったよね。なんて思いながら側を通り過ぎようとした。
そのお兄さんが、台車に積んでいた荷物の上に更に荷物を載せようとして、バランスを崩して台車の上の荷物を全部倒してしまった所に僕たちはちょうど通りかかった。
一応車道側を歩いてくれていた久我くんが、足元に転がってきた段ボールを善意で拾おうとしてかがみこんだ。途端、お兄さんは倒れた複数の荷物には目もくれずに、真っすぐに僕の方に向かってきて僕を担ぎあげ、そのまま僕を押し込む様にしてお兄さんごと荷台に乗り込んだ。
荷台の中でも、お兄さんは体重を掛けて踏ん張りながら僕を抑え込むものだから、僕は身じろぎ一つすら出来なかった。しかも、なんと荷台にはもう一人乗っていて、僕が載せられた直後から、僕の口を押さえつけて来る。
荷台のドアが閉まるのすら待たずに車は発進した。
何もおかしな所が無い荷物だったから、完全に油断していた。
攫うなら後ろから車が来るものだとばかり思っていた。そうか。荷台を開けている車こそ危ないんだ。
扉は最初から空いているし、車から人が降りて来るというワンアクションが要らないから、素早く攫えるんだ。
僕はもしかしてこのままどこか山奥に連れて行かれて口封じに殺されてしまうのだろうか。
僕は必死に抵抗した。例え走っている車から落ちる事になろうとも、なんとか車から下りなければ、殺されてしまう。
でも、男二人がかりで押さえつけられ、梱包用のテープで縛られてしまえば、非力な僕にはもう何も出来なかった。
怖い怖い怖い。正吾さん!助けて!
久我くん!お願いだから危ない事はしないで、すぐに助けを呼んで!
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