【完結】会社をクビになったら異世界で追放魔術師に性処理係として拾われました

夜曲

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閑話

犯人

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『乳首狂い善がり地獄——乳首開発の全て』『挙交乱舞——筋肉を駆使して差をつけよう』『踊り子は夜に啼く——倦怠期の特別な日に』……などなど。
 なろう式の説明型表題を見慣れている陽向でも、その組み合わせはないだろと思ってしまう、微妙なネーミングの数々……。
 文学的な表題をつけて小説にするか、内容を説明する表題をつけて実用書にするか、はっきりしてくれーー!
 このフィクションなんだかノンフィクションなんだか絶妙にわかりにくいところが、若者をミスリーディングさせているすべての元凶だった。

 この微妙な気持ちをどうしてくれよう。
 だが、これだけは言わなければならない……。

「小説は、フィクションです!ゴホンッゴホンッ」
 陽向はつい大声で叫んでしまった。

「フィックなんだろうか……」
 ネオは、今が一世一代の大ピンチだと自覚しているのだろう。陽向の反応を聞き逃すまいと構えていたのに、突然知らない単語が出てきて困惑している。

「だから、本の内容をっ鵜呑みにするなーーーー!!!!ゴホンッ。
 これは、作り話なの! 現実のっ人間相手に、しちゃ、いけないの!

 ネオの、強靭なっ筋肉で、なぜか、できちゃった、けど。
 普通、こんなの人間はっできないんだよっ! ゴホンッゴホンッ!」

 陽向が咳込むと、ネオがすかさず口に指を突っ込んで水を飲ませようとしてくる。
 あまりに急ぎ過ぎたのか、陽向が飲みきれない量を出されてしまい、陽向の口から溢れ出た水が、官能小説の山を濡らした。

 ネオは慌てて本を拭いているが、陽向がそれを止める。

「ネオ! もう、こういう本を、買ってくるのはっ禁止!!ゴホンッゴホンッ」

 勢いに任せて言ったものの、自分の十九歳の頃を思い出し、全面禁止にするのも悪い気がしてきた。同じ男だ。気持ちは解る。——つもりだ。

「いや、禁止はっ言い過ぎた。
 もし、買って、きても、僕にっ試す前に、僕に聞いて!ゴホンッ。
 試して、いいか。わかった?」

 ネオは、首を勢いよく振っている。
 その充分反省していそうな様子を見て陽向が安心していると、どうやら外から話し声が聞こえる気がする。

 陽向がネオに問う前に、ネオが申し訳なさそうに切り出した。
「ヒナタ、申し訳ないが少し出てくる。すぐに戻るから。また戻ったら続きを」
「えっ」

 ネオは、枕元にあった本を格納結界にしまおうと手を伸ばしたが、「待って、この本は、僕がっ中身を、確認するまでっ預かる」と言って止めた。

 よほど見られたらまずいことでも書いてあるのか、ネオは「でも……」と渋っている。中身が推測できるような表題を既に見られているのに、今更中身を見られたからといってどうこうもない気がするのだが。

 そんな押し問答をしていると、ドアが控えめにノックされた。
「カルネオール殿下、本日はいかがいたしましょう。一旦解散いたしましょうか」
 ブルエの声だった。

「本日は中止だ! また追って沙汰を出す!」
 ネオのよくとおる王子様ボイスに、『深くて良い声だな』と出会った日と同じことを陽向が考えていると。

「ハハハハッ! そんなことだろうと思いました! 昨日のあの声では、本日のお出かけは無理であろうと思い、闇魔術師たちはこちらには連れてこずに砦の方に待機させております。
 またヒナタ殿が回復しましたら、いつでもお声がけください」

 扉越しなのに、まるですぐそこにいるかの様に聞こえるブルエの声に、陽向は昨日の痴態が全てブルエに聞かれていたことを悟った。

「だれが昨日ここに来いと言った!」
 ネオは珍しく怒りの声を上げている。

「いやいや……カルネオール殿下と陽向様の体格差では、万が一のことがあってはなりませんので。治癒魔導師を待機させておりました。
 本日も連れてきておりますが、いかがなさいましょうか」

 確かに昨日は危うくネオにヤり殺されるところだった。ネオ自身にもその自覚はあったのか。
 それを聞いてネオの怒りは収まり、陽向が頷いたのを見てから、二人の入室を許可した。

 もちろん、本はネオの格納結界の中に隠してある。この中に隠されたものは、誰にも見つからない。
 ネオと同じ家に住み、同じベッドに寝ていて、日中は一緒に恐竜研究に出かける。ヒナタはネオのすべてを知ったつもりでいたのに。
 陽向はこの魔法の怖さを違う意味で思い知った。

『やはり、ブルエはこの世界での僕のおじいちゃんだ。僕のためを思って、そこまで先回りでいろいろと考えてくれるなんて、なんて優しい』
 と思ったのもつかの間。

 治癒魔導師がヒナタの”患部”に触れさせることをネオが拒否したので、治癒魔法を手から流し込んでもらっている最中に、ブルエがぽつりとこぼした。

「まさかあれらの本に書いてあることを本当に全部やってしまわれるとは。いやはや。若いとはすばらしいですな」
「えっ。なんでブルエがそれを知って……」
 陽向が困惑の表情をブルエに向けると、ネオが親の仇を見るような目でブルエをにらんでいることに気が付いた。

「ふふふ。あれらは私が若い時にお世話になった本でしてね。男性の伴侶ができた殿下にお譲りしたのですよ」

『ブルエ、お前だったのか……。
 裏切者は意外なところにいた。信じていたのに』
 陽向は、もうがっくりときてしまい、全身の力が抜けてしまった。

 治癒魔導師が驚いて手を止めたのを、陽向は頷いて再開を促す。元気になったら、ネオに言いたいことがある。ぜひとも治療はしてもらわねば。

 始終顔を真っ赤にしていた治癒魔導師は、腕は確かだったようだ。
 治療の甲斐あり、肛門と乳首の痛さや喉の調子などは治ったのだが、筋肉痛は怪我ではないので治らないということだった。結局今日は、寝台の上の住人になる。だが、飛沫ぶりに読む本には事欠かなそうだ。

「殿下、予約していたお店は、アジュールちゃんと儂で行かせていただきますので、ご心配は無用ですぞ。

 あぁ、アジュールちゃんというのは、あの王太子殿下がヒナタ殿の身代わりに使った子です。今は、儂のところで幸せに暮らしておりますゆえ、ヒナタ殿はどうかご安心を」

 そう言ったブルエの瞳が、一瞬捕食者の目になったことを陽向は見逃さなかった。それは、歴戦の戦士の目だった。
 あぁ……あの子も災難なことに。あの奇異な蔵書の数々を持っていた人に囲われて、果たして本当に幸せに暮らしていけるのだろうか。

「はぁぁぁぁ。全く、そなたには敵わん。勝手にしろ。
 またヒナタが元気になったら、代理を頼む」
「はい。殿下。承知いたしました」

 ブルエは、「高級店でアジュールちゃんとお食事~~」と足取り軽く帰っていった。

 扉が閉まったのを確認し、陽向は治ったばかりの喉で精一杯叫んだ。

「ネオーーー!!!!」
「はい!!!!」
 これは、ずーーーっと前から考えていたことである。

「この山小屋に、防音を施さない限り、もう絶対ここではヤらない!!!
「承知しました!!!!」
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