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オラネコBL編

1.旅立ち

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「オラオラ!もっと掘れや!!リョウも腰振れや!!
 そんなもんやないやろ!!もっと本気出せや!!!」

 明日別れる予定だった青年が、柄悪く煽りながら、勝手に俺の上に乗っかっている。
 やっやめてくれ~~。ひぇ~~~。
 どうしてこうなっちゃったんだ…。俺は頭を抱えた。


(=^・^=)(=^・^=)(=^・^=)



 俺は、都内のCラン大学で学ぶ、普通の大学四年生だ。
 就職活動は結構散々だった。激務で有名な会社になんとか引っかかって、辛うじて内定を貰う事ができた。

 仲が良い友達も全員就職が決まったし、卒業旅行に行こうと誘った。
 結果、四人中ゼロ人が着いてきてくれることになった。
 別に俺の人望が無いわけではない。航空券が高すぎるせいだ。


 就職しちゃったら旅行に行けるチャンスなんて早々ないだろう?ましてや俺の会社は激務らしいし。
 だから俺は、一人でも卒業旅行を敢行する事にした。


 今は二月。寒くない所をと思って思い浮かんだ先は、タイだった。温暖で、この季節でもきっとフルーツが美味しい。それに、沢山の格安飛行機が飛んでいて、東南アジアの他の国に行くよりも、比較的安かった。フルーツ好きな俺は、行先をクイのバンポクに決めた。


 バンポクは、なんとなく人の口端に挙がる事が多い、人気の観光地というイメージだった。
 海もあるし、下手したらこの二月に海水浴まで出来ちゃうんじゃないか?と期待していた。
 物価も安いらしいし、学生の貧乏旅行でもそう不自由しないだろう。



 スワンナブーム国際空港から外に出た瞬間。肌に絡みつくかのような南国の熱気に、俺はバカンスの予感を感じた。
 ここを旅行地に選んで良かった。冬に常夏の国に旅行に行くなんて、なんか一足先に社会人の贅沢を覚えた気分だ。


 ホテルの近くまではバスと地下鉄を乗り継いで行く予定だった。
「リノバス…リノバス…っと。あったあった。」

 俺は既に止まっていたバスに飛び乗った。
 ホテルは確か…このバスで一駅、それから青線に乗り換えて二駅の所だ。


 学生旅行だから、ホテルは安さを基準にして探した。
 安ければ、市中から離れた辺鄙なところにあるのが定石だ。そのはずなのに、今回予約したそこはバンポクの中心地から近い割に、物凄く安かった。

 バンポクはスリが多いと聞くし、泥棒とか怖いし一応個室が良いだろうと思って、俺は個室を検索条件に指定していた。
 もしかして相部屋が紛れ込んでいるのか?と思って部屋を見てみたが、なんと個室だった。
 ベッドも大きいし、写真の様子からも、部屋は悪くない。

 男の一人旅だし、シャワーだって別に共用で良かったのに、何故か部屋の中にシャワーブースが付いているという厚遇ぶりだ。
 観光地からも近い。ラッキー♪すげぇ穴場だなと思ってそこに決めた。


 普通は、そんなに安いのは怪しいと敬遠すべきだったんだ。だが俺はまだ学生で、圧倒的に社会経験が足りていなかった。

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