仮タイトル 異世界転生？

第五章

白妖VS緋の龍

「ああ。少々手間取ったのは事実だ」
「少々？」
だめだ。男が何を言っても白妖に油を注いでしまう。
「お前、ちょっと落ち着…」
「そこまで言うなら、俺の術を破ってみればいい。今ここで！」
相手は傷病者だというのに、白妖は容赦なく魔法を放った。
俺は咄嗟に男の前に飛び出しかけたが、男が何か唇を動かすと、俺でもわかるくらい部屋の空気が変わった。
実態のない魔法を肉眼で視認できない俺でも、男が白妖の放った魔法を無効化したのがわかった。
白妖はあからさまに舌打ちをする。
俺は内心意外に思っていた。なんとなく、白妖には上品なイメージがあった。
舌打ちにしても、ここまでわかりやすく苛立ちを表現するのは予想外だった。俺と二人のときの白妖はそもそも苛立ちどころか怒ることもほとんどない。常に落ち着き払って、余裕を見せていた。