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僕と橙真兄さん、有馬先生、和真は声のする方へ振り向いた。
そこには、1人の女子生徒がいた。
学園の制服は、濃い茶色のブレザーに深緑と紺色のチェックスカートで男子生徒は同じ色のズボンである。
そして、男子はネクタイに対して女子生徒はリボン。
学年で色が分かれ、目の前の女子生徒のリボンは蘇芳色で2年生。
僕と和真の1年先輩、ちなみに僕達のネクタイは藍色。
新橋 ひなこ、17歳。
前髪をまっすぐに、サイドの髪を顎にあたる長さで切りそろえ、後ろ髪は腰まである癖のないストレートの長い綺麗な黒髪。
シミのない真っ白な肌で清楚で上品な感じの美少女で、その容姿は『姫』と言われるに相応しい。
彼女は学園の有名人で『紫式部』と呼ばれている。
新橋さんはスタスタと早歩きで、僕達に近づいてくる。
近づく新橋さんの表情はとても、真剣だった。
僕達の目の前に立つと僕の隣にいる橙真兄さんを見つめ、
「橙真様!これを」
と持っていた、綺麗な包装紙で包まれた箱を橙真兄さんに差し出す。
橙真兄さんにプレゼントかな?
橙真兄さんは本当、女性にモテる。
何度かプレゼントを渡されている現場を見た事があるが、受け取ったところは見たことがない。
僕は成り行きを見守ると、
「この度、おめでとうございます!本当ならば、ご本人から聞きたいと思われますが、私が代弁させて頂きます。妊娠3カ月ですわ!」
「‼ 」
新橋さんの当然の言葉に、僕は衝撃を受けた。
妊娠3カ月って、赤ちゃん!!
「ありがとう、ひな嬢」
新橋さんの言葉に橙真兄さんは否定しなく、僕の肩から手が離れ、嬉しそうに包みを受け取る。
橙真兄さんと新橋さんの平然なやり取りに、僕はただ驚愕する。
え?橙真兄さんに赤ちゃん...子供がいる!
僕は目の前が真っ暗になって、立ち竦んでしまった。
僕の記憶にある女性は、家に突然訪ねてきた自称『橙真兄さんの彼女』。
結局、彼女じゃなかったが、彼女はいないと思っていた。
『彼女』はいないが奥さんがいるって事なのかな?
だけど、お風呂に入る時もご飯食べる時も、寝る時も休日、家で兄達の膝の上で映画を見たり、抱き合いながら昼寝してゴロゴロしてる時も、学校にいる以外はいつも側にいるのに気づかなかった。
橙真兄さんは何でもそつなくこなすから、僕の学校に行ってる間に奥さんに会っているのか。
僕は何も出来ないから、兄離れも出来てないから僕を優先しているのかなとか、思いを巡らせる。
橙真兄さんを信じてる、信じてるけど….。
急に僕は胸が苦しくなる。
あ、あれ?胸が苦しい…。
「可愛い、だろうな」
「早く、見たいですね」
有馬先生や和真までもが笑顔で言う。
「可愛い子。当然ですとも、日本一!いえ、世界一ですわ!」
聞いてると、胸がもっと苦しくなる。
僕、病気かな....。
いつもなら、体に異変があるとすぐに橙真兄さんに話すのに、橙真兄さんに子供がいる事を知らなかった。いや、教えてもらえなかった事に、分からないモヤモヤとした気持ちと胸が苦しくて話せない。
約束したのに!
ある時期、教室にマスク姿の生徒が何人かいて、咳をするたび苦しそうだなと思った。
次の日に僕は頭がズキっと痛かったが、でもすぐに治ると思って橙真兄さんや勇橙兄さんに黙ってやり過ごした。
『何かあったら、何でも言ってね』
いつも、兄達に言われていた。
それが、午後の授業が始まる時から頭が段々と痛くなって、体が怠くなる。
ついには、くらくら視界が揺れて授業中倒れた。
倒れた僕は和真に横抱きで、学園の保健室へと運び込まれベッドで寝かせられる。
体温を測ると熱がり、風邪だった。
朝は頭の痛みだけで、熱っぽくもなく大したことないと思ったが、一気に熱が上がる体質だと保健の先生が言っていた。
体がだる重い、視界が揺れる。
眠れば、意識を手放せば楽になるかと思い、目を瞑るが酔ってる感覚(浮動感)がして眠れなかった。
最初は和真もいたが、
『すぐに戻る』
とスマホでどこかへ電話をしに保健室を出て行く。
保健の先生も用事で職員室へ行ってしまった。
保健室で僕、独りきり…。
孤独感に襲われる。
いつも必ず誰かがいる。
寂しい気持ちはなかったが、今はとても寂しい。
橙真兄さん…勇橙兄さん…。
静かな保健室、聞こえるのは時計のカチカチと時間刻む秒針の音だけ。
寂しい….。
そんな時、廊下を複数の走る音が近いてくる。
保健室の近くで走る音が止まると、ドアが勢いよく開けられる。
僕は視線だけを向ける。
開けられたドアから橙真兄さんと勇橙兄さんが憂わしげな表情で入ってくる。
後ろには、和真もいた。
兄達に連絡してくれたのだろう。
おもわず、目頭が熱くなる。
兄達を見ると綺麗に整えられた髪と、服が走って来てくれたのだろう乱れてる。
『『とーりちゃん!』』
兄達はベッドに眠る僕へ駆け寄り、覆い被さるように抱きしめた。
ふと、僕の頬に暖かい水が落ちる。兄達の顔を見ると涙が出ていた。
初めて見た、兄達の泣く姿。
視界がボヤけて見えてるのか、それともそう見えるのか分からないけどその時、イケメンの涙はキラキラして綺麗で、まるで星に見えた。
僕が思わず見惚れたが、
『とーりちゃん!お兄ちゃんが気付かなくて、ごめんね』
橙真兄さんの言葉に僕は、自分が黙っていた事で優しい兄達に心配させてしまったことに罪悪感に苛まれる。
『ち、違うの。僕が言わなくて…ごめんなさい…』
涙が溢れて出るのを我慢しながら、謝罪するが涙は溢れて溢れて、目尻からぽろぽろと流れ続ける。
すると、勇橙兄さんが僕の目尻から涙を指で掬くように拭きながら優しく言う。
『今度は、何かあったら絶対に言って』
『うん、絶対言う』
続けて橙真兄さんが僕の両頬に手を添えて言う。
『とーりちゃん。お兄ちゃん達は、とーりちゃんがいないと死んじゃうの』
『死んじゃぁーいや、だぁ』
添えられた手に自分の手をぎゅっと握る。
橙真兄さん、なんで死んじゃうって言うの….僕だって生きられないのに….イジワルだ。でも、好き。
勇橙兄さんが掬ってくれたのにまた、涙が溢れ出す。
勇橙兄さんがゆっくり顔を近づけて、涙を舐め取る。
『絶対、離れないでね』
『うん』
今度は、橙真兄さんは優しく唇にキスをする。
『とーりちゃん、愛してるわ』
『僕も愛してる』
勇橙兄さんの優しさと橙真兄さんの少しイジワルだけど、でも優しさに触れられ、先程までの孤独感が消えた。
3人は力強く、抱きしめ合う。
その後、咳した何人かは有無を言わさず、強制に病院へ入院されたことと、全教室に加湿空気清浄機が設置されたことに僕は風邪が治ってから知った。
「とーりちゃん?」
僕が思い起こしていると不意に、橙真兄さんの顔が近くにあり驚く。
「大丈夫?」
『何かあったら、何でも言ってね』
思わず、『大丈夫』と返しそうになる。
約束をしたので、今の胸が苦しいことを言わないとと思い、口を開くが言葉が出ず、また口を閉じる。
そんな僕に新橋さんが、
「まさか!本当に赤ちゃんが出来ましたの!」
え?
僕は驚いた。
「きゃー!橙真様と橙利様の赤ちゃんが本当に見えるのですね!」
新橋さんが狂喜乱舞する。
その姿に彼女の清楚で上品さが崩れる。
え?橙真兄さんと…誰の赤ちゃん?ぼ、僕‼︎
新橋さんの言葉を思い返す。
『おめでとうございます!本当ならば、ご本人から聞きたいと思われますが、私が代弁させて頂きます。妊娠3カ月ですわ!』って
「僕‼︎僕の赤ちゃん、3カ月なの!」
と橙真兄さんに言うと、にこりと笑って鼻にキスする。
鼻にキスは愛玩....。
「もう、橙利様。可愛すぎです!」
「可愛い」
「とても、愛くるしい」
僕が何かに勘違いしている事に気づいて、みんなが言う。
自分だけ勘違いした恥ずかしさで、両手で赤面を隠した。
そんな僕に橙真兄さんはまた、キスをする。
今度は髪に。
「興奮しすぎて夢中で描いてましたら、5日間も徹夜してしまいました!でも、今の瞬間、次回作が頭に浮かぶので延長しますわ!」
新橋さんの興奮は止まらない。
え、描く?って、5日間徹夜!それに、延長!眠くならないの!
「そっか。とりあえず、眠ろうか」
有馬先生が空笑いで言う。
「眠っている暇はありません!橙真様と橙利様の赤ちゃんを可愛いく、子育てするお二方を描いてみせますわ!」
新橋さんは力強く拳を握る。
「うん。楽しみしてるよ」
橙真兄さんが貰った包みを開けると一冊の本が出てくる。
本の表紙には『橙真と橙利の×××♡~妊娠編~』題名が書かれていた。
その本を見て、新橋さんが腐女子で今までの話が全て、本の話だと分かった。
『橙真と橙利の×××♡』シリーズは新橋さんの著書。
橙真兄さんが愛読している。
あー、新橋さんの趣味を知っているのに、橙真兄さんの事になると僕は平常心でいられない。
新橋さんとの出会いは、彼女の家はランジェリーを手掛ける、女性のほとんど使っている有名メーカーの令嬢。
で、僕も愛用している。
当然、男子用。
彼女は引きこもりで毎日ゲームや漫画を描いている。
部屋はいつも暗く、太陽の光を浴びない肌は白かった。
出席数がヤバくなり、久しぶりに学園を訪れ、そこで運命的な出会いをした。
職員室に向かう途中、窓から見える来客用駐車場に視線を向けると、腐女子の生きる糧?栄養素?おかず?が、目の前に広がる場面(シーン)に足を止め、窓にへばりつき興奮していたと。
清楚で上品さはどこえやら….。
長身の美男子が、背丈離れている美少年を抱きしめ、それは別れを惜しむかのように。
そして、お互いの目と目が合うとどちらからともなく、キスをする。
新橋さんはその場で、
『ご飯、大盛り3杯いける!』
と叫んだらしい。
窓は閉まっていると窓から駐車場は離れているから聞こえなかった。
ただ、通りすがりの先生や生徒はギョッとしていたらしい。
新橋さんが見たのは、橙真兄さんと僕のいつもの『行ってきます』の挨拶の抱擁とキスだ。
抱擁とキスをしていると、
『逢引してるところ、申し訳ございません!』
新橋さんに声をかけられた、僕は見られたことに恥ずかしく橙真兄さんの背に隠れ、橙真兄さんはすごく怒った顔していた。
新橋さんは本当は声をかけるつもりはなかった、禁断愛を邪魔する奴は『馬に蹴られ、のたうち回って死ね』だからだ。
だが、静かに見ているはずだったがどうしても、許せない事があり思わず、出てきてしまったらしい。
『初めまして。私、新橋 ひなこと申します。道端に捨てられております、ただのゴミ。いえ、石ころでございます。当然ですが、お履きになられてるパンツは、なんですの!』
本当に当然だと、思う。
僕と橙真兄さんは呆然としてしまった。
橙真兄さんに詰め寄り、今度は新橋さんが怒った顔する。
『パンツの跡!拷問ですか!拷問はロープと決まってます!ですが、お相手のお美しいお体に無粋の跡を付けるなんて万死に値しますわ!あと、型がよくありません!可愛いお尻が可愛そうですわ!』
新橋さんはズボン越しから透けてるパンツが気に入らなく、邪魔してしまったとあの時は無我夢中であったと、後で謝れた。
ちなみに僕が入ってた最初のパンツは、決して安い物ではない、1枚数万円するパンツだった。
『橙利様って言うのですね。橙利様のパンツは、この新橋 ひなこが命に代えても、相応しいパンツを作って参ります!』
令嬢が、パンツを連発はするのはどうかと….。
マシンガン如く、発言する新橋さんにあの橙真兄さんは何も言えなかった。
新橋さんは急いでどこかに行ってしまったあと、橙真兄さんはお腹を押さえて笑い出した。
初めて見た、橙真兄さんの爆笑する姿。
それから、
「やっと、子供が出来て私、涙が止まりませんでしたわ。まだ3カ月ですので、まだお腹は出ませんが、それでも少しずつ大きくなり橙利様のスタイルが変わってしまうことに複雑な気持ちになりました」
新橋さんは興奮しながら話す。
「ぷくっとしたとーりちゃんも可愛いと思うよ」
橙真兄さんは、この上なく嬉しい様子だ。
「そうなんです!絶対、可愛いですわ!お名前考えて下さいね」
と、これから会社に行く橙真兄さんを見送り、僕と和真、新橋さんそして、有馬先生は教師用出入口から入りるので途中まで一緒に行く。
有馬先生と別れると3人で昇降口へ向かう。
その途中、新橋さんは橙真兄さんと僕の子供がどう成長して出会いをするかを話、出会いに自分を加わりたいと言う和真の間に挟まれながら、僕は聞いていた。
昇降口に着くと、何人かの生徒が行き交う。
僕は靴を脱ぎ、自分のロッカーを開けると、
「え…」
目に飛び込む光景に驚き、その場で固まった。
そこには、1人の女子生徒がいた。
学園の制服は、濃い茶色のブレザーに深緑と紺色のチェックスカートで男子生徒は同じ色のズボンである。
そして、男子はネクタイに対して女子生徒はリボン。
学年で色が分かれ、目の前の女子生徒のリボンは蘇芳色で2年生。
僕と和真の1年先輩、ちなみに僕達のネクタイは藍色。
新橋 ひなこ、17歳。
前髪をまっすぐに、サイドの髪を顎にあたる長さで切りそろえ、後ろ髪は腰まである癖のないストレートの長い綺麗な黒髪。
シミのない真っ白な肌で清楚で上品な感じの美少女で、その容姿は『姫』と言われるに相応しい。
彼女は学園の有名人で『紫式部』と呼ばれている。
新橋さんはスタスタと早歩きで、僕達に近づいてくる。
近づく新橋さんの表情はとても、真剣だった。
僕達の目の前に立つと僕の隣にいる橙真兄さんを見つめ、
「橙真様!これを」
と持っていた、綺麗な包装紙で包まれた箱を橙真兄さんに差し出す。
橙真兄さんにプレゼントかな?
橙真兄さんは本当、女性にモテる。
何度かプレゼントを渡されている現場を見た事があるが、受け取ったところは見たことがない。
僕は成り行きを見守ると、
「この度、おめでとうございます!本当ならば、ご本人から聞きたいと思われますが、私が代弁させて頂きます。妊娠3カ月ですわ!」
「‼ 」
新橋さんの当然の言葉に、僕は衝撃を受けた。
妊娠3カ月って、赤ちゃん!!
「ありがとう、ひな嬢」
新橋さんの言葉に橙真兄さんは否定しなく、僕の肩から手が離れ、嬉しそうに包みを受け取る。
橙真兄さんと新橋さんの平然なやり取りに、僕はただ驚愕する。
え?橙真兄さんに赤ちゃん...子供がいる!
僕は目の前が真っ暗になって、立ち竦んでしまった。
僕の記憶にある女性は、家に突然訪ねてきた自称『橙真兄さんの彼女』。
結局、彼女じゃなかったが、彼女はいないと思っていた。
『彼女』はいないが奥さんがいるって事なのかな?
だけど、お風呂に入る時もご飯食べる時も、寝る時も休日、家で兄達の膝の上で映画を見たり、抱き合いながら昼寝してゴロゴロしてる時も、学校にいる以外はいつも側にいるのに気づかなかった。
橙真兄さんは何でもそつなくこなすから、僕の学校に行ってる間に奥さんに会っているのか。
僕は何も出来ないから、兄離れも出来てないから僕を優先しているのかなとか、思いを巡らせる。
橙真兄さんを信じてる、信じてるけど….。
急に僕は胸が苦しくなる。
あ、あれ?胸が苦しい…。
「可愛い、だろうな」
「早く、見たいですね」
有馬先生や和真までもが笑顔で言う。
「可愛い子。当然ですとも、日本一!いえ、世界一ですわ!」
聞いてると、胸がもっと苦しくなる。
僕、病気かな....。
いつもなら、体に異変があるとすぐに橙真兄さんに話すのに、橙真兄さんに子供がいる事を知らなかった。いや、教えてもらえなかった事に、分からないモヤモヤとした気持ちと胸が苦しくて話せない。
約束したのに!
ある時期、教室にマスク姿の生徒が何人かいて、咳をするたび苦しそうだなと思った。
次の日に僕は頭がズキっと痛かったが、でもすぐに治ると思って橙真兄さんや勇橙兄さんに黙ってやり過ごした。
『何かあったら、何でも言ってね』
いつも、兄達に言われていた。
それが、午後の授業が始まる時から頭が段々と痛くなって、体が怠くなる。
ついには、くらくら視界が揺れて授業中倒れた。
倒れた僕は和真に横抱きで、学園の保健室へと運び込まれベッドで寝かせられる。
体温を測ると熱がり、風邪だった。
朝は頭の痛みだけで、熱っぽくもなく大したことないと思ったが、一気に熱が上がる体質だと保健の先生が言っていた。
体がだる重い、視界が揺れる。
眠れば、意識を手放せば楽になるかと思い、目を瞑るが酔ってる感覚(浮動感)がして眠れなかった。
最初は和真もいたが、
『すぐに戻る』
とスマホでどこかへ電話をしに保健室を出て行く。
保健の先生も用事で職員室へ行ってしまった。
保健室で僕、独りきり…。
孤独感に襲われる。
いつも必ず誰かがいる。
寂しい気持ちはなかったが、今はとても寂しい。
橙真兄さん…勇橙兄さん…。
静かな保健室、聞こえるのは時計のカチカチと時間刻む秒針の音だけ。
寂しい….。
そんな時、廊下を複数の走る音が近いてくる。
保健室の近くで走る音が止まると、ドアが勢いよく開けられる。
僕は視線だけを向ける。
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後ろには、和真もいた。
兄達に連絡してくれたのだろう。
おもわず、目頭が熱くなる。
兄達を見ると綺麗に整えられた髪と、服が走って来てくれたのだろう乱れてる。
『『とーりちゃん!』』
兄達はベッドに眠る僕へ駆け寄り、覆い被さるように抱きしめた。
ふと、僕の頬に暖かい水が落ちる。兄達の顔を見ると涙が出ていた。
初めて見た、兄達の泣く姿。
視界がボヤけて見えてるのか、それともそう見えるのか分からないけどその時、イケメンの涙はキラキラして綺麗で、まるで星に見えた。
僕が思わず見惚れたが、
『とーりちゃん!お兄ちゃんが気付かなくて、ごめんね』
橙真兄さんの言葉に僕は、自分が黙っていた事で優しい兄達に心配させてしまったことに罪悪感に苛まれる。
『ち、違うの。僕が言わなくて…ごめんなさい…』
涙が溢れて出るのを我慢しながら、謝罪するが涙は溢れて溢れて、目尻からぽろぽろと流れ続ける。
すると、勇橙兄さんが僕の目尻から涙を指で掬くように拭きながら優しく言う。
『今度は、何かあったら絶対に言って』
『うん、絶対言う』
続けて橙真兄さんが僕の両頬に手を添えて言う。
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『死んじゃぁーいや、だぁ』
添えられた手に自分の手をぎゅっと握る。
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勇橙兄さんが掬ってくれたのにまた、涙が溢れ出す。
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『絶対、離れないでね』
『うん』
今度は、橙真兄さんは優しく唇にキスをする。
『とーりちゃん、愛してるわ』
『僕も愛してる』
勇橙兄さんの優しさと橙真兄さんの少しイジワルだけど、でも優しさに触れられ、先程までの孤独感が消えた。
3人は力強く、抱きしめ合う。
その後、咳した何人かは有無を言わさず、強制に病院へ入院されたことと、全教室に加湿空気清浄機が設置されたことに僕は風邪が治ってから知った。
「とーりちゃん?」
僕が思い起こしていると不意に、橙真兄さんの顔が近くにあり驚く。
「大丈夫?」
『何かあったら、何でも言ってね』
思わず、『大丈夫』と返しそうになる。
約束をしたので、今の胸が苦しいことを言わないとと思い、口を開くが言葉が出ず、また口を閉じる。
そんな僕に新橋さんが、
「まさか!本当に赤ちゃんが出来ましたの!」
え?
僕は驚いた。
「きゃー!橙真様と橙利様の赤ちゃんが本当に見えるのですね!」
新橋さんが狂喜乱舞する。
その姿に彼女の清楚で上品さが崩れる。
え?橙真兄さんと…誰の赤ちゃん?ぼ、僕‼︎
新橋さんの言葉を思い返す。
『おめでとうございます!本当ならば、ご本人から聞きたいと思われますが、私が代弁させて頂きます。妊娠3カ月ですわ!』って
「僕‼︎僕の赤ちゃん、3カ月なの!」
と橙真兄さんに言うと、にこりと笑って鼻にキスする。
鼻にキスは愛玩....。
「もう、橙利様。可愛すぎです!」
「可愛い」
「とても、愛くるしい」
僕が何かに勘違いしている事に気づいて、みんなが言う。
自分だけ勘違いした恥ずかしさで、両手で赤面を隠した。
そんな僕に橙真兄さんはまた、キスをする。
今度は髪に。
「興奮しすぎて夢中で描いてましたら、5日間も徹夜してしまいました!でも、今の瞬間、次回作が頭に浮かぶので延長しますわ!」
新橋さんの興奮は止まらない。
え、描く?って、5日間徹夜!それに、延長!眠くならないの!
「そっか。とりあえず、眠ろうか」
有馬先生が空笑いで言う。
「眠っている暇はありません!橙真様と橙利様の赤ちゃんを可愛いく、子育てするお二方を描いてみせますわ!」
新橋さんは力強く拳を握る。
「うん。楽しみしてるよ」
橙真兄さんが貰った包みを開けると一冊の本が出てくる。
本の表紙には『橙真と橙利の×××♡~妊娠編~』題名が書かれていた。
その本を見て、新橋さんが腐女子で今までの話が全て、本の話だと分かった。
『橙真と橙利の×××♡』シリーズは新橋さんの著書。
橙真兄さんが愛読している。
あー、新橋さんの趣味を知っているのに、橙真兄さんの事になると僕は平常心でいられない。
新橋さんとの出会いは、彼女の家はランジェリーを手掛ける、女性のほとんど使っている有名メーカーの令嬢。
で、僕も愛用している。
当然、男子用。
彼女は引きこもりで毎日ゲームや漫画を描いている。
部屋はいつも暗く、太陽の光を浴びない肌は白かった。
出席数がヤバくなり、久しぶりに学園を訪れ、そこで運命的な出会いをした。
職員室に向かう途中、窓から見える来客用駐車場に視線を向けると、腐女子の生きる糧?栄養素?おかず?が、目の前に広がる場面(シーン)に足を止め、窓にへばりつき興奮していたと。
清楚で上品さはどこえやら….。
長身の美男子が、背丈離れている美少年を抱きしめ、それは別れを惜しむかのように。
そして、お互いの目と目が合うとどちらからともなく、キスをする。
新橋さんはその場で、
『ご飯、大盛り3杯いける!』
と叫んだらしい。
窓は閉まっていると窓から駐車場は離れているから聞こえなかった。
ただ、通りすがりの先生や生徒はギョッとしていたらしい。
新橋さんが見たのは、橙真兄さんと僕のいつもの『行ってきます』の挨拶の抱擁とキスだ。
抱擁とキスをしていると、
『逢引してるところ、申し訳ございません!』
新橋さんに声をかけられた、僕は見られたことに恥ずかしく橙真兄さんの背に隠れ、橙真兄さんはすごく怒った顔していた。
新橋さんは本当は声をかけるつもりはなかった、禁断愛を邪魔する奴は『馬に蹴られ、のたうち回って死ね』だからだ。
だが、静かに見ているはずだったがどうしても、許せない事があり思わず、出てきてしまったらしい。
『初めまして。私、新橋 ひなこと申します。道端に捨てられております、ただのゴミ。いえ、石ころでございます。当然ですが、お履きになられてるパンツは、なんですの!』
本当に当然だと、思う。
僕と橙真兄さんは呆然としてしまった。
橙真兄さんに詰め寄り、今度は新橋さんが怒った顔する。
『パンツの跡!拷問ですか!拷問はロープと決まってます!ですが、お相手のお美しいお体に無粋の跡を付けるなんて万死に値しますわ!あと、型がよくありません!可愛いお尻が可愛そうですわ!』
新橋さんはズボン越しから透けてるパンツが気に入らなく、邪魔してしまったとあの時は無我夢中であったと、後で謝れた。
ちなみに僕が入ってた最初のパンツは、決して安い物ではない、1枚数万円するパンツだった。
『橙利様って言うのですね。橙利様のパンツは、この新橋 ひなこが命に代えても、相応しいパンツを作って参ります!』
令嬢が、パンツを連発はするのはどうかと….。
マシンガン如く、発言する新橋さんにあの橙真兄さんは何も言えなかった。
新橋さんは急いでどこかに行ってしまったあと、橙真兄さんはお腹を押さえて笑い出した。
初めて見た、橙真兄さんの爆笑する姿。
それから、
「やっと、子供が出来て私、涙が止まりませんでしたわ。まだ3カ月ですので、まだお腹は出ませんが、それでも少しずつ大きくなり橙利様のスタイルが変わってしまうことに複雑な気持ちになりました」
新橋さんは興奮しながら話す。
「ぷくっとしたとーりちゃんも可愛いと思うよ」
橙真兄さんは、この上なく嬉しい様子だ。
「そうなんです!絶対、可愛いですわ!お名前考えて下さいね」
と、これから会社に行く橙真兄さんを見送り、僕と和真、新橋さんそして、有馬先生は教師用出入口から入りるので途中まで一緒に行く。
有馬先生と別れると3人で昇降口へ向かう。
その途中、新橋さんは橙真兄さんと僕の子供がどう成長して出会いをするかを話、出会いに自分を加わりたいと言う和真の間に挟まれながら、僕は聞いていた。
昇降口に着くと、何人かの生徒が行き交う。
僕は靴を脱ぎ、自分のロッカーを開けると、
「え…」
目に飛び込む光景に驚き、その場で固まった。
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漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
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軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
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