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砂時計
砂時計5
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結局、輝李達の父が家路に着いたのは、その数日後。
葬儀の前日だった。
夕食も終わり、日も完全に沈んだ時刻。
輝李は、寝支度をして乙の部屋に向うと、部屋は静まり返り人の気配がなかった。
いつもならば乙が出迎えてくれるというのに…。
何となく廊下に出ると、たまたま通りかかったメイドに声をかけた。
「ねぇ、乙見なかった?」
「輝李様。乙様なら先ほど旦那様の部屋に…」
そこまで言うとメイドは
『しまった』とばかりにハッとして、口を押さえた。
「そ、それでは輝李様、私はこれで」
バツが悪そうにメイドは逃げるようにして、その場を立ち去った。
先程のメイドの態度…
いくら輝李がまだ子供だとはいえ、あからさま過ぎて何かありそうな事は一目瞭然だった。
『父様の部屋…
はっ!!乙!!まさか、また!!』
輝李は、急いで父の部屋に向って走りだした。
──夕食が終わる頃、父が帰宅した事報告を受けると乙は、足早に父の部屋に向かった。
ノックをすると返事がある前にドアを開ける。
相変わらず、この部屋は独特の嫌な空気が流れる。
父は、乙を確認すると静かに口を開いた。
「乙か、お前から来るなんて珍しいな」
「…ッ!!親父…」
乙は、思わず目付きが鋭くなる。
ツカツカと父親の近くまで行くと静かに口を開いた。
「…あんた、今までどこに行ってたんだ…」
「仕事だ」
サラリと流す父の言葉に乙の小さな拳をギュッと握り、その腕は震えていた。
「クッ!!…仕事だって…?
…あんたの仕事の業務には、女と逢う事も含まれているっていうのか…?
母さんが倒れて病院に運ばれたっていうのに!!!」
思わず乙は声を荒げると父は、冷静に答える。
「フ…甘いな、乙」
「何!!」
「こんな事で冷静さを欠くとは…」
「…こんな事…だって…?
母さんの命がこんな事だって言うのか!!
自分の気持ちさえ口にせず、最後にあんたに会うことなく天に召された母さんが、
どんな思いで逝ったか解ってんのか!!!」
そんな時、部屋のドアがノックなく勢い良く開いた────
「ハァハァハァ…」
『乙っ!!!』
小さな足で一生懸命、輝李は廊下を走った。
たいした距離でもないのに長く感じる。
途中、メイドにぶつかった。
「きゃ!!輝李様?」
「ごめん!!」
振り向き様に謝ると父の部屋に急いだ。
「ハァハァハァ…乙…」
ドアの前まで来て、呼吸を整える。
すると中から声が聞こえた。
乙の声だ!!!
「…*☆§…
母さんの命がこんな事だって言うのか!!!
自分の気持ちさえ口にせず、最後にあんたに会うことなく天に召された母さんが、
どんな思いで逝ったか解ってんのか!!!」
乙が声を荒げている。
あの父に…?
病院で見せた乙の顔…
冷たく、全てを否定し軽蔑した冷酷な瞳だった。
『このままじゃ、また打たれる!!』
輝李は、部屋のドアをノックなく勢い良く開けた。
「乙っ!!」
乙と父が輝李に視線を向ける。
輝李を見ると、乙は冷静さを取り戻し静かに口を開いた。
「俺は、あんたを絶対に許さない…」
それだけ言うと輝李の方に歩き、輝李の腕をスルッと掴み、言葉をかけた。
「いくぞ…」
父は去りゆく乙に静かに言葉を投げた。
「アイツの余命は決まっていたことだ。
アイツも俺に会えない事は覚悟していたはずだ」
乙は振り向き様に鋭い眼光で睨むと、言葉をはき捨てた。
「…綺麗事をならべても、もう…母さんは戻って来ない」
それだけ言うと父親の部屋をあとにした。
葬儀の前日だった。
夕食も終わり、日も完全に沈んだ時刻。
輝李は、寝支度をして乙の部屋に向うと、部屋は静まり返り人の気配がなかった。
いつもならば乙が出迎えてくれるというのに…。
何となく廊下に出ると、たまたま通りかかったメイドに声をかけた。
「ねぇ、乙見なかった?」
「輝李様。乙様なら先ほど旦那様の部屋に…」
そこまで言うとメイドは
『しまった』とばかりにハッとして、口を押さえた。
「そ、それでは輝李様、私はこれで」
バツが悪そうにメイドは逃げるようにして、その場を立ち去った。
先程のメイドの態度…
いくら輝李がまだ子供だとはいえ、あからさま過ぎて何かありそうな事は一目瞭然だった。
『父様の部屋…
はっ!!乙!!まさか、また!!』
輝李は、急いで父の部屋に向って走りだした。
──夕食が終わる頃、父が帰宅した事報告を受けると乙は、足早に父の部屋に向かった。
ノックをすると返事がある前にドアを開ける。
相変わらず、この部屋は独特の嫌な空気が流れる。
父は、乙を確認すると静かに口を開いた。
「乙か、お前から来るなんて珍しいな」
「…ッ!!親父…」
乙は、思わず目付きが鋭くなる。
ツカツカと父親の近くまで行くと静かに口を開いた。
「…あんた、今までどこに行ってたんだ…」
「仕事だ」
サラリと流す父の言葉に乙の小さな拳をギュッと握り、その腕は震えていた。
「クッ!!…仕事だって…?
…あんたの仕事の業務には、女と逢う事も含まれているっていうのか…?
母さんが倒れて病院に運ばれたっていうのに!!!」
思わず乙は声を荒げると父は、冷静に答える。
「フ…甘いな、乙」
「何!!」
「こんな事で冷静さを欠くとは…」
「…こんな事…だって…?
母さんの命がこんな事だって言うのか!!
自分の気持ちさえ口にせず、最後にあんたに会うことなく天に召された母さんが、
どんな思いで逝ったか解ってんのか!!!」
そんな時、部屋のドアがノックなく勢い良く開いた────
「ハァハァハァ…」
『乙っ!!!』
小さな足で一生懸命、輝李は廊下を走った。
たいした距離でもないのに長く感じる。
途中、メイドにぶつかった。
「きゃ!!輝李様?」
「ごめん!!」
振り向き様に謝ると父の部屋に急いだ。
「ハァハァハァ…乙…」
ドアの前まで来て、呼吸を整える。
すると中から声が聞こえた。
乙の声だ!!!
「…*☆§…
母さんの命がこんな事だって言うのか!!!
自分の気持ちさえ口にせず、最後にあんたに会うことなく天に召された母さんが、
どんな思いで逝ったか解ってんのか!!!」
乙が声を荒げている。
あの父に…?
病院で見せた乙の顔…
冷たく、全てを否定し軽蔑した冷酷な瞳だった。
『このままじゃ、また打たれる!!』
輝李は、部屋のドアをノックなく勢い良く開けた。
「乙っ!!」
乙と父が輝李に視線を向ける。
輝李を見ると、乙は冷静さを取り戻し静かに口を開いた。
「俺は、あんたを絶対に許さない…」
それだけ言うと輝李の方に歩き、輝李の腕をスルッと掴み、言葉をかけた。
「いくぞ…」
父は去りゆく乙に静かに言葉を投げた。
「アイツの余命は決まっていたことだ。
アイツも俺に会えない事は覚悟していたはずだ」
乙は振り向き様に鋭い眼光で睨むと、言葉をはき捨てた。
「…綺麗事をならべても、もう…母さんは戻って来ない」
それだけ言うと父親の部屋をあとにした。
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