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化け猫と月の兎
カホ
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手術日が近くなれば見舞客が少なくなるというのはごく普通のことである。
だれでもそうだが手術となれば、神経質になるのだ。だから手術日に近い日は見舞客も遠慮してあまり来ない。
その風景にはなんの違和感もない。
それなのに……
何故か……
あたしはよく分からない違和感を感じている。
マサキが入院した日にはたくさんの見舞客がいた。
その大半が女の子だったが、チームメイトらしい男の子もいたし、チームのコーチらしき人もいた。
見舞客に共通する思考。
それはマサキに対する期待感だ。
チームのエースだったマサキ。彼がいなくなったらチームの戦力ダウンは必至だ。
できればケガから復帰してほしい。
チームの勝利に貢献してほしい。
そんな期待感なのだろう。
同時に少しのあきらめの思考も感じる。
期待感とあきらめ……。
相反するような感情がおのおのの思考で交じりあっているのは何もおかしいことではない。
そもそも人の感情は複雑で異なる二つの感情が同居しているのだ。
でも感じた違和感はそんなものからくるものではなかった。
その違和感はマサキの思考……
彼は絶対に治ると信じている。
またマウンドに立つと100%思っている。
それが何故違和感なんだ?
アスリートが自分を信じて行動できなければ復帰できるものもできないではないか……という意見もあるだろう。まったくもってその通りだ。
しかしどんなにメンタルが強靭なアスリートでも大きな怪我をしたら、100%治ると信じることなどできない。医師から『大丈夫』と太鼓判を押されても0.00…1%の不安は心に残るはずなのだ。
ところがマサキにはそれがまったくないのだ。
自分は100%治る。
マウンドに立って以前のよう投げることができると信じている。
不自然なぐらいの確信はどこから得られたのだろうか。
『あの……』
マサキの手術日の前日。
見舞客も少なくなった頃にその女の子はやってきた。
ぱっと見たところ……彼女はクラスでも目立たないタイプの子のように見えた。
そもそも中学生ぐらいだと化粧なんかしないのだろうけど、それでもその子は地味だった。
ボサボサの髪の毛を少し短めに切ったままにして、枝毛もそのまま……。
大きな眼鏡をかけており、それがとってつけたかのような眼鏡で、度もきついし、似合っていない。
おばあさんがかけているような目がやたら大きく見えてしまうような眼鏡だ。
それにしても女の子なんだし……眼鏡をお洒落なものにするとか……髪の毛にしても、染めたりパーマをかけたりするまでではなくとも、少し使うシャンプーをこだわったり……髪を少し伸ばしてカールをつけるなり、ストレートにするなりすればいいのに……。
……と、このあたしが感じたぐらいだ。
どうしても中学生ぐらいの若い女の子を見ると死んだカンナと比較してしまう。
それにしてもこの子……。
とにかく存在感がない……と思われてしまいがちな子……というのが第一印象だった。
ただ……よく見ると少しかわいい。
目は二重だし、まつ毛も長くてくるんとカールしているから目鼻立ちがくっきりしている。
その上、肌も白い。
体型も痩せすぎず、太りすぎず……そして背も少し低めだ。
声はアニメに出てくる声優のようにかわいらしい。
ちゃんとメイクしたら……いや眼鏡をコンタクトに変えるだけでもかなり印象は変わるはずだ。
つまりは……本人が自分をよく分かっていないのだろう。
だから存在感が、かき消されてしまう。
『はい。何でしょう』
ナースステーションにはあたししかいなかったので、その子にはあたしが対応した。
マサキの見舞客だった。
面会の記入シートには「木村夏帆」と書いてあった。
あたしはカホをマサキの病室に案内した。
実はカホからもちょっと違和感を感じた。
彼女がマサキに対して発していた思考は期待感でもあきらめでもない。
役に立ちたい……
そういう感情だった。
基本的にはカホからは投げやりな自己肯定感の低い感情が強く出ていた。
その感情は自分に向けている感情である。
マサキに向けている感情は『役に立ちたい』というもの。
これはなんとなくわかる。
この子はマサキのことが好きなのだ。
しかしもう一つの思考はどういうことか……ちょっと分からない。
『あれ? カホじゃん。どうした?』
見舞客がいることを知ったマサキはカホに声をかけてきた。
誰であっても気さくにやさしく話をすることができる……こんなところも彼がモテる要因の一つだろう。いい男というのは子供の頃から違うのだ。
あたしはさっさと病室を出てナースステーションに戻った。
カホから出てくる感情の違和感は気になるが、正直あたしの知ったことではない。
そもそもあたしには盗み聞きの趣味はないし、仕事が忙しいのだ。
だれでもそうだが手術となれば、神経質になるのだ。だから手術日に近い日は見舞客も遠慮してあまり来ない。
その風景にはなんの違和感もない。
それなのに……
何故か……
あたしはよく分からない違和感を感じている。
マサキが入院した日にはたくさんの見舞客がいた。
その大半が女の子だったが、チームメイトらしい男の子もいたし、チームのコーチらしき人もいた。
見舞客に共通する思考。
それはマサキに対する期待感だ。
チームのエースだったマサキ。彼がいなくなったらチームの戦力ダウンは必至だ。
できればケガから復帰してほしい。
チームの勝利に貢献してほしい。
そんな期待感なのだろう。
同時に少しのあきらめの思考も感じる。
期待感とあきらめ……。
相反するような感情がおのおのの思考で交じりあっているのは何もおかしいことではない。
そもそも人の感情は複雑で異なる二つの感情が同居しているのだ。
でも感じた違和感はそんなものからくるものではなかった。
その違和感はマサキの思考……
彼は絶対に治ると信じている。
またマウンドに立つと100%思っている。
それが何故違和感なんだ?
アスリートが自分を信じて行動できなければ復帰できるものもできないではないか……という意見もあるだろう。まったくもってその通りだ。
しかしどんなにメンタルが強靭なアスリートでも大きな怪我をしたら、100%治ると信じることなどできない。医師から『大丈夫』と太鼓判を押されても0.00…1%の不安は心に残るはずなのだ。
ところがマサキにはそれがまったくないのだ。
自分は100%治る。
マウンドに立って以前のよう投げることができると信じている。
不自然なぐらいの確信はどこから得られたのだろうか。
『あの……』
マサキの手術日の前日。
見舞客も少なくなった頃にその女の子はやってきた。
ぱっと見たところ……彼女はクラスでも目立たないタイプの子のように見えた。
そもそも中学生ぐらいだと化粧なんかしないのだろうけど、それでもその子は地味だった。
ボサボサの髪の毛を少し短めに切ったままにして、枝毛もそのまま……。
大きな眼鏡をかけており、それがとってつけたかのような眼鏡で、度もきついし、似合っていない。
おばあさんがかけているような目がやたら大きく見えてしまうような眼鏡だ。
それにしても女の子なんだし……眼鏡をお洒落なものにするとか……髪の毛にしても、染めたりパーマをかけたりするまでではなくとも、少し使うシャンプーをこだわったり……髪を少し伸ばしてカールをつけるなり、ストレートにするなりすればいいのに……。
……と、このあたしが感じたぐらいだ。
どうしても中学生ぐらいの若い女の子を見ると死んだカンナと比較してしまう。
それにしてもこの子……。
とにかく存在感がない……と思われてしまいがちな子……というのが第一印象だった。
ただ……よく見ると少しかわいい。
目は二重だし、まつ毛も長くてくるんとカールしているから目鼻立ちがくっきりしている。
その上、肌も白い。
体型も痩せすぎず、太りすぎず……そして背も少し低めだ。
声はアニメに出てくる声優のようにかわいらしい。
ちゃんとメイクしたら……いや眼鏡をコンタクトに変えるだけでもかなり印象は変わるはずだ。
つまりは……本人が自分をよく分かっていないのだろう。
だから存在感が、かき消されてしまう。
『はい。何でしょう』
ナースステーションにはあたししかいなかったので、その子にはあたしが対応した。
マサキの見舞客だった。
面会の記入シートには「木村夏帆」と書いてあった。
あたしはカホをマサキの病室に案内した。
実はカホからもちょっと違和感を感じた。
彼女がマサキに対して発していた思考は期待感でもあきらめでもない。
役に立ちたい……
そういう感情だった。
基本的にはカホからは投げやりな自己肯定感の低い感情が強く出ていた。
その感情は自分に向けている感情である。
マサキに向けている感情は『役に立ちたい』というもの。
これはなんとなくわかる。
この子はマサキのことが好きなのだ。
しかしもう一つの思考はどういうことか……ちょっと分からない。
『あれ? カホじゃん。どうした?』
見舞客がいることを知ったマサキはカホに声をかけてきた。
誰であっても気さくにやさしく話をすることができる……こんなところも彼がモテる要因の一つだろう。いい男というのは子供の頃から違うのだ。
あたしはさっさと病室を出てナースステーションに戻った。
カホから出てくる感情の違和感は気になるが、正直あたしの知ったことではない。
そもそもあたしには盗み聞きの趣味はないし、仕事が忙しいのだ。
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