隣の二階堂さん

阪上克利

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競争するのはいいことなのか否か

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隣の二階堂さんには変な癖がある。
考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。
最近では彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くことをあたしも夕凪ゆうなも楽しみにしている。

どんどんどんどん…

今夜も壁を叩く音がする。
4歳になった夕凪ゆうなはあたしを見る。
あたしは夕凪ゆうなに言った。
『お姉ちゃん、呼んできてくれる?甘いものでも食べましょうって。』


--------------



低血圧なのを無理して今朝は少しだけ朝早く起きてみた。
ちょっと走ろうかな…と思ったからだ。
朝ならそんなに足もむくんでいないし、そもそもジョギングの習慣がつけばむくみも…もしかしたら低血圧も良くなるかな…と思ってそうすることにしたのだ。
それに走れば少しやせるかもしれない。
あたしは基本的に走るのが嫌いなのだけど…これはもう健康のためだと自分に言い聞かせて走ることにしたのだ。

走ってみるとなかなか具合よく走れたと思う。
朝の時間をこんなに気持ちよく過ごせたのは久しぶりかもしれない。
疲れたら歩けばいい。
歩いても怒る人はいない。
朝日を見ながら見慣れた道を風を切りながらゆっくりと走るのは気分の良いものだった。
おかげで一日、気分よく過ごせた。
仕事もうまく行ったような気がする。
残業もしないですんだ。

まあ…いつも誰から何を言われようとも18時きっかりには帰るんだけど。

そういえば隣の夕凪ゆうなちゃんは保育園のかけっこが楽しいそうだ。

あたしにもそんな時期があったのだろうか。
そういえば子供の頃はそんなに走ることは嫌じゃなかったような気がする。

嫌になったのはいつからだろう。
確か…小学校に上がってからじゃなかっただろうか。
あの頃は体育の授業が嫌で仕方なかった。
どうにもあたしには競争というものには向いていないらしい。
自分は自分、他人は他人…というのがあたしのモットーである。
そんなあたしが競争なんかに巻き込まれたら…それはもう嫌になるに決まっている。
思い出せば一番嫌だったのは運動会の徒競走だし、マラソン大会でもある。

はっきり言ってしんどい思いをするぐらいなら1位になんかならなくていいのだ。
2位でもいいし…なんだったら最下位でも構わない。
でも学生の時は何かにつけて順位をつけたがるから、気が付けば運動自体がキライになってしまったのだ。

あたしは考え事をすると部屋の中をぐるぐると歩き回る悪い癖がある。

それにしても競争することはそこまで悪いことなのだろうか。
あたしの価値観では競争は嫌いだけど、そうでない人もいるだろう。
勝負にこだわって自分の能力を高めたい人だっているわけだ。
そういう人には有効な手段なのかもしれない。

『教育って難しいなあ。』

考え事の最中に何かを思いつくと独り言を言ってしまうのもあたしの悪い癖である。
自分でも気持ち悪いのでできれば辞めたいものである。

『教育』という観点から考えると、競争することと自分なりの楽しみ方を見つけることの双方から教えていかなければいかなければならないのかもしれない。
それにしても今日は少し難しいことを考えすぎた。

煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。

どうやらあたしはまたやってしまったらしい。
今日は走ったからいいやと思って、会社帰りに松福堂に寄って買ったイチゴ大福を持ってお隣に行くことにしよう。
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