隣の二階堂さん

阪上克利

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歌を歌うのは楽しいのか否か

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 隣の二階堂さんには変な癖がある。
 考え事をして煮詰まってくると部屋の壁を叩くのだ。
 最初はびっくりしたけど、変な癖だと知ってからは何も怖くはない。
 最近では彼女が何かに煮詰まってきている時にお茶に誘って話を聞くことをあたしも夕凪ゆうなも楽しみにしている。

 どんどんどんどん……

 今夜も壁を叩く音がする。
 4歳になった夕凪ゆうなは嬉しそうにあたしを見る。
 あたしは夕凪ゆうなに言った。
『お姉ちゃん、呼んできてくれる?甘いものでも食べましょうって』


 --------------


 喉が痛い……。
 原因は分かっている……。

 先日、会社の飲み会でカラオケに付き合わされたからだ。

 最近では飲み会に行かない若い人も多い。いや……あたしも若いので会社の飲み会には必ず参加しなればならないという昭和の匂いのする風習にはついていけないのだが、お酒の席が好きなので特に用事がない時は参加するようにしている。
 うちの会社はいい人が多いし、上司も先輩も一緒に呑んでいて楽しい。
 飲み会に関しても原則、参加は自由。強制されることはない。

 なかなかいい環境で仕事しているなあ……とあたしは思っている。

 実は、飲み会は嫌ではないのだが……二次会は参加したくないというのがあたしの本音である。別に長い時間拘束されたくないとか、二次会になるとお酒がすすんできて絡み酒の同僚がいるとかそういうことではない。

 カラオケが嫌なのだ。

 二次会にカラオケなんて一体誰が決めたのだろう。
 そもそも二次会というのは一次会が物足りないから行うわけだ。
 ……てことは別にカラオケでなくてもいいではないか。
 ビリヤードとかダーツとかの方が面白そうな感じがする。

 いや……なんだろう。
 そうじゃないな。

 一次会が物足りないのなら二次会では一次会の物足りなさをフォローしなくてはいけないはず。
 であれば……二次会も普通に居酒屋に行けばいいのだ。

 てゆうか……歌なんか歌って楽しいのだろうか。
 カラオケなんてうまい人には楽しいのだろうけど、結局、自分の歌う歌しかみんな聞いてないし、他の人が話している最中に何か話すにしてもうるさすぎる上、酔っ払って聴力がバカになっているから会話にならない。

 それに……言いたくないがあたしは音痴だ。
 声に関してはそこまで悪くもないと思うのだが、歌うとなると歌っているのか怒鳴っているのか分からなくなる。だから歌い終わったあとはやたら喉が痛いし……喉が痛いから何か飲もうと思ってまたビールなどを飲んでしまうから余計に喉が辛いことになる。
 
 声を出すだけで喉が痛いから、次の日はできるだけ話をしたくないのだが、お隣さんにあったりするとついつい長話してしまったりもする。
 てゆうか4歳の夕凪ゆうなちゃんが話しかけているのに不愛想に話をするわけにもいかない。
 大人はいつでも笑顔で話ができないといけないのだ。

 そんなに嫌なら断ればいいのに……と言われたことがある。
 いや……そこは断れないのだ。
 あたしだって断れるものなら断りたい。
 でも先輩も上司もいい人だし、みんなが楽しそうにしているのをあたしの一言でぶち壊したくはない。
 だから断れない。

 う――ん……。

 考えが煮詰まったところで玄関のチャイムが鳴った。

 どうやらあたしはまたやってしまったらしい。
 今日は喉が痛いので紅茶には少し砂糖を多めに入れてもらおう……。
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