県立T高校ミステリー研究部の日常

阪上克利

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元気のない主将

読書

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 深刻な問題……

 つまり明日香は瞳が何か身体を痛めているのではないかと心配しているようだったが、それはない。
 ただ、絶対にないか……と問われると本人ではないので確実なところは分からない……。
 しかしどこか身体を痛めているのなら同じ剣道部の部員が分からないわけがないのだ。そもそも明日香に山口瞳のことを調べてほしいと言ったのは同じ剣道部員の小俵健人だ。もしどこかを痛めているのなら健人が分かるだろうし、もし故障を押してまで試合に出るのなら調子が悪いことを部外者にいう訳がない。
 それにいつものように練習もしないだろう。

 放課後……図書室にはあまり生徒はやってこない。
 というのもT市には市立の大きな図書館が、T高校よりさらに上り坂を昇った頂上付近に存在するからだ。読書好きの生徒は学校の図書室よりも図書館に行くし、調べものなら図書館の方が蔵書が多いので都合が良い。
 少し、都合が悪いことがあるとすれば、それは駅から逆方向に図書館があることぐらいだろう。

 そんな、人のいない図書室の蔵書の整理と掃除はミステリー研究部の仕事である。

 顧問の田畑が図書室の司書の仕事を手伝っていることもあるのだが、1年生の頃からのすみの日課でもある。こういうところで学校に貢献していることと、ミステリー研究部が今まで生き残れたということはおそらく無関係ではないとすみは思っている。

 最近では蔵書の貸し出しカードの整理もすみがやることが多くなった。
 司書の試験は難しいと聞いたことがあるが本気で挑戦してみたいと思うことがある。

『これ……瞳ちゃんのカードだ……』
 すみがつぶやくように言うと一緒に作業をしていた昭義がこちらを振り向いた。
『え? 山口って本なんか読むような奴だっけ?』

 昭義に限らずこういう風にいう男子は多いだろう。
 普段の快活な山口瞳からは、静かに読書しているイメージがわかないのだ。
 それにしても男子というのはどうしてこうも鈍いのだろうか。瞳が読書が好きであることなど少し観察すれば分かることである。

『休み時間とか本読んでることが多いよ』
『そうなのか……。まあ、オレの場合はクラスが違うからな』

 クラスが違うと確かにイメージだけで判断しがちなのかもしれないが、好きでもない女子の様子をじっくり観察している男子などいないだろうから、たとえ昭義が同じクラスであっても、同じ言葉が出たに違いない。

 すみは貸し出しカードをまじまじと眺めた。
 けっこうたくさん借りている。
 読書家ではあるけれど、読む本には若干の偏りがあるのかもしれない。
 まあ、偏りなく読書ができる人の方がどちらかといえば少ないのかもしれないが……。
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