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15、姉の焦燥
クローチェは、自分の身体について、どうにかしたいという思いはなかった。何故ならば、今のままでもマリーエという大切な姉が愛してくれるからだ。気持ち悪がらず、そのままでも良いと言って抱き締めてくれる姉。いつからか、そんな姉に恋慕し劣情を抱くようになっていた。
ただ、マリーエはいつか伯爵家を抜けて嫁ぐ日が来る。それを思うと、クローチェは胸が張り裂けそうだった。
(お姉様と二人きりの世界が欲しい……)
クローチェは、アカデミーで模範的生徒として明るく振る舞う一方で、そんな歪んだ願いを胸に巣くわせ、日に日にその思いは膨らんでいく一方だった。
姉を自分だけのものにする方法をクローチェが毎日考えるようになった頃、マリーエは秘薬を手に入れる為の資金をどう手に入れるか、悩んでいた。
マリーエに商才でもあれば良かったのだが、彼女は凡人だった。ギャンブルで一稼ぎするにも、実直かつ小心者なマリーエには無理があった。
伯爵家の財力を全て投資すればなんとかなるかもしれないが、叔父夫妻が後見人ということで財政管理をしており、家計の収支決算などを見せて貰えたことがなく、どれほどの財が我が家にあるのかもわからなかった。また、それだけの出費に真実は隠したままで叔父夫妻をどう説得するかも思い付かなかった。
(……私が……お金持ちの貴族のところへ嫁げば……)
マリーエは、自室の机の引き出しを開け、叔父夫妻からアカデミーへ送られてきたいくつかの見合い相手の釣書を手に取った。
最近、叔父夫妻からしきりに見合い相手の釣書が送られてくるが、老齢の男性であったり、暴力的だと噂があったり、あまり噂のよい相手ではない、とクローチェに相談する度に言われてしまっていたものだ。
ただ同時に、金持ちではあるが、と枕詞がついたのをマリーエは思い出した。
マリーエはぼんやり釣書を眺めていたが、それを振り払うように頭を振る。
クローチェは、姉であるマリーエを大層大事に思っている。もしマリーエがそんなことをしてまでクローチェの秘薬を手に入れたなら、きっと傷付くのはクローチェ自身だ。
逆の立場だったとしたら、何がなんでも婚約破棄をさせようとするだろうとマリーエは考えた。
(でも、どうしたらよいのかしら……)
マリーエはしばらく一人悩んだが、名案と呼べるものが思い浮かばない。とはいえ、クローチェ以外に悩みを相談する友人なんかもいなかった。
マリーエが悩んだ時に相談する相手は、クローチェだ。
叔父夫妻から釣書を受け取る度に、自分には結婚願望がないこと、好ましいと思える男性に出会ったことがないこと、いっそのこと修道院にでも行って神の御許で慎ましく暮らしたい、などというおよそ貴族女性が持ってはいけない様々な本音もクローチェにしか話したことはない。
そういえば、とマリーエは思い至る。
自分に見合いの話がこんなに舞い込んでくるようになったということは、クローチェとの同じ屋根の下での生活も終わりが近い。
貴族女性は数え年で十八歳になるとアカデミーを退学し、大抵見合いの後婚約をしていた男性の家に入り、肉体関係なしの三ヶ月程のお試し期間を経て、結婚に至る。
三ヶ月のお試し期間の後、結婚に至らないケースはほぼないと言ってよく、今十七歳のマリーエは後一年しか猶予がなかった。
稀に、そのままアカデミーに残って勉学に励んだり、実家に戻って商売に手を出したりする者も中にはいたが、そうした女性は、先ほどの結婚に至らなかった女性共々「訳あり物件」としてその先の良縁には恵まれにくくなるのである。
そろそろ、クローチェに身体の話をしっかりと伝えておかなければ……マリーエは、覚悟を決めた。
ただ、マリーエはいつか伯爵家を抜けて嫁ぐ日が来る。それを思うと、クローチェは胸が張り裂けそうだった。
(お姉様と二人きりの世界が欲しい……)
クローチェは、アカデミーで模範的生徒として明るく振る舞う一方で、そんな歪んだ願いを胸に巣くわせ、日に日にその思いは膨らんでいく一方だった。
姉を自分だけのものにする方法をクローチェが毎日考えるようになった頃、マリーエは秘薬を手に入れる為の資金をどう手に入れるか、悩んでいた。
マリーエに商才でもあれば良かったのだが、彼女は凡人だった。ギャンブルで一稼ぎするにも、実直かつ小心者なマリーエには無理があった。
伯爵家の財力を全て投資すればなんとかなるかもしれないが、叔父夫妻が後見人ということで財政管理をしており、家計の収支決算などを見せて貰えたことがなく、どれほどの財が我が家にあるのかもわからなかった。また、それだけの出費に真実は隠したままで叔父夫妻をどう説得するかも思い付かなかった。
(……私が……お金持ちの貴族のところへ嫁げば……)
マリーエは、自室の机の引き出しを開け、叔父夫妻からアカデミーへ送られてきたいくつかの見合い相手の釣書を手に取った。
最近、叔父夫妻からしきりに見合い相手の釣書が送られてくるが、老齢の男性であったり、暴力的だと噂があったり、あまり噂のよい相手ではない、とクローチェに相談する度に言われてしまっていたものだ。
ただ同時に、金持ちではあるが、と枕詞がついたのをマリーエは思い出した。
マリーエはぼんやり釣書を眺めていたが、それを振り払うように頭を振る。
クローチェは、姉であるマリーエを大層大事に思っている。もしマリーエがそんなことをしてまでクローチェの秘薬を手に入れたなら、きっと傷付くのはクローチェ自身だ。
逆の立場だったとしたら、何がなんでも婚約破棄をさせようとするだろうとマリーエは考えた。
(でも、どうしたらよいのかしら……)
マリーエはしばらく一人悩んだが、名案と呼べるものが思い浮かばない。とはいえ、クローチェ以外に悩みを相談する友人なんかもいなかった。
マリーエが悩んだ時に相談する相手は、クローチェだ。
叔父夫妻から釣書を受け取る度に、自分には結婚願望がないこと、好ましいと思える男性に出会ったことがないこと、いっそのこと修道院にでも行って神の御許で慎ましく暮らしたい、などというおよそ貴族女性が持ってはいけない様々な本音もクローチェにしか話したことはない。
そういえば、とマリーエは思い至る。
自分に見合いの話がこんなに舞い込んでくるようになったということは、クローチェとの同じ屋根の下での生活も終わりが近い。
貴族女性は数え年で十八歳になるとアカデミーを退学し、大抵見合いの後婚約をしていた男性の家に入り、肉体関係なしの三ヶ月程のお試し期間を経て、結婚に至る。
三ヶ月のお試し期間の後、結婚に至らないケースはほぼないと言ってよく、今十七歳のマリーエは後一年しか猶予がなかった。
稀に、そのままアカデミーに残って勉学に励んだり、実家に戻って商売に手を出したりする者も中にはいたが、そうした女性は、先ほどの結婚に至らなかった女性共々「訳あり物件」としてその先の良縁には恵まれにくくなるのである。
そろそろ、クローチェに身体の話をしっかりと伝えておかなければ……マリーエは、覚悟を決めた。
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