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16、妹の思惑
妹が大泣きしようと、どんなに取り乱そうと、私が支えなければ……!と思いながら話したマリーエの告白に、クローチェは「そうでしたの」と、対岸の火事でも眺めるような反応をした。
そんな反応に、マリーエの方がよっぽど戸惑ってしまう。
貴族女性にとって、いや、女性にとって、身籠ることが出来ないということは大きな出来事のようにマリーエには感じていた。
なのに、この反応の薄さは何なのだろう……?クローチェが子供嫌いであるとか、そんなこともマリーエは感じたことがなかった。
ただ、顎に細い指をかけて、何か深く思考している。
マリーエはクローチェの邪魔をしないように、冷めた紅茶を綺麗な所作で口に含んだ。
「お姉様……、気になったところを確認させて頂いても?」
「ええ。何かしら?」
「叔父達は、お姉様に家の出納帳をお見せにならないとおっしゃいましたが……」
「ええ」
「それは、お姉様が正式にお願いしたとしても、でしょうか?」
「正式に?」
正式な手続きを踏むと、財産管理をしている後見人に対して開示請求をしなければならない。マリーエは、流石にそこまではしたことがなかった。
「いいえ。口頭でお願いしたのですが、貴女にはまだ早い、と言われてしまいました」
「それは何時のことですか?」
「アカデミーに入学してから、帰省の度にお願いしていましたけれど……」
「……そんなに、ですか」
クローチェは、微笑んだ。
「お姉様……、お姉様は本当に、思う方はいらっしゃいませんの?」
マリーエは首を傾げる。急に話題が変わった気がしたからだ。そして、そんな相手がいる筈がないとクローチェが一番知っていると思ったから。
マリーエにとって、両親を失ってから一番大切なのはクローチェだ。
「おりませんね……」
クローチェが、笑って幸せな人生を送ってくれれば、それで十分だ。
「……では、お姉様の人生、私に預けさせて頂けませんか?」
クローチェにそう言われ、マリーエはきょとんとする。
(……私に見合った相手を、クローチェが探してきてくれるということかしら……?)
マリーエは深く考えず、
「はい、良いですよ」
と笑って答えた。
そしてまた、二人だけの世界への道程は強固なものになったのだが、マリーエがその言葉の意味に気付いたのは、少し先のことだった。
***
クローチェに頼まれ、マリーエは正式な手続きを踏んで伯爵家の入出金の情報開示を求めた。
そして、正式な手続きを踏んだにも関わらず、叔父夫婦はそれを拒否した。
普段どちらかと言えばおっとりしているマリーエも、流石にここまで露骨に拒否されれば嫌でもわかる。叔父夫婦は、伯爵家の財産を我が物顔で私用していたのだ。
気付けば叔父夫婦は逮捕されていた。そして、マリーエとクローチェの後見人の資格も失った。
叔父夫婦の一人息子も屋敷にいられなくなり、代わりにクローチェがどこからか遠い縁戚にあたるという人物を連れてきた。
その人物は、金には困っていないかわりに、伯爵家の領土が欲しかったという。
クローチェが引っ張ってきただけあって、叔父夫婦が管理していた時よりもずっと領土は豊かになり、領民は喜び、そして活性化した。
アカデミーを卒業して、婚約も結婚もせずにそんな領土の発展を自分の目で見た後、一年遅れでアカデミーを卒業したクローチェがマリーエに言った。
「さぁ、お姉様。私と一緒に修道院に参りましょうか?」
と。
そんな反応に、マリーエの方がよっぽど戸惑ってしまう。
貴族女性にとって、いや、女性にとって、身籠ることが出来ないということは大きな出来事のようにマリーエには感じていた。
なのに、この反応の薄さは何なのだろう……?クローチェが子供嫌いであるとか、そんなこともマリーエは感じたことがなかった。
ただ、顎に細い指をかけて、何か深く思考している。
マリーエはクローチェの邪魔をしないように、冷めた紅茶を綺麗な所作で口に含んだ。
「お姉様……、気になったところを確認させて頂いても?」
「ええ。何かしら?」
「叔父達は、お姉様に家の出納帳をお見せにならないとおっしゃいましたが……」
「ええ」
「それは、お姉様が正式にお願いしたとしても、でしょうか?」
「正式に?」
正式な手続きを踏むと、財産管理をしている後見人に対して開示請求をしなければならない。マリーエは、流石にそこまではしたことがなかった。
「いいえ。口頭でお願いしたのですが、貴女にはまだ早い、と言われてしまいました」
「それは何時のことですか?」
「アカデミーに入学してから、帰省の度にお願いしていましたけれど……」
「……そんなに、ですか」
クローチェは、微笑んだ。
「お姉様……、お姉様は本当に、思う方はいらっしゃいませんの?」
マリーエは首を傾げる。急に話題が変わった気がしたからだ。そして、そんな相手がいる筈がないとクローチェが一番知っていると思ったから。
マリーエにとって、両親を失ってから一番大切なのはクローチェだ。
「おりませんね……」
クローチェが、笑って幸せな人生を送ってくれれば、それで十分だ。
「……では、お姉様の人生、私に預けさせて頂けませんか?」
クローチェにそう言われ、マリーエはきょとんとする。
(……私に見合った相手を、クローチェが探してきてくれるということかしら……?)
マリーエは深く考えず、
「はい、良いですよ」
と笑って答えた。
そしてまた、二人だけの世界への道程は強固なものになったのだが、マリーエがその言葉の意味に気付いたのは、少し先のことだった。
***
クローチェに頼まれ、マリーエは正式な手続きを踏んで伯爵家の入出金の情報開示を求めた。
そして、正式な手続きを踏んだにも関わらず、叔父夫婦はそれを拒否した。
普段どちらかと言えばおっとりしているマリーエも、流石にここまで露骨に拒否されれば嫌でもわかる。叔父夫婦は、伯爵家の財産を我が物顔で私用していたのだ。
気付けば叔父夫婦は逮捕されていた。そして、マリーエとクローチェの後見人の資格も失った。
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その人物は、金には困っていないかわりに、伯爵家の領土が欲しかったという。
クローチェが引っ張ってきただけあって、叔父夫婦が管理していた時よりもずっと領土は豊かになり、領民は喜び、そして活性化した。
アカデミーを卒業して、婚約も結婚もせずにそんな領土の発展を自分の目で見た後、一年遅れでアカデミーを卒業したクローチェがマリーエに言った。
「さぁ、お姉様。私と一緒に修道院に参りましょうか?」
と。
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