もふもふ王女のストーカーは、変態猛獣調教師

イセヤ レキ

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2、後の変態と出会う。

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「……!!……だぞっ!!あっち行け!!」
私がその場に到着すると、同じ年頃の人間が鞭を使って猛獣を威嚇していた。
私の足の速さをもってしても、到着するまで5分はかかっただろう。
よく襲われずに生きていたものだと思ったが、少年の持っている鞭から何となく嫌な感じがする。恐らくあれで時間を稼いだんだな、と推測出来た。
グルルルル、と猛獣は鋭い牙と爪を剥き出しにし、今にも少年に飛びかかりそうだ。

私は高くジャンプすると、少年を背にしてその前に踊り出た。
「うわあああっっ」
急なわたしの出現に、パニックになる少年。鞭を振り回すものだから、見事に私の尻にパシンッッ!とクリティカルヒットした。

おいお前良い度胸だな!王女に鞭を当てるなんて!!

イラっとしながら、少年への威嚇を我慢し、ここに到着するまでに捕まえ口に咥えていた野うさぎをポイと猛獣に投げる。
野うさぎは我が国で普通に食べられている肉だが、当然目の前の猛獣の食事にもなる。だから、どうか少年と野うさぎのエサ度合いのボリュームは違うだろうが、これで手打ちにして貰えないものだろうか?
出来たら戦いたくはない。噛まれたら当然痛いし、五人なら早くても一人だと簡単に倒せる敵ではない。たまーに乱闘して帰宅すると、母や城の者達も心配する。

私達はしばし睨み合った。
しかし、まだ生きていた野うさぎが意識を取り戻して急いでその場から離れようとした為、その猛獣は慌てた様に野うさぎを追いかけて行った。
少年は何とか命を繋いだ。
だがしかし、お灸を吸えねば。こんな森の中に一人で入った事と、私の尻に鞭を当てた事!!特に後者は死んでも許すまじ。


「……銀色の……狼……?」
私が少年を驚かせない様に距離を取り、ゆっくりと振り向けば少年は呆けた様にこちらをガン見していた。顔に擦り傷があるものの、意外と美しい顔立ちをしている。まぁ、親兄妹には負けるが。勿論、身内の贔屓目ありです。
「あなた、怪我はない?」
私が人語を発すると、少年は更に眼を丸くする。
「……も、もしかして……王様……?」
「の、娘だよ」
少年は視線を外さないまま、その場にひれ伏した。
「王女様でいらっしゃいましたか!!こ、この度は命を助けて頂き、大変感謝致します。私のこれからの命、王女様に捧げ……」
少年は臣下の礼をとろうとしたが、私はそれをぶったぎる。自分より弱い臣下なんて要らないからね。
「いやそれは良いからさ。駄目でしょ、この森に入っちゃ。何で入ったの?」
「わ、私は職務で……猛獣遣いの師匠に弟子入りしているのですが、試験としてこの森に入って何でも良いから一匹手懐けて来いと言われております」
「あなたが?」
まだ10歳位だよね?今度はこっちが眼を丸くする番だった。
「うーん、おかしいなぁ」
「……?」
確かに、猛獣遣いと呼ばれる職業はこの国には存在する。猛獣遣いの仕事は様々だが、危険な仕事だし必要とされる職業の為、高給取りに入る部類だ。だから、危険だとわかっていても貧困から猛獣遣いに弟子入りする子供は多いと聞く。そして、その子供達の多くが恐怖に勝てず、辞めていく。
とはいえ、こんな10歳の子供を大人の付き添いなしに危ないとわかっていて放り出すのはまともな猛獣遣いの行いとは思えない。

では何か?
恐らくこの子供が師事する猛獣遣いは、許可を与えられてないにも関わらず看板を掲げたモグリに違いない。

「あなた……少年、名前なんて言うの?」
「わ、私はエーベルハルト、と申します」
「そうか、エーベルハルト……長いな、エーベルって呼んでも良い?」
「勿論です。……差し支えなければ、私にも王女様のお名前を……」
「私?私はヴァーリア」
「ヴァーリア殿下……」
「んじゃ、ひとまず私に着いてきてくれる?」
「畏まりました」

これが、私とエーベルとの出会いだった。
……のちに変態猛獣調教師となるのがわかっていたら、助けたとしても名乗らなかったと思うんだ、絶対。
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