もふもふ王女のストーカーは、変態猛獣調教師

イセヤ レキ

文字の大きさ
82 / 94

82、ハプニングと協力者。

エーベルとドラゴンの対峙中、私は第四皇子の部屋の前で警備をしていた東国の人達を気絶させ、室内に入って様々なものを物色する。

ない……ない!!

昨日の音を頼りに探したが、何処にも見当たらずに焦る。
エーベルが時間稼ぎをしている間に、私が探して持って行かなければならないのに。

焦っても仕方ない、とにかく見つけなければ話にならない。
私は耳と鼻を全集中させて怪しいところをしらみつぶしに探したが、やはり第四皇子の部屋にはありそうになかった。

……何故、ないのだろう。
あれがないと、ドラゴンが言うことを聞く訳がない。
だから、失くしてはいない筈だ。
もしかすると、普段から……持ち歩いて、ドラゴンに見せつけている?
いや、第四皇子は手ぶらだった。
護衛騎士も、それらしきものは抱えておらず、手に剣を持って……ん?何で、手に剣を持っていた?普通、護衛は主人に危険が及ばない限り、抜刀しない。
抜刀すれば、護衛自身が間者であると間違われかねないからだ。であれば、彼らは第四皇子の指示で抜刀している。何で?それは──!!


私は自分の部屋に駆け込み、急いで適当な服を見繕った。
第四皇子の身辺を調べないといけないが、狼型よりも人間型の方が近付きやすいだろう。
狼型で近付けば、下手をすると警戒されてしまう。

廊下をコロシアムに向けてダッシュしていると、コロシアムからワアアアア、という大きな歓声が上がった。
決闘はどうなっているのだろう?
早くしないと……!!

半泣きになりながら、私はコロシアム近くの空き部屋に転がり込んで人型をとり、必死で着替える。
何で人間は服を着るんだ!!着ている時間すらも勿体無くて、私は苛つきながら着替え……ビリ、と音がした。

……え?

普段から着替える練習をしておけば良かった、と思ってももう遅い。もう一着予備を持ってくれば良かった、と思ってももう遅いのだ。

無理矢理乱暴に間違えたところへ袖を通したらしく、結果ドレスの肩から胸元まで大きく破れてしまった。
このまま行って大衆に胸を見られたとしても、問題はない。だが、胸を露出した格好で行ったとして、第四皇子はどう感じるだろうか?誘惑していると思われればまだいい。問題なのは、警戒され……。

「姉様、こっちに着替えて下さい。手伝いますわ」
「……え?ど、どうしてここに?」
妹が、私のドレスを手にして部屋の中に入ってきた。
「姉様があの猛獣調教師の決闘を見ないで何処かへ行くなんておかしいでしょう?」
妹は普段から人型をとっている為、手際良く私をリードしながらドレスを着せていく。しかも、私が手にしたドレスより格段と着やすいドレスを選んでくれたようだ。
「あの猛獣調教師を助けるんですよね?姉様が東国の皇子の部屋を物色していたのを見た時は何事かと思いましたが……はい、終わりました」
「ありがとう!後で説明する!」
妹の助けであっさりとドレスを着た私が廊下に出れば、そこには弟が狼型で待機してくれていた。

「姉様、急いでるのでしょう?ほら、乗って!」
「……ありがとう!」
涙目だった私の瞳から、涙が溢れた。それも、風が後方へと流してくれる。
「あの猛獣調教師の為っていうのは気に食わないけどさ。あいつが死んで、姉様が泣くのはわかりきってるし」
「うん……うん、本当にありがとう」
私よりも早く走れる弟にしっかりと捕まって、コロシアムに到着する。

ドレス姿で会場内に戻れば、誰よりも早くエーベルと目が合った。ドラゴンの炎のブレスをお見舞いされたのか、きらびやかだった衣装がところどころ焦げている。右の太腿には鉤爪に引っ掛かれたような傷があり、血が流れていた。

エーベルの傷ついた姿を見て唸りそうになる感情を必死で押し止めて、私はそうとわからないように第四皇子を指差す。
エーベルは深く頷いた。
全く打ち合わせ通りにいってないのに、心が通った気がした。気付けば、ドラゴンも私を見ている。

私が第四皇子に近付けば、「これはこれはヴァーリア殿下!やはりそちらの姿の方が何倍も美しいですね!」と歓迎ムードで出迎えられる。
肩を抱かれて、私の腕に鳥肌がゾワッと立った時、ドラゴンが一際大きな咆哮を上げた。

ビリビリとした空気を揺るがす振動に、それまでずっと騒がしかった観客席がシン、と静まり返った時。
コツ、コツ、という堅いものを叩くような、例の音が会場内に響いた。
感想 8

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。