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82、ハプニングと協力者。
エーベルとドラゴンの対峙中、私は第四皇子の部屋の前で警備をしていた東国の人達を気絶させ、室内に入って様々なものを物色する。
ない……ない!!
昨日の音を頼りに探したが、何処にも見当たらずに焦る。
エーベルが時間稼ぎをしている間に、私が探して持って行かなければならないのに。
焦っても仕方ない、とにかく見つけなければ話にならない。
私は耳と鼻を全集中させて怪しいところをしらみつぶしに探したが、やはり第四皇子の部屋にはありそうになかった。
……何故、ないのだろう。
あれがないと、ドラゴンが言うことを聞く訳がない。
だから、失くしてはいない筈だ。
もしかすると、普段から……持ち歩いて、ドラゴンに見せつけている?
いや、第四皇子は手ぶらだった。
護衛騎士も、それらしきものは抱えておらず、手に剣を持って……ん?何で、手に剣を持っていた?普通、護衛は主人に危険が及ばない限り、抜刀しない。
抜刀すれば、護衛自身が間者であると間違われかねないからだ。であれば、彼らは第四皇子の指示で抜刀している。何で?それは──!!
私は自分の部屋に駆け込み、急いで適当な服を見繕った。
第四皇子の身辺を調べないといけないが、狼型よりも人間型の方が近付きやすいだろう。
狼型で近付けば、下手をすると警戒されてしまう。
廊下をコロシアムに向けてダッシュしていると、コロシアムからワアアアア、という大きな歓声が上がった。
決闘はどうなっているのだろう?
早くしないと……!!
半泣きになりながら、私はコロシアム近くの空き部屋に転がり込んで人型をとり、必死で着替える。
何で人間は服を着るんだ!!着ている時間すらも勿体無くて、私は苛つきながら着替え……ビリ、と音がした。
……え?
普段から着替える練習をしておけば良かった、と思ってももう遅い。もう一着予備を持ってくれば良かった、と思ってももう遅いのだ。
無理矢理乱暴に間違えたところへ袖を通したらしく、結果ドレスの肩から胸元まで大きく破れてしまった。
このまま行って大衆に胸を見られたとしても、問題はない。だが、胸を露出した格好で行ったとして、第四皇子はどう感じるだろうか?誘惑していると思われればまだいい。問題なのは、警戒され……。
「姉様、こっちに着替えて下さい。手伝いますわ」
「……え?ど、どうしてここに?」
妹が、私のドレスを手にして部屋の中に入ってきた。
「姉様があの猛獣調教師の決闘を見ないで何処かへ行くなんておかしいでしょう?」
妹は普段から人型をとっている為、手際良く私をリードしながらドレスを着せていく。しかも、私が手にしたドレスより格段と着やすいドレスを選んでくれたようだ。
「あの猛獣調教師を助けるんですよね?姉様が東国の皇子の部屋を物色していたのを見た時は何事かと思いましたが……はい、終わりました」
「ありがとう!後で説明する!」
妹の助けであっさりとドレスを着た私が廊下に出れば、そこには弟が狼型で待機してくれていた。
「姉様、急いでるのでしょう?ほら、乗って!」
「……ありがとう!」
涙目だった私の瞳から、涙が溢れた。それも、風が後方へと流してくれる。
「あの猛獣調教師の為っていうのは気に食わないけどさ。あいつが死んで、姉様が泣くのはわかりきってるし」
「うん……うん、本当にありがとう」
私よりも早く走れる弟にしっかりと捕まって、コロシアムに到着する。
ドレス姿で会場内に戻れば、誰よりも早くエーベルと目が合った。ドラゴンの炎のブレスをお見舞いされたのか、きらびやかだった衣装がところどころ焦げている。右の太腿には鉤爪に引っ掛かれたような傷があり、血が流れていた。
エーベルの傷ついた姿を見て唸りそうになる感情を必死で押し止めて、私はそうとわからないように第四皇子を指差す。
エーベルは深く頷いた。
全く打ち合わせ通りにいってないのに、心が通った気がした。気付けば、ドラゴンも私を見ている。
私が第四皇子に近付けば、「これはこれはヴァーリア殿下!やはりそちらの姿の方が何倍も美しいですね!」と歓迎ムードで出迎えられる。
肩を抱かれて、私の腕に鳥肌がゾワッと立った時、ドラゴンが一際大きな咆哮を上げた。
ビリビリとした空気を揺るがす振動に、それまでずっと騒がしかった観客席がシン、と静まり返った時。
コツ、コツ、という堅いものを叩くような、例の音が会場内に響いた。
ない……ない!!
昨日の音を頼りに探したが、何処にも見当たらずに焦る。
エーベルが時間稼ぎをしている間に、私が探して持って行かなければならないのに。
焦っても仕方ない、とにかく見つけなければ話にならない。
私は耳と鼻を全集中させて怪しいところをしらみつぶしに探したが、やはり第四皇子の部屋にはありそうになかった。
……何故、ないのだろう。
あれがないと、ドラゴンが言うことを聞く訳がない。
だから、失くしてはいない筈だ。
もしかすると、普段から……持ち歩いて、ドラゴンに見せつけている?
いや、第四皇子は手ぶらだった。
護衛騎士も、それらしきものは抱えておらず、手に剣を持って……ん?何で、手に剣を持っていた?普通、護衛は主人に危険が及ばない限り、抜刀しない。
抜刀すれば、護衛自身が間者であると間違われかねないからだ。であれば、彼らは第四皇子の指示で抜刀している。何で?それは──!!
私は自分の部屋に駆け込み、急いで適当な服を見繕った。
第四皇子の身辺を調べないといけないが、狼型よりも人間型の方が近付きやすいだろう。
狼型で近付けば、下手をすると警戒されてしまう。
廊下をコロシアムに向けてダッシュしていると、コロシアムからワアアアア、という大きな歓声が上がった。
決闘はどうなっているのだろう?
早くしないと……!!
半泣きになりながら、私はコロシアム近くの空き部屋に転がり込んで人型をとり、必死で着替える。
何で人間は服を着るんだ!!着ている時間すらも勿体無くて、私は苛つきながら着替え……ビリ、と音がした。
……え?
普段から着替える練習をしておけば良かった、と思ってももう遅い。もう一着予備を持ってくれば良かった、と思ってももう遅いのだ。
無理矢理乱暴に間違えたところへ袖を通したらしく、結果ドレスの肩から胸元まで大きく破れてしまった。
このまま行って大衆に胸を見られたとしても、問題はない。だが、胸を露出した格好で行ったとして、第四皇子はどう感じるだろうか?誘惑していると思われればまだいい。問題なのは、警戒され……。
「姉様、こっちに着替えて下さい。手伝いますわ」
「……え?ど、どうしてここに?」
妹が、私のドレスを手にして部屋の中に入ってきた。
「姉様があの猛獣調教師の決闘を見ないで何処かへ行くなんておかしいでしょう?」
妹は普段から人型をとっている為、手際良く私をリードしながらドレスを着せていく。しかも、私が手にしたドレスより格段と着やすいドレスを選んでくれたようだ。
「あの猛獣調教師を助けるんですよね?姉様が東国の皇子の部屋を物色していたのを見た時は何事かと思いましたが……はい、終わりました」
「ありがとう!後で説明する!」
妹の助けであっさりとドレスを着た私が廊下に出れば、そこには弟が狼型で待機してくれていた。
「姉様、急いでるのでしょう?ほら、乗って!」
「……ありがとう!」
涙目だった私の瞳から、涙が溢れた。それも、風が後方へと流してくれる。
「あの猛獣調教師の為っていうのは気に食わないけどさ。あいつが死んで、姉様が泣くのはわかりきってるし」
「うん……うん、本当にありがとう」
私よりも早く走れる弟にしっかりと捕まって、コロシアムに到着する。
ドレス姿で会場内に戻れば、誰よりも早くエーベルと目が合った。ドラゴンの炎のブレスをお見舞いされたのか、きらびやかだった衣装がところどころ焦げている。右の太腿には鉤爪に引っ掛かれたような傷があり、血が流れていた。
エーベルの傷ついた姿を見て唸りそうになる感情を必死で押し止めて、私はそうとわからないように第四皇子を指差す。
エーベルは深く頷いた。
全く打ち合わせ通りにいってないのに、心が通った気がした。気付けば、ドラゴンも私を見ている。
私が第四皇子に近付けば、「これはこれはヴァーリア殿下!やはりそちらの姿の方が何倍も美しいですね!」と歓迎ムードで出迎えられる。
肩を抱かれて、私の腕に鳥肌がゾワッと立った時、ドラゴンが一際大きな咆哮を上げた。
ビリビリとした空気を揺るがす振動に、それまでずっと騒がしかった観客席がシン、と静まり返った時。
コツ、コツ、という堅いものを叩くような、例の音が会場内に響いた。
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