83 / 94
83、ドラゴンの弱点。
その音を目掛けて……第四皇子の下、椅子の代わりをしていた四角い箱目掛けて、エーベルの鞭がしなる。
それは物凄い早さで、通常の人間では微動だに出来ないスピードだ。
狼型ならまだしも、人型の私はその鞭より早く動いていたから、何とかなったもので。
「皇子!危ない!!」
誰もが、私が第四皇子を迫りくる鞭から守ったように見えただろう。本当は、エーベルが箱を奪うのに、邪魔な第四皇子を退けただけだけど。
私は身体全体を第四皇子に投げ出すように抱き付いた。全体重をモロに食らった皇子は、私を抱き止めたままバランスを崩し、椅子からずり落ちる。
護衛騎士が慌てて「大丈夫ですか、皇子!?」的な言葉を投げ掛けた時には、四角い箱はエーベルの手の内にあった。
エーベルは自分の大事な武器である鞭を四角い箱に巻き付けたまま、ドラゴンに投げつける。
「~~っっ!!」
第四皇子は何かを叫んだが、その箱を心得たようにキャッチしたドラゴンは、鞭を咥えてその場からあっさりと退場した。
誰もが呆然とドラゴンが飛び立った空を見上げている中、
「~~っ!!~~っっ!!」
第四皇子だけは護衛騎士に何かを叫び、真っ青な顔でコロシアムから出ようとした。
それを、身体中に傷を追ったエーベルが、東国の言葉で話し掛けて引き止める。
二人が言い合い……一方的に第四皇子が怒鳴りつけ、それに対してエーベルが返答をしているだけの形ではあったが、父が最後に介入して、第四皇子は何かを言い捨ててコロシアムを去って行った。
「良かったねぇ、ヴァーリア。エーベルの勝ちを第四皇子が認めて終わったよ」
いつの間にか横に長兄が立ち、エーベルと第四皇子の会話の流れを教えてくれた。
第四皇子ははじめあの箱をエーベルが奪ったことに激昂していたらしいが、器物を破壊しても文句を言わない約束をしたことと、「ドラゴンが持ち去ったのですから、第四皇子が返すように命じれば問題ないかと」と言われて黙るしかなかったらしい。
ドラゴンという後ろ楯がなければ、東国において第四皇子の継承権の順位は再び下がる。
彼にとっては私との婚約云々よりも、ドラゴンを再び支配下に置くことの方が優先事項にあたる為、エーベルが私との婚約を明日に発表することを伝えれば、「好きにするが良い、余は本日帰国させて頂く」と言い捨てたらしいので、これで漸く何の心置きなく、予定通りにエーベルとの婚約発表がなされることとなった。
目の前で、父がエーベルの手を上に上げて勝者宣言を行えば、それまで成り行きを見守っていた観衆がワッと湧き上がった。
「エーベルハルト様、素敵過ぎる……!」
「猛獣調教師様って、皆あんなに格好良いのかしら!?」
「あんなイケメンで強い人なんて、この国にいたのね」
民衆がエーベルの話題で盛り上がっているのを聞いて、そうだろうそうだろうと鼻高々になる私。
まぁ、皆は知らない情報を追加させて頂きますと、変態、なんだけどね?
「ヴァーリア、少しは俺達も頼れよ」
次兄の声がして振り向けば、そこにはエーベルと同じくボロを纏ったような状態になった次兄がいた。
「ちょ、ちょっとその姿、どうしたの!?」
「どうしたって、ヴァーリアが探し物してる間の時間稼ぎに加勢してたんだよ、俺」
「そうだよ、頑張ったよね~」
どうやら、私がせっせとドラゴンの弱点を探している最中、長兄が第四皇子に交渉して、催し物として更に盛り上げる為に次兄も飛び入り参加でドラゴンと闘ったらしい。
既に頭に出来た傷で随分と凛々しいのに、更に傷を増やしてどうするんだ。
「いや~、ドラゴンと闘うなんて機会まずないから、楽しかったわ」
「マジかー」
私は尻尾巻いて逃げる一択なのに、次兄は違うらしい。
まぁ、次兄は私達の中でも一番戦闘が好きなのだけど、婚約者がいるのに自重しなかったのだろうか?
……と思っていたら、一人の女性が涙目でパタパタと次兄に走り寄ってきた。うわ、めっちゃ可愛い。
「し、心配したんですよっ!!早く怪我の処置をさせて下さいっ」
「これ位大丈夫だって。相変わらず心配性だな~」
とか言いながら、婚約者の女性を抱き締める次兄の鼻の下は伸びきっている。
「ヴァーリア様」
「エーベルっ!!」
エーベルの優しい声がして、私は振り向きざまエーベルに抱き付いた。
きゃあ、だのおお、だの悲鳴や歓声が聞こえるが、今は気にしない。
エーベルは、私とドラゴンの為にめちゃくちゃ頑張ってくれたんだから。
「エーベル、お疲れ様!!」
「ヴァーリア様も、ありがとうございました。お陰様で無事に、ドラゴンへ卵を返せました」
エーベルはそう言って、微笑んだ。
それは物凄い早さで、通常の人間では微動だに出来ないスピードだ。
狼型ならまだしも、人型の私はその鞭より早く動いていたから、何とかなったもので。
「皇子!危ない!!」
誰もが、私が第四皇子を迫りくる鞭から守ったように見えただろう。本当は、エーベルが箱を奪うのに、邪魔な第四皇子を退けただけだけど。
私は身体全体を第四皇子に投げ出すように抱き付いた。全体重をモロに食らった皇子は、私を抱き止めたままバランスを崩し、椅子からずり落ちる。
護衛騎士が慌てて「大丈夫ですか、皇子!?」的な言葉を投げ掛けた時には、四角い箱はエーベルの手の内にあった。
エーベルは自分の大事な武器である鞭を四角い箱に巻き付けたまま、ドラゴンに投げつける。
「~~っっ!!」
第四皇子は何かを叫んだが、その箱を心得たようにキャッチしたドラゴンは、鞭を咥えてその場からあっさりと退場した。
誰もが呆然とドラゴンが飛び立った空を見上げている中、
「~~っ!!~~っっ!!」
第四皇子だけは護衛騎士に何かを叫び、真っ青な顔でコロシアムから出ようとした。
それを、身体中に傷を追ったエーベルが、東国の言葉で話し掛けて引き止める。
二人が言い合い……一方的に第四皇子が怒鳴りつけ、それに対してエーベルが返答をしているだけの形ではあったが、父が最後に介入して、第四皇子は何かを言い捨ててコロシアムを去って行った。
「良かったねぇ、ヴァーリア。エーベルの勝ちを第四皇子が認めて終わったよ」
いつの間にか横に長兄が立ち、エーベルと第四皇子の会話の流れを教えてくれた。
第四皇子ははじめあの箱をエーベルが奪ったことに激昂していたらしいが、器物を破壊しても文句を言わない約束をしたことと、「ドラゴンが持ち去ったのですから、第四皇子が返すように命じれば問題ないかと」と言われて黙るしかなかったらしい。
ドラゴンという後ろ楯がなければ、東国において第四皇子の継承権の順位は再び下がる。
彼にとっては私との婚約云々よりも、ドラゴンを再び支配下に置くことの方が優先事項にあたる為、エーベルが私との婚約を明日に発表することを伝えれば、「好きにするが良い、余は本日帰国させて頂く」と言い捨てたらしいので、これで漸く何の心置きなく、予定通りにエーベルとの婚約発表がなされることとなった。
目の前で、父がエーベルの手を上に上げて勝者宣言を行えば、それまで成り行きを見守っていた観衆がワッと湧き上がった。
「エーベルハルト様、素敵過ぎる……!」
「猛獣調教師様って、皆あんなに格好良いのかしら!?」
「あんなイケメンで強い人なんて、この国にいたのね」
民衆がエーベルの話題で盛り上がっているのを聞いて、そうだろうそうだろうと鼻高々になる私。
まぁ、皆は知らない情報を追加させて頂きますと、変態、なんだけどね?
「ヴァーリア、少しは俺達も頼れよ」
次兄の声がして振り向けば、そこにはエーベルと同じくボロを纏ったような状態になった次兄がいた。
「ちょ、ちょっとその姿、どうしたの!?」
「どうしたって、ヴァーリアが探し物してる間の時間稼ぎに加勢してたんだよ、俺」
「そうだよ、頑張ったよね~」
どうやら、私がせっせとドラゴンの弱点を探している最中、長兄が第四皇子に交渉して、催し物として更に盛り上げる為に次兄も飛び入り参加でドラゴンと闘ったらしい。
既に頭に出来た傷で随分と凛々しいのに、更に傷を増やしてどうするんだ。
「いや~、ドラゴンと闘うなんて機会まずないから、楽しかったわ」
「マジかー」
私は尻尾巻いて逃げる一択なのに、次兄は違うらしい。
まぁ、次兄は私達の中でも一番戦闘が好きなのだけど、婚約者がいるのに自重しなかったのだろうか?
……と思っていたら、一人の女性が涙目でパタパタと次兄に走り寄ってきた。うわ、めっちゃ可愛い。
「し、心配したんですよっ!!早く怪我の処置をさせて下さいっ」
「これ位大丈夫だって。相変わらず心配性だな~」
とか言いながら、婚約者の女性を抱き締める次兄の鼻の下は伸びきっている。
「ヴァーリア様」
「エーベルっ!!」
エーベルの優しい声がして、私は振り向きざまエーベルに抱き付いた。
きゃあ、だのおお、だの悲鳴や歓声が聞こえるが、今は気にしない。
エーベルは、私とドラゴンの為にめちゃくちゃ頑張ってくれたんだから。
「エーベル、お疲れ様!!」
「ヴァーリア様も、ありがとうございました。お陰様で無事に、ドラゴンへ卵を返せました」
エーベルはそう言って、微笑んだ。
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。