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4 住む世界の違う僕ら
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「それで、若様。人型の魔族についてですが……」
「その前に、トーイ。情報ってのは金になる。それは知ってるか?」
「え?」
「金だよ、金」
「……はい、ちょっと待っててください」
ルキのためなら、仕方がない。
僕がお金を準備しようと立ち上がると、何故か若様は僕の手首をガシッと掴んだ。
「若様?」
「金じゃなくて、身体でもいいぞ」
「身体?」
「つまり、こういうことだ」
若様は立ち上がって顔を寄せ、僕にキスをした。
「若様!?」
慌てて距離を取ろうとする僕の頭を抑えて、舌を差し入れてくる。
どうやら僕の知らないキスがあったらしいと気付いて、愕然とする。
ルキが間違っていたのではなく、僕が知らないだけだった。
そのまましばらく舌を吸われて、やっと口が離れる。
「ああやっぱり、お前なら勃つわ。俺ずっと、お前とヤってみたいと思ってたんだよな。女は妊娠するから、面倒だし」
「……舌を口に入れるのって、魔族だけかと思っていました」
「は?」
その時、外のほうでガタンと音が鳴り、僕は慌てて若様を押し退けると玄関扉のほうへ駆ける。
「ルキ、お帰り。ごめんね、ちょっとお外で待っててくれるかな?」
僕は身振り手振りで外にいるよう伝えたが、ルキはその指示を無視してすんすんと鼻を鳴らしながら頭を下ろして玄関扉の枠を潜った。
「駄目だよ、ルキ。今はお客様が来てるから、いい子だから、お外にいてね」
僕はルキの目を隠そうと必死で手を伸ばしたが、ルキはその手をそっと掴んで横に退けてしまう。
そして、初めての来訪者をじっと見た。
「は? 何だこいつ、でけぇな」
「ええと、僕の同居人なんですが……」
そして若様も、ルキをじっと見た。
正確には、ルキの真っ赤な瞳を。
ルキを見る若様の顔がみるみると青褪め、イスからガタンと転げ落ちる。
「こいつ、まさか魔族……!?」
「あ、でもすごく大人しくて、本当に」
「こんなモン飼うなんて、どうかしてる……!」
「若様!」
若様は、僕の話を聞かずに足をガクガクとさせながらも駆けて出て行ってしまった。
外はそろそろ暗くなるのに、ランタンも持たずに大丈夫だろうか。
でも、ルキのことを誤解したままの若様が街へ戻れば、きっとこの家には討伐隊がやってくるだろう。
もしかしたら、僕も処罰させられるかもしれない。
僕はこんな日のために準備しておいた非常用の鞄を持ち出し、鞄の紐をルキに引っ掛ける。
僕にとっては大荷物なのに、ルキにはせいぜいその辺にハイキングへ向かうような格好になってしまうのが、こんな時だというのに面白い。
「ルキ、ごめんね。ルキはもう、ここにはいないほうがいい。ルキが見つかると、殺されちゃうかもしれないから」
ルキが自発的に出て行くなら良かった。
これでは、僕がわざと追い出したと思われても仕方がない。
しかし、逆に良いきっかけだったのかもしれない。
ルキと僕は、住む世界が違う。
ルキはもう一人でなんでもできるのだから、さっさと魔族の社会に戻ったほうがいい。
僕は泣かないように必死で笑顔を浮かべた。
そして、そんな僕の顔と鞄を交互に見て、ルキは察したようだ。
今日獲って来てくれたらしい獲物を台所に置くと、もそもそと玄関へと向かい、振り返ることもなく猛ダッシュで去って行った。
「その前に、トーイ。情報ってのは金になる。それは知ってるか?」
「え?」
「金だよ、金」
「……はい、ちょっと待っててください」
ルキのためなら、仕方がない。
僕がお金を準備しようと立ち上がると、何故か若様は僕の手首をガシッと掴んだ。
「若様?」
「金じゃなくて、身体でもいいぞ」
「身体?」
「つまり、こういうことだ」
若様は立ち上がって顔を寄せ、僕にキスをした。
「若様!?」
慌てて距離を取ろうとする僕の頭を抑えて、舌を差し入れてくる。
どうやら僕の知らないキスがあったらしいと気付いて、愕然とする。
ルキが間違っていたのではなく、僕が知らないだけだった。
そのまましばらく舌を吸われて、やっと口が離れる。
「ああやっぱり、お前なら勃つわ。俺ずっと、お前とヤってみたいと思ってたんだよな。女は妊娠するから、面倒だし」
「……舌を口に入れるのって、魔族だけかと思っていました」
「は?」
その時、外のほうでガタンと音が鳴り、僕は慌てて若様を押し退けると玄関扉のほうへ駆ける。
「ルキ、お帰り。ごめんね、ちょっとお外で待っててくれるかな?」
僕は身振り手振りで外にいるよう伝えたが、ルキはその指示を無視してすんすんと鼻を鳴らしながら頭を下ろして玄関扉の枠を潜った。
「駄目だよ、ルキ。今はお客様が来てるから、いい子だから、お外にいてね」
僕はルキの目を隠そうと必死で手を伸ばしたが、ルキはその手をそっと掴んで横に退けてしまう。
そして、初めての来訪者をじっと見た。
「は? 何だこいつ、でけぇな」
「ええと、僕の同居人なんですが……」
そして若様も、ルキをじっと見た。
正確には、ルキの真っ赤な瞳を。
ルキを見る若様の顔がみるみると青褪め、イスからガタンと転げ落ちる。
「こいつ、まさか魔族……!?」
「あ、でもすごく大人しくて、本当に」
「こんなモン飼うなんて、どうかしてる……!」
「若様!」
若様は、僕の話を聞かずに足をガクガクとさせながらも駆けて出て行ってしまった。
外はそろそろ暗くなるのに、ランタンも持たずに大丈夫だろうか。
でも、ルキのことを誤解したままの若様が街へ戻れば、きっとこの家には討伐隊がやってくるだろう。
もしかしたら、僕も処罰させられるかもしれない。
僕はこんな日のために準備しておいた非常用の鞄を持ち出し、鞄の紐をルキに引っ掛ける。
僕にとっては大荷物なのに、ルキにはせいぜいその辺にハイキングへ向かうような格好になってしまうのが、こんな時だというのに面白い。
「ルキ、ごめんね。ルキはもう、ここにはいないほうがいい。ルキが見つかると、殺されちゃうかもしれないから」
ルキが自発的に出て行くなら良かった。
これでは、僕がわざと追い出したと思われても仕方がない。
しかし、逆に良いきっかけだったのかもしれない。
ルキと僕は、住む世界が違う。
ルキはもう一人でなんでもできるのだから、さっさと魔族の社会に戻ったほうがいい。
僕は泣かないように必死で笑顔を浮かべた。
そして、そんな僕の顔と鞄を交互に見て、ルキは察したようだ。
今日獲って来てくれたらしい獲物を台所に置くと、もそもそと玄関へと向かい、振り返ることもなく猛ダッシュで去って行った。
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