「あなたを愛することはない」と百日前に言った「私」の顛末

イセヤ レキ

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4 恋人とのデート

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「マクシム様!」
「やぁ、オレリア」
私は馬車から降りて、御者に駄賃を握らせた。
ドキドキしながら、広場へ向かい、大柄で目立つマクシムに手を振る。

街の商業施設が立ち並ぶ区画はマクシムが生まれ育った区画らしく、知り合いも多くて少し歩くだけでしょっちゅう声を掛けられた。

「今日はどこへ行く予定ですか?」
「ああ、今日は防具飾りを見ようかと思って。知り合いのやってる店があるんだ」
「わかりました、では行きましょうか」
私は彼の動きを懸命に観察しつつ、小走りで付いて行く。

平民のマクシムは、女性のエスコートに慣れていない。
だから彼にエスコートを求めることはないが、ゆっくり歩くと到底追い付けなくなってしまうので、私はいつもマクシムの歩幅に合わせるように、小走りで移動する。

「お、ラッキーだな。今日はまだあの露店のドーナツが売り切れてないぞ」
「美味しいのですか?」
「ああ、いつも大行列ですぐに売り切れるんだ」
「そうなのですね」
「並ぶか?」
「ええと……はい、並びましょうか」

私はマクシムと付き合うようになって生まれて初めて、「露店の物を買う」ことと「行列に並ぶ」ことをした。
知らない経験は、私をさらにドキドキさせる。

「よう、マクシム!」
「お、久しぶりだな、元気にしてたか?」
「やだマクシム、その格好似合わない~!」
「お前、相変わらずひでぇな」

私達が列に並ぶとすぐ、人気者のマクシムは友人たちに声を掛けられる。

「なぁ、暇ならこの後ゲームしに来いよ! 今日はどこぞのボンボンが来るって話だ。金たんまり持ってるから」
「ちょっと、こんな場所で話しすぎ」
「あー……行きたいけど、夜からでもいいか?」
「別にいいけど、珍しいな。……って、ああ、女連れかよ!」
どうやら私の姿はマクシムの陰にすっぽりと収まってしまい、全く見えていなかったらしい。

「そゆこと」
マクシムは私の肩に手を掛け、ぐっと引き寄せた。
「きゃ……っ」
彼の急で積極的な行為と距離の近さに、私は頬を赤らめ驚いてしまう。

「……まさか、貴族の方かよ!」
「うわー、女に気を遣うなんて、アンタの柄じゃないでしょ~」
「うるせぇよお前ら、デートしてるんだから、どっかいけ!」
「はいはーい! じゃあな、マクシム。また夜に」
「おう」

マクシムの友人たちは、私達二人は似合わないと思われたのだろうかと肩を落としつつ、デートという言葉に胸をときめかせていると、優しい声が頭の上から掛かった。

「あいつらホント、うるさくてごめんな?」
「いいえ、とても賑やかで仲が良さそうですね」

私が会話に交ざれる気は全くしないが、自然体のマクシムが眩しい。
貴族の私相手にも、彼は敬語ではなく普通に話してくれるのだ。
堅苦しくない、誰にでも普段通りの彼が好き。

長い列がようやく終わり、私はドーナツを五個購入してマクシムに渡し、自分の分としてひとつ購入した。


「あら? どこで食べるのでしょうか?」
私が辺りを見回してベンチを探していると、マクシムが笑いながら教えてくれた。
「そのまま食べればいいんだよ」
「……」

まさか、この道端で立って食べるということだろうか。驚いて無言になった私の目の前で、マクシムがお手本をしめしてくれる。
ドーナツを二口で食べる人を、私は人生で初めて見た。

その後は防具飾りを売っている店に入り、マクシムが気に入った三つのうちどれにしようか決めかねているようだったから、私が三つとも購入してプレゼントをした。

貴族御用達の店と同じ値段だったから驚いたが、平民の生活水準がそこまで底上げされてきたなら喜ばしいことだ。

マクシムの知り合いだという店主からはまた是非ご贔屓にと、何度も頭を下げられた。
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