元公女の難儀な復讐

イセヤ レキ

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17 三カ月ぶりの笑顔

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「……悪かった。あの時にはもう、公国の国力が落ちすぎていて、今にも他国から侵略される寸前だったんだ。色々提案したのだが、全て門前払いされて、君はエバガンテの好色なジジイに売られる寸前だったし」
「……え?」

好色なジジイに売られる寸前とは、どういう意味なのだろう?

エバガンテの嫁ぎ先とは、まさか祖父と同年代の現国王のことだったのだろうか。
いや、まさか。


私はずっと、蝶よ花よと大事に育てられてきた。

しかし、無知であること、単に笑っていればよいと育てられてきたこと、美しさを保つことこそが私の価値だと言われ続けてきたこと、そしてそろそろお前も嫁ぎ先が決まりそうだと何処の誰とも教えて貰えず準備だけしていろと命じられたことが、今になって違和感となり脳裏に蘇る。


「いいか、エフィナ。よく聞いてくれ」
ロイアルバが真剣な顔で、私の両肩を掴んで視線を合わせた。
「嫌です」
私は咄嗟に、顔を背ける。

「今回、この旅に連れて来たのは、精鋭部隊というよりも、私が心から信頼を寄せる者達だ」
「ですから、嫌です!」
何故、ロイアルバは遺言みたいなことを私に告げようとするのだろう。

「すまない。でも、大事なことなんだ。私が狂ったまま……闇堕ちしたままだったら、彼らの言う通りにするんだ。そうしなければ、君は最悪本当に……散々遊ばれた後、娼館に送られるか殺されるかもしれない」
ぐ、と私は唇を噛む。

「どうか、お願いだ。私に何かあれば、君に危険が迫ることは間違いない。君を匿ってくれる覚悟を持った者達だけを連れてきているから、必ず言うことを聞いてくれ」
ロイアルバは、自分よりずっと小さい私なんかに縋るように言った。
「最初の予定通り、私を捧げればいいじゃないですか」

皇帝の望む通りに動き、部下も危険な目に合わせず。

「私は、君が危険な目に合うことが、一番嫌なんだ」
「一番……? では、私が、貴方が死なないなら毒を飲みますと言えば、自死して下さるのですか」
私が皮肉を込めて言えば、ロイアルバは少し考えた後、「子供を五人程生んでくれた後なら」と大真面目に答えた。

私はやはり自分が一番なのではないかと呆れながらロイアルバに尋ねる。
「何故子供が必要なのですか? 子供の母親に、そんな酷いことを言わせない為? それとも、国の為に跡取りを?」
「いや、違う。私が今死ねば、エフィナは生きる意味や目的を失ってしまうかもしれない。私に対する復讐心がなくなっても、エフィナが確実に生きていく保険や足枷が欲しいんだ」

私は唖然とした。
「……それが、私の子供五人ですか?」
「五人もいれば流石に死なないかなと思って」
「……」

潔いほどの馬鹿だと思った。
そして私は、復讐を誓った相手を前にして笑ってしまった。
「……公国で会ってから、初めて笑ったな」
ロイアルバは眩しいものでも見るような顔をして、同じく笑顔を浮かべた。
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