誓約〜ヤクザなβは無感覚αに執着する〜

イセヤ レキ

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「ちょっと氷岬サン、いったい何しちゃったの~」
「伊吹」

その日から、煌誠の許可なく氷岬が自由に外へ出ることは許されなくなった。
会社の代表からも降ろされた氷岬は、以前のように金になりそうな新しいシステムの開発をしながら日々を消化している。

しかしそれは煌誠から指示を受けたことではなく、自分で時間を潰すためにやっていることだ。
会社の代表と煌誠の右腕を兼業していた頃の分刻みのスケジュールがまっさらになり、氷岬はどう時間を消化すればいいのか、わからなくなった。

「この家でしばらく頭を冷やせ。番のことは忘れろ、外には出るな」

そう煌誠は氷岬に言い、家にいること以外、何も望まなかった。
以前は氷岬がこなしていた家事も、家政婦を雇っているために手を出すことを禁止された。
だからあえて、パソコンに向かう時間を自ら設けたのだ。

氷岬の荷物は全て八年間使わせて貰っていた以前の部屋に戻され、氷岬の知らない若い連中が監視として玄関先に立つようになった。
ただ、相手は氷岬のことを知っているのか、あまりにも緊張する様子から申し訳なく思い、もし仕事が立て込んでいなかったらという条件付きで、気の置けない仲間である伊吹を一日でいいから呼んでくれないかと煌誠に頼んだのだ。

「久しぶり。手間を掛けさせてごめん、ちょっと煌誠さんの機嫌を損ねてしまって」
「ホントだよ~。氷岬サンの監視役を頼まれるなんて、びっくりしちゃった。あ、オレは氷岬サンの借りてた部屋を使わせて貰えるようになったから、ラッキーだったんだけどさ」
「そうか、解約されたわけじゃないのか」
「ウン。でも、氷岬サンがあの家に戻れることは、もうなさそうだけどね~」

煌誠の命令で氷岬の監視をするためにここにいると明け透けに発言するのは、氷岬よりも三つ年下の伊吹である。
元々問題児のβで、少年院を行ったり来たりしていたところを、五年前に煌誠に拾われたのだ。

煌誠に拾われた子どもたちは皆、氷岬以外、組織の管理するマンションに共同で住んでいた。
そこも氷岬が顔を出してちょくちょく面倒を見ていたため、伊吹の中では煌誠が父的な存在で、氷岬が母的な存在らしい。

伊吹は今でも二人にとても懐いているが、仕事内容は汚れ仕事なため、氷岬と仕事が絡むことはまずなかった。

しかし、伊吹が氷岬に懐いているとはいえ、伊吹にとっての一番は煌誠だ。
以前は自分も同じで、それが当たり前だと思っていたのに、今はちょっと歯がゆく感じてしまう。
そして氷岬のそんな変化を、許すような煌誠ではない。

「頼みがあるんだけど、伊吹」
「なぁに? オレに出来ることだったらいいけど、煌誠サンに殺されそうなことは嫌だよ」
「ん、わかってる。……その、メモを探して欲しいんだ」
「メモ?」
「そう。煌誠さんの性格からして、まだコートのポケットに入っているんじゃないかなと思って。それか、財布の中か」

氷岬が伊吹を指名した本当の目的は、これだった。
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