3 / 5
ユーリス
しおりを挟む
「お嬢様?ケーキはどうなさいますか?」
そこにいたセバスティアンはユーリスの姿には気が付いていないようだった。窓をのぞき込んでいるローズクイーンを見て、不思議そうな顔をする。
「なんでもないわ、ケーキ、頂くわ」
「かしこまりました」
その時からユーリスはこうやって遊びに来るようになった。目的は一つ。ローズクイーンに会いに来てくれるのである。
外から来ているとか、スラム出身だとか、誰にも見つかってはいけないだとかローズクイーンにどうでもよくて、彼女にとってはユーリスと話すことが彼女には必要だった。
「そんな不機嫌な君に、実はプレゼントがあるんだ」
「え?本当?」
そういってユーリスは胸のポケットを探る。そして、一輪の花を差し出した。
「町のバザーで見つけてさ、きみに似合うと思って持って来たんだ、受け取ってよ」
「え?本当?うれしい」
それは青い花だった。品種は分からない。けど綺麗で、ローズクイーンにとっては、宝物の一つになった。
「けどごめん、実は今日は少し用事があってすぐに行かなくちゃいけないんだ」
「ううん、いいの、大丈夫。また来てくれるよね」
「もちろんさ、また来るよ」
「ねぇ、ユーリス、実は……」
「ごめん、本当に時間がないんだ。また来るからあとでいいかな?」
「うん、ごめんね、いいの、今日は来てくれてありがとう」
「うん、またね」
そういってユーリスは薔薇の庭園の死角へ消えていった。音もなく、気配もなく、誰もいなかったかのようにユーリスはいなくなった。
青い花を見つめながら、ユーリスを思い返す。あの日、図書室で出会ったときから、ローズクイーンは口角が上がりっぱなしだ。そういえば顔が痛いなとローズクイーンは頬をほぐす。ぐりぐりと回すと血流が流れる気がして痛みが和らいだ。
どうやら彼と話しているときずっとにやけてしまっているようで、それで痛みが出ているようだ。でも自分ではどうすることができないのだ。仕方がない。
「お嬢様、先ほどようやく茶葉が届きましたがどうされますか?おやそれは?」
「ほんとバカね、こうやってね、あ、いやなんでもないわ」
平静に戻るために目をそらした。これはローズクイーンとユーリスの秘密だ。誰にも悟られるわけにはいかない。それが彼女には楽しかったし、彼女だけがそれを知っているのは彼女だけでよいのである。
その時だった。
「Lv.が2に上がりました」
どこから聞こえたのは分からない。だが確実にローズクイーンはその声を聴いた。誰の声なのかもわからなかった。
「エルブイ……、レベルが上がったわ」
「レベル?どういうことですか?お嬢様」
今話したセバスティアンの声ではないことは明らかだった。
「セバスティアン、レベルって何かしら?」
「はい、レベルは冒険者たちが主に使う言葉でございます。レベルが高いほど筋力や魔力が上がるといわれています」
「なるほど、そのレベルが上がったようなの」
「レベルですか?どうしていきなり上がったのですか?」
「分からないわ」
セバスティアンは深く考え込んでしまった。あごに生えた髭をさすり、何か不安そうな顔をする。
私には一つ、心当たりがあった。恋愛だ。これは愛の力だ。きっとそうだ。ユーリスと出会ったこと、そうして私の力を一つ上げたのだ。
「そうね、愛の力、つまりloveが上がったということね。やっぱりこの気持ちは本物ね」
「何のことですか?お嬢様」
「いいえ、なんでもないわ」
その日セバスティアンはローズクイーンがやけに機嫌がいいことを不審に思っていたという。
そこにいたセバスティアンはユーリスの姿には気が付いていないようだった。窓をのぞき込んでいるローズクイーンを見て、不思議そうな顔をする。
「なんでもないわ、ケーキ、頂くわ」
「かしこまりました」
その時からユーリスはこうやって遊びに来るようになった。目的は一つ。ローズクイーンに会いに来てくれるのである。
外から来ているとか、スラム出身だとか、誰にも見つかってはいけないだとかローズクイーンにどうでもよくて、彼女にとってはユーリスと話すことが彼女には必要だった。
「そんな不機嫌な君に、実はプレゼントがあるんだ」
「え?本当?」
そういってユーリスは胸のポケットを探る。そして、一輪の花を差し出した。
「町のバザーで見つけてさ、きみに似合うと思って持って来たんだ、受け取ってよ」
「え?本当?うれしい」
それは青い花だった。品種は分からない。けど綺麗で、ローズクイーンにとっては、宝物の一つになった。
「けどごめん、実は今日は少し用事があってすぐに行かなくちゃいけないんだ」
「ううん、いいの、大丈夫。また来てくれるよね」
「もちろんさ、また来るよ」
「ねぇ、ユーリス、実は……」
「ごめん、本当に時間がないんだ。また来るからあとでいいかな?」
「うん、ごめんね、いいの、今日は来てくれてありがとう」
「うん、またね」
そういってユーリスは薔薇の庭園の死角へ消えていった。音もなく、気配もなく、誰もいなかったかのようにユーリスはいなくなった。
青い花を見つめながら、ユーリスを思い返す。あの日、図書室で出会ったときから、ローズクイーンは口角が上がりっぱなしだ。そういえば顔が痛いなとローズクイーンは頬をほぐす。ぐりぐりと回すと血流が流れる気がして痛みが和らいだ。
どうやら彼と話しているときずっとにやけてしまっているようで、それで痛みが出ているようだ。でも自分ではどうすることができないのだ。仕方がない。
「お嬢様、先ほどようやく茶葉が届きましたがどうされますか?おやそれは?」
「ほんとバカね、こうやってね、あ、いやなんでもないわ」
平静に戻るために目をそらした。これはローズクイーンとユーリスの秘密だ。誰にも悟られるわけにはいかない。それが彼女には楽しかったし、彼女だけがそれを知っているのは彼女だけでよいのである。
その時だった。
「Lv.が2に上がりました」
どこから聞こえたのは分からない。だが確実にローズクイーンはその声を聴いた。誰の声なのかもわからなかった。
「エルブイ……、レベルが上がったわ」
「レベル?どういうことですか?お嬢様」
今話したセバスティアンの声ではないことは明らかだった。
「セバスティアン、レベルって何かしら?」
「はい、レベルは冒険者たちが主に使う言葉でございます。レベルが高いほど筋力や魔力が上がるといわれています」
「なるほど、そのレベルが上がったようなの」
「レベルですか?どうしていきなり上がったのですか?」
「分からないわ」
セバスティアンは深く考え込んでしまった。あごに生えた髭をさすり、何か不安そうな顔をする。
私には一つ、心当たりがあった。恋愛だ。これは愛の力だ。きっとそうだ。ユーリスと出会ったこと、そうして私の力を一つ上げたのだ。
「そうね、愛の力、つまりloveが上がったということね。やっぱりこの気持ちは本物ね」
「何のことですか?お嬢様」
「いいえ、なんでもないわ」
その日セバスティアンはローズクイーンがやけに機嫌がいいことを不審に思っていたという。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる