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一ノ塾 諒

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あなたが挫けそうになった時のための物語

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 死ぬには良い朝だった。

 ので、遺書を書こうと思います。


 死にます。
 将来への夢が四度もくじかれたからです。ほかに何かあるわけではありません。

 一つ目はプロ野球選手になりたかったのです。だがなれなかったのです。狭い道の世界です。無理だと感じたのは周りを見ればわかりました。足は速くない。肩も強くない。特に技術があるわけでもない。そんな自分がプロになることがおこがましいと思ったのです。周りを見て、スターティングメンバ―として出ていく人たちを送り出して、私がいるべき場所はここではないと思ったのです。

 次は教師になりたかったのです。憧れた先生がいたのです。その人はかっこよかった。勉強は好きだったし、最初のうちは何かができるようになることは楽しかった。しかし苦痛でした。私の普通は誰かにとっての当たり前、それに気が付いてしまったのです。私には一日十時間、集中する力はないのです。毎日夜遅くまで起きて勉強することも、朝早く起きて勉強することもできなかったのです。そして彼らのようにうまく説明をすることもできないし、誰かのために道を見つけさせることもできないと思ったのです。

 三つ目は成功することが夢になったのです。しかし、私は口下手だったのです。誰に対しても、家族にさえ本心を語ることはできなかったのです。今だってそうです。人生の岐路に立たされてもなお、まだ何をするかを決めかねているし、誰に相談しようとも思っていません。さらに言えば、どんな成功を収めようとしているのかが分かりません。優柔不断なのです。私にはまだ何か特別な可能性が残っていて、それが花開き、私を大成功へ導いてくれる、そんな気がするのです。誰が何と言おうとも、成功すればみんなが認めてくれると今でも思います。だがそれが無理なことは、現状を見ればわかります。成功していないのです。だからこんな夢を捨ててしまってもかまわないと思ったのです。

 四つ目、私は普通に憧れたのです。これだけ打ちひしがれてもなお、何かを望むのは、それが普通だと信じているからです。私は普通に学校を卒業し、普通に働いて、普通に結婚して、そして普通に家庭を持ち、普通に孫ができて、普通に幸せな人たちに囲まれながら死んでいく。そんな世界を信じていたのです。それが誰にでも訪れるものだと思っていたのです。
しかし、私はそれができないことを知りました。皆は何かを見つけてそれに向かって、自ら進むことが必要なのです。能動的に動くことが必要です。それでようやく私の望む普通なのです。私の望む普通は高望みなのです。それが夢なのですかと言われたとき、それが夢ではいけませんか? と言い返すことができなかったのです。だからこれは私の夢ではなかったのだと思います。

 最後、私は夢を持つことが夢になったのです。何かになれない人はたくさんいます。何かを成し遂げることができない人もたくさんいます。私はそれになりたくはありません。夢を持ちます。夢もなく廃れた人たちとは違います。私は夢追い人なのです。まだ夢を諦めていません。私はまだ死ぬには早すぎるのです。だから私は今日も文字を綴ります。

 さて、ここまで読んでくれたあなたならわかるかもしれません。死ぬ理由を書いていないのです。

 私はまだ死ねていないのです。私はまだ生きています。夢を追うことは疲れました。もうしんどいのです。もがき、苦しんで、誰に認められるわけでもなく、ただ一人こうやって文字を書きます。それがしんどいと思ってもうずっと立ちます。

 さて私が文字を綴る理由を書きましょう。私が死ねない理由です。私はやり残したことがあります。成功です。夢は何かを成し遂げるために見るのでしょう。私は成功していません。夢をかなえていないのです。生きていることの報酬を得ていないのです。誰が見てくれているかは分かりませんが、私にとってあなたの喜びや悲しみはどうでもよいのです。私が成功するためにはまだ私の命の燃やし方が足りないのです。もっとも燃えましょう。くすぶる時間は長すぎたのです。

 さらに言えば私は今日、夢ができました。またかなわないと思った人もいるかもしれません。ですが夢を求めることは楽しいのです。それに向かって、たとえ失敗して、人生を棒に振っても楽しいのです。それが夢を追うってことではないのですか?

夢は呪いをかけることです。物騒なことでしょう。ですが違います。私の言葉で、あなたの心に呪いをかけるのです。誰かが夢に破れたとき、私はその時、私の半生を思い出してほしいのです。夢に破れ続けてもまだ夢を見ている。そんな人間がいたことをぜひとも頭の隅に思い返してほしいのです。

 やり直したことはありませんか? それは本当に無理なことですか? すべて、自分の人生を賭けても無理なことですか? それでもまだ踏みだせませんか?

 賭けるものはたくさんあります。友達、家族、お金、地位、地位、名誉、それらすべてを捨ててまでもかなえたいものではありませんか? 私はそんな夢を持っています。あなたはどうですか? 自分のためにまだ捨てていないのですか?

 さて、夢を見る時間は終わりました。今は朝ですよ。起きてください。寝ぼけているのですか? あなたはまだそこで立ち止まっているのですか? 足を止めるのですか? 

 私は死ぬと言いました。ですが、死ぬのは昔の自分です。今の自分。これを読んでいる自分ではありません。殺したい過去の自分なんて山ほどいるでしょう。いまそのすべてを殺すのです。殺すにはいい朝ですよ。新しい一日の始まりです。清々しい気分ですね。
そうすればきっと昔の自分は言ってくれるはずです。
「死ぬにはいい朝だった」って。

 さてここからは、私があなたへ言葉を贈ると思ったら大間違いです。あなたが必要な言葉はあなた自身で見つけてください。
 これを読んでいるあなたは作家でしょう? なら文字を綴ってください。言葉で繋がりましょう。私たちは作家なのだから。それが、私たちができることです。作品で語りましょう。それが作家というものです。


 長くなりましたね。これは自殺をした私の話。だが私は死ななかった。それだけの話なのです。それ以上でもそれ以下でもありません。ですが私たちは物書きです。それを書いて何が悪いのですか? 私は私に必要なことをしているのです。これが私の夢だから。
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