【完結】脇役モブの悪役令息に転成したら、脇役モブの双子騎士にヤンデレられた。

白霧雪。

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本編

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 目が覚めたら知らない天井だった、なんて。まさか小説にありがちなフレーズを俺が体験することになるとは思わなかった。

 広い部屋だ。デズモンド邸の私室よりも広いかもしれない。
 深い青色と白でまとめられた調度品はどれも最上級の品質だ。棚に飾られた花瓶ひとつで小さな家を一軒買えてしまえるだろう。

 クイーンサイズの天蓋付きベッド。サイドテーブルには水差しとコップ。
 大きな窓はバルコニーへと繋がっているらしい。気怠い体を起こして、カーテンの隙間から光が差し込む窓辺へと近づいた。

「ぅ、まぶし……」

 カーテンを開くと、白い光に目を焼かれる。あまりの眩しさに目元を手で覆い、バルコニーへ出るべく内鍵を外した。

 ガチャン、とやけに大きく響いた音に肩を跳ねさせて、逡巡してから扉を開けた。
 外から風が吹き込み、濃紺のカーテンが室内を舞う。

「う、わ……なんだ、これ」

 外へ一歩踏み出して、広がる光景に目を見開いた。

 青い、蒼い、一面の蒼い薔薇の花園。
 まるで海の水面のように広がる美しい花々に見入ってしまう。

「綺麗でしょう?」
「っ、アデル……」
「僕もいますよ。おはようございます、お寝坊さん」

 いつの間に部屋に入ってきたのか、両脇からするりと腰と手を取られた。
 最後に見た時よりもずいぶんとラフな格好をしており、彼らが攫ってくれたのだと実感する。きっと今頃、エインズワース邸も、デズモンド邸も大騒ぎだ。

「お前ら、薬か何かを混ぜたんだろう。そうじゃなきゃ、俺がこの時間まで起きれないはずがない」
「……デズモンドは、子供に薬の耐性を付けさせると聞いています。だから、いろいろと組み合わせたモノを用意したんですが効果がおかしくなってしまったみたいで」

 そもそも薬を飲ませるんじゃないよ。いろいろ組み合わせたモノってなんだ。それでオーバードーズでも起こしたらどう責任取ってくれる。
 ――まさか、ノアにもしたんじゃないだろうな!?

 顔色を変えた俺に、カインが慌てて首を横に振った。

「ノア君には何もしていません。貴方にだけです」
「……別に、逃げるつもりはないが」
「念には念を。貴方の意識がないほうが、誘拐っぽいでしょ?」

 ぱちん、とウインクを飛ばしてきたカインに瞠目する。なんとなく、そういう事をするのはアデルだと思っていたから意外だった。

 噂で聞いたことがあった。蒼い薔薇に囲まれた美しいミラー家の別邸がある、と。
『蒼薔薇の館』はアデルとカインが所有する私邸で、他の家族は滅多に来ない別邸だとか。なるほど、俺とノアを隠すのに持ってこいだ。

 使用人も最低限で、街からも遠いため、外に出ても見られる可能性は低い。

「用意周到だな」
「そのための屋敷ですから」
「? ……どういう、」
「この屋敷は、貴方と暮らすために整えていたんです。……蒼い薔薇が好きだと仰っていたでしょう」

 ぱち、ぱち、とまぶたの裏で記憶が火花を散らす。

 壊れた馬車と、見目麗しい双子の兄弟。腕を広げて庇う俺はずいぶんと小さくて――。

「僕たちを見てください」
「思い出さなくていいんですよ」
「ぁ、」

 あと少しで思い出せそうだったのに、邪魔をされてしまい開きかけてた記憶の棚が再び閉じてしまった。

 脳裏に描かれた俺は今よりも随分と幼くて、今のノアよりも小さかったかもしれない。十歳よりも前となれば、外へ出る機会も限られていた。
 今現在ですらマリアにすべてを握られているのに、それよりも酷かった頃だ。

 起床から就寝まで。分単位でスケジュールを決められて、『俺』風に言うなら過干渉な毒親だった。
 成長するにつれて、というよりもノアが生まれてからマリアの苛烈さは鳴りを潜めていった。――否、おそらくそれもノアの異能が作用していたんだろう。
 母という無条件の愛を注いでくれるマリアを慕い、その結果『慈愛』は効果を発揮した。

「……ノアは? どうしてる?」
「ノア君なら、貴方よりも早く起きて身支度を済ませています。食事は兄上が起きてから一緒に食べる、と言うので今はメイド長が見ていてくれています」
「待たせてしまったのか、それじゃあ俺も早く準備をしないとだな」
「本人からアレルギーや好き嫌いを聞いて食事は用意させたんですが……柑橘類が食べられないというので、食後のデザートはフルーツタルトからプディングに変えたんですが、よろしかったですか?」
「プディングは、俺もノアも大好物だよ」

 手を取られたまま部屋の中へと招かれる。いくら日差しがあるとはいえ、風邪を引いてしまいますから、と言う双子は俺を子供かなにかかと思っているんだろうか。
 何度でも言うがお前らよりも年上なんだけど。

 着替えよう、と着せられていたガウンに手をかけてから、そういえば着の身着のままでさらわれてきたのなら、荷物も着替えも何一つないのではないか?

 困った顔で双子を見れば、カインが新品だろう衣服を持っており、アデルはそれに合わせた靴やアクセサリーを手にしていた。

「サイズはぴったりだと思います」
「着替えたら、テーブルの上のベルを鳴らしてください」
「お迎えにあがりますので、ゆっくり着替えて結構ですよ」
「貴方に待たされるのはなれていますから」

 にっこり。
 サイドテーブルにそれらを置いて、さっさと部屋を出ていってしまった双子に物申したい。
 インディゴのヴェストだとか、スカイブルーのリボンだとか、ボタンや金具が銀で統一されているところだとか。

 用意してくれたのはとってもありがたい。
 しかし、だ。デズモンドの俺にミラー家の色彩を着せるのはちょっと価値観が狂っているんじゃないだろうか。
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