【完結】脇役モブの悪役令息に転成したら、脇役モブの双子騎士にヤンデレられた。

白霧雪。

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本編

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 上も下もなく、同じ線の上を歩く仲の良い貴族だった。
 熱血なところのあるミラー閣下をなだめるのが落ち着いて物事を見れるデズモンド閣下の役目で、そんなふたりのじゃれあいを見るのがエインズワース閣下は大好きだった。

 奴隷商人たちの摘発と、荒れた領土内の整地、食物の供給。貴族らをまとめて光も影も関係なく奔走するデズモンド閣下は、その冴えわたる素晴らしい頭脳で、最適解にたどり着いた。
 自らが闇となり、悪となり、国の影となることで、裏側を牛耳れば良いのではないか。そして、それができてしまう手腕がデズモンド閣下にはあった。

 もちろん、ミラー閣下は反対する。貴方だけが『悪』になる必要はないのだと。しかしデズモンド閣下は譲らなかった。
 この中で最も『悪たらしめる存在』は自分だとわかっていた。
 ミラー閣下に暗いところは似合わない。せめて光の下で、剣を振るって俺たちを守ってほしい。それはデズモンド閣下のエゴで、願いで、希望だった。剣を持つことができなかった自分の夢を、ミラー閣下に託したのだ。

 そうして、光のミラー家と、悪のデズモンド家と、中立のエインズワース家という形が出来上がった。

 デズモンド閣下が裏側を牛耳り始めると同時に、国政は安定していき、やがてミラー閣下が敵軍を打ち取り、国は勝利へと導かれた。

「俺は、デズモンドもミラーも、エインズワースも興味がありません。……否、アデルとカインに出会っていなければ、俺は永遠にデズモンドに縛られていたでしょう。ゴルディア・デズモンド閣下の人形として、国のためにもんらない悪行に加担していたに違いない」
「デズモンドの悪行を認めると?」
「認めるわけじゃありません。ただ、国にとってはなければならなかった、そういうことでしょう。俺よりも、ミラー閣下のほうがご存じなのでは?」
「……到底、許せる所業ではない」
「けれど、デズモンドにを与えたのは他ならない貴方たちです」

 俺にはそうだとしか思えなかった。
 自ら泥をかぶったデズモンド閣下も、光と剣を選んだミラー閣下も、見ていることしかしなかったエインズワース閣下も――戦争を引き起こした王様も。全部許せなかった。もっと他にいい方法があったはずなのに。

 けど、結局は後世の跡継ぎたちが『悪役貴族ヴィラン』という立場に溺れなければよかっただけの話。

 今ここでどうのこうの話したって解決はしない。

「私が聞きたいのは、君はこれからどうするつもりなのかということだ」

 咳払いをひとつして、話を変えた閣下。
 これ以上、この話題を広げても自分が不利になるとわかったのだろう。だって、本来なら当主を継いだ人間でなければ知らない話だ。読んでいるから知っていただけの俺は、それだけで優位に立てる。

「屋敷には、俺のきょうだいの遺体はなかったと聞きました」
「話したのか、お前たち」
「ノエルには知る権利があるでしょう」
「僕たちはノエルを助けにいったのだから」
「だから、言っているだろう。お前たちの勝手な行動のせいで、どれだけの被害が……!」

 静かに凪いだ声は努めて出していたのか。冷静を装った内側は激情で燃え滾っていた。
 ミラー閣下の怒鳴り声に近い大きな声に、ノアが目をまん丸に見開き、椅子を降りて俺の膝に抱きついてきた。過敏な子だから、びっくりしてしまったんだ。
 頭を撫でて、背中を撫でて、脇に手を差し込んで膝の上に抱き上げた。

「す、すまない。驚かせるつもりは……君に、怒っているわけではないんだ」
「もう、貴方、ダメですよ。小さな子がいる前で大きな声を出してはいけないと言ったでしょう。ノア君、ごめんね。お詫びに、ケーキを用意させましょうね」
「ぁ……僕も、ごめんなさい。びっくり、しちゃって」

 眉を下げて、チェリーピンクの瞳をうるうるさせる。シワがつかないように緩く服を握り締めるノアを抱き寄せて、額にキスをする。あ、これをやると双子が不機嫌に――?

「父上のせいでノア君が驚いてしまったじゃありませんか」
「ノア君は兄上やセラフィーナよりずっと繊細な子なんです。大きな声を出さないでください」

 ならなかった!
 フン、と不機嫌は不機嫌だが、怒りの矛先は父親に向かっている。

「お前たちが、勝手なことをするからだろう。もう少し親の顔を立てるということをしてくれないか?」

 深々と溜め息を吐いてこめかみを指で揉む閣下は双子の扱いにとても苦労していらっしゃるらしい。だろうな、としか思えなかった。奔放に育てられたとか、自由に育てられたとか、この双子がどういう風に育ってきたのか、そういうのが思い浮かばないのだ。

 俺はガッチガチに縛られて育てられた。だから表面上はとっても良い子ちゃんだ。イザベラにお人形ちゃんと呼ばれるくらい、従順な良い子だった。

「なぜ、父上のいうことを利かなければいけないので?」
「親と子だからだ」
「ただ血の繋がりがあるだけでしょう? 期待するのは兄上だけにしてください」
「私たちに勝手な思いを押し付けないでいただきたい」

 ――もしかして、俺が思っていたよりも親子の仲、悪い感じ?
 ほとんど描写がなかったのはメインじゃなかったからだとか、そういうのじゃなくてただ単に家族仲が険悪だったから?
 夫人は困り顔で夫と子の応酬を見つめているし、長男は何を考えてるかわからない顔でスコーンを食べ、末妹は険悪な雰囲気に顔色を悪くしている。この雰囲気でスコーンを食べている長男は鋼の心の持ち主だ。さすがメインキャラクター。

「――俺は、」

 混沌と化したこの場に終止符を打つなら、俺しかいない。
 ほとんど台風の目になっているんだもの。それに、双子はどんな時でも俺の言葉に耳を傾けてくれる。

「俺は、ただ、アデルとカインのそばにいられるなら、それでいいんです」
「君、は……」
「できることなら、生涯を添い遂げたい。穏やかに愛しい日々を過ごして、同じ墓……に入るのは不可能でしょうから、一緒に、時間を共にすることができるギリギリまで、ふたりと一緒にいたいんです」

 プロポーズだ、と膝の上でノアが囁いた。
 余計なことを言わなくっていいの、と頭を胸元に押さえつけた。

 息子さんたちを俺にください、ってところかな。
 これからを共にするのなら、俺の覚悟も見せたかった。離れていく気なんてないのだと、アデルとカインに示したかった。

「添い、遂げ……?」
「――ノエルさんは、アデルとカインでいいの?」
「アデルと、カインがいいんです。ふたりしか、俺にはいない」
「そう……。貴方、いいじゃありませんか。ノエルさん、とっても素敵な方よ。破天荒なあのふたりも、ノエルさんのことを常に気遣っていて、とっても良いパートナーじゃありませんか」
「いや、しかしだな、」
「もう、そうやってすぐに決断できないの、悪いところですよ」

 ぷんぷん、とまろい頬を膨らませた夫人は、閣下の額を指先で突いてから、こちらに笑顔で向き直った。

「歓迎するわ、ノエルさん。うちのおバカな双子ちゃんをよろしくね」
「…………返品は受け付けないからな」


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