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始めようか、戦争を ー敵地侵攻編ー

第51話:忍ぶ者達 v0.0

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_彼らが警備隊指令所で奴らと戦っている頃 皇帝の間へと続く階段では


 「あ、あれで・・・良かったんですか?」

 隊員が静かに隊長に聞く。

 「良くは・・・なかったかもな」

 「で、ではなぜ!?」

 隊員は納得できない口調で言う。

 「・・・強いて言うなら、戦争だからだ」

 隊長はそれだけ言うと、フラッシュライトが取り付けられたPDWを前に構えて階段を登っていく。

 「そう・・・ですか」

 隊員は納得のいかない顔をして階段を登る。


_数分後


 「ハァ・・・ハァ・・・」

 隊員達はあまりにも長い階段に息切れを起こし、一旦休憩していた。長いだけならまだいい。だが、何せ角度が急なのだ。明かりも壁に等間隔で開けられた小さな鉄格子がはめられた窓のみで、周辺警戒にも神経を使う。

 「お前ら!早くしろよ!」

 隊長のその声を聞いて、隊員が痺れを切らす。

 「__いったい何故パワードスーツを持ってこなかったんですかッ!?こうなることは想定していたでしょう!?」

 パワードスーツ。いわゆる外骨格型装置だ。これ一つを装着するだけでたった一人で100キロ近い荷物を運搬することが可能。さらに汎用性も高く、ここ最近着々と各部隊への配備が進んでいる。

 「し、司令部が・・・『予算の都合上配備は無理だから生身で頑張って♡』って言ったんだよ・・・」

 『はぁ!?』

 隊員達はその話を聞き、口々に呆れた声を漏らす。

 「そ・・・それにほら?聞いてるだろ?あれは小回りがまだ効かない・・・室内戦では不利なんだ。わかるだろ?」

 隊員達はそこで合点が行く。確かに、パワードスーツが高価なのは事実だ。その証拠に、生存性や輸送性能が高いことから基本的に兵站線を維持する部隊へ配備が優先。特殊部隊や通常部隊などの室内戦を行う可能性のある部隊にはまだ配備されていない。よくよく考えてみればその通りだ。

 「そ、そう言えばそうでしたね・・・」

 「だからよ・・・責めるのはよしてくれ・・・」

 隊長は階段の段に腰掛けて頭を抱える。

 「・・・それで?疲れは癒えたか?」

 隊長は我に戻ったかのような顔で隊員達に聞く。

 「あ・・・いや、まぁ・・・疲れは取れましたよ。はい!」

 隊員の一人が頭をポリポリと掻いて言う。それにしてもこの隊長・・・切り替えが早すぎる。

 「それは良かった。そいじゃ行くぞ」

 隊長はそう言うと、石壁に立てかけていたPDWを手に掴み上へ上へと登って行く。

 「あっ!ちょっと!待ってください!」

 隊員達もそれを見て壁に立てかけていたヘルメットをかぶり、PDWを構えて体調について行く。

 「お、ほらみろ。もう出口だゾ!」

 隊員達が追いついた瞬間、隊長は変な語尾をつけて上を指差す。確かにドアがあるのが確認できる。

 「隊長・・・なんか変な口々ついてますよ・・・」

 「そんなことないゾ?」

 「・・・もういいですって」

 隊員達は降参したよう中をすると、ゆっくりと階段を登ってドアノブを掴む。

 「・・・いいな?」

 隊長が額から汗を流す。

 「・・・いいですよ」

 隊員達は『いつでも射撃できますよ』と言いたげな顔で頷く。

 「よし__行くぞ!」

 _ドガァァンッ!

 隊長がドアを思いっきり開く__のではなく、思いっきりドアを足で蹴りつけ押し倒す。

 「行け行け行け!」

 隊長が先に突撃し、それに続くように隊員達もドアから飛び出て行く。

 「クリア!」

 「クリア!」

 隊員達が飛び出た部屋に、次々と隊員達の声が響く。

 「・・・よし!敵はいないな!?」

 隊長は隊員達に最終確認を行う。

 「・・・はい!確かに敵はいません!」

 隊長は『ふぅ』とため息をつくと、ゆっくりと銃を下ろす。

 「・・・なんと言うか、めっちゃ豪華絢爛ですね」

 隊員の一人が、そのあまりの豪華さに呟く。

 「あぁ・・・そうだな」

 隊長もそのあまりの壮大さに言葉を失う。壁には黄金をふんだんに使われた装飾があちらこちらにはめ込まれ、窓にはめられたステンドグラスから差し込む淡い様々な色の光が反射するその様子は、まるで世界遺産のようだ。

 「__って、そうじゃないそうじゃない!『目標』を探せ!」

 隊長は我に戻り、即座に隊員達に指示をする。

 「・・・その必要・・・なさそうですよ」

 隊員の一人が、ゆっくりと指を差す。その方向には、背後に置かれたステンドグラスから放たれる淡い光に包まれている玉座に佇む『誰か』がいる。逆光で良くわからないが・・・おそらく、『目標』だろう。

 「手を上げろ!」

 隊員達は手にPDWを構え、ゆっくりと『誰か』に近づいて行く。

 「おい!手を・・・上げろッ!」

 どれだけ手をあげるように指示しても、『誰か』は一切その動きを見せない。それどころか、動き一つない。

 「ま・・・まさかッ!」

 隊長は何かを悟った顔で、玉座に深々と座る『誰か』に近づき、そっと触れる。

 「に、人形だッ!」

 隊長は、驚愕した顔で叫ぶ。それを聞いた隊員達の顔は、動揺を隠せないでいる。

 「い、一体どうしてだ!?作戦は少なくとも的にはバレていないはず・・・!」

 ガチャンッ!

 隊長がそう言いかけた時、突如として正面のドアが開かれる。

 「こ、皇帝!早くお逃げ・・・を・・・!?」

 正面ドアから入ってきた男は、皇帝のようなものを鷲掴みにする誰かを見て、腰が抜けて床に倒れ伏す。

 「く__く__曲者ォォォォォォォォッ!」

 男はそれだけ叫ぶと、泡を吹いて床に倒れた。

 「ッチ!お前ら!すぐにここから」

 ヒュンッ!__ドガッ!

 「ぐ、ぐッ!?」

 隊長がそう言いかけた時、天井方面から高速で舞い降りた投げナイフは、隊長の胸に深々と刺さる。

 「な、なんだッ!?」

 突如として床に倒れふす隊長。それを見た隊員達が訳がわからないまま、周辺を見渡す。

 「・・・ッ!」

 隊員達が見た物。それは__。
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